「子ども情報ステーション by ぷるすあるは」精神障がいやこころの不調、発達凸凹をかかえた親とその’子ども’の情報&応援サイト

なにもないときにこそ、子どもと大人が安全に出会える場をつくる − 三鷹の子ども食堂・子どもの居場所『だんだん・ばぁ』のコロナ禍のあゆみ

なにもないときにこそ、子どもと大人が安全に出会える場をつくる − 三鷹の子ども食堂・子どもの居場所『だんだん・ばぁ』のコロナ禍のあゆみ
2020年9月2日 pulusu

なにもないときにこそ、子どもと大人が安全に出会える場をつくる

− 三鷹の子ども食堂・子どもの居場所『だんだん・ばぁ』のコロナ禍のあゆみ

 

東京都三鷹市で、2016年より、子どもの居場所・子ども食堂を行なっている『居場所づくりプロジェクト だんだん・ばぁ』さん。
コロナ禍でも、やると決めて、ニーズを拾いながら、柔軟に形をかえながら活動を続けた4ヶ月間の取り組みについて、理事長で精神保健福祉士の加藤さんと、いろいろな形で活動にかかわる9人が参加する座談会で、お話をうかがいました。
そこで見えたのは、地域で子どもたちの育ちを見守る「大人の覚悟」といいろいろな「大人のモデル」。コロナ以前の普段の取り組みのなかにもヒントがありました。

 

座談会メンバー

 

・理事長の加藤さん
・調理担当の森さん、松本さん、鈴木さん(学童、スクールサポーターなど、それぞれに地域での子どもたちとのかかわりがある)
・市職員、生活保護担当ケースワーカーの大塚さんと石原さん
・転居で今は三鷹にはいないまおさん(母子施設で働いてた経験も)
・保育士の石川さん
・娘さんといっしょに参加者として参加したのをきっかけにお手伝いする横田さん
・自分の居場所としてふらふら参加中の江頭さん

 

(座談会は、2020年7月下旬、オンラインツールで行いました)

基本情報

 

『だんだん・ばぁ』という印象的な名前は、ありがとうを意味する出雲の方言’だんだん’と、「いないいないばあっ!」に近い言葉の響きと、「BAR」のように人が集う場…といったあれこれがこもったネーミングです。
活動は都営住宅の集会室を借りて、月2回の子ども食堂と、月1回の学習室(だんだん・らぼ)を開催しています。前者は、就学前のお子さん〜中学生の子どもたちが毎回60-70名、後者は小学校高学年〜中学生7,8人が集まります。
食事代は、子どもは無料、大人は1回300円。運営費は、おもに寄付と会費でまかなわれています。

 

東京都三鷹市は人口およそ18万人。市の最北部をJR中央線が走り、新宿から三鷹駅まで約15分という立地にあります。そこから南に市のエリアがひろがります。学校は、7つの学区に分かれ2つの小学校と1つの中学校で一つの学園を形成しています。だんだん・ばぁには近隣の小学校3校と中学校1校から来ています。児童の半分くらいが中学受験するような小学校から、ほとんど受験しないような小学校まで、同じ学園内でも幅があります。
会場でもある都営住宅は、およそ500戸の規模のとても大きい団地です。

 

 

コロナ禍での活動のあゆみ

 

2020/2/26は、いつも通りに開催。
翌日の2/27、政府からの臨時休校の要請発表があり、三鷹市立の小・中学校全校は、3/2から結果的に5/31まで臨時休校となりました。
これを受けて、だんだんでは、3/4から、毎週のテイクアウトスタイルにきりかえて開催をつづけました。
最初は手作り弁当でメニューはカレー中心。
5/20〜6/24は、助成金をもとに、市内の飲食店からのお弁当のテイクアウトをしました。100食をこえる弁当が毎回全部なくなりました。対面で少しずつコミュニケーションをとり、布マスクや、フードバンクからのお菓子、折り紙やぬり絵なども、一緒に持ち帰れるようにしました。
7月からはまた手作り弁当とし、少しずついつものペースに戻しつつ、今に至っています。

 

》 ホームページ
》 Facebookページ 
活動の様子がリアルタイムにみられます。

 

「毎週必ずある」ということが子どもにとっての安心につながったと思います

 

—3月からここまで、この間の子どもたちの様子はどうでしたか?

