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Q52.苦しいーゆるゆる子育て実践編

Q52.苦しいーゆるゆる子育て実践編
2023年6月5日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:苦しい
年れい: 中学生

質問内容

 

中度の知的障がいのある娘の母です。先日近所の方より連絡をうけ、ご近所のお宅にチャイムを鳴らし、自分のマスクを置いてくという事が三年位ありましたとの事。子供に確認すると、チャイムを鳴らしたのはそのお宅のお子さんと友達になりたく、マスクは汚れたので捨てたとの事。三年も他人に迷惑をかけてたのに平気に日常を過ごし正直全く分かりませんでした。私自身情けなく、先方に子供とお詫び行ったところ、親が頭をさげさせるなんて、とても悲しい事だからいけないんだよという趣旨の言葉を子供にして下さいました。本人は私に言われて初めて悪い事をしたと思ってる様子、そして先方の方が言われた親が頭を下げる…悲しいくらい響いてないと思います。子供が迷惑をかけたら謝るのは当然の事ですが、それをなんとも思ってない様子が言い訳ですが知的障がいだからか、情けなさと私の思いが伝わらない悲しさ、無気力になりました。子供は一人しかおらず、今まで療育やペアトレ、講演出来るだけ勉強し試行錯誤してきました。きっと知的障がいだからしか感じない悩みも出てくる、実際まだ他に悩みはありますが、今は子供の事が信じられないです。また、どうせ他人に迷惑かけるんだろう、どうせこの子は知的障がいじゃないか、そんなマイナスな苦しい思いでいっぱいです。私と同じ知的障がいの方の話を聞けば自分だけじゃないと思えるかもしれませんが今は子供の存在が苦しい、だけど育てないといけない、腹もたちますが、この子なりの世界観を思うと、自分が知的障がいとも分からず申し訳ない思いもあります。何を言って頂きたいのか支離滅裂ですが、突拍子もない事をしてしまう我が子に知的障がいで生まれた事が申し訳なくも、存在が苦しくもあり、子供の可能性を信じてとか一切思えません。どーせ、こんな子、まともに働けないし…働けなくてもいいんじゃないか、だって知的障がいなんだからと差別の思いでいっぱいです。母親は私しかいないのに子供に申し訳なくも、今はただ苦しい存在です。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。
ご自身のお子さんに対する気持ちを率直に語ること自体が、とても勇気のいることだったのではないかと思います。読んでいて、相談者さんの辛い、しんどい思いが伝わってきて、苦しい気持ちになりました。本当に子育てというのはきれいごとではないと改めて感じました。何をどう伝えられるかわかりませんが、僕が感じたこと、思ったことをお伝えできればと思います。

 

まず、たとえご家族であったとしても、お子さんであったとしても、その存在を受け入れがたく感じること、重たく感じることはあり得ることだと思います。今まで様々な相談を受けてきましたが、家族を疎ましく思ったり、一緒にいること自体がとても苦しかったり、いっそいなくなってくれれば…とお話しされる方も多くいらっしゃいました。
血がつながっていたとしても、一緒に生活していくこと、生活の面倒をみることは決して簡単なことではなく、様々な困難が生じることだと思います。それゆえ、どのようにしたらよいか、常に迷い、悩み、苦しんだりする過程の中で、僕のようなところに相談にこられているのだろうと思いながら、日々相談を受けています。

 

ただ、家族の問題のとても難しいこととしては、離れるということがなかなか容易ではないことだと思います。これが赤の他人で、例えば近所に住んでいる人だったり、職場の人だったりした場合は、一定の困難さはありますが、引っ越ししたり、転職したりといった方法で距離を置くことができるのですが、家族ですとそうもいきません。
特にお子さまの場合は養育をするという必要が生じるので、どうしても向き合わざるを得ません。そして、向き合った結果として成果があったり、通じ合ったりという感覚があればまだやっていこうという気持ちもわくのですが、働きかけても反応がなかったり、むしろ悪い方向にいったりしてしまうと、いったい自分は何をしているのだろうか、自分の今までの努力はすべて無駄だったのではないかという無力感に苛まされることもままあります。

 

そのように考えると、今回相談者さんがお子さんに対してそのような気持ちを抱かれるのも無理もないことなのではないかと改めて思いました。世間一般では親は子を愛するものという通念があるため、なかなかそのように感じても周囲に打ち明けることは難しいと思うのですが、僕は必ずしもそう上手くはいかないと今までの経験から学んでいます。なので、無理にお子さまへの気持ちを前向きにする必要もなく、苦しいと感じてしまう気持ち自体は、相談者さんご自身の気持ちとして大切にしていただきたいと思いました。

 

一方で、ただずっと気持ちが苦しいままであるということもそれはそれで大変なことだと思います。前向きになる必要はありませんが、少しでも苦しい気持ちが和らぐような何かができるとよいなとは思いました。こういった支援の現場にいますと、どうしてもお子さんを主語に相談が進みがちですが、本来であればご家族もそれぞれ一人の人間として尊重されるべきです。障害のあるお子さんの親であるということで、ずっと我慢を強いられたり、地域や社会から疎外されたりするようなことがあるべきではないと思っています。なので、相談者さんご自身が楽になれるようにお子さんと少し距離をとったり、ご自身が主役になれるような場があるとよいな…と思いました。

 

中学生ということで、もう10数年お子さまと向き合われてきたのだと思います。なかなか思い通りにいくことも少なく、本当にご苦労なさってきたのではないかと思いました。でも、その上手くいかなさはけっして相談者さんご自身のせいばかりではありません。そして、どれだけ頑張ったとしても、尽力したとしても、変えられないこともあります。なので、少し肩の力を抜いて、ともに人生を歩んできたお子さんとのつきあい方を少しゆるめて、それぞれが今を楽しめるような時間が少しだけ増えたら、それだけでもお互いにとって良いことなのではないでしょうか。無理なく、ご自身の感情を大切しながら、お過ごしいただければと思います。

 

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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