「子ども情報ステーション by ぷるすあるは」精神障がいやこころの不調、発達凸凹をかかえた親とその’子ども’の情報&応援サイト

コロナについて考えてみた by チアキ (精神科看護師でアーティストでもあるチアキのQ&A)

コロナについて考えてみた by チアキ (精神科看護師でアーティストでもあるチアキのQ&A)
2020年5月3日 pulusu

NPO法人ぷるすあるはは、オリジナルの絵本やサイト運営など、コンテンツの制作発信を通して、メンタルヘルスに関する情報発信・普及啓発をしている団体です。なかでも特に、精神障がいをかかえた方と家族、子どもたちの応援を中心テーマにしています。精神科のNs+Drを中心としたチームです。
ぷるすあるはの全てのイラストを描いているチアキ。精神科の看護師でもあります。感覚が過敏で、ごちゃごちゃした家庭に育った経験もあります。なかなかユニークな個性の持ち主です。
コロナ禍は…チアキのメンタルヘルスにも影響しています。このコラムでは、そんなチアキとQ&Aスタイルで、新型コロナウイルスのあれこれについて考えました。

 

目次


はじめに…最近のチアキ

Q1 コロナ禍の社会への影響がとにかく大きいです…

Q2 精神障がいなどをかかえた方への影響

Q3 日々の生活のなかでできる工夫は?

Q4 家が安全ではないとき…

Q5 経済的な困難がメンタルヘルスに直撃

Q6 情報過多対策

Q7 ご家族へ

Q8 最後にメッセージ

メモ ぷるすあるはの新型コロナ関連情報発信について

まずはじめに
最近のチアキ、調子はどうですか?
SNSからも随分はなれているかんじですが


はい…しんどいです。
ずっと疲れてます。
見通しが立たないこともストレスで。
ベースの不安が高まってるというか…

 

その状態でニュースとかみると、ちょっとしたことでも、ネガティブな情報や変化に敏感になってしまいます。
家にこもっての仕事は、集中力散漫[さんまん]になるのがつらいです。イメージが湧きにくいしひろがりにくいし…。
それから、私の場合は、人にうつしてしまうことへの不安が高まっている気がします。それで神経質になってるかなと。まだ、自覚できてる範囲ではあるんですが。

 

私がやっている対策は、情報をひかえること。まわりの人にも協力してもらってだらだらニュースを流さないとか、チャンネルを変えるとか。そしてなるべく日常のルーティーンを崩さないこと。自分の生活のなかでできる感染予防をやりながら…それでもかかるときはかかる、それは仕方がないと…不安ですが、そう思って過ごしています。
(日々の工夫は、このあとの回答のなかでもふれます)

Q1 コロナ禍の社会への影響がとにかく大きいです…


めちゃくちゃ大きいです。
日常すべてにおいて。

 

仕事、収入がなくなった、再就職先もない…
生活どうするねんって。
休校どうなるねんって。
家が安全じゃない、行き場がない…。
いろんな過酷な現場…。
子どもの学びや育ちの機会が奪われているのも、長期化すればするほど心配やし、もともとしんどかったり、余力がなかった人、家庭はもっと厳しい状況になってる。
だれもが影響をうけているけど、受け方はひとりひとりちがって、いろんな課題があって、簡単なことばでまとめて話すこともできないです。ほんとに…この先どうなるんやろうと…。

Q2 精神障がいなどをかかえた方への影響について


病気をかかえた方のなかには、不安の度がすぎてしまっている方もいると思います。

 

だれでも不安になったり、いつもよりもしんどい、落ち着かなくて自然な状況ですが。
例えば、自分が感染症にかかっているのではないか、だれかにうつしてしまうのではないかとすごく不安になったり、そのことで、まわりの人への確認などを繰り返してしまったり。
(感染予防に)気をつけることは大事だけど、気にしすぎて生活の幅がせばまるときは、お疲れのサインかもしれません。手洗いや消毒に何時間も使って日常生活がまわらなくなる。まわりにも強要してしまったり、マスクをしていない人とすれ違っただけで不安が高まったり…感染するのではという不安で自分もまわりも外出できなくなったり…。
もしかしたら、だれかの陰謀[いんぼう]なのではないか…という考えにとりつかれてしまっている方もいるかもしれません。

