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『生きる冒険地図』出版記念イベントレポート(2019年6月1日カフェスロー)

『生きる冒険地図』出版記念イベントレポート(2019年6月1日カフェスロー)
2019年7月11日 pulusu

「今日と明日をつなぐ冒険」
— やさしい空気感から冒険への勇気が生まれる

取材記 writer Yo

 

プログラム

前半(18:30)

・冒険前のこころえ:たのなか先生のまじめなお話
・冒険のはじまり:チアキの『生きる冒険地図』のお話

後半(19:30)

・凸凹冒険トーク:動画撮影&制作うらばなし
・キャンプファイアー:絵本朗読×avinylgirlによるミニライブ
・そして冒険はつづく

 


アートな空間、絵本から飛び出してきたような出演者たち

 

 

2019年6月1日、今日と明日をつなぐ冒険~『生きる冒険地図』出版記念イベントが行われました。
病気をかかえたご本人やご家族、精神医療保健福祉関係者、教員、アートのつながりの方など、50人をこえる方々が参加しました。
会場のスローカフェは、チアキさんの絵がたくさん飾られ、ゆったりしたアートな空間。そして、司会者や出演者のみなさんは、色とりどりの帽子をかぶって、まるで絵本から飛び出してきたようです。そんなあたたかい、やわらかな雰囲気のなかで、イベントは始まりました。

 

「冒険前のこころえ」では、田野中恭子先生が、精神障害のこと、親が精神障害の子どもの状況、そして子どもにどんなサポートができるかをやさしく解説。精神障害があり受診している人は、30人に1人。でも、4人に1人が精神障害をもつということ、イギリスの調査では、精神障害のある親の子どもも4人に1人とのこと。こんなに多くの子どもたちがサポートを必要としているのだということが、すーっと頭に入ってきました。

 

『生きる冒険地図』に込めた思い―チアキさんのトークから

 

 

続いては、チアキさんによる『生きる冒険地図』(学苑社)のお話です。
『生きる冒険地図』は、親が病気だったり、さまざまな事情から頼る大人がいない、そのなかでもがんばって生き抜いている子どもたちに向けた本。
落ち着かない家庭で育ったチアキさんが、試行錯誤しながら編み出した「今を生き抜く」ための知恵と工夫・精神科看護師としてであった子どもたちと一緒に考えてきた工夫の数々。これらを凝縮して、1冊の本にして子どもたちに届けたいという思いから誕生しました。
すべての文字と絵は、チアキさんの自筆。手づくり感たっぷりの、いつも持ち歩けるサイズの本です。

 

たとえば、ご飯がない時に、自分でご飯を炊いたり、缶詰や冷凍食品の上手な利用の仕方、忘れ物をしてしまったときの対応法。SOSを出してもいい大人を見分けるコツや、大人の力を利用する方法。悪い大人に車に連れ込まれてしまった大ピンチのときに逃げる方法も伝えます。子どもが生き抜く力を信じているからこそ、伝えられる内容ばかりです。

 

 

チアキさんは、トークで、本づくりに込めた思いを語りました。

 

…この本は、まずは大人に手にとってほしいです。
子どもたちの工夫を知ってもらえたら、子どもを頭ごなしにしかったりすることもなくなります。
少しちぐはぐな服を着ていても、おおらかに見ることができます。
“愛があってもお弁当がつくれない”家庭に育ち、コンビニ弁当をお弁当箱に詰め替えて工夫する子どももいるし、ちがった工夫をして持ってくる子どももいます。それを、“親に愛情がない”という見方ではなく、“子どもたちに知恵があるんだ”という見方ができれば、子どもたちは安心できます。
小さい頃のチアキは、斜めから物事を見る子どもでした。“心を開いてくれない”という見方をせずに、フラットな関係を増やせたら、子どもは人生を歩む冒険に出られます。
生きる冒険地図には、子どもが困っていることが書かれているから、この本を、子どもとかかわるチャンス(きっかけ)にしてほしい。子どもにふられてしまうかもしれないけど、そんなときはがっかりしないで(笑)。
子どもがいつでも読める場所に、この本を置いてほしいです。

 

制作秘話―知られていないから、安心できる

 

後半は、ぷるすあるはとPVプロボノによる動画「親が精神障害 子どもはどうしてんの?」の制作秘話。
制作にかかわったディレクターの宮原契子さん、演出を担当した内田英恵さん、田野中恭子さん、チアキさん、そしてチアキさんが小学校の時の担任教師・木伏広明先生が、動画に込めた思いや、伝えたかったことを語りました。

 

 

木伏先生は、チアキさんを担任したときのことを振り返って語りました。
「ぷるすあるはの活動を聞けば聞くほど、自分はチアキに何もしてあげられなかったとつらくなります。チアキの家のこと、どんな思いをしているか、まったく知らなかったです。…けれども、もし知っていたら、チアキはかえって嫌な気持ちになって、私を拒否したかもしれませんね」

 

