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精神科の選び方 — 精神科の受診を考えている方へ part.2

精神科の選び方 — 精神科の受診を考えている方へ part.2
2020年3月27日 pulusu

ページにおこしいただきありがとうございます。
精神科の受診は、長いスパンで通うことも多いです。普段の生活では話さないような、踏み込んだ話をすることもあります。
ですので、安心して通えるところ、医師と出会えたらよいなと思います。しかし口コミが必ずしも当たるわけではなく…これがなかなか難しいというのもよく聞く声です。
このコラムでは、自分にあった精神科の病院選びのコツ・ヒントをまとめます。

※精神科の受診を考えている方へ第二弾です。第一弾は精神科の現状を知って受診するためのヒントをまとめています。
》精神科の受診を考えている方へ

目次


01 はじめに
02 通いやすさは大事
03 精神科医療機関の種類(クリニック・病院・総合病院の精神科)
04 専門性、治療プログラム?
05 専門スタッフの種類?
06 精神保健福祉センターを活用した情報収集のすすめ
07 医師との相性って?いい先生って?
08 病院を変わりたいと思ったら…
09 関連リンク

補足情報 精神科と心療内科のちがい(標榜科の話)

はじめに

 

病院選びを考えるとき、通いやすさは大切なポイントです。アクセスと診療時間が、自分のライフスタイルに合っているか?を考えます。
病院によって、専門や得意としている分野、行なっている治療プログラムに特徴があります。例えば、カウンセリングを行なっているかどうかや、アルコールや薬物などのアディクションの専門の治療を行なっているか、など。入院ベッドをもっているところ、ないところがあります。
どんな病状で受診を考えているかによって、病院選びが変わってきます。
「アクセスや診療時間情報」+「病院ごとの専門性や治療プログラム」は、お住まいの地域の精神保健福祉センターが情報をもっていますので、活用がおすすめです。

 

医師との相性、力量、病院の雰囲気なども大事ですが、これらは実際に行ってみないとわからないです…。
数回通ってみてどうもうまくいかないときは、変わるのもよいと思います(数回は必ず行かないといけないということではありません)
病院選びで何を優先するかは人によってちがうと思います。
現実的には、全ての希望がかなう完璧な病院はなかなかないので…
自分なりの病院選びのポイントが整理できるよう、以下くわしく説明していきます。

 

通いやすさは大事

 

定期的に通院するとなると、通いやすさは大事です。

・アクセス
…電車、のりつぎや混雑が苦手…という人は交通手段も考慮します 予約を取る前に試しに行ってみてもよいかもしれません

・診療時間
…ライフスタイルにあってるか考えます、夕方遅くまでやってる、土曜もやっている病院もあります

通院でくたくたになって続かない、はもったいない…。
遠くの名前の知られた先生よりも、近くの通いやすいところの方が続くというのもよくあります。

02. 精神科の3種類(クリニック・精神科病院・総合病院の精神科)

 

精神科の医療機関を大まかにわけると3種類です。

精神科メインの医療機関で

①入院ベッドをもたない「精神科クリニック・診療所*」

②入院ベットをもつ「精神科病院」

そして

③「総合病院の精神科」

 

入院治療が必要になるかもしれない病状のときは、入院ベッドのある病院を選ぶのもひとつの方法です。通院先はクリニックで、入院のときはベッドのある病院へ紹介でと、両方を使いながらの治療も一般的なことです。
入院ベッドのある病院だから必ず入院させられる、入院しないといけない、ということはないです。外来通院だけの方もいらっしゃいます。
総合病院の精神科は、身体の病気もあるときなど、両方を院内で連携して診察してもらえるメリットがあります。精神科だけの病院よりは通いやすいと感じる人もいるかもしれません。精神科の入院ベッドをもつ病院、ない病院あります。
精神科と心療内科のちがいについての説明は、ページの最後にしています。

》精神科医療機関受診についてQ&A|公益社団法人日本精神神経学会
医療機関ごとの特徴について、スタッフ構成や治療内容の特徴など、さらにくわしい説明があってわかりやすいです。

 

*診療所について
医療法では、医療機関は病院と診療所にわけられ、診療所は無床もしくは病床数19床以下の入院施設をもつものとなっています。大まかな分け方で書きましたが、正確に書くと… 「19床以下のベッドをもつ有床の診療所」もあります。

04 専門性と治療プログラム?