 

・突然の休校、学校もバタバタ、現場は本当に大混乱でした。給食がなくなって、最初の頃は、子どもたちが、お腹をすかしてるのがわかりました。見た目は変わりないけど、いっぱい食べる。おかわりをたくさんする。
そして、子どもたち、居場所がなくなってしんどうそう…。
それから時間がたつにつれて、弁当を取りに来る子どもたちが、だんだん安心した表情になってきました。その場にとどまって話したい、というかんじになってきました。最近はおかわりも減ったし、友達と遊ぶ方に気持ちがいってお弁当を忘れて帰ってしまうエピソードもあって…お腹は満たされてきたのかなと思っています。お腹も心も満たす活動なんだな、ということを感じています。

 

・最初は不安もあったけど、やろうって決めて。4月から7月の変化をみていると、毎週やってきたことが、子どもにとっての安心になったと思います。

 

・その後、学校が再開になって、学力の差もでていると思います。校長もびっくりするくらいに。でもそれは子どもの様子をみていたら想定内です。勉強の前に、食べていない子もいるし、勉強ができない環境の家もあります。ですが、そこまで学校側も気が回らないのも現状だと思います。学校もコロナ対策で二転三転、校内の消毒や、これまでなかった仕事もあれこれも加わって、教員もあっぷあっぷです…。

 

どうしよう?ではなく「やる」だったので、どうやるか考えみんなで動きました

 

NPO 法人全国こども食堂支援センター・むすびえ、こども食堂ネットワークのアンケート(n=231)*では、3月の時点で、約35%が中止延期、約40%が弁当や食材の配布・宅配になっていました。
・「人が集まること」が難しく、公共施設を中心に「会場の確保」が課題となっている。「食材等の配布・宅配」は、通常のこども食堂の開催より、金銭的な負担が大きく、食材や資金などの支援が求められている。
・新型コロナウイルスをめぐる対応のなかで、通常のこども食堂開催時より、困難な状況にある子どもやご家庭とつながる機会が多くなったが、十分な支援を届けられない現状がある。
などが、アンケートから指摘されています。

 

運営をどうするか、不安や議論もあったのでは…と思いますが、だんだん・ばぁでは、テイクアウトに形をかえて、普段の月2回から毎週へと頻度をふやして対応しました。

 

—毎週つづけてこられてどうですか?

 

・不安もあったけど、加藤さんが「毎週やろう」と。どうしよう?ではなく、やると。なので、ついていきます、となりました。私たちにも元気をくれました。

 

・ほんとにやってよかったです。いろんな場や活動が閉じて行ったなかで、覚悟を決めたらできると証明できたのは大きかったです。ずっと開けていて、コミュニケーションが取れたことで、子どもたちの信頼を少しは得られたように思います。「加藤、本気じゃん!」て。

 

・(団地の協力、地域の協力を得ることについて…)行政的には、リスクがある話にはなるので、(役所の中では)まわりには正直いい顔はされないところもありますが…。加藤さんが「やる」って決めたから、じゃあ、どうやってやるか、行政がどこまでやれるのかという方向で考えました。
地域の方には、もともとの関係性もあって、続ける後押しをしてもらっていたと思います。地域の飲食店の助けになりたい、という思いもありました。

 

短期間のうちに決断して、助成金をとり、地域の飲食店からお弁当を買って、子どもたちへ無料で提供するという仕組みをつくりました。
メンバー、地域の飲食店、団地の人たち… 協力しあってこの時期を走りつづけることになります。

 

 

いつもとちがう形での開催で気づいた子どもの姿もあったと言います。
例えば… 弁当の種類があると、選べるワクワク感があり、子どもたちが時間をかけて、真剣に悩んで弁当を選ぶ姿。子どもが食べるものを自分で選べる大事な体験。
部活や習い事がなくなって時間があいたことで、普段は来られない子もきていました。「美味しかったから食べさせたい」といって、弁当を親のために持って帰る子もいました。1人で5食持って帰ったことも。

 

学校側も精一杯の取り組みとして、保護者が希望すれば給食のかわりのものを配ることを行いました。しかし、個包装されたパンや限られたものをただ給食を取りに行く、というスタイルは…2度目には希望者がありませんでした。
実際には食事に困っていた子はたくさんいたと思われますが…。親への呼びかけで、親自身に事情があったり、まわりの目を気にする人もいたかもしれません。

 

 

「だんだん・ばぁ、なくならないよね?」の子どもの言葉で覚悟が決まりました

 

まわりに心配の声があっても、加藤さんがやると決めたことで、ついていけた、とみなが口をそろえます。

 

—つづける「覚悟」の原動力はどこにあったのでしょうか?

