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ヤングケアラー支援~小学校低学年の頃から「助かった…」という経験値が積み重なるように

ヤングケアラー支援~小学校低学年の頃から「助かった…」という経験値が積み重なるように
2020年10月4日 pulusu

ヤングケアラー支援~小学校低学年の頃から「助かった…」という経験値が積み重なるように

 

「ヤングケアラー」とは、家族の介護を行う、18歳未満の子どもをさします。
2018年度子ども・子育て支援推進調査研究事業による「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」では、もう少し踏み込んだ記述となっていて…

 

年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負って、本来、大人が担うような家族の介護(障がい・病気・精神疾患のある保護者や祖父母への介護など)や世話(年下のきょうだいの世話など)をすることで、自らの育ちや教育に影響を及ぼしている 18歳未満の子ども

 

と定義しています。
ぷるすあるはの制作担当のチアキもヤングケアラー。
2019年に刊行した、子どものサバイバルブック『生きる冒険地図』(学苑社)は、ヤングケアラーさんの本とも言えます。

 

2020年には、ぷるすあるはの拠点のある埼玉県で日本初のケアラー支援条例が制定され、ヤングケアラー支援も明記されました。ここ数年、ヤングケアラーにかんする行政の動きも盛んになり、メディアで目にする機会もふえています。
今回の企画では、長年ヤングケアラー支援にたずさわってこられた、一般社団法人日本ケアラー連盟ヤングケアラープロジェクト担当理事・立正大学の森田さんを囲んで… コロナ禍のこと、生きる冒険地図のこと、必要な支援やアイテム、学校・教員に期待することなどをお聞きしました。

 

※座談会を経て… 本サイトに「ヤングケアラーのみなさんへ」のページをつくりました。

参加者

・森田さん《も》
(立正大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授・一般社団法人日本ケアラー連盟ヤングケアラー プロジェクト担当理事)

・上原さん《う》
(埼玉県立大学で養護教諭の養成に携わる・ぷるすあるはのプロボノスタッフ&チームクフリフのメンバー)

・チアキ《チ》 自身もヤングケアラー
・キタノ

(座談会は、2020年9月 オンラインツールで行いました)

 


家のことをすっぽり離れられる時間が大切な対処法。
だけど… 学校が休みになり、自分の安全スペース、息をする機会がなくなりました

 

記事の最初はコロナ禍のことについて取り上げます。

—コロナ禍でのヤングケアラーさんたちの生活はどうでしょうか…? 集まっている声などありましたら教えてください。

 

《も》

・休校になって学校に行けなくなっていること自体が大変です。
楽しみや友達がとっても大事で、それらがなくなることの影響で、ストレス発散に制限がかかっているというのが、イギリスからの報告や、日本でも子どもたちの話からでています。
ヤングケアラーの支援は、介護負担を減らす、とうこととともに、楽しみをふくめた息抜きの機会をつくっていくことが大事になります。
重たいケア負担を背負うと、疲れたり、忙しかったりで学校に行けなくなってしまうことがあります。教育の参加の機会が狭まる課題です。また、ストレスや心身の疲れから精神的な健康にも影響がでることもあります。

 

・家族のケアをしながらも、なんとかやっているお子さんたちに話をきくと…
「自分の時間があること」
「家のことをすっぽり離れられる時間や機会があること」
が大事で、なんとか対処の術になっているとお話されます。
忙しいなかでも、趣味やちょっと休める時間。クラブ活動が楽しみな子はそこに参加できているとだいぶちがうし、逆にそれがなくなるとしんどい。
なかなか家のこと話せる場もないので、ケアのこと話せる友達も大事…ですが、ケアのことなどなんにも関係なく話せる友達がとっても大事です。アイドルのことでもなんでも、家のことからすっぽり離れられる時間や機会です。
学校が、家のことからすっぽりと離れて、安心して、楽しんでいられる場所となっていることが、子どもたちの助けになっています。ですので、COVID-19で、学校に行けなくなっていること自体が大変です。

 