 

うつ病や躁うつ病、統合失調症など、代表的な精神疾患に対して、医師による一般的な診察と薬の治療は、どの精神科でも行なっていると考えてよいと思います。

 

専門性

・アディクション(アルコール・薬物・ギャンブル依存症など)

アディクションの問題をかかえている方は、アディクションの治療をやっていますと掲げているところへ受診するのがよいと思います。
でないと…精神科にかかったけれど、お酒や薬のことを言えないままに(聞かれないままに)診療が始まって、アディクション問題の治療に取り組めない、病状がよくならない…ということが意外と起きます。
グループ療法などアディクションの治療プログラムがあると、治療の選択肢もひろがります。
依存症を専門としている医療機関はこちらから検索できます
》全国の相談窓口・医療機関を探す(依存症対策全国センター)

・児童思春期

高校生以上は多くの精神科でみていますが、中学生、小学生はみていないことも多いです。子どもに特徴的な疾患や状態は、「児童精神科」を専門にしているところにかかるほうが安心です。
くわしくはこちらへ
》精神科には何歳から受診できますか? 子どもも診てもらえますか? 精神科受診Q&A
》子どものみなさんへ「児童精神科ってどんなところ?」(国立成育医療研究センター>子どもの心の診療ネットワーク事業のページへ)
》子どもの心の診療機関マップ|国立成育医療研究センター(診療内容・専門領域と地域での条件検索ができます)

 

そのほか…

認知症、てんかん、トラウマ、摂食障害、発達障害など、医師によって得意分野、専門分野があることもあります。

 

治療プログラム

・カウンセリング

医師の診察とは別に、カウンセラー(臨床心理士や公認心理師など)がカウンセリングを行っている精神科もあります。
保険診療でのカウンセリングを、適応をしぼって行っているところもありますが、自由診療=医療保険の適応外で診療以外のお金がかかるのが一般的です。

・デイケア

定期的に通って行うリハビリテーション治療のひとつです。日中通うデイケアのほかに、夕方以降のナイトケア、日中+夜のデイナイトケア、短時間のショートケアを行なっているところもあります。
社会復帰や参加の準備、生活リズムや居場所づくり、対人コミュニケーションの練習などが目的になります。
いわゆるアルコールデイケアと呼ばれるような、同じ病気をかかえた人を対象としたところもあり、デイケアによってさまざまなプログラムが組まれています。

さらに、次のようなことを行なっている病院もあります。

・グループ治療(集団療法)
・リワーク(復職支援プログラム/職場復帰支援プログラム)
・家族相談
・訪問診療
・訪問看護ステーションの併設

※その方の病状やタイミングにあった治療プログラムをアレンジすることになります。みんなに行うということではありません。いろんなプログラムをやっている病院の方がよい、ということでもありません。

05 専門のスタッフの種類?

 

病院によって、医師、看護師以外にも、いろんな専門スタッフがいることがあります。

・カウンセラー(臨床心理士・公認心理師など)…カウンセリングや心理検査を行います

・ソーシャルワーカー(精神保健福祉士PSW)…サービスや制度のスペシャリスト、経済的な支援、生活支援の調整、関係機関との連携調整などを行います

・作業療法士(OT)…遊びや創作的なものから日常生活のスキルまで幅広く「作業」を通して、その方にとってのよりよい生活を過ごせるように支援します。(入院やデイケアにいて、外来通院だけでは出会わないことが多いですが…)

など、精神科でもいろんな専門職がいます。

06 精神保健福祉センターを活用した情報収集のススメ

 

専門性や治療プログラム、専門のスタッフについて説明しましたが、これらを、ネットでひとつひとつ調べることはなかなか大変です。
そこで「精神保健福祉センター」へ電話をして情報を得るのがおすすめです。特に、その地域の医療機関情報に強いです。
これらの機関では、受診をした方がよいか迷うときの相談にものってもらえます。

 

精神保健福祉センターは、都道府県と政令指定都市に1箇所あります。

》全国の精神保健福祉センター一覧(厚生労働省のページへ)

※最新情報になっていないときは
[(お住まいの地域) 精神保健福祉センター]
で検索ください

 

電話相談の例)

数ヶ月前から、気持ちがふさぎ込んで仕事に行けなくなってしまい、不眠も強くて、精神科を受診した方がいいのかなと感じています。いくつか病院の候補を教えてください。
希望は、○○線の沿線だと通いやすいです。
医療費やお金の心配も大きいので… そういう相談もできるとありがたいです。
できれば…女性で話しやすい先生がよいです…

すらすらと上手に話せなくても大丈夫です。
電話する前に、<自分の状態と病院の希望について>紙に書き出しておきます。
病状や経過によっては、遠くても、あるいは予約待ちが長くても、専門のところに通いたい…という選択もあるかもしれません。紙に書き出した希望のなかでの、優先順位を、なんとなくでも考えておけるとよいと思います。

 

公の機関なので、一カ所どこかの病院をすすめることはしない(できない)場合もあります。希望に近いところをいくつか教えてくださいと尋ねるのはひとつの方法です。全くおすすめできない病院はふつう候補にあがってこないです。
候補がしぼれたら、病院に直接電話して今の状態をみてもらえるか、初診までの待ち時間や予約方法を確認してみるのもよいと思います。
口コミもみると思います。口コミはあくまでその人にとっての体験、感想という前提で活用ください。

07 医師との相性って?いい先生って?