 

変化はそれ自体がストレスですが、病気をかかえている方は、そのことでより不調になりやすいこともあります。
デイケアや作業所など、いつも通っていたところがお休みになると、生活のリズムも作りにくいです。普段なら、そこで仲間やスタッフさんと話をしたり、相談したり、解決していたようなことも、その場がないです。
家庭内で一緒に過ごす時間が長くなり、家族とぶつかってしまう…そんな悪循環も起きていると思います。ご家族にとっても負担が大きくなっています。

 

お酒がふえたり、アルコール依存症がふえることも心配です。

Q3 日々の生活のなかでできる工夫は?


まず、この生活は、ストレスがたまるもんや、と自覚しておくことが大事だと思います。

 

ストレスをためずに生活しようといっても難しいと知識として入れておけるとよいと思います。
その上で、次のような工夫があるかなと思います。

 

・いつもの習慣や日常をどこかに取り入れる

 

生活の変化を余儀なくされるなかでも、変わらない部分、いつもの習慣や日常をなるべく崩さないということを意識したいです。
私の場合は、朝はテレビをつけずにパンとコーヒーでいつもの朝食、夕方の公園への犬の散歩(スマホを持たずに!)をいつものペースで、などをつづけています。
ご飯を食べる、顔を洗う、出かけなくても着がえる。たいそうなことではなく、そんなことも生活のメリハリにもなっていいと思います。今まで通りの生活をするのが難しい今だからこそ、意識してやるのが大切です。

 

・生活リズムをととのえる

 

普段の生活リズムを守れると理想的ですが…朝起きる、昼動く、夜寝る。まずはこれを目標に。積極的に運動もどこかに取り入れたいです。
身体の健康、身体のリズムをととのえることは、こころの安定、安心にもつながります。
(参考リンク 》「先の見えない中であっても、日常の生活リズムには気をつけよう」 11か条のこころの健康維持のコツ、日本うつ病学会のサイト上に掲載)

 

 

・人とつながる

 

メールや電話やビデオ電話など、オンラインでも人とつながることを、いつもより少し意識したいです。そうして孤立を防ぎます。

 

なかには、家で静かにひとりで過ごすことが落ち着く人もいますので、それも勿論いいと思います。人とつながることを強調するメッセージが多いですが、スルーして、そのままのペースを大事にしてください。

 

オンライン飲み、というのもよく耳にしますが、ステイホームしていると断りにくいし…外で会うのとはちがう気づかいもしないとで、ぐったりしている人もいると思います。(そしてお酒でストレス発散自体も心配。)
わたしも、オンラインのコミュニケーションは向いてないです。聞き取りにくさだけでなく、顔がみえない、距離感がつかみにくい。知ってる人と事務連絡だけならいいけど、それ以外では苦手です。雑談や遊びが減って、面白いアイデアが生まれないですし…。

 

人づきあいにしても日々暮らすことにしても、それぞれの付き合い方を見つけていかないといけないですね。自分のキャラを貫いて淡々と生きることが大事なのかなと思っています。画期的なことじゃないけど、今、淡々と生きることがとても難しいので。

Q4 ステイホームのストレス
家が安全ではないときのこと…


ぎゃーとなる前に、こまめに早めに外に出た方がいいと思います。

 

様々なストレスが起きる状況に加えて、家族がずっと一緒にいることもまたストレスになります。
普段はいない人たちがいる。ごはん3食準備するのも大変。なにもかもはかどらない。余裕があるときは気にならないことも、目についてしまって…。

 

子どもにとっても、今までの生活とかわること自体がストレスだと思います。生活リズムがかわる、学校のメリハリがない。 外出制限で、遊べない、友達にあえない、勉強も部活もできない、大事なイベントが中止になった… など。
そして、親がテレワークで家にいたり、外出できずにずっと一緒にいることは、親子ともどもストレスになることがあると思います。

 