・(ケアしている親御さんが)病院に行ったり作業所などに行く機会が減って、家にいると、サポートする子どものケアも増えます。大変な状況に一緒にいる負担や、対応の負担は増えるのに、ケアの場から離れて、自分の安全スペース、息をする機会がなくなっていて、バランスをとる術がない…ストレスが増加しやすい状況にあるのかなと思います。

 

<リトルチアキもそうやったなあ…>

 

 

(日本ケアラー連盟は、新型コロナウイルスに関する緊急アンケートを実施し、集まっている意見をもとに緊急アピールを2020年3月27日に発表、さらに「ケアラーのバトン」緊急引継ぎシートを4月16日に発表しました。6月2日付の「新型コロナウイルス感染に係るケアラー(家族介護者等)と要介護者等への緊急支援対策についての要望」のなかでは、ヤングケアラーへの特別な配慮と支援対策についても触れられています。)

命にかかわるような感情面のサポートは、大人がすぐにかかわらないといけない非常事態なのに、まわりから見過ごされやすいです

 

上述のケアラーさんへの緊急アンケートでも、共通するニーズはあるけれど、だれがだれをケアしているか(子ども、親、きょうだい、祖父母…)、どんな状況でどんなケアを担っているかで、すごく多様な声があることを感じました。
子ども、若者のケアラーに特徴的なテーマもあると思います。アンケートにはあまりでてきませんが…。そもそも声をひろう難しさもあります。

—ぷるすあるはがテーマにしている「精神疾患をかかえている親」をケアするヤングケアラーさんで起きやすい特徴があるのでしょうか?

 

《も》

・(上述した調査で)ケアを行っている相手の状態は、母親では「精神障害」の割合(51.8%)が、父親では「依存症」の割合(21.2%)が他にくらべて高くなっていました。
精神疾患の親をケアする子どもでは、ケアの内容に特徴があり、「家事をしている人が多い」ということと「感情面のサポート」がでてきます。

 

・感情面のサポートは、ともすると、まわりからは、励ましているとかの軽いケアに見えがちです。ですが実際には、リストカットや自傷行為、自殺の企図など… 命の危機にかかわるような状況を、声をかけたり見守ったり、背中をさすって大丈夫と言っていたり… 負担がものすごく大きいです。大人の人でもその状況を見守りつづけるのは大変ですから。
だけど、まわりからは見過ごされやすいことがあります。

 

・(世界に先駆けて、1980年代末から、ヤングケアラーの実態調査や支援が行われてる)イギリスでは、命にかかわるようなケアは必ず大人が関わらなければいけないケアで、子どもがするのは不適切、任せてはいけないとされています。すぐにサポートを入れなさい、と。
日本ではまだそういった社会的な認識が高まっていません。

子どもの行動範囲はせまい。大人の生息地を知って、大人を見つける冒険へ

 

「ヤングケアラー」という言葉を目にする機会がふえたのは、ここ数年のように思います。
ぷるすあるはでも、昨年出版した『生きる冒険地図』のなかに、ヤングケアラーの言葉を使いました。
主人公は、中学生ミルと小学生イルのきょうだい。家の大人の人はいろんな事情で頼ることができず… 家事や学校の準備、きょうだいの世話など…子どもたちがやっているという設定です。

 

チアキは「名前を知っていることで、検索できるかもしれないので、ヤングケアラーという名前を書いてみよう。検索して自分だけじゃないってわかったら、もしかしてほっとする子がいるかも」とその意図を語ります。
この座談会にさきがけて、森田さんとヤングケアラーさんたちとの意見交換の場で、コロナ禍の様子に加えて、『生きる冒険地図』についての声も集めてくださっていました。

 

—ヤングケアラープロジェクトのメンバーや、ヤングケアラーさんたちとの情報交換の場で、『生きる冒険地図』への関心をもって話し合ってくれていたとお聞きしました。

 

《も》

・苦しい、大変、なんだけれど、「大変だ、はあ…」だけではなくて、生き延びていくためのサバイバルスキルを身につける「冒険」ということばで、わくわくする提案になっているところが、とってもいいな、素敵だな、という声がでました。
特に、「大人を見つける冒険」になっているところに、みんなすごく興味をもって見ていました。
大人がどこにいるのか…? 子どもの行動範囲は狭く、学校とご近所くらいで、見取り図がないので… 「大人の生息地」というのは面白いなー、いろんなところにいて、見つけるのが面白いなと。

