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「なにも整理されていなくていから、えいって、まず電話してつながってください」〜子育て、虐待の悩みの匿名電話相談(CCAP)

「なにも整理されていなくていから、えいって、まず電話してつながってください」〜子育て、虐待の悩みの匿名電話相談(CCAP)
2020年11月1日 pulusu

「なにも整理されていなくていから、えいって、まず電話してつながってください」〜子育て、虐待の悩みの匿名電話相談(CCAP)

 

社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP) は、1991年に設立(1997年社会福祉法人として認可)された、子どもの虐待を早期に発見し、虐待防止を援助するために活動している民間の団体です。虐待から子どもを守り、親への支援を行っています。
匿名の電話相談からみえてきたコロナ禍での親御さんたちの状況や、お話をきくときに大切にしていることについて、相談員のNさんにお聞きしました。
「気づくこと、気づくためにも言葉にすること、まずつながっちゃうこと」…親御さんへのメッセージには、SOSを出す高いハードルをとびこえるためのヒントがありました。

(インタビューは10月中旬、オンラインで行いました。11/6/,7 電話相談のキャンペーンがあります。記事の最後の方に案内があります)

 

 

 

<CCAPの事業内容 今回は電話相談の事業についてお聞きしました>

》ホームページへ

***

お母さんたち、ほんとに大変そうで限界…
悲鳴のような声をたくさんききました

 

—コロナ禍の半年あまりを振り返って… 電話相談の内容やお電話くださった方のことなどについて教えてください。

 

・コロナが起きてから、まず最初の頃は、お母さんたち*は、大変さに気づいていなかった…こんなことになるとは思っていなかったのではという気がします。
みなさんすごくがんばっていて、自分がやらなくちゃという思いを持ちながら、社会からの要請にも応えよう、応えようとされている方が多かったように思います。最初は本当にがんばっていました。
それが、あるとき…自分ってこんなに大変なことをしてるんだ、と気づいたときに、自分の中で爆発するようなことや、(心に)おとせないようなことがでてきたのかなという印象をもっています。

 

・とにかく、小さいお子さんをお持ちのお母さんたち。
外に出られず、公園に連れていっても白い目でみられたりして行く場所がなくて、「家の中で追いつめられる」「お子さんと一対一で思いつめてしまう」という声を随分お聞きしました。

 

*相談者は、母親のことが多いため(2019年度電話相談の87%)、この記事のなかでも「お母さん」と話されていることが多いです。父親、祖父母、里親などからの相談もあります。
具体的な相談内容については、守秘義務があるため、個人がわからないように、複数の声を組み合わせたりして紹介しています。

 

ー特に多かった声や、印象的なエピソードとして、次のようなことがありました。

 

・支援センターにも行けなくなり、目の前にいる赤ちゃんをこのまま育てられない、この場から消えたい…といった声もあって、私には本当に悲鳴のようにきこえました。特に印象に残っています。

 

・リモートワークになって、自分はできると思って保育園も自粛されてやっていたけれど、もう限界でどうすればいいですか?という電話もありました。

ダンナさんは自分の部屋で普通通りのリモートワークをしているんだけど、自分のところには、「今来ないで」と言っても子どもが「ママー」と来てしまうし、たたいてしまった… という切羽詰まった声でした。

 

・学校から課題がだされて、それを自分がみないといけない、課題もやらせないといけない、仕事もあるし、一人で何役もしないといけないという声はとても多かったです。

 

・ほんとに大変そうで限界…
子どももいつもとちがう状況でストレスがたまっていたと思いますが、お母さんたちも、どこにも吐き出せない思いがあったと思います。夫へのイライラも子どもにあたってしまったり…
せめて「この電話で、きもちをいっぱい話してくださいね」ということをお伝えしました。

 

 

コロナ禍で新規の方からの電話相談がとても増えました

 

もともとつながっている方の相談もありますが、コロナ禍になってから、初めて電話相談を利用してくださった方も多いとのこと。
—どのように、この電話相談につながってこられるのでしょうか?

 

・最近は、ネット検索でみつけて、という方がとても増えました。

[子育て 虐待 たたいてしまう]

などのキーワードで検索されているようです。
だいたい一日に10-15件くらいの電話をうけますが、6-7件が初めて、とうこともありました。(2019年度の統計では、新規18%、再相談が78%)
電話回線は、通常は3本ですが、狭い部屋でやっているので感染対策のために、2本にせざるを得ませんでした。それでも昨年と比べて、3割増しくらいの件数でした。

 

— 春の頃とは随分世の中の様子もかわりましたが、最近の相談内容には変化はありますか?