話し合ったり、ルールをいっしょに決めるなどが難しいときは、物理的に距離をとることを意識します。
ぎゃーとなる前に、遠くに出かける必要はないので、近くの公園でもコンビニでも、こまめに早めに外に出た方がいいです。
出かけられないときは、自分の世界にトリップ…youtubeをみるでも、録りためたビデオをみるでも、ガチンコにならない楽しみを見つけます。
(子ども、親子のストレスケアについては、国立成育医療センターの資料が充実していて見やすいのです 》新型コロナウイルスと子どものストレスについて

 

暴力の問題がある、DVや虐待の場合はとくに心配です。
ぎりぎり回避できていたことができない、行き場がない、相談先もない…という状況で。
暴力をふるう側も自宅にいて電話できない…といったこともありますが、メールやLINE相談窓口をひらくなど、官民ともに、相談体制の拡充に動き出しています。
暴力がひどいときは、110番を。
ひとりだけで抱えずに…SOSをだしていただけたらと思います。
》DV相談プラス|内閣府のページへ(11ヶ国語表示) 電話・メール:24時間受付、チャット相談:12:00〜22:00 )

 

まわりの人たちには…
ステイホームといわれているけど、いろんな事情があることへの想像を。いろんな家庭があることへ、想いをぜひ馳せてほしいです。
(わかりやすい理由がなくても… いろんな人がいることも…)

 

《自粛警察というタグができてしまうような…監視社会の雰囲気、よくないですね。自分もいつもよりも随分神経質になっていることを自覚しています》

 

公園の散歩だけでも、マスクしてないと、まわりの視線が気になります…。
許す許さへん、ではなくて、ほんとはみんなで、ふっとわれにかえって、「できてること探し」へ。そういう雰囲気にできたらと思います。

Q5 経済的な困難がメンタルヘルスに直撃


経済的な困難は、これから(今もすでに)、メンタルへルスに直撃、ものすごい影響がでてくると思います。
使える制度は使ってほしいです。

 

コロナ禍で収入を絶たれた人は、カウンセリングよりも、まず仕事を、お金を、というのはほんとにそうで…。
窓口の方の対応、手続きが大変だったり、混雑や順番待ちなど、申請で心折れそうになることがあっても…使える制度は使ってほしいです。

 

《ぷるすあるはのSNS発信では、直接はふれてないですが、政策について、思うことはいろいろあります。声をあげられる人が声をあげていかないとと今回特に思っています。SNSの声が反映されることもありますし…。》

 

申請の前に、だれかにちょっと相談できるとよいと思います。
通院している人だったら、病院のワーカーさん。通っている生活支援センターなどのスタッフさん。無料の生活相談、ホットラインなどを利用してみるのもありだと思います。
いざとなったら…
・わからないことがあってもとにかく窓口に行ってみてきいてみる(印鑑、身分証明書、口座番号がわかるもの、メモ・筆記用具を持参)
・窓口の人の名前を控える、言われたこともメモ
・だれかについてきてもらう(1人で行くより少し心強い、対応もちょっとちがうかも、社会的距離が気になる人もいると思いますが…)
対象外だと言われたら…「私が使える制度がありますか?どこが窓口ですか?」をきいてから帰ります。

 

申請主義では情報が届かなかったり、申請までたどりつけない方もいらっしゃるので、まわりの方が気がけて、声をかけていただいたり、いっしょにやっていただけたらと思います。

 

なお、私の場合は書類の記入のハードルが高くて…
枠の中にたくさんの文字をきれいにおさまるように書くとか無理やし、誤字脱字して、何度も消したり訂正印を押したりとかで、心が折れます…
パソコンで打つのも得意ではなく、パスワードのタイプで間違えて二度とログインできないとか… そんなんばっかりです。トホホ。

 

経済的支援等の情報

》生活を支えるための支援のご案内|厚生労働省

最初のページの目次で、支援制度全体をみれます。最後のページに相談窓口の記載もあります。

》新型コロナウイルス 支援情報まとめ(マネーフォワード)

視覚的にわかりやすいページ。条件でのしぼりこみも可。事業者向け支援情報のページもあります。
(個人向け情報はNPO法人Social Change Agencyの協力によるまとめ)

》生活にお困りの方へ|ビックイシュー基金

東京近郊、大阪、札幌、名古屋、福岡の情報中心に、生活上でのお困りごとを解決するための情報が掲載されています。民間の支援団体情報も。

Q6 情報過多対策について


はなれる、に尽きます。

 

