心理教育絵本【絵本リストあり】

親が精神疾患をかかえている子どものための心理教育絵本を紹介しているコーナーです。
うつ病、統合失調症、アルコール依存症、精神疾患についての絵本など。
それぞれの絵本の紹介と、チラシとしても使えるリストものせています。

親が精神疾患をかかえている子どものための絵本

1 絵本リスト(ダウンロード用PDF)

A4×2枚。両面に印刷することで、チラシの用に使うことができます。

 

2 それぞれの絵本の紹介

出版年が新しい順にならべています。
絵本の対象はおよそ小学生から。子どもだけでなく、親や家族、教員や医療機関、支援機関など子どもと家族にかかわるすべての人が対象です。

『うつモンスターがやってきた!ママ、どうしたの?』

作・絵:エルドムート・フォン・モッシュ
訳:みやざき なおみ(宮崎 直美)

ラグーナ出版,2021年,1,760円
ISBN 978-4-910372-06-8
サイズ:220×220 48頁

親が心の病にかかると、子どもは、「自分がいい子にしてないからだ」と罪悪感をいだきます。 この絵本では、うつという病気をモンスターにたとえて、子どもに分かりやすく説明します。子どもが安心感を覚え、家族みんなでうつを乗りこえるための話し方が学べます。

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『悲しいけど、青空の日~親がこころの病気になった子どもたちへ~』

文・絵:シュリン・ホーマイヤー
訳:田野中恭子

サウザンブックス社,2020年,2,640円
978-4-909125-20-0
サイズ:A5変形判 136頁

3章構成です。第1章は主人公モナの物語(P7-71)、第2章はモナから子どもたちへのアドバイス(イラストや書きこみ欄あり)(P73-111)、第3章は親と身近な人たちへのアドバイス(P113-127)。
物語からつづく、主人公から同じ立場の子どもへ語りかけるパートがあり、「精神疾患って何?」「だれがママやパパを助けてくれるの?」など、基本的な疑問にこたえていきます。相談先など実用的な情報、書きこめる欄[らん]あり。

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》ダイジェスト動画へ[4:15]<youtube>

『きょうのお母さんはマル、お母さんはバツ 双極性障害の親をもつ子どもにおくる応援メッセージ』

監修:肥田裕久  
文:雨こんこん
絵:はにゅうだゆうこ

星和書店,2017年,1,320円
978-4-7911-0949-4

物語の前半(24頁)につづく後半(28頁)は、医師が、子どもにむけて、双極性障害についてくわしく解説するスタイルとなっています。「応援団をつくる」というテーマで、子どものための社会資源を具体的に紹介し、困ったときにはSOSを出すこと、どのようにしたら支援を得ることができるかを具体的に示しています。

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『かぞくがのみすぎたら』

著:リチャード・ラングセン
絵:ニコール・ルーベル
監修:伊波真理雄、谷口万稚
訳:久松紀子

サウザンブックス社,2017年,2,200円
978-4-909125-02-6
サイズ:29.7×21 32頁

家族のだれかが飲みすぎているのが通常となっている場合に見られる典型的な問題行動や、家族に与える影響をわかりやすく説明しながら、怒りや悲しみ、憎[にく]しみなど、さまざまな感情を持つことは自然なことと伝えます。
クマのファミリーが登場しイラストを全面に打ち出した構成。ユーモラスなイラストも楽しめるデザイン性の高い絵本。アメリカ発の絵本の翻訳版。

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『お母さん、お父さんどうしたのかな?』

著:トゥッティ ソランタウス
イラスト:アントニア リングボム
翻訳:上野里絵

東京大学出版会,2016年,1,760円
978-4-13-063404-5
サイズ:B5変型判(正方形) 68頁

「なぜこころの病気になるの?」「親のためにできることはある?」など、子どもの疑問や心配ごとがそのまま見出しになっており、それに答える形で大人が子どもに語りかけるスタイルとなっています。文章に線描の挿絵が入る画面構成で、ページ数は多いですが、目次をみて気になるページから読めます。対象は13歳以上が想定されており、12歳以下は大人と読むことがすすめられています。親向けの本『子どもにどうしてあげればいい?』と2冊セットでの刊行。巻末に日本の相談サポート情報あり。

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『ボクのことわすれちゃったの?ーお父さんはアルコール依存症ー』

著:プルスアルハ 
お話と絵:細尾ちあき
解説:北野陽子

ゆまに書房,2014年,2,310円
978-4-8433-4577-1
サイズ:B5判 68頁

物語と解説からなる2部構成。物語は、主人公の子どもの視点の一人称ですすみます。ダイナミックな色合いと構図のイラストが特徴的。後半の解説は、物語のページに対応したくわしい内容で、アルコール依存症の病気についての簡単な図説もついています。

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『お母さんどうしちゃったの…ー統合失調症になったの・前編ー』

著:プルスアルハ 
お話と絵:細尾ちあき
解説:北野陽子

ゆまに書房,2013年,1,980円
978-4-8433-4268-8
サイズ:B5判 64頁

親が統合失調症になったときの、子どもの気持ちの理解とかかわりをテーマにした絵本です。前半は、主人公ホロの視点のお話。後半は、ページにそったくわしい解説。統合失調症の病気についての説明もはいります(前後編共通)。前編は入院編(急性期)です。

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『お母さんは静養中ー統合失調症になったの・後編ー』

著:プルスアルハ 
お話と絵:細尾ちあき
解説:北野陽子

ゆまに書房,2013年,1,980円
978-4-8433-4269-5
サイズ:B5判 60頁

後編は療養編(回復期)です。ゆっくりと時間が流れる静養の時間、ご本人ご家族が病気と付き合っていく過程を描きました。家族を応援する第三者のかかわりを通して、まわりの大人ができることを考えます。

