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Q57.少し辛くなってきましたーゆるゆる子育て実践編

Q57.少し辛くなってきましたーゆるゆる子育て実践編
2023年9月14日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:少し辛くなってきました
年れい: 小学4-6年

質問内容

 

こどもが3人(2歳、12歳、15歳)います。真ん中の12歳の長男が赤ちゃんの時の病気で高次脳機能障害があり、知的と身体に障害が残りました。その障害がある子の子育てでなかなか自分に心も体も余裕が持てません。クタクタでイライラしてしまう自分…。幸せになりたい一心で頑張ってますが、すぐストレスが溜[た]まります。子どもにも強く怒ってしまいます。愚痴も言えず誰にも相談できません。夫は仕事が忙しく、気持ちに余裕がないようで、全部、私に押し付けてきます。子どもがちゃんと育ってないと、私を責めて、口だけは出してきます。ずっとワンオペ育児です。夫に対して助けを求めてもいつも助けてもらえず、夫に対して信頼関係はありません。こどもはディサービスを週1回利用しています。でも、困っているのは朝や夜に子どもの面倒を見るのが辛く、キャパオーバーです。その時間は夫はいません。仕事は月10万円ほど働いています。通院、リハビリ、学校の呼び出し、宿題確認、手続きなど…どう工夫しても私1人では終われません。こどもは遂行機能障害があり、トイレと食事以外は声掛けがないと何もしません。一つ一つ声掛けするのが負担で辛いです。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。
真ん中のお子さんの子育てが大変なだけでなく、パートナーの方からも協力が得られず、お一人で抱えられているということがとてもしんどそうだと感じました。想像になりますが、周囲に頼りになる方もおらず、デイサービスも週1回ということでなかなかお休みになれる機会も少ないのではないかと思います。
少しでも負担が解消されるように、デイサービスの回数を増やしたり、ショートステイなどの活用などを勧めようかと思ったのですが、なんとなく文章を読んでいてすでにそういった情報はご存じなのではないかと思いました。
むしろお子さんとの関わり、パートナーとの関係などについてほとほとイヤになってきてしまっているというところがしんどさにつながっていると思いましたので、今回はその点を中心に少し僕の思ったことを伝えられればと思います。

 

まず、お子さまとの関係ですが、逐一声かけをしないといけない状況というのは関わりとして本当に大変かと思います。特に下に2歳のお子さまがおり、相談者さんご自身も働かれているのであればなおさらです。他のことをやっている間に、少しはやってほしいと思う気持ちが湧き上がっても、それは無理なからぬことかと思いました。
僕が今まで相談を受けてきた中で、介護や子育てなどでなかなか余裕のない保護者さんと話し合ってきたことは、概ね

「ちょっとでも楽にできることは何か」
「ちょっとでもほっとできるときはあるか」

の2つであったことが多いように思います。
相談に来られたほぼすべての人に言えることですが、その方々はすでに限界まで頑張っていらっしゃいます。いろいろな社会資源を調べ、お子さまにとって良いと言われることを試し、少しでも改善されるように取り組まれています。なので、こちらからアドバイスできることも実は少ないのですが、大概の方はご自身のことはあまり考えずに、ある意味では犠牲にして日々の生活をこなしています。
それは保護者として必要なこともあるとは思うのですが、そういった無理が重なるとどこかで続かなくなってしまうことがあります。相談者さんももしかしたら、今まで本当に頑張って取り組まれてきたので、いろいろと負荷が強まっていているのかもしれません。そんな風に思いました。

 

相談の中では、まず日々の生活を少しでも楽に過ごすためにできそうなことはあるかを一緒に考えます。
家事や仕事、お子さんとの関わりなど、ちょっとでも手が抜けそうなところを探していくのですが、実はこれを提案するとだいたい「そんなことしていいんですか?」と驚かれたり、ちょっと嫌がったり、「すでにやってますよ」という顔をされたりと、あまりいい反応をされないことが多いです。
手を抜くということが質を下げるというイメージがあるからだと思うのですが、実際に取り組むと実はあまり変わらなかったり、むしろ上がったりすることもけっこうあります。
「手を抜く」ということは「やらなくてよいことはやらない」ということなので、例えば食事だったら、冷食やレトルト食品を使ったり、掃除だったら頻度を減らしたり、買い物を宅配にするなどのようなことです。お子さんとの関わりに関しては直接やりとりする機会を減らすということになります。
今回はお子さんが声掛けしないと動かないということでしたが、その場合はむしろこっちで全部やってしまい、お子さまがやる部分を減らすことがそれにあたるかと思いました。

 

似たようなことを他の保護者の方に伝えると「そんなことしたら自分でやれる部分が減ってしまう」「自分でやる習慣が身につかなく無くなってしまう」「日々の成長や発達に影響が出る」など言われるのですが、実際にはそうでもないかなと思っています。
なぜかというと、そもそもなかなか取り組まない、お子さんにやってもらっていることというのは、そのお子さんにとってはちょっとハードルの高いことで、様々な要因が重なってできないことになります。それを無理にやらせようとしても身につかないどころか苦手意識がついてしまい、どんどんやる気がなくなっていってしまうという悪循環が生じやすいのです。
なので、むしろお子さんが無理なくできる範囲で納めることが、お子さんの主体性などを養うことにつながります。また、こういった関わりは継続することが大事なのですが、無理していると周囲の大人側がイライラしてよい関係の中で継続することが難しくなってしまうので、そうならないように大人側にとっても負荷の少ない範囲で続けることが大切かと思いました。
ただ、個人的には「多少お子さんの成長スピードを損ねることがあったとしても、保護者さまが無理なく取り組めることの方が大事」だとも思っています。
いくらお子さんのためとはいえ、その結果親子の関係がギスギスしたり、ケンカしてしまってはそもそもなんのために頑張っているのかわからなくなります。そこまでして成長を促進させるよりも、むしろ日々の生活を楽しく過ごせるほうが、僕としては大切だと思いますので、それよりはむしろお互いに楽に関われる方を選択していければと思っています。
もうひとつ、「ほっとするとき」について。
だいたい上記のような取り組みをして少し手を抜くことで時間ができると、その時間にまたほかのすべきことをしてしまうことが方が多く、結果として休むことができないということがよくあります。なので、手を抜いてできた時間は「ほっとひと息つく時間」として、そのために時間を使ってほしいと伝えています。
そのように伝えると多くの人は戸惑い「何をしたらよいかわからない」と話されます。正直に言ってしまえば、何もしなくてよいのです。基本的にはぼんやりする時間なので、コーヒーでも飲みながらぼんやりしたり、何だったら昼寝してもらってもかまいません。好きな音楽を聴いたり、甘いものでも食べながら好きな雑誌を見るのでもよいです。ほっとひと息つくことを大事にしてもらえるとよいかと思います。ぼんやりする時間というのは近年では脳内で記憶の整理をしたり、脳疲労を回復させたり、新たな視点に気づくためにも必要であることがわかってきており、特に日々の生活に疲れてきているときには大事であると僕は考えています。

 

いろいろと書いてきましたが、今とても負担で辛いと感じているのであれば、それは日々の生活や人との関わりを見直す時期に来ているのではないかと思います。お子さんのことを中心に取り組まれてきた生活を、少しご自身を中心に考えてみて、その上でパートナーとの関係も見直してみるとまた違ったようにとらえられるのではないかなと思いました。すぐにそのように考えることは難しいかもしれませんが、もしちょっとでも心に残った部分があれば、試してみていただければと思います。

 

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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