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Q19.思春期のADHDのある娘の子育てが難しいーゆるゆる子育て実践編

Q19.思春期のADHDのある娘の子育てが難しいーゆるゆる子育て実践編
2020年3月19日 pulusu

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:思春期のADHDのある娘の子育てが難しい
年れい: 中学生

 

質問内容

発達の障害と、知的のボーダーギリギリ正常の娘の子育てにまいってます。
中学2年生なのですが 高校も県外でひとり暮らしする!とか、出来ないなら勉強も生活もやる気出ないとか言い出してもうお手上げです。

中学の先生や友達からも呆[あき]れられ孤立し、中一の三学期と中二の一学期は不登校にもなり、支援級の情緒学級に入ったのですが、何とか毎日 頑張ってるね!すごいね!と娘をなだめたり娘に気をつかうことをがんばりすぎて私までうんざりしてきました。

不登校になってしまった半年は二次障害でうつ状態になり 毎日毎日仕事も休んで寄り添ってきました。
学校にはわがままな親子だという感じでサポートはもらえませんでした。将来のために勉強すると言い出して塾にかよいだしてはみたものの、要求がエスカレートしてくる娘の事がほんとに嫌になってしまいました。

わたしも発達の障害の傾向があると診断され先の見通せないことが苦手なので、突拍子のないことをする娘に寄り添っていくことに限界を感じてます。

ネットやスマホも注意しても使いまくられて 家の中が ぴりぴりする空気は苦手なのに ぴりぴりするほど注意して分からせないと 空気を読めない娘には危機感が伝わらなくて でも娘には伝わらなくて悲しいです

 

 

おがてぃの回答

 

メールをいただき、ありがとうございます。
思春期のお子さんへの関わりに悩まれる親御さんは多く、お話を伺う度に大変だと感じます。さらに今回はADHD、知的ボーダー、二次障害としてのうつ、不登校なども合わさっていたとなれば、なおさら関わりには気をつかってこられたのではないかと推測しました。本当に日々お疲れ様です。

 

今回メールをくださった方に限らず、発達的な課題のあるお子さんに対して、親としてどのように関わったらよいか悩まれている方は多いかと思います。特に思春期以降は本人の意思をどの程度尊重し、どのくらいはこちらから言ってきかせた方が良いのか、バランスがとても難しいと感じている方は多いのではないでしょうか。

 

個別性の高いことなので、一概にこうした方が良いということはなかなか言えないのですが、ひとつの目安としては「お互いに無理のない距離感で関わる」ということがあるのかなと僕は思っています。そしてそのためには2つの視点が必要だと考えています。

 

その視点のひとつとしては「健全なあきらめ」ということがあります。

 

お子さんに発達的な課題がある場合、なかなか我慢ができなかったり、周囲の状況に対する本人の理解が追いつかなかったりすることがあると思います。それをどうにかしようと本人も親も頑張るのですが、もともと持って生まれた苦手なところがあるので、いろいろ工夫したり、手をかけたりしたとしても「できないことはできない」ということがあり得ます。

 

なので、ある程度はそれをすることは難しいと「あきらめる」ということが必要なのですが、この見極めが親だけでは難しいのです。なぜなら普段からずっと一緒に生活しているので、なかなか客観的に子どものことを評価することが難しいのと、本人の希望をどうにか叶えてあげたいという気持ちがあるからです。

 

こうなってくると親だけで何かを判断するのは難しい状況でもあるので、子どもに関わってくれている先生や支援者の方々からアドバイスをいただきながら、本人が現時点で一体、何がどのくらいできるのか客観的に考えつつ、本人と親のできることを具体的に考えていけると良いかと思います。

 

もうひとつの視点としては「親という役割を見直す」ということがあるかと思います。

 

「親というのは子どもの面倒をみるものである」という考えが日本では一般的な価値観、あるいは文化として根付いているかと思います。しかし、どの程度面倒を見るかは個々の状況によって違いますし、そもそも親が面倒をみきれない場合だって普通にあります。親だけではどうしても難しいという場面でも、親も周囲の人も「親なんだからもっとしつけろ」「親なんだからもっと我慢して面倒をみろ」などと無意識的に思ってしまっていることがあり、それが親子の関わりを大変にしてしまうことがあるのです。

 

でも、本来は親にも親の人生がありますし、そもそも一人で子どもの面倒をすべてみるということは難しいのです。なので、子どもの要求に親がすべて応えなくてはならないことはありません。できる範囲で応えて、無理な時は無理だと言ってもよいかと思います。それで子どもが怒って暴れるようであれば、その時は一時的に距離を置いて、お互いに少し冷静になる時間を作ることが大切ではないかと思います。その際には親だけでなく、いろいろな人の手助けを借りながら子どもへ関わっていければとなお良いです。

 

また、親として子どもにいろいろと言ってしまうことがあると思います。そして、それには理由があります。

 

親として子どもに「現実をみろ」というのは、将来のことを考えて地に足のついた人生を送ってほしいからです。親として子どもに「なぜをそれをしてはいけないのか」とくどくど言ってしまうのは、子どもが将来自立できるようになってほしいからです。つまりは子どものことを心配し、将来困らないようにしてあげたいからという気持ちからです。

 

ただ、こういった声かけが必ずしも子どものためにならないことがあります。子ども自身が自分で気づかなくては意味がないこともありますし、言い過ぎて関係が悪くなってしまい、日々の生活が楽しくなくなってしまうこともあるからです。

 

「お互いに無理のない距離感で関わる」というのは「日々の生活が楽しく過ごせる」ということでもあると思います。将来のことはわかりません。学校のこととか、生活のこととか、仕事のこととか、いろいろなことが心配で不安に感じるかもしれません。でも、それによって普段の親子の関係が苦しい、辛いものになってしまうのは違う気がします。むしろ日々の生活の延長に将来があるので、今を楽しんでいった方が、将来も良い方向に進んでいくのではないかと僕は思っています。

 

メールを読んでいますと親子でいろいろと将来について考え、意見が合わずに対立したり、ケンカになったりしている様子が伺えます。大切はことなので、よく考えることは大事なのですが、それで関係が悪くなってイライラが積もり積もってしまうと、あまり良い方向にはなかなかいかないのではないかなぁと思います。そう言ったときはなるべくお互いに1人の時間を作ってリフレッシュし、そのうえで無理なくできることからはじめていけると良いかと思います。

 

それは何気ないことで構いません。「夕食を食べる」「一緒にテレビを見る」「おしゃべりする」など、2人で落ち着いて過ごせる時間を作るところからはじめて、2人の関係が少し良くなれば、それに伴って将来のことも少しずつ話し合っていけるようになると思います。

おがてぃ
普段は行政機関で相談員をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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