 

・2月の最後には、コロナの話が徐々にでききていて…
ある子に、「COVID-19のせいで、だんだん・ばぁ、がなくなたったりしませんよね?」ときかれたことがありました。
私の覚悟はそこなんです。
子どもがこんなに不安になってるときに、やらないでどうするんだ。
できない、となったら…「なくならないよ」と言ったことがウソになる。 つづけないとウソになる。そこだけですかね。

 

・学校が急になくなって、居場所がなくなって、コロナ禍の「ステイホーム」では、だれもが家庭に振りもどされました。給付金もそうですし、「家庭」という単位でいろんなことを考えないといけなくなりました。
でも家が安全ではない子たちも山ほどいて、そういう子はどうしてるんだろう…?

 

・ごはんは、ゴールではなく、子どもたちとつながるためのひとつのツールです。
つながりをもち、変化をみる。すると次に見えてくることもあります。コロナは閉塞的だけど、だんだん・ばぁの活動に関して言うと、発展的でもあります。
子どもに元気でいてほしいというのはかかわるみんなの想い。
お腹を満たすと同時に、見えないみんなの想いがつながったらいいな、みんなが気持ちを持ちよってくれる居場所になったらいいな、と思って活動しています。

 

ここは、家庭でも学校でもない、第三の場

 

だんだん・ばぁは、かかわる人の役割を固定しない、ルールを作らない場です。普段の活動では、いろんな大人が、各々のペースで参加し、調理を手伝ったり、受付をしたり、子どもと遊んだり…と自由に動いています。
今日の座談会のメンバーも、バラエティに富んでいます。

 

—あらためて、だんだん・ばぁ、はどういう場ですか?

 

・ここは、家庭でも学校でもない第三の場。ほんとにいろんな大人がいます。お兄さんお姉さん年代もいれば、親世代もいます。ずっ〜とかくれんぼに付き合ってくれる大人とか…。

 

・「靴を並べなさい」とか「プリントをちゃんと…」とか、自分はそういうちょっと口うるさい大人の存在です。

 

・今で言うと、学校が再開して、低学年の子も6時間授業になったりしています。よく座ってられるなあ…というくらいに、すごくストレスがたまってというような状況です。
ここでは、ここでまで、ルールに縛られる、ということにはしたくない、と思います。なにかが起きたときも、ルールではない解決の仕方、話し合いをしたいと思います。子どもたちには、考えてよね、というメッセージを伝えたいです。

 

・子どもと団地で接する機会が多くて、子どもたちからいろんな話をきくようになってきています。「家の中がごたごたしてる。お母さんが体調悪くて心配……とか。勉強中ずっとそばで見られてて間違えるとおこられる。たたかれる。ヒドイことばをかけられる。家に帰りたくない…など。」話してくれるのはいいけど、子どもが安心できる大人でいたい、と思っているけれど…。何も言えない、家庭にふみこむことはできない、家に呼べてもそこでなにか問題になったら…。

 

・私は自分の居場所として、大人とかの意識もなく、ふらふらと参加しています。

 

 

解決策がよくわからないです…

 

親御さんとのかかわりでは、活動に協力くださったり、相談だけにいらっしゃる方もいます。体調を崩されて育児ができないとか、病院受診がうまくできないとかの相談が、メールやラインに寄せられたり、電話や対面での相談が入ることがあるそうです。

 

お話をお聞きしていて、ここにつながっている子どもにとって、だんだん・ばぁが素敵な場になっていることが伝わってきます。
同時に…子どもの居場所、子ども食堂でテーマになることとして…
届けたいところになかなか届かないという難しさがあると思います。

 

—つながりのない家庭、子どもへ、取り組んでいることがありますか?