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『ボクのせいかも…ーお母さんがうつ病になったのー』

著:プルスアルハ 
お話と絵:細尾ちあき
解説:北野陽子

ゆまに書房,2012年,1,650円
978-4-8433-4112-4
サイズ:B5判 48頁

親がうつ病になったときの、子どもの気持ちの理解とかかわりをテーマにした、日本で初めての絵本です。前半は、小学校低学年の主人公スカイの視点の物語。後半は、ベージにそったくわしい解説です。病気を伝えるときのポイント集や相談先リストもついています。

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『どうしてそんなにかなしいの?親がうつ病になったとき』

作:ぺス・アンドリューズ
絵:ニコール・ウォング
訳:上田勢子

大月書店
2007年
1,760円
9784272406111
サイズ:B5判 32頁

文と絵でうつ病について解説し、子どもが自分の気持ちを受け止められるように伝える本。書き込みながら使える。巻末の「保護者、先生、カウンセラーのみなさんへ」(4頁)で、どのように子どもをサポートしたらよいかまとまった説明がある。

》大月書店の絵本紹介ページへ

3 パンフレット(中学生〜20代くらいの若者向け)

「It’s your time あなたの大切な時間」心の病気がある親をもつ子どもたちへ

中学生~20代くらいの若者向けのパンフレット&Webサイトです。

》CAMPS(精神疾患の親をもつ子ども達を支援する団体)サイトへ

4 絵本を活用するときに

心理教育絵本には、内容や構成にさまざまなスタイルがあり、それぞれに特徴があります。
それらの特徴や良さ、さらに、活用のヒントについてまとめました。

心理教育絵本の特徴、良さ

このページで紹介した絵本のスタイルはいろいろです。
大きな特徴として、《物語性のあるもの》とないものがあります。物語性がないものにも、イラストを主体としたものと、文章が主体でイラストが添えられているものがあります。解説や書きこめるパートがついている場合もあり、これらの組み合わせで、それぞれの絵本独自の構成となっています。
子どもが一人称で語っているのか、子どもに語りかけるスタイルなのかなど、だれがだれに語りかけるのかによっても、受け手の印象がかわります。
人によって、絵や装丁の好みにもあると思います。

絵のもつ親しみやすさやわかりやすさに加えて、絵本は、横並びで一緒にみたり読み聞かせたりすることができ、コミュニケーションツールとしても有用です。
物語性のある絵本には、読み手が自身の気持ちや経験と重ね合わせたり、想像をふくらませながら読める良さがあります。その分、受け取り方の幅も大きく、自分の体験とはちがう、こんな家族はうちにはいないなど、必ずしもポジティブな感想ばかりではありません。絵本はきっかけのツールですので、まわりの人がフォローしながら使えるといいと思います。

いずれの絵本も、精神疾患についての知識や対処方法、相談先などの情報提供の要素がふくまれていて「病気についてタブーにせずに話すこと、話し合うことを助ける」媒体となっています。「ひとりじゃない」「あなたのせいじゃない、だれのせいでもない」も共通して発信されているメッセージです。

絵本を活用するときには

絵本を活用しやすい機会(親の精神疾患について子どもに情報提供を考える機会)には、子どもが知りたいと感じているときや、親の入院、転居、離別[りべつ]等、子どもの生活がかわるときがあげられます。

絵本を子どもと読む場合は、なるべく子どもと関係ができている大人が一緒に読み、言葉をそえたり、フォローできる雰囲気や時間をつくっておくことが重要となります。
思春期以降の子どもには、自分のタイミングやペースで読めるように配慮[はいりょ]します。
親が自身の病気について子どもに伝える準備ができていない場合もあり、親やほかの家族の意向にも配慮します。親の抱える不安や罪悪感などについて話しあう機会をもつなど、親のサポートもかかせません。

絵本の対象は子どもに限定されません。
親、家族、支援者、あるいは、成人した親が精神疾患をかかえる子どもにとっても活用できるツールになります。
支援者間で、子どもや家族の理解と支援の方向性を共有するため、当事者会や家族会で子どもや子育てについて話題にするためにも活用されています。
図書館、学校の図書室、医療機関や支援機関の待ち合いほか、子どもも大人も自然に目にして手に取れる場所に絵本が広がることを期待します。

まずは、いろんな絵本をぜひ手に取って、みてみてください。子どものサポートの選択肢がふえますように。

5 リンク集

心理教育絵本の本棚(ブクログ)

親の精神疾患からさらにテーマを広げて、「子どもへの心理教育」「精神保健」に関するさまざまな本、特に絵本を集めた本棚です。
》こころに関する絵本棚 byぷるすあるは

ぷるすあるはのオンラインストア
プルスアルハの絵本と、他の著者の絵本のいくつかをとりあつかっています。

絵本とアイテムリスト
ぷるすあるはの絵本、コミュニケーションカードなど、全アイテムについてくわしく紹介しているコーナーです。
》絵本とアイテムリストをみる

親の病気について子どもに伝えるときに使えるツール
支援者向けのページのなかで紹介しています。ダウンロードできるアイテムがあります。
》病院のスタッフのみなさんへ

書籍『子どもの語りからわかる 精神疾患がある親をもつ子どもの支援』
》本の紹介ページへ

学会シンポジウムレポート
》家族療法学会の自主シンポジウム 「精神疾患のある親とその子ども―親子への支援と『絵本』の活用」