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強迫性障害[きょうはくせいしょうがい]

子どもも大人もイラストで学ぶ病気や障がい

強迫性障害

ある考えやイメージがくり返し浮かんできたり、同じ行動を何度もくり返してしまうために、生活がスムーズにいかなくなる病気です。
手洗いやカギの確認などが代表的な強迫症状です。
起こっていることが症状[しょうじょう]だと知らないまま、だれにも相談せず、ひとりで抱えこんでいる人も多い病気です。

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ページのエッセンスをA4×2枚のシートにまとめました。

[PDF]強迫性障害(918KB)

ページにおこしいただきありがとうございます。
大人も子どももいっしょに見れて、基本的な知識を学べるページです。およそ小学校中学年~大人の人向けです。もっとくわしい情報を知りたいときは、参考サイトがページの下の方にあります。

(子どものみなさんは、わかりにくいことや、ぎもんに思ったことは、大人の人に聞きながら読んでください。)

 

01 どんなことが起きるの?(症状[しょうじょう])

 

「手が汚染[おせん]されているのではないか」と思い(強迫観念)
くり返し手を洗う(強迫行為)

というように、強迫観念[きょうはくかんねん]と強迫行為[きょうはくこうい]が結びついてみられることが多いです。
自分でも、バカバカしいとわかっていても、とめられません。
起きやすい強迫の症状には次のようなものがあります。

強迫観念だけがみられる場合や、強迫行為(儀式行為)だけで明らかな強迫観念がみられない場合もあります。

 

次のようなことが起きることもあります。

・不安が起こらないように強迫症状と関係している場所や状況をさける
・まわりの人に、くり返し「大丈夫だよね?」「○○でいいよね?」などと確認や保証[ほしょう]を求める
・なかには、まわりの人に確認行為を要求したり、思うとおりにできないと、ものすごくおこる など…

 

強迫性障害は、うつ病など他の精神疾患を合併[がっぺい]することがあります。ほかの精神疾患の症状の一つとして、強迫症状がみられることもあります。

病気のメカニズム

強迫観念が浮かぶと、それにとらわれてしまい、強い不安がおこり、その不安を和らげるために強迫行為をします。
不安は一時的に軽くなりますが、再び強迫観念による不安がでてくると、以前よりもさらに強迫行為をせずにはいられなくなります。
くり返されるたびに悪循環[あくじゅんかん]が強化されます。

しかし、本当は、強迫行為をしなくても自然に不安は下がるものなのです。このことについては、Q&Aの中で、治療[ちりょう]とあわせて説明しています。

Q どこからが病気?(「強迫傾向」と「強迫性障害」のちがい)

「○○しなければならない」「△△せずにはいられない」といった強迫観念がある人や、実際に不安にかられて強迫行為をしてしまう人はめずらしくありません。ですが、多くの人は生活に影響が少ない範囲で止められたり、どこかで折り合いをつけることができています。
「強迫傾向」と「強迫性障害」のさかいめは、強迫観念や強迫行為により…

生活にあきらかな影響があり、本人や周囲が困っている

というところにあると言えます。

例①
Aくんは何度手を洗っても「まだ汚れているのではないか?」とやめられず、お風呂の時間も長いです。洗うことに一日を費やしてしまい、また外で汚れるのも怖くなり、だんだん家から出られなくなりました。家では家族に「汚れていないか?」と何度も確認をしたり、行動を止められるとものすごくおこったりします…。

例②
Bさんは外出するときに「鍵をかけ忘れたのではないか?」と何度も何度も確認して出かけるのに時間がかかります。このため、いつも外出先には大幅な遅刻をしてしまい、まわりから注意されます。そのうち出かけることが不安になってひきこもるようになりました…。

02 回復のサポートになることは?

 

今困っている考えや行動は、病気の症状だと知ることが大切です。
01のところで書いたような病気のメカニズムを理解し、どのような工夫ができるのか考え、実践[じっせん]していきます。

 

精神科や心療内科のある病院やクリニックでは、薬の治療やカウンセリングが行われています(薬の治療では抗うつ薬が使われることが多いのですが、症状に合わせ抗精神病薬[こうせいしんびょうやく]なども使われることがあります)。
カウンセリングでは、困っている症状を細かくきいて整理したうえで、これまで不安でさけていた状況や場所などに、少しずつ慣れていけるようサポートします。

 

具体的には、強迫観念にかられて不安になっても、不安をやわらげるための強迫行為をあえてせずにいることを練習します。不安が低くて取り組みやすいものから順番に練習していきますが、場合によっては本人が一番治したいものや効果がありそうなものなどを優先して取り組むこともあります。

 

行動を変えることはとても勇気がいることです。ひとりで考えるよりも、だれかと相談しながら進めていく方が安心して取り組めます。
「認知行動療法[にんちこうどうりょうほう]」については、Q&Aで説明しています。

 

ストレスをへらす

 

環境の変化や対人関係の問題、仕事や勉強など、様々なストレスが不安や緊張を起こりやすくし、強迫症状が悪化することにつながります。
強迫症状の改善には、ストレスをへらすための環境調整をすること、不安や緊張が起こった時の対処法を知っておくことが大切です。また、自分ひとりでストレスを抱え込まず、まわりに相談したり、手伝ってもらうことも必要です。

 

まわりの人はどうしたらいいですか?