 

・学校や保育園も始まっているので、外に出られないというコロナが始まった頃とは状況はかわってきていますが、いろんなことが各家庭にたくされています。学校だったら授業がつめこみで、家でみることがふえていますし、行事やイベント的なことが減って、子どものストレスが増えていたりします。
子どもは、なにがストレスでと言葉にはならないけれど、「なんか機嫌がわるい」、とか、「いらだってストレスをぶつけてつけてくる」とかで…お母さんたちもイライラされたりということはあるのかなと思います。

 

そのときの、お母さんの今につきあう

 

— お電話にたいしてどのように対応されているのでしょうか。
どれくらいの時間が多いですか? 場合によっては情報提供をしたり、どこかにつなぐ提案をするようなこともありますか?

 

・お電話の時間は、30分くらいから、長くて1時間くらいです。

 

・言葉にならないくらい泣きながらお電話してくださる中で、最後に「なんかちょっとほっとしました」「ちょっと整理ができました」「これで子どものお迎えに行けます」といった方が多いです。
外では「いいお母さんしなくちゃ」と思っているお母さんが多くて、誰にでも助けてとは言えない。
「そんな話はぜひここでしてね、イライラして子どもにあたりそうなときに、なんにも整理できなくていいから受話器をとって電話してくださいね」とお伝えしています。

 

・(相談への対応は)「なにができますかね?」ということを一緒に考えることはありますが、「じゃあこれをやってみよう」「これをしてみたら」を言ってしまうと、それができなかったときに、また傷ついてしまったり、つらい思いをしてしまったらいけないので、お母さんがこれをやってみようかな、と思えるところにつきあいたいなと思っています。

 

・地域の中でなかなか話ができないから、まずここへと電話してくるお母さんも多いです。「虐待と思われるのでは、子どもを連れて行かれてしまうのでは…」と保健師さんにも言えないことも…。
ここで、電話で話しているうちに、話す練習になるので、「そういうしんどさは、保健師さんに言って大丈夫ですよ。訪問してくれるのは保健師さんなので、今度の健診のときに伝えてみたら」と伝えることもあります。
(近隣や知人など)「こんなことが身近にあるんだけど…」という相談に、「児童相談所や子ども家庭支援センターに連絡してみてください」と伝えることもあります。

 

—お電話でお話をきくときに、どんなことを大切にされていますか?

 

・受け止める…というと、言葉で言うと簡単ですが、なかなか難しいです。

かけてきた方の、その人のいる場所にあわせる…

アドバイスしたりするのではなくて、今なにに困っているのか、なにがつらいのか…  寄り添うっていうとおこがましいのですが、そのときの、お母さんの今、につきあう…というかんじでお電話を受けています。
つい、なんとかしてあげたいという気持ちになりがちですが、ほかの人のアドバイス通りにやってもなかなかできることではなく、お母さん自身が答えを持っていることが多いと感じています。

 

まず気づいてつながっちゃう

 

電話相談には、自分の子ども時代と重ねてしんどくなって電話してくださるお母さんも多いとききました。

 

・ここにお電話をくださるお母さんは、今のコロナ禍での日常的な大変さの相談もありますが、自分の子ども時代ができてなかった…というお母さんがとても多くて、子どもが不機嫌な状態になると自分の子どものときのことと重なってつらさが増す、という話をよく聞きます。
「SOSを出してもいいんだよ」は子どもにも伝えたい言葉ですが、今、ココでは、お母さんたちにそれを伝えたい気持ちです。

 

・『生きる冒険地図』や『ゆるっとこそだて応援ブック』で「いろんな応援団を」と書いてあって、社会資源もたくさんあると思うのですが、(電話で)お話をお聞きしていると、家族が壁になっていることもあります。
お母さんがもう子どもを預けたいと思ったときに、夫から「子どもをみるのはお前の仕事だろ」と言われたり、母親から「かわいそう。みんな育てている」と言われたり。お母さんが応援団を受け入れる一歩が踏み出せない…という状況のことが結構あります。そして、自分で母親失格だと感じてしまって、狭いところにどんどん押し込められてしまいます。
家族の理解が得られて、お母さんがSOSを出せるといいなとすごく思いました。

 

<応援団をもつ まわりがそれを応援できるように…>

 

・まず、自分の…家族もふくめて…「しんどさに気づく」こと。
お母さんたち、まわりから見た目にとらわれてしまったり、その役を演じでしまっているところもあって、今の自分に気づけていないんです。
そして「まず、つながっちゃう」こと。後先考えなくていいから。
こんなことを言うと怒られちゃうかも…とかいろいろ心配してかけてくるんですが、まず受話器をあげてかけて…

ずーと泣いてるだけでもいい
イヤだったら切ればいい
怒りをぶちまけてもいい

そういうこともふくめて、つながりやすいところにつながれたらいいな。

 

気づくためにはまず言葉にする

 

—自分のきもちやしんどさに気づくためのヒント、ありますか?