その言葉にチアキさんは、「ばれないように一生懸命隠していたから、わからないのが当たり前! 気づいてくれなかったから逆に安心できました。学校も好きではなかったけど、家よりはマシぐらいな気持ちだった。だから、怒られない保障がある空間はとてもよかった」と語りました。

 

木伏先生は、忘れ物をした子どもたちのために、文房具などを入れた箱を、教室の後ろに置いていました。学校の準備を十分にすることができず忘れ物が多かったチアキさんは、その忘れ物箱に助かったそうです。
木伏先生からチアキさんにはこんな言葉も。
「チアキ! 生きる冒険地図のなかで、一箇所、自分は間違ってると思う。『忘れ物はしかる前に理由を聞いてください』とあるけど、忘れ物は怒ることちゃうやろ。この前提がおかしい。忘れ物して困ってるのは子ども自身。困ってる子どもを怒ってどうする。」

 

このようにさまざまなエピソードが語られ、木伏先生のやさしさと子どもが安心できる空間の大切さが伝わってきました。

 

 

動画の制作メンバー、内田さん、宮原さんからは、自身のぷるすあるはとの接点や、それぞれの専門分野から何を大切に何にこだわったのかが語られました。さまざまなプロが力を合わせ、どうしたら自分たちの伝えたいことが伝わるのか―いまを生き抜いてがんばっている子どもたちに思いを馳せながら、たくさんのアイデアを出し、議論を重ねてきたことが伝わってくるお話でした。
いよいよ納品というときには、「ほんとにこれでいいの?ほんとに納品なの?」とちょっと寂しいような気持ちにもなったとのこと。

 

 

そのあとは、avinylgirlの演奏をバックに、チアキさんが絵本『ボクの冒険のはじまり』(ゆまに書房)を朗読しました。

 

「お父さんとお母さんがケンカをするのはボクのせい?」と悩む小学生のリク。保健室の先生と安心できるひと時を過ごし、「ボクの好き」を見つける冒険を始めます。リクの悲しさや、一歩踏み出す勇気、先生のやさしさが、演奏とともに胸に迫ってきました。

 

そのあとは、avinylgirlが「はなむけ」を演奏しました。作詞作曲はボーカルの川嶋さん。動画『親が精神障害 子どもはどうしてんの?』にも登場する印象的な曲です。
川嶋さんが歌う1つ1つの言葉に、「一緒に生きる仲間が見守ってくれるからこそ、明日を信じて、今日を大切に生きることができ、一歩を踏み出せる。それは大人でも同じことなんだ」と実感しました。

 

 

あたたかいまなざしと空気感

 

最後のあいさつでチアキさんは、こう語りました。
「言葉じゃなくても、やさしく、あたたかいまなざしと空気感があれば、子どもも大人も生きていける。私は木伏先生と会話はそれほどしていなかったけれども、教室にやさしい空気・空間があったから生きていくコンパスを手に入れました。このようなやさしい空気感が、もっと広がってほしい」
この言葉に、一番大切にしなければならないことを改めて教えられた思いでした。

 

 

大人は「子どもがどんなことで困っているかを知りたい、何かしなければならない」と思うあまり、子どもに細かいことまで根掘り葉掘り聞きだしてしまうことがあるかもしれません。また、自分が考える方向へ導こうとしてしまうことも多いのではないかと思います。
けれども、まず大事なのは、安心できる空間であり、子どもの力を知り、信頼すること。子どもへの見方を変えることなのだと思いました。
子どもと一緒に工夫を見つける冒険、自分自身の“好き”を見つける冒険をしていきたい――。
安心できる仲間と安心できる空気に包まれながら、自分らしく自分にできることを探し、さらに発信していく勇気を共有した、かけがえのないひと時でした。(writer Yo)

参加された方からのメッセージ

 

あたたかい空気の中でとても優しい気持ちになることができました。素敵な時間をどうもありがとうございました。

 

とてもステキなイベントでした。ちあきさんの作品もエネルギッシュですばらしかったです。ありがとうございました。

 

チアキさんのこと、初めて知りました。素敵な絵とすてきなメッセージですね。とてもいい時間をすごさせていただきました。ありがとうございました。応援しています。

 

娘と二人で参加しましたが、とても感動しました。絵本ライブは子どもの心目線になったり親目線になったり、途中から涙になってしまい、写真が撮りたかったのですが撮れる状態でなくなりました。
そして、その後のライブ。成美さんの歌とやさしいサウンドでさらに涙。心の中が洗われたような気持ちです。素敵な活動に出会えて、本当にありがとうございました!本当によかった!

 

子どもの頃から今も生きづらさを感じながら生きています。今は訪問看護をして働いています。生きづらさを感じながら生きている人、子どもたちに何かしたいと思っています。ぷるすあるはさんの活動を必要としている人に届けるお手伝いが少しでもできたらと思っています。

 

チアキさんとは昨年PARC自由学校のアートクラスの同級生でした。教室のチアキさんはいつも手を動かしていてすばらしいイラスト、ドローイングを描いていて、しかもその作品がすばらしくいつもびっくりしていました。今日はそんなチアキさんとは違う。別人のようなチアキさん。教室では口数の少ない小声の人だと思ていましたが、朗読も心のこもった語りで自分の子供時代を思い出しました。

 

不登校のことについて質問させて頂いた者です(サインを頂いたちあきです)。今、成人している何人かの、かつて学校に行けなかった方々の顔を思いうかべながら質問させて頂きました。
今日のチアキさんのお話、そして川嶋成美さん達の歌で、いつかその人が伝えることのできる道具(言葉だったり、表現だったち・・・)を持つ勇気を持てるよう、ただそばにいながらかおを傾けたり傾けなかったりしながらいられたらと思いました。有難うございました!