 

<生きる冒険地図(p16-17)大人をみつける冒険1>

 

・子どもは、「知らない大人についていっちゃいけない」と言われているので知らない大人には警戒心もあって、余計に大人につながりにくいです。「危険な大人をみわける」のページで、危険な大人、要注意な大人と安全な大人のガイドになってるのが、なるほどーと思います。
話せそうな大人が見つかっても一回でうまく通じるとは限らない… 相性もあるから、4人目、5人目… と粘り強く、信頼できる大人を探していこうと書いてくださっているのが嬉しいですね。まわりに自分のことを話した時に、「お手伝いして、偉いね」と言われて、あーわかってもらえてないなと、それで諦めてずっとだれにもつながってない、という人もいるので。

 

 

ヤングケアラーをとりあげて書いていることも、ヤングケアラーさんたちにも有益な情報になるのではという声もいただき、チアキの意図と重なっていました。
別の視点では、子どもの発達年齢も考えておく必要があり、年齢にあわせての大人の生息地、大人の見つけ方があるのではという意見もありました。小学生と、中高生とでは動ける範囲がちがっています。「役所や精神保健福祉センターの情報は小学生ではちょっと難易度が高そう。小学生だとほぼ学校が中心なので、学校の先生などの学校の案内がもっとあるといいかな」という声もありました。この先のウェブでの発信もふくめて、工夫していきたい点です。

 

 

小さい頃から、助けてもらう、助かった、という経験値が積み重なっているといいな…

 

《チ》

・小学生の頃の行動範囲でいうと…
私は、小学校の低学年の頃には、近所の交番に下見に行ったりしていました。
家の中に暴力があって包丁が飛び出すようなこともあったので… なにか事件が起こる前に止めてもらえるんじゃないか…という期待もこめて…。毎晩交番までの道のりをシミュレーションしたりもしていました。
学校では、「家の中のことをふれてくれるな…」と思ってましたし、SOSを出さないし、手を差しのべられてもふり払ったかもしれません。
ただ… 地域柄、家族に病気の人がいる家や、ひとり親の家も多くて、「自分の家だけじゃない」と知っていたのは心強かったかなと思います。

 

《も》

・(ヤングケアラー は)実際には結構いらっしゃいます… きょうだいに障がいがある、親が病気、がん… 自分の家だけじゃない。
だけど学校だど、なかなか子ども同士では、「自分の家だけじゃない」ということがみえなくて、「自分ひとり」「他とちがう」…とそこがつらいです。
また。危機のときのプランを子どもと共有しておく必要があるのではと思っています。
家が大変なときにだれに言ったらいいか、というのがわかっているのはどうですか?

 

《チ》

・はい。ぷるすあるはでは「こまったときカード」というのを作っています。
具体的に決めておくことが大切で、それもその子の行動範囲のなかで助けをもとめられないと意味がないと思っています。
ピンチのときは頭が真っ白になって、そういうことを考えられないので、なにもないときに決めておけるといいです。
うちは…複雑な家庭の状況を説明すること自体も難しくて、だれかに助けをもとめることは諦めていました。この状況をわかってくれる大人がいるわけがないと思っていました。
「こまったときに相談できるところ」を知る機会があれば、興味はしめしたかもしれません。実際のアクションはおこさないかもしれないけど、こういうところがあると、知っておくことは、心の備え、お守りみたいになるかもしれません。

 

<こまったときカード 110/119カード>

 

ぷるすあるはでは、最初の絵本をつくった頃から継続して、「困ったときカード」「きんきゅうのときの110/119カード」をつくっておく提案をしています。チアキ自身の子ども時代の体験と、精神科で働いてきた経験からきています。

 

《も》

・イギリスでは、こまったときカード的なものとして、「支援プラン」が作られています。自治体とも協力しあいながら、ヤングケアラーの支援をするという法律があるので、親御さんの病気の状態が悪くて、家の中が混乱していて、お子さんが一人でみているような状況のときには…

