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Q44. 発達障害グレーの娘の高校受験ーゆるゆる子育て実践編

Q44. 発達障害グレーの娘の高校受験ーゆるゆる子育て実践編
2022年12月12日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:発達障害グレーの娘の高校受験
年れい: 中学生

質問内容

初めまして。
高校受験を控えた中学3年生の娘がいます。
娘は2年生の12月ごろから不登校気味になり、3年生になってからはほとんど学校行ってません。
はっきりした原因は無く、思い当たるのは中学入学に合わせて遠方へ引っ越したこと。また、小規模校からマンモス校へ入学したことによる拒否感、横並びが良しとされる中学生活への抵抗感くらいです。
不登校になってからは寝る、テレビを観る、スマホを見続ける生活。勉強は一切していません。
娘の育てにくさは4歳頃から感じていました。
癇癪[かんしゃく]持ちで泣き叫んだり、就学後は宿題が嫌で毎日3時間くらいかけて泣きながらしていました。
書字や読字も人より遅く、お勉強には悩まされました。
スクールカウンセラーや児童相談所など、相談できるところは回ってきました。WISCを小学5年生の時に受け、視覚優位でワーキングメモリなどが低く凸凹があると言われました。しかし、発達障害とは言われませんでした。

中学校では1年生のうちはまあまあ頑張っていました。
行き渋りが目立つようになった頃、療育センターの予約をお願いし、やっと今年の5月に受診できました。
そこでいろんなお話をし、医師から娘は解離[かいり]の症状があると言われました。自分の気持ちを『分からない』としか表現しなかったり、自分の気持ちが分からない状況(分からないようにしている)のではないかとのことでした。

娘は反抗で期もあり、言葉は乱暴で挑発的。ネガティブな発想で、周囲を敵とみなす傾向があります。思い込みも激しいです。

そんな状況ですが、進路を決めなくてはなりません。
本人はアイドルになりたいから、中学校卒業したら韓国のダンススクールは行きたいと言ってました。
経済的にも本人の自立面でも非現実的なので、高校だけは卒業して欲しい旨を伝えました。時間をかけてですが、本人も考え、全日制高校への進学を希望することに。

全日制と通信制と並行して検討していましたが、最終的に本人が全日制を受験することを選びました。合格するためには勉強を必死でやらないといけないことを説明しました。しかし、勉強をする様子は全く無く、注意すれば脅し文句が返ってきます。今の学力では合格するはずないのですが、何を言って危機感を抱いてくれません。

危機感を抱けない点のほか、時間の逆算ができず、遅刻ばかりする点など、やはり発達障害なのかなと思います。そんな娘に全日制高校はそもそも無理なのではないかと思うようになってきました。
先生もおっしゃっているように、親の私は娘の将来を思って一般的な学校に行かせたいと願ってしまいます。
その気持ちが自分自身を追い詰めているのもわかっています。もう自分がどうしたらいいのかわかりません。

娘のことを可愛く思えず、口もききたくないし、視界に入ってほしくないと思ってしまいます。声を聞くのも嫌なくらいです。

私はまた娘を愛おしいと思える時が来るのでしょうか。
娘の未来を思うと不安で光が見えません。
私はどのように娘と向き合えばいいのでしょうか。
下に妹と弟がいます。そちらへの影響も心配です。

おがてぃの回答

 

とても大変で苦しい状況ですね。
メールを読んでいて僕自身も心がギュッとしめつけられるような感じがしました。進路に関しては、絶対的にこれが正しいという答えはないと思うのですが、ここでは僕なりに理解したことと、どうしたらもう少し気持ちを楽にしてお子さんに関わっていけるかということについてお伝えできればと思います。

 

まず、お子さんと一緒に療育センターに受診され、解離の症状があると言われたとありましたが、時々相談を受けていると暴言や暴力などの問題がある方にこの解離の症状を伴っていることが今までありました。
実際に暴言や暴力をふるっている当事者の方にこのあたりを聞いてみると、暴言や暴力をふるっている間の記憶があいまいだったり、なんとなく現実感が薄い認識をしていることがありました。それはそもそも暴言が生じる前の状態が、あまりコンディションがよくなかったり、あるいは辛い現実と向き合うことができなくなっている状態だったりすることがあって、それを避けるために解離が生じてその間の言動はコントロールができない状態になっているのではないかと僕は考えています。