 

いい先生とは?
…相性は人によるので、いちがいには言えないです…。
声のトーン、話し方、雰囲気…
話しやすくて一緒に考えてくれる先生がよいとか、バシバシ方針を決めてすすめてもらう方が安心するとか。ある程度喜怒哀楽を出してもらう方がいいとか、いつも淡々と診察処方してくれる先生がいいとか、いろんな方がいます。

やめておいた方がよいところ

・「あそこの病院は希望する薬をなんでも処方してくれる」という評判のところ(ネットでそういう情報がでまわっている)

プラスポイントかも…(人によります)

・一方的ではなく「どうしたいですか?」と希望をきいてくれる、確認しながら進めてくれる
・薬の説明、病状の説明をきちんとしてくれる
・不調を伝える→薬が増える、ではなく生活状況を確認したり、まず薬以外の工夫について話し合える

 

医師だけでなく、病院の雰囲気との相性もあります。病院によって患者さんの層がちがい、待合の雰囲気もちがいます。
例えば…デイケアや入院施設のある病院で、患者さん同士の知り合いが多かったりすると、外来もそんな雰囲気でガヤガヤしていることがあります。ビジネスマン風のスーツを着た人が多め(仕事を考えられない病状だと気後れする人も…)、待合に絵本やおもちゃがある(子ども連れでも通いやすそう)、気軽に話せる看護師さんがいる(ちょっとした相談もできて安心)、受付の人の対応がいい…
など人によって相性のポイントはいろいろです。

精神科は、血液検査や画像所見などで基準がわかりやすい病気とはちがう面があって、医師によって、薬の使い方や診断、治療方針etc かなり幅があります。
通い続けているけど全然よくならない、全然説明してもらえないといったときは、セカンドオピニオンや病院を変えることも選択肢にあがると思います。

08 病院を変わりたいと思ったら

 

病院をかわると決めたら、次に行くところの予約を先にとるのがよいと思います。
初診まで時間がかかることもあります。薬の治療を行っていたら、処方が切れてしまわないように、初診のときまでの薬はもらうようにします。
紹介状は、次に通院する病院での診断治療の参考になります。病院を変わることを正直に言えるとよいですが、言いにくい…というのもあると思います。絶対に言わないといけないということではありません。

新しく通院する病院では、これまでの通院歴は正直に話せるとよいと思います。言い出しにくくて紹介状はもらえていません、と正直に言って大丈夫です。
紹介状がないときも、お薬手帳は必ず持参するようにします。
病院を変わった理由(前のところの何があわなかったのか?)を聞かれることもあると思いますが、それは、今回の診療がよりよくなるよう前向きに考えるためです。
診療についての希望があれば正直に伝えられるとよいと思います。

 

特に初めての精神科受診のときは緊張していてうまく話せない、伝わらない…ということもよくありますので、病院を変わる判断は、2-3回は同じところに通ってみることをおすすめします。3回行ってダメなら、今のご時世、先生の顔色うかがわずに、かわっていいと思います。

 

病院を変えるのは何回までならokですか?
3つめの病院でもなんだかうまくいかないな…というときは、ちょっと物足りないと思っても、少し我慢して通ってみるもひとつの方法かもしれません。
精神科への期待値をもう一度整理してみるのもよいです。…例えば、長い時間話をしたい、はどこの病院でも現実的に難しいことが多いです。くわしくは、part.1の記事に説明しています。短い診療時間をうまく使うための伝え方の工夫もあわせて記載しています。

電話をかけてみた。実際に受診してみた。
そんなときは、ぜひご自身をねぎらってください。
少しでも病院選びの参考になり、つらい症状、状態がへることを願っています。長文最後までお読みいただきありがとうございました。

補足情報
精神科と心療内科のちがい

 

「精神科」
→いわゆる精神科

 

「心療内科」
→心と身体の両面をみるイメージ
精神科寄り、内科寄りのどちらの場合もあります

 

「精神科」と掲げている場合は、統合失調症、うつ病など、一般的な精神疾患全般を診察していると考えてよいです。医師も精神科医であることが多いです「精神神経科」と表記されることもあります。精神科と精神神経科は同じものです。

 

「心療内科」は、狭い意味では、心理的な要因が影響している身体の病気を主にみています(「心身症」といいます。過敏性腸症候群、疼痛[とうつう]性障害など)。広くは、心と身体と両方に症状がでるような病気のイメージです(やや雑な表現になりますが…)
実際には、いくつかの科が併記[へいき]されていることが多いようです。

 

「精神科・心療内科」
→ 一般的な精神科のことが多いです
「精神科」よりも「心療内科」の方が受診しやすいと感じる人もいるため、「心療内科」が併記されることが多いです。

 

「内科・心療内科」
→ 内科が専門のことがあります
軽症のうつ病など、一部の精神疾患のみ診療を行なっている、そのほかは精神科へ紹介といったこともあります。

 

多くの場合、病院のホームページに、対象としている病気や状態、担当医師の経歴や資格の記載があります。病院に電話をして、「こういった症状(病名がわかれば病名)で受診したいのですが…?」と確認してみるのもひとつの方法です。