<ここにSOSを出す→ちゃんと大人を駆けつけさせる>

というのが計画の中に入れてあります。

 

《チ》

・小さい頃から… 助けてもらう、助かったという経験値が積み重なっているといいな。思春期くらいになってもためらわずに助けを求められるといいな。

 

《も》

大ピンチのときは交番もありとして…交番か学校か。
高学年になって、知られたくないとか恥ずかしいとか、学校ではちがう自分でいたいとかの気持ちが強くなる前に…学校で、低学年の頃にかかわってもらえるといいなと思います。

 

《みんな》

小学校低学年からですね。

大人の感度をあげる、気づける大人がまわりにたくさんいること

 

《も》

・学校でのかかわりはすごく大事だと思っています。
就学前までは保健師さんのサポートがあっても、小学校入学のところで切れてしまいます。
家の状況が学校にも伝わりづらく、子どもががんばってしまいます。
保健室、学校や図書室に『生きる冒険地図』があるといいな、子どもがひとりで読むよりはまわりの大人の人といっしょに考えられるといいなと思います。

 

《チ》

・大人が読むことで、子どもが実はこんな冒険をしなきゃいけない事態になっている、と知ってもらえるだけでもちがうのかな。

 

《も》

・(子どもを)「保健室に呼び込む?保健室につながっていく何かがあったらいいのでは…? ポスターなど?」「『保健室の先生にこういうことを話して大丈夫だよ』という情報が得られるのが何かないかな?」という話もでていました。

 

《う》

・小学校1年生は、学校探検があって、保健室に来てくれた時に「こまったとき来ていいよ」といった説明もします。
私が以前養護教諭で学校現場で働いていた頃、自分は(子どもの背景に)関心のある養護教諭だったと思いますが、「家が大変なのかもしれない」「家のことにかかわるのはむずかしい」とあきらめているところがあって、「ヤングケアラー 」といった認識はなかったです。情報もなかったです。
そのため、教員に感度をあげてもらうことが必要だと思います。
研修の機会…(ぷるすあるはの)絵本をつかった研修なんかもふくめて、あるといいなと思います。絵本を置いてくれているところもありますし、以前よりは、子どもの背景に関心のある養護教諭が増えてきているのではという印象があります。

 

《も》

・保健室で…
心身の健康を介して子どもや家庭のニーズがみえてくる
心身の健康を介して子どもや家庭にかかわれる
それはありがたいです。
埼玉県では、今年、ケアラー支援条例が施行されました。
現在、会議で具体的なことが話し合われていて、支援方針と支援施策の最終案がまとまるのは、来年1月頃です。ヤングケアラー支援で必要なことを、意見としては取り上げてもらっています。
管理職の理解!…それがないと養護教諭もSSW(スクールソーシャルワーカー)も動きづらく…。研修プログラムの一環にヤングケアラー支援、親が精神疾患の子どもの支援も組み込まれたらと思います。

 

《う》

・研修は、そのときどきのトピックスで、全ての養護教諭が集められての研修などがあります。児童虐待の研修や、今ならCOVID-19など。養護教諭は、学校に必ず一人いるので 管理職と一緒に参加することもあります。ヤングケアラー単独では研修会開催は難しいかもですが、たとえば心身の健康問題として取り上げるなど、なにかのテーマとセットで行うことも考えられます。あるいは、養護教諭とスクールソーシャルワーカーの合同事例検討会や研修会の企画も考えていきたいです。

 

《も》

・イギリスでは、各学校にひとり、ヤングケアラー支援担当がいます。
家の心配があったら「この先生に(相談してね)」と子どもにも親御さんにも知らせています。
日本でも将来、養護教諭、学年主任… など、将来的に担当していただけたらと思います。藤沢市は、特別支援教育コーディネーターが、ヤングケアラー支援も担当する方向で考えてくださっています。
特別支援コーディネーターは、そもそも障害をもつ子どもだけでなく、さまざまな背景のお子さんの支援の役割があります。例えばLGBT。特別な配慮が必要なお子さん・ヤングケアラーのお子さんもかかわってもらえる可能性があるかも…と思っています。

 

 

養護教諭と保健師、教育と保健がつながって…

 

—小学校の入学の前後をつなぐ取り組みについてはどうですか?

