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Q59.友達への伝え方ーゆるゆる子育て実践編

Q59.友達への伝え方ーゆるゆる子育て実践編
2024年2月14日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:友達への伝え方
年れい: 小学4-6年

質問内容

 

孫10歳を爺と婆で育ててます。
親が心疾患、脳疾患、精神障害を持ち、薬物依存症です。児童虐待も受けていました。本人もそのあたりの状況は理解しています。
小学校で、「何故、お母さんが一緒に暮していないのか」お友達に聞かれるようです。
孫は正直に「薬物中毒(依存症)だから」と話をしたいようです。婆は、「薬物中毒(依存症)」と答えると他の子から色々言われてしまう可能性があるから「病気だから」って言うのは駄目かな?と孫に伝えていますが、孫は、それは嘘を付く事になるとゆう考えのようです。上手い落としどころが見つからず困ってます。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。
今回のことに限らず、日々の生活の中でお孫さんのことでいろいろと悩まれることがあるのではないかと思います。また、お母さま(相談者さんにとってはお子さま)のことでもいろいろとあるのではないかと少し考えました。そんな中でお孫さんがお友達からいろいろと言われてしまうのではないかと心配してくださっていることは、本当にお孫さんにとってはありがたいことだなぁと思いました。なかなか難しい問題なので、どこまでお役に立てるかはわかりませんが、僕の思ったことをお伝えできればと思います。

 

まず、お孫さんの思いについていろいろと知りたいなぁと思いました。僕らからしてみると薬物依存症は依存症という病気なので、別に病気であるという説明については嘘ではないのではないかと感じます。一方でお孫さんは「薬物中毒(依存症)」は「薬物中毒(依存症)」なのであって、「病気」と表現することに違和感があり、そう伝えることは「嘘」となってしまうという理解なようです。
もし、ただ「薬物中毒(依存症)」が病気の一種であるという理解が不足しているのであれば、依存症は病気であると理解してもらうことがまず必要となります。相談者さんからの説明がなかなか入らないようであれば、お医者さんや相談員さんなど別の方に改めて病気であることを説明してもらうことが良いかと思いました。特にお子さんの中にはお酒や薬の問題は自分が悪い子だったからそうなってしまったと誤解してしまう子がいるので、そうではないこと、病気であることを改めて伝えることが大事ではないかと思います。

 

ただ、そういった理解をすることが、時々難しいお子さんがいます。一度「AはA」と理解してしまうと「AはBでもある」という風に別の角度から理解することが苦手という傾向のあるお子さんで、そういった傾向があると、今回のようなことに限らず、日常生活や学校の勉強などでもひとつの言葉や考え方にこだわってしまい、困ってしまうことがあります。今回の場合も「薬物中毒(依存症)」という言葉で理解してしまったので、「病気」という別のことばに置き換えて理解することが難しくなっている可能性もあります。
そういったお子さんの場合は、そもそも説明の仕方に工夫が必要だったりするので、小学校の担任の先生やスクールカウンセラーさん等に相談して、どのように説明すると理解しやすいのか一緒に考えてもらった方が良いかなと思いました。

 

また、もしかしたら「病気」であると頭では理解していても「薬物中毒(依存症)」と表現したいという場合もあるかと思いました。それはお母さまの状態があまりにも大変だったので、一般的な「病気」と表現するだけでは足りないくらい複雑な思いを感じているということです。特に児童虐待を受けていたとなると、一般的なイメージとして「病気」という弱々しくて元気のない状態ではなく、激しい感情を伴ってお孫さんに関わっていた可能性もあるので、なかなか病気というイメージをお孫さんが持ちにくくなっているのかもしれません。
その場合は、まずお孫さんがお母さまのことをどのように認識しているのかを改めて聴くことから始めるのが良いかと思います。そもそも小学生という年代で「薬物中毒(依存症)」がどういったことを示すのか、正しく認識しているお子さんの方が少ないかと思います。「薬物中毒(依存症)」そのものに対する理解や、お母さまのご様子と「薬物中毒(依存症)」がどのように結びついているのか、そのあたりを聴いていくと「病気」と呼ぶことが「嘘をつく」ことになると思っている理由もわかってくるかもしれません。
もし、なかなかお母さまのことを相談者さんから聴くことが難しかったら、お孫さんのことを相談できて、お孫さんとも仲良くできそうな方に代わりに聴いてもらってもよいかもしれません。ただ、お孫さんがお母さまのことについてあまり語りたくないという場合も考えられます。その場合は無理に聞くことは避けた方が良いので、もしお孫さんが語りたくなさそうであれば、無理強いして聞き出そうとしない、そういう関わりができる方に相談してみるとよいかと思います。
逆にお子さんがお母さまのことを語ってくれたら、そのことについては「教えてくれてありがとう」とポジティブに受け止めてあげられるとよいかと思います。また、そもそもお母さまのことをお友達に伝えること、正直に伝えたいという気持ちがあること自体は悪いことではありません。その伝えたい気持ち自体は肯定的に受け止めていることをお子さんに伝わるよう相談者さんからも伝えてもよいかと思います。

 

以上のようなことを考えました。いずれにせよお孫さんがそのようにお母さまのことを語る背景にはいろいろなことが影響してのことかと思います。日頃お孫さんと向き合ってくださっている相談者さんだからこその悩みだとも言えますので、どのような思いがあるのかを丁寧に汲みとりつつ、あまり肩ひじ張らずに取り組んでいければと思いました。

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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