精神科で長年働いてきた看護師のチアキが、精神科の受診や治療、地域生活などの質問に回答するコーナーです。
*このコラムは「依存症と子育て」がテーマです。
某研修の場で、これまでの約20年の依存症の支援の経験を本として活用いただきました(チアキのヒューマンライブラリー)。このQ&Aは、そのときのやりとりを下書きにして、新たに編集を加えたものです。事例については、個人が特定されないように事実関係など変えています。
質問
子どもを叩いてしまう親御さんの相談です。子どものことが気になり、先回りして不安を取り除かないと不安。話をしていくなかで、その方の親御さんがアルコール問題をかかえていて、すごくつらかった経験があることがわかり、心理士につなぎました。これでよかったのか、他にできることがあったのでは…と思ったりもします。
チアキの回答
子どものことが気になって仕方がない… というお母さんの相談から、自身の親のアルコール問題のことまで、しっかりお話をきけるところが、素晴らしいと思います。
そんなことないと言ってもきっとお母さんは心配…。不安ではなれられない親もいるなかで、子どもが閉じこもっていなくて学校に行けている。学校に送り出せる力や相談できる力を持ってる。
そのときに考えられる最善の選択をされたのだと思います。
未来を考えるなら・・・(もしお母さんが別の支援者ととぎれることがあっても)・・・そのときにいつでもどうぞというフォローを。子どもにとっても親にとっても、添え木でいれたら素敵やと思います。
質問
子育て中の薬物依存症の方の相談にはどう対応したらよいでしょうか?
チアキの回答
ご質問ありがとうございます。
まず最初に、身構えずに、困りごとをきくと、子どもの発達のこと、授乳や食のこととかの、一般的な子育ての悩みのことが多いので、そこは、保健師さんの得意分野ですから、クスリのことだったらどうしよう…と身構えずにいつもの子育て相談の対応をしてください。
薬物関連の施設で、お話を聞いていると、
相談ごとがあっても・・・「薬を使ってたことがバレたら・・・」という不安で、保健師さんや、行政などで子育て支援を行なっている方には言えない、という声はよく聞きます。過去に使ってたことがあるから子どもの発達が心配というときに、言ったら子どもを施設に取り上げられるのでは・・・と思って言えない。
もちろん、使いたい欲求が入っても、「薬を使いたい…」って正直に言えない。
難しいけれど…それを言っても大丈夫、という雰囲気、間柄がつくれたら素晴らしいと思います。
わたしは「しんどいときに電話をくれてありがとう」を伝えます。
「薬使いたい? じゃあ5分話聞こう」って。
今日1日(クスリを使わない日)をどれだけ引き延ばせるか。ということを大切にしています。
質問
自覚のない依存について。シングルでまだ小さい子どもが2人います。 ずっとネットでゲームをやっていて、昼夜逆転、食事も作らない。先日は、子どもの熱発にしばらく気づけずに救急搬送になることがありました。本人はやることはやってる…と自覚がないようです。
チアキの回答
ご質問ありがとうございます。
子育てと依存症について、子どもの年齢が低いときには特に、本人が依存を認めるか認めないか、にはこだわらずに、「子どもが生きること」「子どもの生活のサポート」の視点に、全力でふりきる、とよいのではと思います。
この親子の例でも、依存症が…の視点は一度オールリセット、してみます。
親御さんによって、子育てのスキルが苦手な場合もあります。
はまるタイプの人は、決めたことにははまれることもあるので、例えばですが「毎朝、体温をはかる」とわかりやすく決めてみる。決めごとは、口頭ではなくて、残るもの、後で見返すことができるものでわたします。
そして、ほめまくります。
例えば…遅刻してでも保育園に行けたら100点。
できてないところがどれだけ目についても、できているところをとにかく見つけます。
担当ひとりだけではなく、機関のスタッフ総がかりで、親のいいところ、子どものいいところを見つけます。
ゲームにはまることについては、なにか本人にとってのメリットがあるはずです。ひょっとしたら他のストレス発散が苦手なのかも、それがないと子どもを叩いてしまうのかも…。とりあげるのではなく、ちがう視点をもってかかわってみるとよいと思います。
チアキ
関西→関東、精神科ひとすじの看護師。
ぷるすあるはの制作担当、絵本ではお話と絵を担当しています。