 

《う》

・養護教諭と保健師が情報交換会をもっている自治体もあります。家庭の中の詳細までは難しいかもしれませんが、保育園・幼稚園と学校との協議の場で情報共有できるところもあります。

 

・ですが…養護教諭と保健師がどうつながるか? は課題です。
文科省と厚労省…。どうつながったら? 過去に麻疹が流行したときなど、厚労省から文科省経由で学校に通知がきて…切羽詰まってつながった例でそんなこともありましたが…。
いっしょに共有する場があって、子どものことを考えると、それぞれの立場でいろんな意見がでてきます。話すといろんなものが生まれてくると思います。

 

《も》

・南魚沼市では、割と小さい市ということもあるけど、保健師の方から学校・養護教諭と情報交換したいとアプローチして、結果的に情報交換が有効だという声がでています。
(要保護児童対策地域協議会(要対協)にあがっていれば情報共有しやすいですが)要対協にあがっていないお子さんでも、厳しい状況のお子さんはいます。特に学校からは見えにくくて…。保健師は、母子の健診からのお付き合いだったり、家庭訪問もするので、家庭の状況がみえます。保健師と学校がつながる枠組みができるといいなと思います。

 

・埼玉県の条例は、福祉部地域包括ケア課が管轄です。
学校関係も保健関係も入っています。つながってくれないと、こぼれおちてしまう! 申し送りのシステムをどうつくるか、可能性はあると思います。

 

《う》

・(埼玉県で2020に行われる)高校2年生の調査をできること自体がすごいです。きもちは一緒なので、今こそ、枠をこえてつながれるといいなと思います。

 

※追記
》埼玉県ケアラー支援計画のための ヤングケアラー実態調査結果1(11/25)が公開になっています。

(埼玉県内計193校、調査対象は調査時点の高校2年生55,772人、回答者数 48,261人、回収率:86.5%でした)

 

 

<第1回埼玉県ケアラー支援に関する有識者会議資料より>

 

<共同通信の記事で、「厚生労働省は4日、病気や障害などのある家族の介護をする18歳未満の子ども「ヤングケアラー」に関し、全国の教育現場を対象にした初の実態調査を12月にも始める方針を固めた。」と報じられています。(10/4(日) 21:23配信)>

子ども(ヤングケアラー )の存在は… いないと思うと見えない
いると思って探しにいくといくらでもいます

 

ぷるすあるはを始めた当初より… 特に絵本や活動を届けたいエリアに2つをあげていました。
ひとつが学校、特に養護教諭。そしてもうひとつが精神科の医療機関、特に精神保健福祉士(MHSW*)です。子どもがケアしているお父さんやお母さんがかかっている精神科の医療機関からのアプローチです。

*MHSW:Mental Health Social Worker  2020年7月に日本精神保健福祉士協会の英文表記が、PSWからMHSWに変更になりました

 

《チ》

・うちの家は… 実は医療とはずっとつながれないままに今にいたっています。
(精神的に不安定だった)親がつながっている大人を知らないですし、相談できるところや社会資源も少なかったと思います。
そんな経験もあって…
自分が精神科の診療所で働いているときには、家族構成で子どもがいると、子どもがきやすいようにして、子どもがきたら子どもらしい時間が過ごせるように工夫したり、こまったときには相談してもいいよ、を伝えています。

 

《も》

・病院のスタッフが、(患者さんに)子どもがいるかしら、子どもの状態がどうかしら…?
とお子さんもふくめてみていただくような、そういうことを病院の中でもしていただけるといいですね。
MHSWがそれを担えるのでは?というのはどのあたりからそう思われますか?