 

・口コミでのひろがりは素敵だし大事だけど、コミュニティにのれてない、閉鎖している家庭、地域からかかわりにくい家庭…  課題なんだろうなと思います。

 

・(例えば生活保護でかかわっているご家庭で…)難しいです。解決策がよくわからないです。
以前の地区のときは、自分がまだ、だんだん・ばぁのことをよく知らなかったというのもあります。
知っていても、そもそも子どもに会えないこともあります。「行ってみたら」といえる関係を作れたら… ここにこそ届いてほしいと思う家庭もありますが…。
例えば、親が生活保護と言いたくない…家庭訪問をすると子どもに生活保護受給が伝わるから、「私が伝えます」と言ってくれるけど、実際に伝えてくれているかはわかりません。

 

生活保護のケースワーカーひとり、一機関だけで家庭にかかわることの難しさ、限界の話題にもなりました。

 

役所の人が地域の社会資源、居場所などの情報をすべて知っているわけではありません。
子どもの方が、自分でインターネットにアクセスをして、情報をとれることもあります。
コロナ禍になってから、毎月発行しているだんだん・ばぁ通信のホームページへのアップにくわえて、サイトのなかに『情報コーナー「お助けBOOK」』をつくりました。
新たに団体のLINEをつくり、子どもとLINEでつながれるようにして、つながっている子には手紙を送りました。
そして、学校の協力があって、学校から保護者へ一斉メール配信をしてくれました。それでも…メールをみない保護者もいて、すべての家庭には伝わりません…。
デジタルで、アナログで、試行錯誤がつづきます。

 

今、コロナの閉塞感で苦しい人にも…逃げ道もふくめていろんな対処法を知ってたらいいよ、と伝えたいです

 

座談会では、ぷるすあるはの著書『生きる冒険地図』(学苑社)を切り口に感想をシェアしたい、そこからはじめたいと提案がありました。というのも…この本が、だんだん・ばぁと重なる部分がある、という視点がありました。

 

・『生きる冒険地図』は、どこからでも読めて、どう読んでもよくて…
だんだん・ばぁも、いつ来てもよくて、なにをしてもよい場。そういうところが似ていると思っています。

 

・『生きる冒険地図』は、安全なときに読むから、いざというときに使える本。かわいいな、からでも、お守りみたいに持ってもらって、困ったときに、そういえばあのページ…みたいに開いてみる本。
だんだん・ばぁも、安全だったり、何もないときに子どもと大人がつながっているから、だんだんであってる顔見知りの○○さんだから、いざというときにポロって話せる。
なにかが起きてから「困ったことない?」と役所の人が聞いても、子どもは言わないと思うんです。なにかがあってから出会うのでは遅い。子どもと大人が安全に出会う場をたくさんつくっておくことが大事だと思います。

 

 

だんだん・らぼー高学年の子が集まる場—では『生きる冒険地図』をその場に置いているそうです(3-7月の間はお休みしています)。
座談会では、大人のみなさんが、本の感想や印象に残った内容をあげてくれました。

 

・大人の自分が読んでも、うなずけることがあった。大人ってカンペキじゃないとか、気が楽になった。子どもの頃に知れたらよかった。

 

・「全部はなさなくていい」「自分を守るウソはついていい」「イヤなことを行って来る大人がいる」とかがはっきり書いてあるのが、大事だなと思いました。

 

・事前に、この本の情報や知識をもってたら、いざというときに危険を回避して自分を守ることにつながる。夫、成人した娘は、こんな情報が必要な子がいるなんて…と驚きやショックを受けていました。全く関係のない、関心のない大人の人、(主人公の)ミルやイルが身近な存在ではない大人にこそ読んでほしい。

 

・以前働いていた母子支援施設でも、大人の役割を課せられている子たちがたくさんいました。外国籍の方で、親が学校からのお知らせを全然読めないといったことも…。短期間で退所してしまうので、密に話せる場や時間があったらよかったです。困っていることに気づけていない子もいて、どうやってアプローチするかにも目をむけないといけないです。

 

・絵のタッチがいいなと思いました。ココにきている子がすぐに読めるわけではないかもしれないけど… ミルは「なんで三つ目?」とか話せるかなと思います。本のなかに、作者チアキの三つ目の意味が書いてありますが、子どもはちがう三つ目を言うんじゃないかな? 「かぞくへのキモチはイロイロ」のページは、その子にあったところを使えるのではと思います。

 

・ページの「100のやりたいことリスト」がいい。自分も書こうと思います。

 

