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公認心理師/臨床心理士とは?

公認心理師/臨床心理士とは?
2021年9月22日 office

公認心理師/臨床心理士とは?

Q&Aスタイルで、ちがい、それぞれの仕事、どこで出会えるか、どうやってなれるか、カウンセラーとのちがい、について説明します。

 

 

Q:公認心理師と臨床心理士ってどう違うの?

 

元々は、心理療法や心理検査などの仕事をしている人を対象とした資格として、1988年に(公財)日本臨床心理士資格認定協会が設立され、その協会の認定をうけた心理の専門職として「臨床心理士」という民間の資格ができました。

 

その後、社会情勢の流れの中で国家資格化されることになり、2015年に「公認心理師法」という法律ができて「公認心理師」という資格が誕生しました。

 

そのため、元々臨床心理士の資格を持っていた人が試験を受けて公認心理師になったという両方の資格を持っている人も少なからずいます。
ただし、臨床発達心理士や産業カウンセラーなど臨床心理士以外の民間の資格を持っている方や、資格はないけれども心理療法や心理検査を業務として行なっていた方も試験を受けて公認心理師の資格を取得しているので、今は様々な背景を持つ方が公認心理師になられているのではないかと思います。

Q:どんな仕事をしているの?

 

臨床心理士の業務内容

大きく分けると以下の4つになります。

①  心理アセスメント

心理検査や対象となっている人の行動を観察したり、話を聞いたりしながら、どんなことが問題になっているのか、こころがどういった状態になっているのかを調べること

② 心理面接

心理カウンセリングや心理療法といった臨床心理学の知識や技術を用いながら、相談に来られた方の悩みを一緒に考えたり、解決したりしていくこと

②  臨床心理的地域援助

他の専門職と一緒に連携をしながら支援をしたり、相談に来られた人の環境がどのような状況なのか情報を整理して、個人と環境の関係を調整したりすること

④ 研究活動

臨床心理学に関連する研究活動をすること

(日本臨床心理士会HPを参考に作成)

 

「公認心理師」の主な業務内容

「臨床心理士」と重なる部分も多く、公認心理師法では以下の4つとされています。

① 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
② 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
③ 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
④ 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供

④は国家資格として広く国民の方々に貢献するため、心の健康に関する情報の提供や発信などが業務内容として強調されていると理解できます。

Q:どこに行ったら会えるの?

 

公認心理師/臨床心理士が活動する領域はかなり幅が広く、今も社会のニーズに伴って拡大しています。ここでは主な領域として働いているところをあげていきたいと思います。

 

医療・保健分野

精神神経科・心療内科・小児科などで心理検査や心理相談などを実施しています。緩和のケアや慢性疾患、高齢者の医療などの場においても患者本人や家族の心理相談を行っています。
精神保健福祉センターや保健センターでは、引きこもりの家族相談や、アルコール依存症・薬物依存症の家族教室、思春期相談、発達に関する相談なども行っています。

 

教育分野

学校でいろいろな事情で登校が難しかったり、集団行動に困難があったりする生徒やその保護者の心理相談に応じています。スクールカウンセラーや心理相談員などと呼ばれていることが多く、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・予備校・大学などに幅広い年代層に対応しています。
また、自治体によって設置されている教育支援センターと呼ばれる場所に勤務していることも多く、生徒や保護者の心理相談を行うほか、生徒が通室してきた際の学習や自立にむけた個別指導などを実施していることもあります。

 

福祉分野

福祉分野ではかなり幅広い領域で業務をしています。
まず、児童福祉の分野では児童相談所などで児童虐待や発達、子育てなどに関連して子供と関わったり保護者と相談をしたりしています。また乳児院や養護施設などで直接子どもと関わったり、一緒に働く職員へ関わりのアドバイスなどもしています。相談市町村の子育て支援担当課などをはじめとする子育て支援の場で発達の相談や子育ての相談に携わることがあります。
障害福祉の分野では身体・知的障害施設、療育施設、発達障害支援施設などで、当事者のアセスメントとしたり、ご家族の方からの相談を受けたり、職員へのアドバイスなどをしています。
また女性の方への支援として女性相談センター、DV相談支援センター、婦人保護施設、母子生活支援施設などで心理相談に応じていることもあります。
特別養護老人ホーム、養護老人ホームといった老人福祉施設で勤務していることもあり、デイケアのプログラムを担当したり、ご家族の相談に応じたり、職員へ関わり方のアドバイスをしたりしていることもあります。

 

大学・研究分野

臨床心理学の研究・臨床心理職の養成などをしています。多くの機関では、学生相談室や臨床心理センターなどが併設されており、教育分野で説明したように、学生の心理相談に応じたり、また地域住民の心理相談にも応じたりしています。

 