 

—生活をみていく視点。生活をみていくと、家族、子どもが見えてくると思います。制度やサービスやネットワークを活用して家族全体を支援していくところも、MHSWの方の強みが生かせるのかなと思います。

 

《チ》

・病院での子育て支援、子どもの支援。
まだ数は少ないけど、広がるといいなと思います。
病院で、子育てが大変、ということをなかなか言えない雰囲気があります。それを、それを変えていけるといいのかな。MHSWでもコメディカルでも、子育ての相談をできる環境がいいな。

 

・診療所でインテーク(予診)をとってたら、子どもがいる患者さんは結構いた印象です。
必ず、子どもの名前、学年をきいていました。年度替りや進学、声かけのきっかけをつくってキャッチアップしていくと、名前づけが大変、PTA自信がない…といった話がでてきます。
ニーズはあったと思います。
子どもの存在は、いないと思うと見えません。いると思って探しにいくといくらでもいます。

 

《も》

・まずクリニックから、キャッチできる可能性があるかもしれません。
病院で、DrからのオーダーがでてからMHSWがかかわるシステムだと、オーダーされたことだけにかかわることが多いです。退院支援や単身生活の支援など…なかなか全体のニーズはとらえられていないかもしれません。もともと、統合失調症で病状の重い方、一人暮らしの方、当事者の人権擁護、といったかかわりが多く、子育てしている当事者の方との接点はあまりないのかもしれません。だけど、生活をみる、というのは本来はもっと幅広いこと…。

 

・こんな方がいらっしゃいました。
離婚してお子さん2人の子育てで奮闘していくうちに調子を崩された方で、なんとか受診につながって、入院をすすめられたけど…子どもが心配で断ってしまいました。そのときに、家のことを、Drにちゃんと聞いて欲しかったとおっしゃっておられました。そこをキャッチしてもらえていたら、MHSWさんにつないでもらえたのかな、と。

 

・今回、MHSW協会の企画で、ハンドブック(子ども虐待に気づくためのソーシャルワーク~精神保健福祉士の強みを活かす~)を全構成員へ情報提供する機会は、画期的です。

<森田さんもプロジェクトチームのメンバーのひとりで分担執筆されています>

 

 

《チ》

・目の前に子どもが見えてくると、ほっとけないです。
実際に家で子どもたちはご飯を作っていたりします。息抜き、子どもらしい時間をなんとか提供したいと思います。お休みの日でも家族みんなで出かける機会ももちづらいから… デイケアのキャンプに子どもも参加okにしたり。そうするとBBQだけでも大喜びの姿があります。
関係がいいときにこそ、他の機関にもつなぎます。

 

《も》

・子どもも連れてきてもいいクリニック、いいですね。

 

チアキの診療所でのエピソードは一般的ではなく…
「精神科で子育て支援」はなかなか一般的ではないなというのが実際のところです。子どものへのまなざしがない医療機関も多いと思います(制度的、診療報酬的な裏付けはなく、マンパワーも時間も限られている現状です…)。
その中でも、独自の取り組み、先駆的な取り組みをされている医療機関も、数は少なくてもあります。できるところから、一箇所でも多くのところでと思います。

やっぱり、ひとりでかかえこまずに…
ひとりでがんばらなくていいんだよ…
ということを伝えていきたいです

 

 

《う》

・学校への期待について教えてください。

 

《も》

・学校は、家から離れて休む… というと先生方に怒られかもしれないけど…
ヤングケアラーの人たちが「自分の息をする場」ということは知っておいてほしいです。
家が大変な状況をかかえながら、実は多くの人はがんばって学校に適応しています。
だけど、疲れて居眠りをしたり、勉強が手につかなかったり、忘れ物しちゃったり、やる気があるのかな?と見えることもあります。そのとき、一方的にしからないでいただきたいです。
なにがあったのかを聞いていただきたいです。
そういう状況でがんばってることを先生方がわかってるだけで、子どもたちの学校への行きやすさが随分ちがいます。

 

《う》

・「ヤングケアラー 」の言葉は一般的に使ってもいいんですか?