・道筋がみえないと大人だって不安。コロナで大人も不安…。こういうヘルプの仕方や相談できる場があると知っていると、大人も安心して子どもたちを見守れるかなと思います。

 

・逃げ道もふくめて、いろんな対処法を知ってたらいいよ、と伝えたいです。今、コロナの閉塞感で苦しい人にも… いろんな方法があることが伝わる、いいきっかけになると思います。

 

・中学生くらいになると、困っていることを隠して、発信しづらい子が多いです。養護の先生や、スクールカウンセラーから…アクセスできたらいいですし、大人に渡すのもひとつかなと思います。

 

・子どもに渡すとなると、関係性によるけど、重い(いろんな事情を抱えている)家庭ほど、躊躇[ちゅうちょ]するかもしれません。

 

 

大人の思い込みで子どものSOSを拾えなくなっている場面があるのではないでしょうか?

 

『生きる冒険地図』には、子どもたちにどうやって届けたら? 主人公のミル、イルのような子どもにどう使ったら? といった質問が寄せられることがあります。使い方を作者にききたいというリクエストもあります。
ですが…
「わたせないかも…と感じるのは、大人の方に思い込みがあるのでは?」と加藤さんはさらりと言います。

 

・子どもは子どもの受け止めがある。こう受け止めるのでは、という思い込みが大人の側にあることで、子どものSOSをすくいあげられなくなってる場面があるのではないでしょうか。私はこれが好き。私たちが渡したいから渡す。子どもがどう受け止めるのかはわからない。

 

——もし、私(チアキ)が子どもの頃にこの本があったら…
ちょっと顔見知りくらいの大人から急にこの本を渡されたら、ちょっと中身を見て手をふりはらうかもしれない…
自分のペースで読みたいなと思います。
これは子どものキャラや、渡してくれる大人の人との関係性によると思います。その場では手を振り払いながら、あとでこっそり読んでるかもしれません。その子どもの気持ちがどれくらいかというのは、表面上の言葉だけで測れないから、大人がめげないことは大切です。
相性もあるし、子どもも大人も人間だから、うまくいくときもいかないときもあります。大人たちも、もっと気楽にきらわれてほしいと思います。(チアキ)——

 

 

・『この絵、かわいくない!?』〜からでいんじゃない?

 

これは江頭さんの言葉。
渡すことに慎重になる感覚もわかりますし、それをひょいと気軽にこえるかんじも、どちらも、いろんな大人がいるかんじでよいと思いました。
座談会をとおして、大人の自分の側に思い込みがあったのかも…というメンバーさんの声もありました。
そして、「この絵、かわいくない?」の気軽さは、だんだん・ばぁへの声かけ「ごはん、食べにおいで?」の響きと重なるようにきこえました。

 

なにかあってから出会うではおそい…
子どもと大人が安全に出会える場を

 

最後に、だんだん・ばぁの活動を通して発信したいメッセージをあげてもらいました。
「自分が子どもの頃にあったら行きたかったな、と素直に思える場所。」「いろんな年代のいろんな大人がわかりやすく居る場で、子どもたちにうまく使ってもらえる場所になっている。」
…こういった場所が、他の地域にもたくさんあるといいな、子どもに手をかける大人や場所がふえたらいいな、という声が複数ありました。
「もともと、子どもにかかわるのが好きでも得意でもなかった自分が変われた、いろんな考え方もあるんだ」と知る機会になったという声もありました。

 

・コロナ禍で痛切に思ったのは、子どもと大人が地域の中で安全に出会う場をつくりたい、ということです。なにかあってから出会うでは遅い、出会っておかないと…。
自分がかかわることで子どもを地域で育てることに協力している、ということを、たくさんの方に感じてもらえたらと思います。

 

 

座談会を終えて

 

初めましてのみなさんとの大人数の会は、実は … zoomの画面が得意でなく、すごく疲れたのですが、その疲れも飛ぶ楽しい時間でもありました。
そして、まず感じたことは、「だんだん・ばぁ、に行ってみたいな」ということでした。

 

コロナ禍では、厳しい社会情勢がつづき、誹謗中傷などギスギスとした言動を目にする機会もたくさんあります。大人に余裕が全然なくて、子どものところにまでなかなか手が届かないことも…。
そんなときに、身近なところで、いろんな大人が助け合って、知恵を出し合って、ぶれずに、楽しく活動している姿は、子どもたちにとって、ちょっとほっとできる姿だったのではないかと思います。大人がギスギスしてたら、子どもも居づらいし、大人同士が楽しいことが、子どもに伝染する。

