「精神科の現状を知って賢く受診するコツ」をまとめたコラムにはたくさんの反響がありました!
》精神科の受診を考えている方へ
今回のコラムは『臨床心理士』についてです。
臨床心理士とは?
臨床心理士とカウンセラー、精神科医の違い?
臨床心理士が働いている場所、出会うには? etc 臨床心理士のつるちゃんからお伝えします。
※2015年公開の記事に追記しました
***
臨床心理士とは?
「臨床心理士」とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。
困難に遭遇したり、つらい状態が長く続くと、途方にくれて、希望が見えなくなることがあります。それでも、誰かに話を聞いてもらえるとほっとして力がわいてきたり、問題について話し合うと、今まで見えなかったことが見えるようになって、問題が解決することがあります。臨床心理士はこころの専門家として、じっくりあなたの話に耳を傾け、新たな道を探すお手伝いをします。
心の問題にアプローチをする人として、心理カウンセラーやサイコセラピスト、心理相談員などの名称で呼ばれている人たちがいますが、明確な資格があるわけではありません(日本臨床心理士資格認定協会より)。
臨床心理士は国家資格ではありませんが、公益社団法人日本臨床心理士資格認定協会(昭和63年設立)の資格審査[筆記試験と口述面接試験]を経て、初めて臨床心理士の認定を受けることができます。受験資格を得るためには原則として、大学院で所定のカリキュラムを修了しなければなりません。また、資格取得後は5年ごとに資格の再認定が必要になり、協会が認めた研修会等における発表や参加が義務付けられ、知識や技法の研鑽に努めています。
2018年4月1日現在で、32,354名の「臨床心理士」が認定されています。
※平成27年に公認心理師法が成立、平成29年9月15日に施行され,日本で初の心理職の国家資格として「公認心理師」制度が推進されることになりました。このコラムの最後に補足しています。
[臨床心理士の資格をとるにはその道の大学院終了+試験が必要です。こころに関する知識や援助技法の訓練を積み、心の専門家として、最も信頼性の高い資格です]
臨床心理士の仕事と倫理
こころに関する専門的な知識や技術を用いて、クライエント(相談者)の成長や回復する力を引き出し、クライエント自身で問題に取り組む、解決できるように援助するのが臨床心理士の仕事です。
クライエントが安心して話ができるよう、プライバシーの守られた空間で、決められた場所と時間の中で会うのが通常です。
しかし、クライエントはさまざまな思いを臨床心理士に向けることがあり、これを「転移」と言います。また、クライエントの話を聴く臨床心理士にも、クライエントに対してさまざまな思いを抱くことがあり、これを「逆転移」と言います。何とかして欲しい、何とかしてあげたい、という気持ちから、個人的で親密な関係を持つことへの欲求が芽生えたとしても、臨床心理士の倫理綱領では専門的契約関係以外の関係を結ぶことは固く禁じられています。
*対人援助の仕事を選択する人は、苦しむ人を救済したい、人から必要とされたい、人の役に立つことで自尊心を保つ、という気持ちを少なからず持っていることがあります。援助の関係は、傷つき、心細い状態にあるクライエントを援助者に依存させ、支配する危険性をはらんでいます。親密で個人的な関係をもつことは、クライエントの自立や成長を阻むだけでなく、援助者がクライエントに必要とされたいという欲求を満たすために、クライエントを利用することにもなりかねません。したがって、こころの専門家である臨床心理士は、クライエントの理解だけでなく、自身のこころについても自覚的であることが求められ、専門的契約関係以外をもつことが禁じられています。
[心理面接は、通常、決まった場所と時間の枠の中で行います(プライベートの場で会うといのは、専門的契約関係を越えたこと)。相談者自身の自立や成長のお手伝いをするイメージです。]
臨床心理士の4つの専門業務
①臨床心理査定(心理テストや面接を通じて、個別の問題や特徴を明らかにして、どのような方法で援助するのが望ましいかを明らかにする)
②臨床心理面接(面接援助技法を使って、的確に対応をする) ←一般にイメージするカウンセリング
③臨床心理的地域援助(特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場などに所属する人の心の健康や、地域住民の被害の支援活動を行うコンサルテーション活動を行う) ←災害時の地域住民のこころのケアなどがこれに含まれます
④臨床心理学に関する調査や研究
臨床心理士の働く分野
①司法や矯正分野(家庭裁判所や刑務所、警察など)
②教育分野(学校、教育相談室など)
③医療・保健分野(病院や診療所、保健所、精神保健福祉センターなど)
④福祉分野(児童相談所、心身障害者福祉センター、女性相談センターなど)
⑤労働・産業分野(企業内健康管理センター・相談室など)。
「臨床心理士」はさまざまな分野で働いています。活躍する領域はますます拡大しています。
臨床心理士と出会うには
自治体の発行する冊子には、子どもや女性、障害など問題や対象に応じて臨床心理士が相談に応じてくれる機関や施設が紹介されています。公的な機関では無料で相談をすることができます。公立の小学校・中学校・高校の多くにはスクールカウンセラーが配置され、通学している児童・生徒やその保護者であれば相談をすることができます。
すべての病院や診療所に臨床心理士がいるわけではありません。各施設のホームページに臨床心理士による心理検査やカウンセリングの記載がある場合もありますが、ない場合は直接連絡をして確認をしましょう。
医療機関でのカウンセリングは、医師の指示が必要になるため、まずは受診をして、担当の先生に尋ねてみてください。医療機関に併設された心理相談機関や民間の心理相談機関では、30分~90分程度、6000円~20000円程度の費用がかかります。
一般社団法人 日本臨床心理士会のホームページから、臨床心理士のいる機関を探すことができます。
臨床心理士ではありませんが、臨床心理士を養成する大学院の臨床心理相談室で、臨床心理士を目指す大学院生が、大学の教員の指導の下で、カウンセリングを行っています。臨床心理士を目指す研修の一環として行っているため、臨床心理士によるカウンセリングより、安めの料金設定になっていることが多いようです。
心理面接技法にはさまざまな種類*があり、臨床心理士の得意とする分野や技法がそれぞれあります。「困ったな」と思ったら気軽に相談して、自分の問題や希望に合った臨床心理士を探してみてください。
*臨床心理士が面接で行う「臨床心理学」を基礎とした相談・支援の方法
(日本臨床心理士会のHPより 来談者中心療法、認知行動療法、解決志向アプローチ、集団療法など20余の技法の説明があります)
http://www.jsccp.jp/near/interviewtop.php
関連記事
##精神科の受診を考えている方へ【精神科の現状を知って賢く受診するコツ】
追記)
平成27年に公認心理師法が成立し,平成29年9月15日に施行され,わが国初の心理職の国家資格として,「公認心理師」制度が推進されることになりました。
公認心理師が行う業務について公認心理師法では以下のように定めています。
「保健医療,福祉,教育その他の分野において、専門的知識及び技術をもって
- 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
- 心理に関する支援を要する者に対し,その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
- 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。」