司法・矯正分野

家庭裁判所の調査官の中に臨床心理士や公認心理師の資格を持っている人もいて、少年事件や家事事件(離婚訴訟等)に関わっています。
また、鑑別所では少年の特性を踏まえた処遇を検討し(「法務技官」と呼ばれる職種の方が多いです)、刑務所でも、受刑者にカウンセリングをしたり、集団療法を実施したりしています。
警察では、少年非行に関する相談を受けているほか、犯罪被害者への支援なども行っています。

 

産業・労働分野

企業内にある「健康管理センター」や「相談室」などでその企業で働く職員の方々の心理相談に応じています。また外部EAP(従業員支援プログラム)と呼ばれる、企業で働く職員のメンタルヘルスに関連する研修や心理相談などを専門に実施する会社で働いていることもあります。その他として公共職業安定所(ハローワーク)や障害者職業センターなどで職業適性を調べたり、相談に応じたりしていることもあります。

 

私設心理相談

個人または組織で心理相談機関を運営していることもあります。「〇〇カウンセリングルーム」や「○○相談室」という名称などで開業し、自分のこと、家庭のこと、学校や職場のことなど、種々の心理的な悩みや課題の解決に取り組んでいます。来所だけでなく、メールや訪問、電話などによるカウンセリングを実施しているところもあります。

Q:どうやったらなれるの?

 

臨床心理士の資格は、心理学を専攻する指定された大学院修士課程を修了した後に資格試験を受けて合格すると、(公社)日本臨床心理士資格認定協会によって認定されます。
また、資格取得後は5年毎に資格更新審査が行われており、臨床心理学に関する知識や技術の研鑽のために研修の受講や研究などが義務づけられています。

 

一方、公認心理師は(一社)日本心理研修センターが実施する公認心理師試験に合格した後、登録申請をすることで公認心理師を名乗ることができます。
受験資格としては、大学及び大学院で法律に定められた科目を履修するか、大学で法律に定められた科目を履修したのちに、こちらも法律で定められた施設で一定期間の実務経験を経ることで受験資格を得ることができます。

 

現在は移行期間ということで、特例措置として心理臨床の実務経験が5年以上あり、現任者講習と呼ばれる講習を受講することで、受験資格を得ることができます。ただし、この特定措置は2017年9月15日から5年間に限られているので、2022年9月14日までに実施される試験しか受けることができません。
移行期間が終了した後は、大学と大学院を合わせて6年間、公認心理師として必要な知識と技能を習得するために科目を履修(実習なども含む)するか、大学で4年間必要な科目を履修した後、法律で定められた指定の機関で既定の実務経験を積んだ後で受験資格を得ることができるようになります。

 

移行期間のある背景ですが、これは元々資格を持たずに専門領域で働いていた方が、国家資格ができることによって今後働けなくなってしまうことがないようにという意味合いがあります。
例えば行政で新しい相談機関を設置する際、人員の基準として「有資格者の配置」などが義務付けられることがあります。この際、民間の資格を配置基準として設定することは公平性という観点から難しいので、国家資格の有資格者という方が配置基準としては設定しやすいということがあります。
ただ、既存の専門領域で働かれている方がそういった基準を設けられることによって知識と技能は持っているけれども資格がないために働けないということが生じてしまいかねないので、移行期間の間に資格を取得してもらうという流れだと理解してもらえると良いかと思います。

 

臨床心理士、公認心理師の資格に関しては下記のホームページなども参考にしてください。

》(公社)日本臨床心理士資格認定協会
》(一社)日本心理研修センター

Q:カウンセラーと公認心理師、臨床心理士って何が違うの?

 

基本的に「カウンセラー」は一般用語なので、資格を持っていなくても自分がカウンセラーであると自称すれば誰でもそう名乗ることができます。つまり、専門的な知識や技能を持っていなくても「カウンセラーです」と言ってしまえば、それは嘘ではないということです。
それに対して公認心理師や臨床心理士は専門の教育を受け、知識と技能を習得し、試験を受けて認定されないとそう名乗ることができないので、その点が大きな違いになります。

 

ちなみに「カウンセリング」という言葉もかなり幅の広い言葉で、心理療法に近い意味合いもあれば、こころに関連しない悩みの相談もカウンセリングと呼ばれています。よく美容院や化粧用品などの購入の際、事前に店員さんにどのようになりたいのか相談することを「カウンセリング」と表現することがありますが、それも別に嘘ではないということです。
なので、こころの悩みに関連するカウンセリングを一般的なカウンセリングと区別して表現するために「心理的カウンセリング 」とか「治療的カウンセリング 」と表現することもあります。

 

もし、民間のカウンセリングルームや私設の相談室などでカウンセリングをしていると表記している場合には、どのような資格をもっているのか、どのような内容のカウンセリングをしているのか、事前に確認しておけると良いかと思います。

 

 

おがてぃ(公認心理師/臨床心理士)