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Q33. 軽度知的障害、ADHDがあり、最近、強迫性障害がひどくなってしまいましたーゆるゆる子育て実践編

Q33. 軽度知的障害、ADHDがあり、最近、強迫性障害がひどくなってしまいましたーゆるゆる子育て実践編
2022年2月22日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル: 軽度知的障害、ADHD.があり 最近 強迫性障害(洗浄行動)があり 病院に行ったことで 意識が強まり、ひどくなってしまいました。
年れい: 小学4-6年

 

質問内容

 

元々 不安を感じやすい性格で 最近 手洗いが多くなってきて 本人も 泣いたり困っていたので かかりつけの児童精神科へ 連れて行ったのですが 更にいろんな嫌だったことを思い出してしまい(3年前、苦手な子が家の中で触れた場所) 洗浄行動が多くなり、家の中も 歩く場所、触れる場所の制限が増えてしまい、思うようにできないと苛立ち「死にたい」「皆死ね」など言うので 関わり方が分からず困っています。

児童精神科の先生からは 次回 薬を変更する、洗浄行動を見ないよう部屋を離れることを勧められました。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。お家の中でお子さんがこのようなご様子だと、親としてもどのようにしてあげるとよいのか悩みますよね。今回は強迫性障害の症状のあるお子さんへの関わりについて少しお話ししたいと思います。

 

まず、そもそも強迫性障害というのはどういう病気かというと、自分でも本当はそんなことないし、ばかばかしいと思っていても、ある考えやイメージが繰り返し頭の中に浮かんだり(強迫観念といいます)、何度も同じ行動を繰り返してしまうため(強迫行動といいます)、生活するのがちょっと大変になってしまうことを言います。

 

「ある考え」というのは「手が汚れているんじゃないか」「鍵を閉め忘れたんじゃないか」「誰かを傷つけてしまうんじゃないか」というように考えてしまうことで、すごく不安な気持ちになります。そしてその不安な気持ちをちょっとでも解消しようとして手を洗ったり、鍵が締まっているか確認したりするという流れになります。

 

難しいのは「本人も本当はそこまで気にしなくていいということがわかっているのについやってしまう」ということで、自分で自分の行動をコントロールできなくなってしまっていることで、他の人に注意されたりしても、逆効果になってしまうことがあるところです。なので医療機関などで治療を受ける必要があります。

 

また、この病気は時々家族が巻き込まれるということがあり「代わりにドアノブを拭いて!」「鍵が締まっているか一緒に確認して!」など強迫行為を一緒にするよう求めてくることがあります。

 

家族も心配なので、「それで不安が解消されるなら…」と一緒にしてしまうことが多いのですが、実はこれは確認をすればするほど、余計にそれが気になってしまうということで症状が悪化してしまうことがあります。そして、はじめはいいのですが、次第に確認する回数や頻度が増えたり、もっとエスカレートして(例えば業者を呼んで消毒作業をするよう言ってくるなど)しまうことがあり、家族もその対応でへとへとになってしまい、家族関係が悪くなってしまうことがあるのです。

 

なので、家族はお子さんのそういった症状に巻き込まれないようにしていく必要があり、メールをくださった相談者さんが主治医の先生に言われた「洗浄行動を見ないよう部屋を離れる」というアドバイスも、こういった意味合いがあるのではないかと思いました。

 

では、家族としてお子さんにどのように関われるとよいのでしょうか。
ポイントは
① 強迫性障害という病気についてよく知る
② 巻き込まれないように関わる
③ 強迫性障害以外のストレスになっていることを減らす
の3つがあげられます。

 

「強迫性障害という病気についてよく知る」というのは、こういった強迫観念や強迫行為があると時々「私たちを困らせようとわざとやっているのではないか」「単なるわがままではないか」と捉えられてしまうことがあるので、そうではないということをよく理解するということです。あくまで病気の症状としてそういった言動があるということで、決してお子さんの性格などの問題ではないということを理解しておくことが、お子さんをサポートしていく際にとても重要となります。

 

また、病気をよく理解すれば、何をどうサポートすればお子さんの助けになるかもわかりますし、どの程度家族が関われるとよいのかもわかってくるかと思います。病気を知るためには主治医の先生から説明をよく受けることや当サイトの強迫性障害のページも参考にしてもらえるとよいかと思います。
》強迫性障害[きょうはくせいしょうがい] – 子ども情報ステーションby ぷるすあるは (kidsinfost.net)

 

「巻き込まれないように関わる」というのは、先ほどもお伝えしましたが家族が確認行為に巻き込まれ、家族関係が悪化してしまうのを避けるということがあります。ただ、症状によっては、なんでもかんでもお子さま自身に任せるということも難しい場合があるかと思います。
強迫性障害の治療は少しずつお子さま自身が自分の考えや行動をコントロールできるようにしていくことが治療目標になり、例えば「手を洗いたくなっても5回に1回はしないようにする」「手を洗いたいと思ったら拍手をして気を紛らわす」など数を減らしたり、別の行動に置き換えたりするようなアプローチしたりします。
そういった際、どこまで親が手を貸して、どこまでは本人に任せるかは治療の進展具合にもよるので、主治医の先生に相談しながら、家族がしてもよい範囲を確認しておけるとよいかと思いました。また、上手くいかないことでいら立つこともあるということでしたのでそういった場合の対処法も確認しておけるとよいかと思います。

 

ただ、外来での診察ですと、なかなかこちらのききたいことを短い時間ですっと質問することが難しいこともあります。その場合は事前に判断に迷うことをメモなどにまとめて、その場で読み上げたり、先生に渡したりして忘れずに質問できるようにしておけるとよいかと思います。

 

「強迫性障害以外のストレスになっていることを減らす」ということについては、強迫観念や強迫行為はストレスによって病状が悪化することがあるので、それらを減らすことによって症状が軽くなることがあるということになります。
「軽度知的障害」「ADHD」「元々不安を感じやすい性格」というお話でしたので、学校や日々の生活などでお困りになったり、ストレスを感じたりしていることがあるかもしれません。また「更にいろんな嫌だったことを思い出してしまい(3年前、苦手な子が家の中で触れた場所)」ということでしたので、もしかしたらお友達関係で困ったことがあるのかもしれません。改めてお子さまが今何に困りや苦手さを感じているのかを見直してみて、それらを軽減できる方法がないかを検討してみるのもよいかと思いました。

 

この病気はなかなかご家族にとっても関わりが難しい病気かと思います。なのでまずは「症状があってもそれなりに生活していける」ということを目標に、相談者さんご自身のセルフケアも大切にしていただきながら、家族もつかず離れずの距離感で関わっていけるとよいかと思います。

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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