「死にたい」「消えてしまいたい」と言う人と出会ったあなたへ
〜おがてぃのゲートキーパーの話〜 その3「気づき」
令和3年1月7日に新型コロナに関する緊急事態宣言が発令され、また世の中がさらに落ち着かなくなってきました。自宅で過ごす時間が増えることは、感染予防や1人で過ごす時間、家族との関係を深める機会になる一方で、逆に孤独を感じたり、家族関係が悪化したり、経済的な問題が生じたりと様々なこと起こり得る複雑な状況かと思います。普段相談業務に携わる者としては一人ひとりの状況に合わせてどのようにしたら良いかを一緒に考えていければと思いました。
*
さて、今回はゲートキーパーの役割を果たすための4つのポイントのうちのひとつ「気づき」について書いていきたいと思います。
自死のリスクを検討する際には「危険因子」と「防御因子」という2つアセスメントポイントを意識しながら検討するというアプローチがあり、「危険因子」が多く、「防御因子」が少なければ、自死のリスクが高まるとされています。
そのため「危険因子」がどのくらいあるかで自死の危険性に気づいていくことが重要となります。細かくは厚生労働省のホームページを見ていただければと思いますが、今回は大きく3つに分けてお伝えしたいと思います。
① 喪失体験と孤独
身近な方が亡くなったり、別居や離婚、転居など様々な人間関係が失われてしまい、孤独感や孤立感を強く感じるような状態です。社会資源や適切なサポートを受けられていないことなども含まれます。
② 生活上の問題や苦痛な体験
失業やリストラなどの就労や経済的な問題、生活に関する困難、いじめや家庭内での問題などが多い状態です。
③ 精神・身体疾患や危険な行動
不眠、食欲減退などうつ病をはじめとする精神疾患による症状や身体疾患による病苦、自暴自棄になって危険な行動を取ったり、アルコールや薬物を乱用する、自死に繋がりそうな危険な手段が身近にあるなどの状態です。
上記のようなものが危険因子として考えられるものになります。
ゲートキーパーとしては、その気づきをもとに声をかけていくことが大切になりますので、例えば、
・顔色がすぐれないけど、最近眠れてる?
・元気がなさそうにみえるけど…最近何かあった?
・いま何か悩んでる?もしよかったら話してみてもらえるとうれしい。
・何か、力になれることはある?
など、声かけをして話を聴いていけると良いかと思います。
声をかけた後、出てきた話が深刻だったり、自分ではどうにもならない悩みだったらどうしようと不安を感じる方もいるかと思います。ただ、基本的には話を聴いて一緒に考えるという行為自体が、相手の孤独感や孤立感の減少につながり、ひいては自死の危険因子を減らす役割を担うのだと考えています。すべての悩みに適切に回答できる人はいませんので、その場合は後で調べたり、他に分かりそうな人や専門機関につなげていくなどできると良いかと思います。
次回は声かけをした後の話の聴き方「傾聴」について具体的に書いていきたいと思います。
*
今回のコラムもシェアしていただけるとありがたいです。「#ゲートキーパーの話」とハッシュタグをつけて、まずは自死に関する知識を持った人が増えることが自死を防ぐことにつながっていくと考えています。
このコラムを読んで学んだ人が増えることで、なかなか支援が届きにくい、人に相談するのも難しいといった方に支援が届くことを願っています。
*
※相談先、身近な人を自死でなくされた方のサポートの情報をこのページの最後に掲載しています
》心配を伝え、丁寧に話を受け止めるポイント「傾聴」〜おがてぃのゲートキーパーの話~その4へ
シリーズ目次
1.ゲートキーパーって何?
2.「死にたい」と思っている人の気持ち
3.ポイント①「気づき」
4.ポイント②「傾聴」
5.ポイント③「つなぎ」
6.ポイント④「見守り」
7.最後に~おがてぃの思うこと~
おがてぃ
臨床心理士・公認心理師
相談先の情報
》いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧|自殺総合対策推進センター
》生活を支えるための支援のご案内|厚生労働省(最終更新7/16)
*
身近な方を自死で亡くされた方の相談先などの情報
厚生労働省|こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト内)
遺族のつどいの情報、弁護士による 電話相談(自死遺族ホットライン)、臨床心理士による電話相談などが掲載されています。
》NPO法人全国自死遺族総合支援センター<グリーフサポートリンク>
自死遺族相談ダイヤル(自死遺族のための電話相談)を行なっています。
全国の身近な人を自死で亡くした方のつどいの情報などを掲載しています。