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Q34. 感覚過敏のせいで子どもとの生活がつらいーゆるゆる子育て実践編

Q34. 感覚過敏のせいで子どもとの生活がつらいーゆるゆる子育て実践編
2022年3月5日 pulusu

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル: 感覚過敏のせいで子供との生活がつらい
年れい: 小学1-3年

 

質問内容

 

私自身にASDがあり精神障害者保健福祉手帳を所持しています。私は大きな音、まぶしい光などが苦手ですが、6歳の娘が元気いっぱいで押入れから床に飛び降りたり、大声で歌ったり家の中で騒がしくします。集合住宅なので周りの部屋に迷惑なことを説明し注意していますが、なかなかやめません。また私は物を汚す、壊す、失くすということも苦手で、娘が物を荒っぽく扱うたびにくどくどと注意してしまいます。

 

私が感覚過敏ですぐ注意するので娘にも申し訳ないのですが、私も娘との同居がかなりストレスで精神的につらいです。心療内科で漢方を処方されていますが、娘がいないときしかホッとできません。娘のことは好きだし幸せになってほしいですが、私と一緒にいていいのだろうかと思ってしまいます。娘が行きたいという場所にはなるべく連れて行くようにしていますが、私は外出も苦手なので、帰ってくると疲れ果てて感覚過敏も酷くなり、イライラしてしまいます。

 

保健所に相談し、施設や里親宅での短期預かりも紹介されたのですが、知らない場所に行き知らない人と会い、いろんな手続きをするということ自体が大きな負担なのと、預けられたことを娘が悲しむのではないかと思うと心苦しく、決断できません。娘が小さい時事故で夫を亡くし母子家庭です。娘を預かってくれる親戚もおらず、娘の出す声や物音にビクビクしながら我慢する毎日です。このままでは娘の成長にも良くないのではないかと心配です。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。
ご自身の感覚の特性によってお子さまとの関わりに困り、悩まれているのですね。大変難しい問題だと思いました。こういったばあい、これが良いという答えのようなものがあるわけではないと思っているのですが、相談内容を読ませていただき僕自身が思ったことをお伝えできればと思います。

 

まず、親子の関係という点で考えると「お互いにとって無理のない関係を築いていく」ということが大切なのではないかと思っています。乳児などになるとどうしてもこちらがお世話をしないといけない部分もあるので、親御さんにまったく無理がないということは難しい部分もあるのですが、今はひとりの人がずっと子育てをしなくてはならないという社会ではないので(厳密にいうと昔もそうだったのだと思いますが…)、パートナーやご家族、あるいは様々な社会資源を活用して少しでも無理のない状態に近づけていくことが大切なのではないかと思っています。
なので、お子さんがしたいと思うことと相談者さんにとって許容できる範囲を考えて、折り合いの合わないところで他の人や社会資源を頼って補い、それでも難しい場合は「そういうこともある」と思って、またどうするか考えていくというスタンスが大切なのではないかと思いました。

 

その上で相談者さんだけがお子さんへの関わりを考えるのではなく、いろんな人にどう関わっていったらよいか、どう工夫していくとよいかを相談していけるとよいかと思います。相談者さんは普段相談されている方はいらっしゃいますでしょうか? ご自身の主治医の先生や通っている医療機関にいるスタッフ、あるいは学校の相談員さんなど普段からやりとりしていて「この人だったら話しやすいな」と思う人に相談できればと思います。
「知らない場所に行き知らない人と会い、いろんな手続きをするということ自体が大きな負担」ということでしたので、その場合には「知っている人に一緒に相談に行ってもらう」「事前に連絡しておいてもらう」「どう相談したらよいかを相談しておく」などしておけると、手続きなどに対するハードルも下がるかと思います。かつて相談していたけど、最近相談していないなぁという人であっても、良い機会ですので再度相談してみてはいかがでしょうか。

 

また、ご自宅でできる関わりの工夫についても簡単にお伝えしておければと思います。
よく家族内での困りごとを相談される際には親子で「距離を置く」という対応をお伝えすることがあります。それぞれが冷静さを保ち、イライラしないようにするために自分の時間や空間を確保するということなのですが、案外それをすることは難しいことが多いです。理由としては気になってしまうとつい相手にいろいろ言いたくなってしまうのと、距離の取り方がよくわからないからです。

 

なので、距離を置くポイントしては「気になる前、普段から距離をとっておく」ということが望ましく、距離の取り方も「一緒にいる時間を減らす」「会話する回数を減らす」「少し離れた場所に座る」「一人で過ごす時間をつくる」などがあります。
こういったことをお伝えすると「子どもがかわいそうなのではないか」とお話しされる方もいらっしゃるのですが、僕自身は無理に一緒にいてけんかになるよりはむしろ良いと思っています。そして、関わるときにしっかりと愛情を持って関わり、そうでないときは自分をケアする時間として使ってもらう方がお互いにとって無理のない好ましい関係になるのではないかと思うからです。
ご自宅ですと、空間が一緒なので一人で過ごす時間が作りにくいという場合には「お風呂はひとりで入る」「子どもが寝た後に一人の時間をつくる」逆に「朝少し早く起きて一人の時間にする」などがあるかと思います。また同じ場所にいても、それぞれが別のことをするというのも有効です。イアフォンをしてラジオや音楽などを聴いて自分の世界にたまには浸るなどをしてもよいかと思います。

 

大切なことは家族といってもいろいろな家族があり、それぞれにとって程よい関係性というのは異なるということです。それは家族の数、人の数だけ違います。なので、相談者さんとお子さんにとって一番程よい関係をこれから見つけていくという気持ちで取り組んでもらえればと思いました。

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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