 

そもそも解離という現象をどのように理解するとよいかと言いますと、一番身近な例としては、小さい頃ひざを擦[す]りむいた際に、子どもが保護者から言われる「いたいのいたいのとんでけー」というおまじないではないかと思っています。実際にひざを擦りむいているのだから痛いのは当たり前なのですが、意志の力で「痛くない」と思いこむことで痛みを紛らわすという行為がちょっとした解離になります。人はだれしもそうやって日々をやり過ごすことがあるのですが、これが極端になると日常生活に支障を生じることがあります。特に相談者さんのお子さんは発達の凸凹があり、学校の勉強、特に宿題が苦手で、集団での授業も得意でなかったとすると、そのどうしようもないしんどさを解離で紛らわすということしないと日々がやり過ごせなかったのではないかと思うと、今まで相当大変だったのではないかと思いました。

 

ただ、この解離は使っていけばいくほどより解離しやすくなるので、辛い、しんどい、苦しいと感じる前に解離をしてしまうと、そもそも何がしんどいのか、どうしてしんどいと思ったのかということすら認識ができなくなってしまいます。だから結果としてどのように問題に対処したらよいかがわからなくなり、次も同じことが起こった場合もまた解離せざるを得ないということが生じます。

 

そのように考えると、将来のことを考えたり、受験の勉強をするということは非常に解離が起こりやすい状態であるのではないかと思います。なぜなら、それを考えただけで不安になり、やればやるほどこれで大丈夫なのだろうか…という気持ちになるからです。なので、相談者さんをはじめ周囲の人はとても心配で、早く勉強してほしいという気持ちになるかと思うのですが、それはお子さん自身も薄々わかっていて、わかっているからこそ、より解離しやすい状態になり、結果として勉強することができないという状態になるのではないかと思いました。

 

では、一体どうしたらよいかというと一番は「不安を軽減する」ということだと思います。全日制の学校に行ってほしいという相談者さんのお気持ちは親御さんとして間違っているというわけではなく、むしろ幸せを願ってのことだと思うのですが、すでに感じられている通り、ではお子さんにそれが合っているのかというとまた悩ましい部分があります。そういった不安がある中でお子さんと向き合うと、お子さん自身も不安定なのでお互いに不安が共鳴しあってしまい、より辛い心情になってしまうのではないかと思いました。
だとすれば、いまはむしろお互いに共鳴しあわないように少し距離を置いた方が不安は軽減されます。そして、不安を煽[あお]ることで何かに取り組むのではなく、お互いにうまくいったから、これだったらできそうだと思ったからということで勉強や日々の生活のことなどに取り組んで、少しでも成果が出たらそれを手掛かりにまた進めていくという、悪循環ではなく良循環のサイクルを作っていくことが大事かと思いました。

 

たぶん、いま相談者さんに「お子さんのできているところを見つけてあげて誉[ほ]めてあげてください」と伝えても、それは難しいのではないかと思います。見たくないし、口もききたくない、声も聞きたくないという状態であれば、その状態で関わっても良いことはないと思うので、関わりは必要最低限にして、むしろ相談者さんご自身少し気持ちに余裕が持てるようセルフケアをしてもらった方が、結果としてお子さんとうまく関われる機会が増えるのではないかと思いました。
長い人生で考えれば、親子の関係がぎくしゃくしてしまうことはあるかと思います。ただ、それが一生続くかと言えば必ずしもそうではないですし、そもそも親子の関係は年齢や環境とともに変化していくものです。あまり無理に関わろうとせず、お互いに許容できるほどほどの部分で関わって、あとは起こった結果を粛々[しゅくしゅく]と受け止めて対処していくくらいでも良いのかと思いました。
不思議な話ですが、そうやって無理なく付き合っていくと、逆に関係が良くなったりすることもあるので、あまり期待し過ぎずに取り組んでいけると良いなと思います。受験に対しても同様で、今のお子さんでも無理なく進学できるところを検討していけるとよいかと思いました。そして、先のことを考える前に、まずは今楽しく過ごせているか、穏やかに過ごせる時間はあるかというところから始めていくと、お子さんや相談者さんだけでなく、弟さんや妹さんにとっても良い影響があるのではないかと思います。

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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