 

・まずつながっちゃえ、といったのもそうですが、まず言葉にする、のはどうですか?
私はすごく大きい意味があるなと思います。
まだ人に話せないと思ったら、まず自分で言葉にして、書いてもいいし、ぶつぶつ言ってもいいし、なにか言葉にしてみて… そしたら自分ってこんなにしんどかったんだとか、これがイヤだったのかな、と気づけるきっかけになるのかなと思います。

 

 

お電話してくれたことで一歩ふみだされています

 

—匿名の電話相談のなかで、ではありますが、メンタルヘルス不調をかかえた親御さんからの相談の状況はどうでしょうか?

 

・ご自身の精神疾患、うつっぽい方、お子さんが発達障害で夫もです、自分もそうです…といった方もいらっしゃいます。
(メンタルヘルスの不調があっても)子どもが小さいとなかなか病院に行けなかったり、カウンセリングでつらくなって子育てできなくなるかも…とためらわれる方もいます。
話がまとまらなくて収集がつかなくなるようなお電話のときは、この言葉を普段きいている子どもはしんどいだろうな、と感じることもあります。それはこの電話で吐き出してもらえたら…。

 

・(実親との関係で)親にされてきたことや、自分は大切にしてもらえなかったことを思い出したり… 孫を実家に連れて行くと自分へしてきたこととちがって腹立たしい…といった声も。自分も親と同じように(虐待して)しまうのではという不安には、「同じじゃない。電話をしてくれたってことが一歩。どうにかしたいと思っていたらなりますよ」とお伝えしています。

 

・家族の問題は、外から見えなくて、難しい問題があるなあと感じます。
お父さんからの相談もありますし、(以前と比べて)お父さんも子育てに参加するようになってきて、少しずつ何かが変わっていけばいいのかなと思います。
コロナで家族の形がかわることもあるし、良く変わらないといけないのかな…。

 

だれにも見てもらえない、孤立している、非難されていると感じているかもしれないお母さんたちへ、ひとこと声かけができたらと思います

 

—社会が子育てに優しくないなあと感じることも多いですが…
読者のみなさんへ、最後になにかメッセージがあればお願いします。

 

・行政の職員、保育士さん、いろんな機関が、家庭にかかわっているけれど、みなさん役割で動いているところがあって…。ちょっとのりしろがあってつながれたら…。お母さんが「もういいです」と言うとそれで終わってしまうところ、もう一歩、親身になって家族に開かれたら、親も子も救われるのになと思うこともあります。
「だいじょうぶ」だとまわりは思いたいけど、大丈夫じゃないかもしれない。大丈夫の膜を取り払って、みんながアンテナをたくさんたてて、なかなか上手にいろんな支援先につながれないお母さんたちのSOSをキャッチできたらよいです。

 

・11/6/,7 電話相談のキャンペーンをやります。夜21時まで電話相談を受け付けています。5分でも10分でも。たくさんの方に電話していただけたらと思います。
(コロナ禍の)こういうときなので、親しく声かけも難しいかもしれないけど、だれにもみてもらえない、孤立している、の訴えが多いです。非難されていると思っている方もいます。ひとこと声かけができたらと思います。
訪問もなかなかできないけど、ちょっとがんばって訪問してもらいたいです。
お母さんたちのしんどさを、少しでもわかってもらえたらと思います。

電話相談キャンペーン

11/6(金) 7(土) の2日間、夜の 21:00 までお電話受け付けています。
0369090999

 

 

電話相談というと…なかなかつながらないイメージがありますが、回線がずっとうまっているということはなく「比較的つながります」とのこと(!)

・全国どこからかけてもokです
・名前は言わなくてokです
・相談は無料です(電話代はかかります)
・途中で切ってもokです

 

・心配な家族を見聞きした地域の方、学校や保育園、病院などで、虐待された子どもに関わっている方からのご相談にも応じています


普段の電話相談・受付時間

月~金曜日10:00~17:00
土曜日10:00~15:00
※日曜日・祭日はお休み

座談会を終えて

 

まず、なんにも整理されてなくていいから、受話器とって電話してください〜「まずつながっちゃえ」という言葉が印象的でした。
匿名の電話相談の良さ、ってあると思います。そのときに電話にでた相談員さんと、そのときのつながりだから、話しやすいこともあるかもしれません。あわなかったら切ったらいい、話しっぱなしでその場でおわり。またちがうタイミングでかけたら、ちがう相談員の方とのつながりがあります。

オンラインでのインタビューでしたが、お話をしていての安心感がとてもありました。
Nさん、CCAPのスタッフのみなさん、ご協力をありがとうございました。

 

どこにもやり場のない言葉、たまったものを少し吐き出したいとき、今ちょっと一呼吸つきたいとき、…
まずボタンおして電話をかけてみてください。

 

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