流れてくる情報以上に、心配が先に立ってしまう、不安で落ち着かなくなる人がたくさんいると思います。不安や不調がベースにある状態だと、普段以上に情報の受け取りにも敏感になってしまいがちです。
情報自体も、不安をあおるようなもの、信頼性の低いものもありますから、情報から意識してはなれる、というのはとても大事なことだと思います。家族のなかで見るニュースをしぼるなど、だらだらと長時間ワイドショーが流れているといったことがないよう、協力しあえるとよいです。

 

ちなみに私は…
・ニュースは一日1回
・SNSから極力はなれる をやっています。

 

Q7 ご家族やまわりの方へ


もうすでにがんばっておられると思います…。

 

(病気などをかかえた)ご本人の負担もそうですが、まわりのご家族の負担も大きくなっています。
そもそも家族だっていろいろ大変なところ… 本人が落ち着かないとか、通い先がしまってずっと家にいるとか、介護の負担が増えていたり…。本人の体調などを気遣ってくださってありがとうございます。
ご家族がご自身へのねぎらい、いたわりを、そして、ひとりだけでかかえずに…とお伝えしたいです。

 

本人に対してできることは… 不安や落ち着かないかんじが高まっていることを、否定しないことは大切だと思います。生活の折り合いのつくルールを話し合って決められるといいと思います。例えば、手洗いのタイミングを決めるなど。

 

本人も、まわりに押し付けているな…と気づいたら謝るなど、お互いに少しあゆみよれたらいいですね。

Q8 最後にメッセージ


みんながしんどいからといって、我慢しなくていいです。
正直なきもちを、ことばにして、話してみるのがいいかなと思います。

 

 

世界中が落ち着かなくなっていて、あなたが落ち着かなくなっているのは、あなたのせいではなくて、だれのせいでもなくて、というのをお伝えしたいです。
みんながしんどいからといって、我慢しなくていいです。
不安が高い、あーお疲れ…、と自分で気づいて、言葉にして、だれかに話してみるのがいいのかな思います。
主治医の先生でも、電話相談でも(つながりにくいけど)、小出しに小出しに、だれかにこんな状態なんだと伝えられるだけでも、少し発散してほしいです。

 

(認定NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)さんより。コロナウイルスへの不安やメッセージを匿名で自由に書き込みができるフォームが開設しています 》書き込みのページ(グーグルフォーム) 5/6まで 》寄せられたメッセージのページ )

 

《 #コロナに負けるな のスローガンをみかけますが…》

 

勝ち負けになったらしんどいですね。
戦うものじゃない。
自分で言うのはいいとしても、社会全体でだすのはどうかな、と思います。
ここまでひろがり、だれにとっても身近なもので、どうも長いつき合いにもなりそう。
コロナに正直になる、ではないですが、大丈夫大丈夫、とかの嘘で固めずに、しんどいな、不安だなを正直に言える方がよいと思います。
そういう気持ちが「コロナに負けるな」というスローガンにふさがれてしまうのは、ちがうように思います。

 

(今日だけ 今日1日 刻んで進む)

ぷるすあるはからの新型コロナ関連情報発信


》【特設ページ】新型コロナウイルス関連の情報とアイテム集
》各団体が発信している「メンタルヘルス」関連情報を集約したページ
》2つのツイッターのひとつ(白アイコン)を、コロナ関連情報特化に
メンタルヘルス関連の情報を印刷して使えるアイテムにして発信(A4×2枚くらいまで)

 

試行錯誤しながら…上記のような情報発信をしています。
ちょっとほっとできるメッセージ。情報過多になりやすいところを整理。そして、イラスト入りの素材で、見て気づきになったり、実際に手を動かしたり、印刷して掲示したり…そういうアイテムを制作紹介しています。ピンクアイコンのツイッターで、一日一絵を毎晩つぶやいています( #チアキのらくがき )。突然の学校休校が決まった日から、なにかひとつ変わらず続けることをやろう、と決めてはじめた企画です。うっかり忘れた日もありますが、淡々とやってます。
長文最後までお付き合いいただきありがとうございました。(聞き手:キタノ)