 

《も》

・はい、ぜひ。
言葉があることで、言葉を知ることで、認識がかわる、お子さんへの見方がかわることがあります。共通認識がもてると心強いです。

 

《う》

・学校現場ではまだご存知の方はまだそう多くないように思います。「ヤングケアラー」のことを知ったときに、「今までにかかわったあの子はもしかしたらヤングケアラーだったのでは?」と振り返る養護教諭もいらっしゃるのではないでしょうか。
子どもたちの何かしらの変化に気づいた時には、子どもたちの背景に、様々な事情があるも目を向ける必要があります。なかには、子ども本人に対する働きかけだけでは問題の解決が難しいこともあります。まずは、子どもの意向を尊重しながら、子どもとその家族など周囲についても支援を進めることが大切だと思います。こうした支援には、学校内の対応だけでなく、外部の人材資源の活用や、関係諸機関との連携・協働が不可欠であることを実感しています。
養護教諭を目指す学生のみなさんにも伝えていきます。

 

—最後にサイトの読者のいろんな立場の方へ

 

《も》

・そうですね……………
…ケアをすることはすごく特別なことではなくて、だれもが、人生のどこかで、だれかをケアをしたり、ケアを受けたり。…生きていくうえでとても大切な行為です。
だけど。
ひとりの人に負担がかかりすぎると…問題が起きてきます。ひとりでかかえこまずに、近くのだれかに相談をしてもらいたいな、と思います。

 

《チ》

・ヤングケアラーだったからこそ、今の子たちに、ひとりでがんばらなくていいんだよ、ということを発信していきたいと思っています。

 

座談会を終えて

 

Zoomの画面越しではありますが、ほわわわわんとやわらかい空気が流れる座談会でした。
森田さんも上原さんも… やわらかい語り口が印象的で、あ〜子どもたちは、こんな雰囲気やったら話しやすいやろなあと思いました。もしかしたら子どもの頃、なにか少し話せたかもしれないなあ…と(やっぱり話していないかもしれませんが)。

 

もしもチアキが今の時代に子どもで「ヤングケアラー」という言葉に出会ったらどうだったか?

 

だれかに相談するかどうかは別として、名前を知って、調べて、自分ちだけじゃないって知ることは、そうなんや〜って思うと思います。(ちょっとほっとするかもしれない、と思います。)
家が安心ではないから、納得できたかはわかりませんが。

 

看護学生?くらいの頃に、「コーダ CODA」(Children of Deaf Adults、聞こえない親のもとに生まれた聞こえる子ども)のことを初めて知ったとき、「うちやんけ」と思いました(実際には、聞こえないのは年のはなれたきょうだいで、正確には「ソーダSODA」(Siblings Of Deaf Adults/Children)にあたります)。
いろいろ調査したり支援活動をしている人たちがいることを知って、「ほおお、こんな調査してくれてる人がいるんや」と心強いなと思いました。
そういう経験があったので、「ヤングケアラー」という言葉がでてきたときも受け止めやすかったです。

 

名前がつくことへの違和感や反発を感じる人もいると思いますので…名前がつく良し悪しはあると思います。
ヤングケアラー と名乗るか名乗らないかは、自分で決めていいと思います。

 

私にとっては、ですが、ケアラー、ケアを担う人、という事務的なかんじの名付けは受け止めやすい印象でした。

 

埼玉県の調査は高校生とのこと。画期的と思うと同時に…小学生、中学生の実態も知りたいです。座談会のなかでも話題になりましたが、小学校の低学年くらいから、サポートが入っているといいなと思います。思春期くらいになると家の中に入られるのは抵抗感があるし、いろいろこじらせていることも多いです。こじらせる前に、大人の役割は大人のところへ頼めているといいなと思います。

 

座談会のふりかえりをしながら、ヤングケアラーさんに直接メッセージや情報を届けているインターネットのページは、もしかしたら世の中にないかもしれない、と気づきました。
ないなら作ろう。小さなページを新たに作りました。
ひとりでかかえこまずに。のメッセージがひとりでも必要としている子どもへ届くことを願って。
森田さん、声を寄せてくださったヤングケアラーのみなさん、ありがとうございました。

 

》ヤングケアラーのみなさんへ

 

「子ども虐待防止オレンジリボン運動 新型コロナウイルス感染症対策下における子ども虐待防止に資する活動への助成」を受けて行っています。

》トビラのページへ