 

今では当たり前に知られるようになった「子ども食堂」ですが、開設が始まったのは2012年とありました。(なんとぷるすあるはの設立と同じ年です。)
それが、2019年には全国に3,700箇所以上(むすびえの調査)と、急激に広がっています。正直な印象でいうと…このブームのような広がり方を、少し距離をとって見ていました。

 

例えば…
子どもの貧困対策で語られることへの違和感や、大人の都合でやっているようにみえる所もあること。そもそもチアキの育った地域では、300円くらいで今でも子どもが食べられるところがあってピンとこないこと。
子どもにはお腹いっぱい食べて欲しいし、家では作れないような食事の機会は素敵。だけど…「食育」が強調されてそれが普段の生活にもおしつけられたらしんどい感覚。「3食バランス良く」の圧や「食事は愛情のバロメーター」「食事を作れない親御さんはあかん親」みたいな空気が世の中にあると、しんどい…。

 

そんな斜に構えたチアキが、座談会の様子を聞いた第一声も「大人の工夫が伝わって、だんだん・ばぁに行きたくなるなあ」、そして「やるなら続けて欲しいし、週に2回は開いているといいな」という希望も。

 

 

「今の子ども食堂はかわいそうな子にご飯を、みたいなコンセプトで、やっている人の都合優先みたいなところがあまり好きではありません。」加藤さんも言います。
だんだん・ばぁをやっていくなかでの地域の理解を得る苦労の話もありました。
「地域の中にまだまだこそだては各家庭がすること、貧困や問題が生じることは自己責任だという風潮があります。そこに私たちがかかわることが親を甘やかす、と言われ会場が貸してもらえませんでした。今でも、困ってないのにご飯を食べに来ていると、批判的に見る人もいます。食にアプローチすることは単なるツールであり、目的ではないこと、食を通して子どもたちに経験の幅を持たせたり、依存できる安全な大人を見つけ、困ったときに困ったが言えるような関係を作りたい、ということを地域の方に理解してもらうのには時間がかかりました。」

 

今後の展望は「いつか子どもたちが大きくなって運営に協力してくれたり、仲間になってくれたらいいなあと思います。そしていつか戻ってくる子供たちのために長く続けていきたいです」とのこと。

 

座談会の後、生きる冒険地図に興味を持ってくれる方が増え、この本をもとに何か子どもたち向けの企画の発信ができないかと相談があったそうです。また、養護教諭の連絡会で紹介いただき、保健室での活用を検討いただいているそうです。
この本も、つながりを広げるアイテムになったら、それが子どもたちの安全と生きる応援につながったらと思います。

 

だんだん・ばぁは、いろんな大人がゆるやかによい関係、空気をつくりだし、変わらず子どもたちへ開かれている場です。今回の取材記は、親のメンタルヘルスの課題を直接取りあげたものではありませんでしたが、地域で子どもの育ち、暮らしをささえていくのは、ひとつの機関やアプローチではできなくて、いろんな人や場や取り組みが何層にも重なることが大切だと改めて感じました。
インタビューへのご協力、ありがとうございました。

 

加藤さん
大学病院で30年間精神保健福祉士として子どもの虐待やDV、犯罪被害者支援や自殺未遂者の支援を行いました。その後、こちらの思いで支援することに違和感を感じ、地域に出てNPO法人を立ち上げ、子どもたちの育ちを地域が支えられるような仕組み作りを模索中です。

 

 

資料

 

》こども食堂の現状 & 困りごとアンケート結果

NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ、こども食堂ネットワークが4/13-17に実施、むすびえの地域ネットワーク、こど食堂ネットワークとつながるこども食堂 35都道府県231団体が回答。

*子ども食堂とコロナ禍をめぐる現状が現れている自由記載もご覧ください。

 

》新型コロナウイルス感染症対策に伴う子ども食堂とフードバンクとの協力について(情報提供)| 厚労省の通知(3/13)

「子ども虐待防止オレンジリボン運動 新型コロナウイルス感染症対策下における子ども虐待防止に資する活動への助成」を受けて行っています。

》トビラのページへ