障がいをもつ親の子どもの相談・居場所・宿泊場所をつくるーこどもソテリアの新たなチャレンジ
東京都江戸川区で、障がいをかかえた方への保健福祉に関するさまざまな事業を行なっているNPO法人東京ソテリアさん。枠にはまらない事業のひろがりと、ピアサポートが特徴で、現在新たに、「精神疾患をもつ親とその子どもの家族まるごと支援事業」を立ち上げているところです。模索中の新たなチャレンジについて、既存の事業とあわせて、精神保健福祉士の高田さん、臨床心理士の中西さんにお話を伺いました。
(インタビューは、6月下旬、オンラインで行いました)
ソテリアの事業(サイトより引用)
・東京ソテリアハウス
・地域活動支援センター はるえ野(権利擁護事業、高次脳機能障害支援事業)
・東京ソテリア・エンプロイメント
・ホームヘルプステーション ふれにあ本舗
こどもソテリア ←NEW
主な事業
1.障がいをもつ子どもを対象とした、短期入所事業・日中一時支援事業
2. 障害をもつ親の子どもを対象とした相談および日中の居場所と宿泊場所(親子ともに滞在も可)
いろんな子どもたちがひとりでも、親子でも、グループでも集える場に
―新たに始められる「精神疾患をもつ親とその子どもの家族まるごと支援事業」について教えてください。
(高田さん)
今年の5月より、2階(さんさんハウス)では、障害のあるお子さんの短期入所事業と日中一時支援事業が始まっています。
受給者証(障害福祉サービス受給者証:障害者総合支援法に基づいて運営している事業所の福祉サービスを受けるために必要なもの)によるお泊まりや日中過ごせる場所となっています。
1階(サンハウス)では、こころの病をもつ親とその子どもたちへの支援を始めていくところです。
ここは、そうした子どもたちが、相談や日中遊びにこれたり、休みに泊まりにもこれる場所です。親も一緒にきてもいいし、子どもたちだけでもいい。制度上のサポートではないけれど、スタッフがいて、休息の場所が作れたらと思っています。
また、1階は車椅子のお子さんも入りやすいので日中の活動場所として使うこともあるでしょうし、子ども劇団などのグループも始まっています。ここではいろんな子どもが集える場所になったらいいなと思っています。
》こどもソテリア
(建物、なかの様子が、動画で紹介されています)
地域で、いろんな人たちとのかかわりの中で
―既存の事業、お二人が普段勤務されている、江戸川区にある「はるえ野」(地域活動支援センター)での子ども、ヤングケアラー支援について教えてください。
(中西さん)
これまで、ヤングケアラーという枠組みでは、あまりみてきていませんでした。
障がいのあるご本人が、思えばヤングケアラーだった、「病気のお母さんをみてきていた。」というのはかなりあります。
(障がいをかかえた)親御さんの引っ越し、入院、イベントのときなどに子どもに会うことがあります。もう大人になっている子どもさんたちです。
自分もいろいろな体験から傷ついて障がいを負っている人たちもいれば、社会的な地位を築いてきて、とてもしっかりと生きてきたように見える人たちもいます。親御さんの面倒をみてきたから「かわいそう」ということではなく、自分を育ててきている人も少なくないです。
幼児期、小学校低学年の子どもとのかかわりはとても大事に感じています。真っ暗闇のなかにろうそくの火がともるような感覚をみいだしたり、自分の気持ちをそのままに表現できる機会など… 子どもさんの小さいときに大事にしたい体験などを守る活動をしたいと思っています。
江戸川区での子どもの支援をしている方々からの聞き取りで大事だなと思ったのは、当事者の人と専門職だけではなく、ボランティアさんの力が役立っているということです。たとえば、家庭に入っての食事づくり。食事を一緒に作ったりすることなどを通して仲良くなって、なかなか伝えにくい困りごとを表現したり、時には保健師さん、ケースワーカーさんなどを活用しての必要な支援にもつなげていくこともできる。はるえ野の依存症のグループでもみんなで一緒に食べることや楽しい時間を過ごすこと、自分を語ることを大切にしています。
これから、四谷(こどもソテリア)の実践の中でも、やっていけたらいいなと思っています。
子どもの演劇を実践し始めていますが、楽しいようです。子どもの頃から身体や言葉に乗せて、感情表現をしていくのは大事なことだと考えます。
オンブズマンの活動のように、また、ぷるすあるはのように、
子供たち自身が世の中に向かって、意見を発信していくことも重要だと考えます。
私たちは、いろいろな夢を実現できたらいいなと考えています。
(高田さん)
大学で社会福祉をご専門にされている先生が協力してくれていて、そこの学生さんや院生の方などもたくさんかかわっています。子どもにより近い年齢で自然に遊べていたりします。
また、外国籍のスタッフが、ご飯をつくったり子どもとふれあい、ここにかかわる様々な人同士がサポートしあっています。
地域のなかで、いろんな人が集まる場所は、(四谷の方でも)ひきつづき大事に作っていきたいです。
親がだれかと仲良くしている姿を子どもがみる
