「ヤングケアラー」とは、家族の介護を行う、18歳未満の子どもをさします。
2018年度子ども・子育て支援推進調査研究事業による「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」では、もう少しふみ込んだ説明となっていて…
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年れいや成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負って、本来、大人が担ううような家族の介護(障がい・病気・精神疾患のある保護者や祖父母への介護など)や世話(年下のきょうだいの世話など)をすることで、自らの育ちや教育に影響を及ぼしている 18歳未満の子ども
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と説明しています。
ヤングケアラー支援をめぐって、最近、日本国内でさまざまな動きがあります。全てを追いかけることができないスピード感で動いていますが…ネット上で読める報告書や記事を中心にコラムにまとめました。
更新日 2022年12月
※こちらのまとめページは、2022年末をもって新規更新を終了します。(自治体の施策としてさまざまなヤングケアラー支援の取り組みがなされるようになり、厚労省のまとめページができ、ヤングケアラーの支援団体もふえました。)
2022の動き
(国・自治体の動き/民間団体の動き/メディア報道から)
ヤングケアラー支援体制強化事業(令和4年度予算)
ヤングケアラー支援体制強化事業の概要
ヤングケアラー支援体制強化事業実施要綱
※自治体の相談窓口設置の動きがひろがってきています。
京都府は「ヤングケアラー総合支援センター 」を4月に開設、ほか。
日本財団がサイト『ヤングケアラーと家族を支えるプログラム』を公開
新刊・特集など
・『子ども・若者ケアラーの声からはじまる-ヤングケアラー支援の課題』斎藤真緒/濱島淑惠/松本理沙/公益社団法人京都市ユースサービス協会【編】,クリエイツかもがわ,2022年3月
・『ヤングケアラーってなんだろう』澁谷智子著/文,筑摩書房,2022年5月
・『「ヤングケアラー」とは誰か 家族を”気づかう”子どもたちの孤立』村上靖彦著,朝日新聞出版,2022年8月
・『ヤングケアラーってどういうこと?――子どもと家族と専門職へのガイド』ジョー・オルドリッジ著,ジャック・オルドリッジ・ディーコン/イラスト,澁谷智子/監訳,澁谷智子、長谷川拓人/訳,生活書院, 2022年9月
・『私だけ年をとってるみたいだ。ヤングケアラーの再生日記』水谷緑著,文藝春秋, 2022年10月
・『現代思想 2022年11月号 特集=ヤングケアラー ―家族主義的福祉・貧困の連鎖・子どもの権利……』村上靖彦、澁谷智子/討議,朝田健太,柘植あづみ,土屋葉,信田さよ子,鶯谷花/寄稿,佐藤文隆,成田龍一,山下祐介,石岡丈昇/連載,青土社, 2022年10月
・『精神科看護 2022年11月号(49-12): ヤングケアラーへの支援』『精神科看護』編集委員会/編集,精神看護出版, 2022年10月
・『「ヤングケアラー」深層へのアプローチ SNSで出会う、つながり続ける』加藤雅江著,本の種出版, 2022年11月
・『小さなベティと飛べないハクチョウ:ひとりぼっちのヤングケアラー』ディド・ドラフマン/著,川野夏実/翻訳,花伝社, 2022年11月
・『ヤングケアラー: 考えよう、だれも取りのこさない社会』濱島淑惠/監修,小池定路/イラスト,文渓堂, 2022年12月
2021の動き
『ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の 連携プロジェクトチーム報告』
厚労省・文科省の連携プロジェクトチームの報告です。(2021.5.17)
サイトで全部公開されています。
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》2021年度 ヤングケアラーの実態に関する調査研究 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
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埼玉県『ヤングケアラーサポートクラスの実施』『ハンドブックの配布』
埼玉県教育委員会は、教職員や生徒、保護者がヤングケアラーに対する理解を深め、学校における相談支援を充実させるための出張授業「ヤングケアラーサポートクラス」を、県内中学校・高校等で実施します。2021年度は7校。
また、県内在学の高校生、中学生、小学校4年生~6年生、学校教職員へ、ハンドブックの配布を行っています。内容はサイトに公開されていて読むことができます。
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『多機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究』 (有限責任監査法人トーマツ)
「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル~ケアを担う子どもを地域で支えるために~」も公開されています(以下・画像を引用)
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『ヤングケアラーの実態に関する調査研究』(株式会社日本総合研究所)
