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Q51. 癇癪[かんしゃく]、暴力ーゆるゆる子育て実践編

Q51. 癇癪[かんしゃく]、暴力ーゆるゆる子育て実践編
2023年5月22日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:癇癪[かんしゃく]、暴力
年れい: 中学生

質問内容

思い通りにならないと癇癪を起こし奇声をあげて女の私に特に暴力を振るいます。男性は怖いイメージが強く本人は弱い人や女性に強く向かって行き乱暴をします。声も大きいので夜中まで騒いだり親の言う事は全くきかずで毎日途方に暮れております。自閉症14歳です。

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。
中学生ともなると身体も大きくなり力も強くなりますので、大変お困りであろうと思いました。なぜ暴力が発生するのかという背景要因は、様々な可能性があるので一概には言えないのですが、少しでも関わりが楽になる方法を考えられればと思います。

 

まず、発達的な特性の強いお子さんの場合、同じ年代のお子さんと比べて上手くできないことが相対的に多くなりがちで、特に学校の課題であったり、周囲の人達から期待される行動、規範などもなかなか上手くこなせないことがあります。それとともに感情のコントロールが苦手だったり、言葉にして上手く伝えることができなかったりすることもあるので、つい自分のできないイライラが暴力という行動として表れ、周囲の方がそれに巻き込まれて困ってしまうという悪循環になります。
また、家族間で生じる暴力はある種のコミュニケーションになっていることがあり、自分では落ち着かせることができない気持ちをどうにかしてほしいと思い、それが言葉でなく暴力という形で表れることがあります。
さらに、14歳という年齢を考えると思春期年代でもあるので、二次性徴によってホルモンバランスが崩れ、身体的にも落ち着かなかったり、親からの自立と依存を行ったり来たりする家庭の中で、反発する気持ちが強くなって暴力的になるということもあります。

 

なので、今の状況はかなり大変で気持ちを収めることも難しい状況ではあることが推測されますが、逆にいうと今が一番大変でもあるということなので、この時期をどうにか乗り越えてしまえばある程度落ち着いてくる可能性もあるかと思います。
では、この時期をどう乗り越えるかというと対応のひとつは「距離を置く」ということで、結局のところ何をしても落ち着かないということがありえるので、なるべく刺激せず距離を置いた関わりをするということが上手くやり過ごしていくコツのひとつとなります。

 

「距離を置く」という関わりをどのようにするかについては、僕はよく「物理的」「時間的」「言語的」の3点を意識するようにお伝えしています。
「物理的」というのはなるべく同じ空間にいないようにしたり、同じ部屋にいるにしても今までより少し距離をとる(椅子ひとつ空けたり、正面に座らないなど)というようなことで、これが意外と効果があります。
「時間的」というのは一緒にいる時間を減らすということで、会話するにしても今までより短い時間にしたり、同じ部屋にいる時間を減らすということになります。
「言語的」というのは、今まで家族だからとざっくばらんに話していたのを、少し丁寧語で話したり、敬語を使ったりするなど言葉で距離をとるということになります。少し冷静な口調をつかった方が距離が生まれます。また、お願いしているのが「○○ちゃん」といったような子ども扱いするような声かけも止めてもらっています。これは甘えを助長するやりとりだなぁと僕は考えており、家族間の暴力は甘えの延長で生じていることもままあるので、控えるようにお願いしています。

 

もうひとつ対応としてお伝えしていることとしては「暴力ではないコミュニケーションを強化する」ということです。
親子で関わっているにしても一日中ずっと暴力が出ていることは少ないので、その暴力が出ていないやりとりを増やすことで相対的に暴力をふるうコミュニケーションを減らすということになります。
特に発達的な特性の強いお子さんは、自分の関わりを振り返ることが苦手だったり、どのようにコミュニケーションを使い分けたらよいのかが、よくわかっていなかったりすることが多いので、どういった関わりをしてくれるとよいのかをはっきりと伝えてあげられると相手も理解しやすくなります。その際には思春期年代であることを考慮するとなるべく上目線にならずに伝えていくことが必要で「○○だったから助かった」「△△なのでありがたかった」などのように感謝しているというような形でポジティブに返すと伝わりやすくなります。

 

上記のようなところを意識して対応していただけるとよいかと思ったのですが、なかなか相談者さん一人でこの関わりを続けるのも大変かと思います。そういった場合には誰かに相談しながら関わりを継続していくのが良く、身近に相談相手がいるのなら良いのですが、あまりいらっしゃらない場合は相談先を見つけておけるとよいかと思います。相談先の候補としてはまずは学校の先生やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーといった相談員が関わりやすいかと思います。あまり暴力がひどい場合は児童相談所や少年センターなどのようなところで相談するのもよいと思います。相談者さんが相談しやすいところで相談していただくのが良いでしょう。

 

最後になりますが、こういった問題は中長期的に対処していくことになるのが多いので、相談者さんご自身の心身の健康を保っていくことも大切かと思います。
先ほど「距離を置く」とお伝えしましたが、その距離を置いた際には、なるべく相談者さんご自身が楽しめること、ほっと一息つけることをしていただき、気持ちをリフレッシュする時間にしてもらえるとよいかと思いました。暴力の問題は身体だけでなく心も傷つくので、つい四六時中そのことを考えてしまいがちになります。ただ、考えれば考えるほどそのことで頭一杯になって余計にストレスになってしまったり、冷静に対応ができなくなってしまいます。なので、大変な状況だからこそ、ご自身のことを大切にしていただき、少し気持ちをゆるめる時間を作っていただければと思いました。難しいお願いになってしまうかもしれませんが、良ければお試しください。

 

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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