 

今日はありがとうございました。ほっこりとした会でしたね。本当にお疲れさまでした。(まだ続きますね)。また、明日から子どもとお母さんたちのためにがんばろうと力をもらいました。

 

普段、時々Webで拝見していた原画に生で出逢えたのが一番です!!(三つ目の子が好きです。その次が包帯の子です。)
アクリルの立体感も相まって、子どもたちの目が悲しんでいるようにも怒っているようにも周りを引いたような悟ったような気持ちで見ているような・・・絵を見る時のコンディションによって表情が違って見えます。
この素敵なひととき、あっという間でした。ありがとうございました!!

 

 

学校の教員です。チアキさんをはじめ、きらきらして、エネルギーたくさんのみなさん、優しい空気感の参加者のみなさん。子どもも大人も自分らしくすごせる世の中が少しずつできていく、そんな気がしました。

 

今回のイベントに参加をさせていただき、今まで、患者対象ではありましたが、家族への対応も必要であることを再認識できました。
親が障害があるから親のことが言えないという国ではなく、障害があるからこそ話せるという国になるようになったら良いのになと、考えました。本当にありがとうございました。

 

いつもインターネットなどを通して見ています。チアキさんのイラスト、世界観、ふいんき、本当に大好きでファンの1人です。ぷるすあるはさんの活動も私自身の力になり、心から応援しています。たくさんの絵や作品をみて、心がポカポカになりました。絵本をよんで頂いて、涙でました。ありがとうございました。

 

今日は本当にありがとうございました。良い時間が過ごせました。

 

東さんがおっしゃってたようにぷるすあるはのコトはもっと世の中に知ってもらっていいはずだと思っています。個人的に拡散をいっぱいしたいですといいながら私もとっても伝えるの苦手ですけど。

 

生きる冒険地図、子ども食堂に置いておきたい。保健室にもあるようにしたい。

 

心のカギを開くのがとても上手な企画でした!!ありがとうございました。み~んな弱い部分をもっていると思うので、補い合ってみ~んな生きやすい場所ができるといいな~と思います。

 

アートあり音楽あり、朗読あり、お話ありの素敵な時間でした。私もアートを通して障害と向きあっているので、もっとお話をききたくなりました。精神障害をもつ子どもの立場でもあるので、展示のキャプションは心に響きました。

 

家庭のことを知るとか理解するというよりも、優しい大人として居ることが良いのだなと思いました。役にたつ知恵を教えてくれる大人になるためにどうやったら学校の先生が読んでくれるだろう・・・と考えています。

 

改めて、参加くださったみなさま、本当にありがとうございました。

 

イベントのあとしばらく、「はなむけ」が脳内リピートしていました。1ヶ月あまり過ぎた今でも、イベントの余韻が残っているような気持ちです。魔法の効き目が長いです。
動画とアートと朗読と音楽とトーク、盛りだくさんのコラボ、初めての企画。どうなるやろうとドキドキでのぞみ… 結果、全てが必然の素晴らしい時間でした。いっしょに作ってくださった、魔女宮原さん、内田さん、たのなかセンセ、木伏センセ、藤木さん、avinylgirlの川嶋さん、佐藤さん、須藤さん、高橋さん、ありがとうございました。裏方で支えてくれたみなさんにもありがとうございました。

 

ぷるすあるはは、日々の活動にこつこつと取り組みながら、次の企画も…またどこかでできたらと思っています。この空気を大切に、次の場所へと、全国へと繋ぐことがぷるすあるはの役割だと思っています。長文お読みいただきありがとうございました。冒険はつづく。(キタノ)

 

リンク

》動画『親が精神障害 子どもはどうしてんの?』公式ページ

》展覧会レポート

》avinylgirl  川嶋成美(Vo.)佐藤信二(Gt.)須藤あきら(Ba.)高橋洋祐(Perc.)

制作スタッフ

プロジェクトリーダー、CD(クリエイティブディレクター):宮原契子
演出、編集:内田英恵
撮影:髙橋聡、中野貴大
音楽ディレクター(録音、MA):藤木和人
作曲、演奏:川嶋成美、藤木和人
アルハ(声):佐藤信二
事務局プロジェクト担当:髙橋克人
(以上PVプロボノ)

イラスト、衣装、小物:チアキ


イベントのなかでもふれましたが…
ゲストのおひとり、動画にも出演されているたのなか先生が発起人をつとめるクラウドファンディング が現在進行中です!(9/25まで)
ぷるすあるはも発起人チームのメンバーとして全力応援しています。