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自治体の相談窓口設置の動き
神戸市|こども・若者ケアラーの方の相談窓口
電話、Eメール、来所による相談を2021年6月より開始。
鳥取県|ヤングケアラーやその家族の方などに向けた相談窓口を新設(3箇所、児童相談所など)
福岡市|ヤングケアラー専用相談窓口をNPO法人SOS子どもの村JAPAN内に設置(電話または来所)
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メディア報道から
》ヤングケアラー支援でヘルパー派遣
全国初・令和4年度から|高崎新聞(2021年08月13日)
「ヤングケアラー」支援へ 栃木・那須塩原市 LINE相談窓口開設
|下野新聞( 2021年8月5日)
》虐待防止へ支援計画義務化 ヘルパーが家事・育児手助け―厚労省
時事ドットコムニュース(2021年11月21日)
》ヤングケアラー支援へ診療報酬_患者の退院後、連携を促進
共同通信(2021年11月11日)
新刊・特集など
・精神科看護 2021年7月号(48-7) 特集 ヤングケアラー―精神疾患をもつ親とその子ども,すべてを包み込む支援,精神看護出版,2021年6月
・『ヤングケアラーを支えるー家族をケアする子どもたち。』日本看護協会出版社,2021年9月発行)
※ぷるすあるはは巻末のコラムをかいています
・『子ども介護者 ヤングケアラーの現実と社会の壁』 濱島淑惠,角川新書,2021年9月
・『ヤングでは終わらないヤングケアラー : きょうだいヤングケアラーのライフステージと葛藤』仲田海人, 木村諭志編著,クリエイツかもがわ,2021年10月
2015〜2020年
1. 日本ケアラー連盟ヤングケアラープロジェクトによる教員から見たヤングケアラー の状況の調査(魚沼市・藤沢市)
2015年 新潟県魚沼市
2016年 神奈川県藤沢市
教育委員会の協力をえて、小中学校・特別支援学校の全ての教員を対象に、調査が行われました。
調査結果が公開されています。
また、ページでは、ヤングケアラーとは?ヤングケアラーがしていること、など基本的な知識を得ることができます。
イギリスのヤングケアラー調査(2003)の報告書、要旨の日本語訳も掲載されています。
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高校生のヤングケアラーの実態調査
大阪府の公立高校10校が協力した、高校生自身の認識に基づいて把握した調査(分析対象は5,246票)で、ヤングケアラーと考えられる高校生の割合は5.2%でした。ケア役割が常態化・長期化しつつあるケース、負担が大きいと考えられるケースも一定数いることが示唆されています。
濱島 淑恵 宮川 雅充. 高校におけるヤングケアラーの割合とケアの状況 -大阪府下の公立高校の生徒を対象とした質問紙調査の結果より-. 第65巻第 2 号「厚生の指標」2018年 2 月
》http://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/201802-04.pdf
2. ヤングケアラー に関する新書の出版
『ヤングケアラー ー介護を担う子ども・若者の現実』
澁谷智子 著,中公新書,2018
日本で、ヤングケアラー支援の分野を牽引している澁谷さんの著書。
ヤングケアラー の現状について、調査データ、当事者の方の声、海外の取り組み、現在の取り組みが紹介されています。
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『ヤングケアラー わたしの語り 子どもや若者が経験した家族のケア・介護』
澁谷智子 編,生活書院,2020/10/31
新刊がでます!
3.「子ども・子育て支援推進調査研究事業」による調査・まとめとガイドライン案の提案、厚労省の通知
※報告書の全文がウェブ上に公開されています
2018年度
「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」
厚生労働省による、初の全国規模の実態把握調査です。
ある程度ヤングケアラーの問題が顕在化されている可能性が高い、要保護児童対策地域協議会(以下、要対協)で登録されているケースについて、各自治体へアンケート調査が行われています。+一部の自治体・支援団体・当事者等へのヒアリングを実施(支援団体へのヒアリングに、ぷるすあるはも協力しています)。
結果、要対協におけるヤングケアラーという概念を認識している割合は3割弱にとどまり、ヤングケアラーという概念を認識している要対協でも、ヤングケアラーの実態を把握している自治体や、支援を実施している自治体は限られていることが確認されました。
把握している子どもの状況についての記述もあります。ヤングケアラーの4割以上が、1日平均5時間以上、介護や世話を行っ ており、また、ヤングケアラーの3割以上が学校にあまり行けていない(休みがち)とい った状況にありました。
※2019年7月
この調査結果をふまえて厚生労働省から通知が出されています
「要保護児童対策地域協議会におけるヤングケアラーへの対応について」
》通知のページへ
2019年度
「ヤングケアラーへの早期対応に関する研究」
「ヤングケアラー」という概念を認識している要対協が大幅に増加 しましたが、「ヤングケアラー」と思われる子どもの実態把握が難しいと考える要対協がまだまだ多いことが挙げられています。
