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依存症と家族ー地域生活Q&A(精神科看護師チアキのスキマ相談)

依存症と家族ー地域生活Q&A(精神科看護師チアキのスキマ相談)
2019年3月10日 pulusu

精神科で長年働いてきた看護師のチアキが、精神科の受診や治療、地域生活などの質問に回答するコーナーです。

 

*このコラムは「依存症と家族」がテーマです。
某研修の場で、これまでの約20年の依存症の支援の経験を本として活用いただきました(チアキのヒューマンライブラリー)。このQ&Aは、そのときのやりとりを下書きにして、新たに編集を加えたものです。事例については、個人が特定されないように事実関係など変えています。

シリーズ依存症と地域生活
・依存症と子ども
・依存症と子育て
・依存症とかかわり1
・依存症とかかわり2
・依存症と家族

質問

 

依存症の支援で、長い期間かかって・・・という話がでましたが、具体的なエピソードを教えてもらえますか? どんな経過でつながるのか、そこからどうなっていくのか・・・など

 

チアキの回答

 

ご質問ありがとうございます。私がこれまでに経験した家族相談で…家族だけで最も長いこと抱えていた方は、30年悩んで、山を3つ売って・・・という方がいらっしゃいました。

 

例えばダルク(薬物依存症のリハビリ施設)では、最初にご家族が相談につながって、それから5年くらいで本人がつながる、というかんじです。
長くやめ続けている人のことを、「オールドタイマー」と呼んだりしますが、出会ったことがあるでしょうか? 薬物をやめて安定するには…使ってた期間の3倍くらいかかるという話もあり、死ぬまで回復をしつづけていく病気なのかなと思います。

 

依存症は、気がつかないままに、ちょっとずつ進行していく病気です。家族にとってもそうで、気が付いたときには、家族全体でぐるぐる・・・ということになっています。
全員が一度に回復するのは無理なので、ぐるぐるから一番に出られそうな人の手を、よいしょ、とひっぱるイメージです。まずは片足だけでも、出られそうな人から。

 

長いこと家族の中だけでぐるぐるしているので、初めて相談にみえるときに、家族も何から相談してよいのかわからなくなっていることがほとんどです。時系列もおかしいし、関東の施設なのに、電話してきてる家族は九州の人で薬物の本人は北海道にいて・・・なんてことも。
まずは問題の整理、交通整理から始めます。
お金の問題、逮捕された、身体の具合がすごく悪いとか、生活のこととか…
餅は餅屋で得意な機関との連携もふくめて「情報」「行き先のカード」をいかにたくさん持っておけるか。依存症の支援の鍵です。

 

相談をうけるときに、使った使わない、飲んだ飲まないに一喜一憂しないための病気の知識はもっておきます。
飲むのも使うのも…だって病気ですから。

質問

 

家族の距離感についてどう思いますか? 距離をとることに罪悪感のある人もいたりします

 

チアキの回答

 

質問ありがとうございます。家族の距離感は、それぞれだと思います。
親や家族が依存症の問題があったとして全員がしんどい思いをしつづけているか・・・?というと
している人は受診したりなにか発信したりしているから見えるし
していない人は見えないしわからない、と思います(していない人もいる)。
その人のキャラも大きいです。それは、家族の病気があっても、なくてもかもしれません。

 

家族が、仲良いにこしたことはないけど、ネガティブな気持ちも当然あったり、気持ちの幅や、波もあります。
日本では、家族だから面倒をみないと・・・という風潮があるけど、
離[はな]れる選択も応援。離れられる力。他の人とつながる力。音信不通だから失格ではないと思います。こうあるべき、ではなく、今の距離感がその人の今のベスト。
さらによい選択がないかな?は、家族以外にもたくさんのサポーターをもって、応援です。

 

そして、子どもは子どもの時間をもてる、ということを大切にしたいです。

 

絵本のラストシーンは、ハルくんの家族の集合写真を描きました。
こんなハッピーエンドにはならないよ…という声をよくいただきますが…。それは10年後、20年後かもしれないけど…家族のひとりひとりがどんな選択をしても、離れる選択をしたとしても、それぞれの道でハッピーにくらせたらという想いをこめました。

チアキ
関西→関東、精神科ひとすじの看護師。
ぷるすあるはの制作担当、絵本ではお話と絵を担当しています。

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