 

本人の行動には理由があり、症状のために強い不安にかられていることを理解します。本人の考えを否定したり、無理やり行動を止めようとする行動は、まわりに対する不信感を強めるばかりで、症状がよくなるわけではないです。まずは本人の気持ちを受け止め、その時にできることを見つけ、いっしょに取り組んでみます。

 

家族や友人、パートナーなど、身近な人ほど本人の症状に巻きこまれやすく、つかれています。相談機関や家族会などにつながって話をしたり、本人とはなれて自分の時間をつくり、まわりが少しでも元気になれる工夫をしていきます。

 

工夫いろいろ

 

》精神障がいの方への家族の対応
「こんな対応をしてみました」という例を紹介しているページです

03 病気の人はどれくらいいるの?原因は?

 

およそ50~100人に1人の割合だと考えられています。
また、他の精神疾患でも強迫症状がみられることがあります。

*厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

04 (親が病気のとき)子どもの安心のためにできることは?

 

病状から、子育てや家事、仕事などへさまざまな影響があることがあります。
子どもを巻きこみやすい強迫症状には、次のようなものがあります。

例)

  • 子どもが学校から帰ってくると、お母さんは「汚れているまま家の中に入っては困る」とすぐに入浴させ、持ち物は除菌シートですべてふく。
  • 友だちと遊びに行っていると、お母さんが「○○ちゃんが何か事故に巻き込まれているのではないか?」と不安になり、何度もメールや電話で無事を確認してくる。
  • 休日にお父さんが計画して家族で出かけるが、お父さんは少しでも時間がずれると不安になり、家族を急かしたり、時にはしかりつけたりする。

 

子どもへのサポート

  • 強迫の症状になるべくまきこまないようにする
  • 病気からきている症状は、可能な範囲で子どもにも説明する。子どものせいではないことを伝える
  • サービスや制度を使い、現実的な家事育児の負担をへらす
  • 日常生活をサポートする:食事、生活リズム、身だしなみ、学校の準備、遊びなど
  • 子どものどんなきもちもみとめる
  • こまったときの対処法を相談しておく(「こまったときカード」を作るなど)
  • 家族が少し元気になる、病気や対応について知る、ひとりだけで抱えずに相談してみる

*リンク先の「ケアガイド」でも説明しています


さらにくわしく知りたいときのページ

親が精神障がいやこころの不調になったときの子どものケアガイド
小学生のみなさんへ(子どもへのメッセージと工夫)
中学生のみなさんへ(子どもへのメッセージと工夫)

05 よくある質問 Q&A

 

Q 強迫症状と関連するほかの精神疾患にはどんなものがありますか?

A 強迫性障害は、他の精神疾患を合併していたり、他の病気の症状の一つとして強迫症状がみられたりすることがあります。

合併しやすい精神疾患としては、うつ病、強迫性障害以外の不安障害(社交不安障害、恐怖症、パニック障害等)があげられます。とくにうつ病は関連が強いと言われています。
うつ病にかかったひとの中には元々強迫傾向がある人が少なくないですし、また強迫症状に悩まされ続けることでうつ病を発症しやすくなるとも考えられます。

統合失調症の症状のひとつに妄想が挙げられますが、例えば「自分は○○をしてしまったのではないか?」という訴えが妄想なのか強迫観念なのか判断が難しい場合があります。
一方、幻覚や妄想などの典型的な症状の他に強迫症状が認められる場合もあります。

発達障害の中でも自閉スペクトラム症の場合は、元々こだわりが強く、同じことや決まったパターンを繰り返す傾向があります。この行動と強迫症状をはっきりと区別するのは難しいです。

Q 治療・認知行動療法はどのように効くのですか?
強迫行為をしなくても不安がさがるってほんとですか?

A 強迫観念が頭に浮かんだことで高まった不安は、実は強迫行為をしなくても自然におさまります。

強迫行為は早く不安を下げてくれますが、くりかえす度に不安が高まりやすくなり、結果として不安は続くことになります。

一方、不安には「慣れ」がおこります。不安な状況に、強迫行為をしないことをくりかえすと、「慣れ」がおこり、不安の程度がだんだん下がってきます。

だからといって、不安がいちばん高いものから挑戦するのはとても勇気がいることですし、とてもむずかしいことです。泳げない人が少しずつ水に慣れていくように、比較的不安が低くて取り組みやすいものからはじめていきます。

 

06 関連コラム/ページ

ゆるゆる子育て:障がいをかかえながらの子育てを応援しているページ
精神障がいの方への家族の対応:「こんな対応をしてみました」の例を紹介しているページ
親が精神障がいやこころの不調になったときの子どものケアガイド:お子さんがいる場合の子どものケアについてまとめたページ

07 もっとくわしい情報を知りたいときの参考サイト&図書

参考サイト

》強迫性障害|みんなのメンタルヘルス総合サイト(厚生労働省)

 

書籍

・「強迫性障害のすべてがわかる本」 原田誠一 講談社
イラスト入り、説明がわかりやすいです

・「強迫性障害の治療ガイド」 飯倉康郎 二瓶社
40ページ弱、コンパクトな直接書き込めるワークブックスタイルです


 

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このページの担当

ざっきー+ ぷるすあるは

最後まで読んでいただきありがとうございます。

実は私も強迫傾向あり。「こんなもんで大丈夫!」と自分に声をかけながら生活しているよ。(ざっきー)

 

この教材は平成28-29年度子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)の助成金の交付を受けてNPO法人ぷるすあるはが作成したものです