2019年度の研究では、要対協をはじめとする子ど もと関わりのある関係者が過度な負担なくヤングケアラーを早期発見するためのアセスメントシート(案)を作 成するとともに、ヤングケアラー支援において必要とされる視点や、アセスメントシート(案)の活用方法、今後 の取組みの参考となる支援事例や研修プログラム等を整理したガイドライン(案)が作成されています。
ヤングケアラーの早期発見・ニーズ把握に関するガイドライン(案)
※上記「早期対応に関する研究」のリンク(報告書)につづいて公開されています
ここではアセスメントシートを紹介しましたが、ガイドライン案に、なぜ支援が必要か、アセスメントの視点と方法、その後の支援へのつながり、ヤングケアラー 支援における留意点(重要!)などが詳しくまとめられています。
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厚生労働省と文部科学省による、ヤングケアラーの実態に関する初の実態調査
中学生の5・7%(17人に1人)、高校生は4・1%(24人に1人)に、世話をしている家族がいました
4. 全国の自治体で初めての条例制定、埼玉県の動き
埼玉県ケアラー支援条例(2020年3月31日)
》条例のページへ
以下、基本理念と教育機関の役割から、ヤングケアラー に関する記述を抜粋します
(基本理念)
第三条
3 ヤングケアラーの支援は、ヤングケアラー としての時期が特に社会において自立的に生きる基礎を培い、人間として基本的な資質を養う重要な時期であることに鑑み、適切な教育の機会を確保し、かつ、心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られるように行わなければならない。
(ヤングケアラー と関わる教育に関する業務を行う関係期間の役割)
第八条
ヤングケラーと関わる教育に関する業務を行う関係期間は、その業務を通じて日常的にヤングケアラー に関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者がヤングケアラー であると認められるときは、ヤングケアラー の意向を尊重しつつ、ヤングケアラー の教育の確保の状況、健康状態、その置かれている生活環境等を確認し、支援の必要性の把握に努めるものとする。
2 ヤングケアラー と関わる教育に関する業務を行う関係期間は、支援を必要とするヤングケアラー からの教育及び福祉に関する相談に応じるとともに、ヤングケアラーに対し、適切な支援期間への案内又は取次その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
埼玉県ケアラー支援に関する有識者会議
第1回会議(2020.6.8)、第2回会議(2020.8.6)の資料、議事録が公開されています。
※ヤングケアラー実態調査が2020年に実施されます
調査対象・数:県内の高校2年生 約55,000人(回収率目標80%)
↓↓
》埼玉県ケアラー支援計画のための ヤングケアラー実態調査結果1(11/25)
2020年に埼玉県の全高校の調査で、48,261人の回答のうち、1,969人がヤングケアラーでした。4.1%。25人に1人。
5. メディアでの特集など
毎日新聞で特集を組んで記事を公開しています。(会員限定記事です…)
ヤングケアラー取材班ツイッター @youngcarers_mai
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NHKハートネットの特集記事です(公開日:2018年10月26日)
》子どもが家族をケアする時代 第1回 ヤングケアラーって何?
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NHK首都圏ナビの記事をまとめたコーナー
》知ってほしい“ヤングケアラー”
※近年メディアでたくさんの記事が取り上げられています
6. ぷるすあるはのヤングケアラー関連ページなど
ヤングケアラー のみなさんへ
ヤングケアラーさんへ、メッセージや工夫を届けているページです。
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ヤングケアラー 支援に関する座談会記事
》ヤングケアラー支援~小学校低学年の頃から「助かった…」という経験値が積み重なるように
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『生きる冒険地図』(学苑社,2019)
身近にたよれる大人がいない中学生ミルと小学生イルのきょうだいが主人公。ヤングケアラー さんの生きる知恵を工夫が詰まったイラストブックです。子どもが自分の時間をつくる、家事、きょうだいの世話、大人とのつながり方、相談先情報etc
一部のページをサイト上でも公開しています。
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チームクリフ(TKLF)
精神障がいのある親と暮らす子どもへのチーム学校を基盤とした支援モデルの開発研究会。科学研究費補助金をうけて、学齢期の子どもへの支援を考えるための、養護教諭等、学校関係者を対象としたワークショップを開催、調査研究にもとづく情報発信などを行います。ヤングケアラーの支援とも重なるテーマです。
ぷるすあるはもメンバーに参加しています。
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イベント参加レポート
》1/27(日)]子ども・若者ケアラー(ヤングケアラー)についての事例検討会ーあんしん子育てサポートプロジェクト2018