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Q58.母親の負担が重すぎるーゆるゆる子育て実践編

Q58.母親の負担が重すぎるーゆるゆる子育て実践編
2024年1月5日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:母親の負担か重すぎる
年れい: 高校生

質問内容

 

高等特別支援学校に通う16歳の娘がいる母親です。
学校で頑張るため、家でも八つ当たりがひどいです。現在、実父宅に2年前から同居させてもらい、間違った関わりを持とうとする父にもやきもきし、主人は穏便に済ませたい派、私はみんなの調整役に疲れました。裕福でもなくいつもギリギリの生活な上、ADHDと自閉症スペクトラムの娘の対応に疲れました。中1の次女は私を心配し、色々諦めがちになってます。姉の理不尽な行いにわかってはいても腹が立ってしまいます。義両親と2年前まで近居だったんですが長女を癇癪起こさせないためにあまりに言う通りにしすぎて、今大変です。環境を変えても大変なことに変わりはありません。このままだと私は壊れてしまいそうです。何も楽しくなくなってしまいました。自分の受け取り方、気持の流し方が下手なんでしょうがうまくいきません。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。
読んでいて相談者さんのしんどさが伝わってくるような文章でした。今はとても追い詰められ、八方塞がりな状態だと感じられているのですね。
最後の方で「何も楽しくなくなってしまいました」と書かれていることが心配になりました。いわゆるうつ状態という感じなのではないかと思ったのですが、お書きくださった環境であればそういった状態になることも無理もないことかと思います。

 

また、このような状況でなかなか前向きに物事を捉えることは難しいことではないかと思いました。「自分の受け取り方、気持ちの流し方が下手なんでしょうがうまくいきません」と書かれていますが、この状況下で上手く流せる人がいたら、それは気持ちの流し方の相当な達人ではないかと思います。なので、なかなか流せないのもそれはそれで自然なことではないかと思います。
なかなかお力になれることが思いつかなかったのですが、気持ちについての話題が出ていたので、今回はその点について少しお話しできればと思います。

 

時々相談を受けていると相談者さんと同じようにとても過酷な状況で、ご自身の力を超えたどうしようもない様々な出来事に翻弄[ほんろう]されている方と出会うことがあります。とても辛く、大変で、日々をやり過ごすだけで精一杯ということも多いのですが、そういう時には僕はその方が今までどのように生きてこられたのかを伺います。
その際に意識していることは、「どうやってその過酷な状況の中を生き延びてきたのですか?」と尋ねることで、ようはその方がどうやってここまでサバイバルしてきたのか、そのサバイバルスキルについて質問するということです。

 

なんだかんだとありながらも今日この場に相談に来られるまで、どうにか生き延びてきたということは、少なくともそれだけの「力のあるスゴイ方」という風にも理解できます。なので、その力を活かすことが、今後事態を好転させていくための強みになるのではないか…と思うからになります。
以前、そのような過酷な状況でどのように生き延びてきたのか、別の方に尋ねた際には「いろいろありながらも寝顔は可愛い」とおっしゃっていた方がいました。他にも「週に1度、自分で淹れたコーヒーを飲むのが楽しい」「近所の友達と話ができると前向きになる」「趣味で手紙を書くことにしている」などいろいろな自分なりの楽しみが語られて、日々の生活というのはささやかな何かに支えられて成り立っているのだなぁと感じました。たぶんそういったことが大切なことのひとつなのだと思います。

 

また、今回の相談であれば「八つ当たりはどのくらいの頻度であるのでしょうか?」というように、今目の前にある問題がどのくらいの程度や頻度であるかも伺うようにしています。
そして「八つ当たりがあるときと、八つ当たりがないときでは、何がちがうのでしょうか…?」と問題が生じていない時のことを少し伺い、そこに何か物事が好転するヒントがないかと探すことにしています。

 

実際にお話を伺っていると「問題が起こってないことなんてありません!」と言われる方もいらっしゃるのですが、その場合は次の面接までの間、本当にまったくなかったのか少し観察してきてもらうようにしています。
それは、物事を解決するというよりは、そもそもすべての問題が四六時中ずっと生じているわけではなく、そうではない時間もあるということに気づくということ自体がまず貴重であり、ご自身の視野を広げることにつながるからです。
実際にそのように観察してきてもらうと、問題が生じていないことも多くあるので(もちろん観察してきてもらってもずっと生じている場合もありますが)、「なぜ、その時は問題が生じていなかったのか?」ということを分析して、相談に来られた方が手立てとして使えるよう一緒に考えたりします。そうすると対応の目星が少しつくことがあります。

 

大切なこととしては、無理に前向きになったり、受け入れたりする必要はないということです。ただ、ずっと問題と向き合っていると、どうしてもしんどくなってしまうので、時には逃げたり、休んだりして、ゆるゆると問題と向き合うということなのではないかと僕は思っています。
そのためにはその場しのぎでもよいので、ご自身がサバイバルするための手立てを使って、ご自身をいたわり、少しでもエネルギーを回復してもらえるとよいかと思いました。
物事が改善していく際にはきっかけやタイミングもあります。それを逃さないためには、それまで相談者さんご自身が健康で動ける余力を残しておくことだと思います。そして、日々の生活の中で少しでも楽しめること、喜べること、感謝できることを作っておくと、お子さまとも程よく向き合えるのではないかと思いました。

 

なかなか具体的な対処法などはお伝えできなかったのですが、日々の生活をちょっとだけ好転させられそうなことについてお話ししました。相談者さんの日々の生活が少しでも楽になることを願っています。

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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