―改めて… 四谷の、新しいチャレンジについて教えてください。
(高田さん)
一階部分サンハウスでは、親や家族のケアでちょっとつかれている子どもたちに届いて、ふらっと立ち寄れるような工夫はこれからです。地域の支援者の方々等から地域のニーズを教えてもらいながら作っていきたいと思っています。
さまざまな子どもと出会うなかで、家族への支援についても考えています。ご家族も休める場所、話せる関係をつくること・・それぞれのストーリーに想いを馳せられるようになりたいです。
(中西さん)
いろんな専門家や知識のある人が、親御さんのことを意識せずに責めてしまっているときもあります。子どもさんにとっては、いろんな葛藤があっても、親のことを大好きだったりもします。ひとりでも、親御さんを理解して、親御さんと仲良くしている人の姿をみるのは、子どもはそれだけでも癒されるかもしれないし、親御さんも助かりますよね。
そういうわれわれスタッフを育てていかないといけないと思っています。対等に理解しあえる。法人がピア性が強いので、それを生かして行けたらいいなと思っています。
―親がだれかと仲良くしている姿を子どもがみる、というのはすごくいいことだと思います。
場所としては、10人前後入れる空間とのこと。安心してひとりになれる時間と空間があるだけでも、少し元気になれる子どもが、親御さんも、いるのではと思います。スタッフがいるなかで親子で一緒になにかをできるのもよいし、ひとりになれるのも、どちらも大事ですね。
(中西さん)
自分のままでいい場所があるとちがいますね。
言葉が大事な時代だと言われているけれど、空間にいるだけでほっとできるもの。言葉でふれ合っていく部分と、そうではない関係もつくっていけたらいいのではと思っています。
おもしろがってちゃいけないけど…?
―いろんな団体さんに話を聞きにいかれたりネットワークを作りながら、枠組みのない事業を立ち上げられて… チャレンジがすごいなと拝見しています。行政や公的機関ではできないこと。走りながら、考えながら、走っていかれるのかなと。
(中西さん)
手探りのところもありますが、だからこそ届かないところが探せるかもしれない。
心配なところも教えてもらえたら助かるし、いろいろ勉強しながらやっていこうと。
気持ちだけはすごくあります。
ピアの団体ですごくエネルギーもあります。若い人の力って、柔軟だし、すごいです。いろんな人たちの力を使いながら生まれてくるのかなと希望をもっています。
江戸川区は、子ども支援に力を入れていますし、そことつながっていきたい、そこからも学んでいきたいと思っています。どういうふうに安全を守るか教えてくれます。
学校さんとも、話し合いができてきていて、一見ずつ大事に関係を深めていきたいです。
―おもしろいとチャレンジされているのはすごいなと思います。
子どもたちの健康な部分を育てていくようなかかわりをしていきたい
―おわりに、読者の方へお伝えしたいことがあればお願いします。
(高田さん)
最近、ヤングケアラーという言葉が注目されるなか、大変さやしんどさがクローズアップされることも多いと感じます。去年、いろんな人から話をきいて感じるのは、その大変さや違和感を子どもが話したいときに話せる場所があるといいということです。子どもが役割をがんばっていることは様々な形で支えていきたいと思うのですが、そこだけに注目し過ぎないようにしたいなとも思っています。
その子の全体に寄り添って、子どもたちの健康な部分を地域でともに育てていけるようなかかわりをしていきたい、と思っています。
ぜひサンハウスにあそびにきてください。
ご案内
こどもソテリア「サンハウス」
新宿区四谷一丁目
お問い合わせ先:
03-5879-4970
kodomo@soteria.jp
はるえ野の「子育て電話相談」
おもに江戸川区および近隣の区にお住まいの精神障がいのある方が中心に利用されています。
コロナ禍で来所が難しい方にはオンラインの相談も行っています。
精神障がいをかかえた親と小さい子どもが立ち寄れるような活動も、コロナ禍なので少人数ですが、はじめています。
地域活動支援センターはるえ野
江戸川区春江町2-41-8
03-5664-6070
おわりの追記
事務所の壁の絵にもずっと注目してくださっていました。
「絵をみているとほっとする…なんでしょうね。大人でもなにか感じますよね」
チアキ「絵の説明ってうまくできないんですが…これは、いろんなことを考えている子どもたちがちょっとみせる涙の絵…かな?」
座談会を終えて
大きなエネルギーで動いている枠組みをこえたチャレンジで、すごいなあ…現場はどんなかんじなのかな?と思っていましたが、スタッフさんが楽しそうにされている姿が印象的でした。利用者さんにもこの温かく楽しい雰囲気は伝わりますね。
スタッフも利用者さんも、お互いに安全安心でその場を過ごせるような工夫や枠組みは大事だと思います。この先の展開に注目しています。
(コロナが落ち着いたらうかがいます)
「子ども虐待防止オレンジリボン運動 新型コロナウイルス感染症対策下における子ども虐待防止に資する活動への助成」を受けて行っています。