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親や家族が逮捕、刑務所に入ったときの子どものサポートの絵本

親や家族が逮捕、刑務所に入ったときの子どものサポートの絵本
2018年1月27日 pulusu

家族や大切な人が、刑務所に入ることになったときの、子どもたちのサポートをテーマにした絵本を読みました。

The Night Dad Went to Jail (Life’s Challenges)

著:Melissa Higgins
イラスト:Wednesday Kirwan
出版社::Picture Window Books (2014/4/1)

 

タフなテーマですが、絵を描くことが好きな主人公のスケッチは、スクールカウンセラーやクレヨンに助けられて、怖くて悲しくて大変な時間を、なんとかやりすごす方法を見つけていきます。
この本を最初に手にとったとき、肌触りがよくて手に馴染むなあと思いました。表紙のしっとりとした紙質。正方形のサイズ感とあわせて、装丁が素敵で、丁寧に作られている本という印象を持ちました。
日本とは背景や文化も違いますが、以下、ストーリーを追いながら、ポイントをメモします。

 

逮捕の夜のこと

 

パトカーのサイレンにライト、近所の人がのぞいている光景。お父さんに手錠がかけられ、妹たちも泣いていたこと。
警察官のひとりが近寄ってきたので、てっきりボクたちも逮捕されると思ったら、優しい表情で妹にくまのぬいぐるみをくれたこと。
「お父さんはどこへ行くの?お父さんは何をしたの?」の質問に、警察官は「お父さんは、法律を破ったかもしれないので、警察で質問しないといけないんだよ」と説明してくれます。そして、ケースワーカーのガービンさんがくるまで、警察官はその場にいてくれます。カービンさんは優しく「なにかききたいことがある?」と尋ねてくれますが、スケッチはショックでいっぱいで、お母さん早く来てと思っています。

 

説明

 

その日の夜。お母さんが説明します。お父さんが罪を認めたこと、これからしばらく拘置所jailにいないといけないこと。そしてスケッチをぎゅっとします。
「ボクのせいなの?」にはそうじゃないよと。「お父さんは失敗bad coiceをしちゃった。でも、なにがあっても、お母さんもお父さんも、スケッチのことが大好き」と伝えます。
それから、お腹の調子は少しよくなったけど… 「なんでお父さんそんなことしちゃったんだろう!ボクたちのこと置いていなくなって!」という気持ちが湧いてきて、絵にしようと思いますが、悲しくて描けません。

 

 

<絵本の下のスペースに、ときどき短い解説が入ります。例えば子どもが疑問にもちやすい言葉の説明。法律って?刑務所にはいつまでいるの?
統計の話にもふれて、子どもも親も自分だけではないということを、数字と共に知ることができます。—アメリカでは、43人に1人の子どもが、親が刑務所に入っています。お父さんのこともあればお母さんのこともあります。刑務所にいる男の人の65%に子どもがいます。女の人の75%に子どもがいます>

 

学校

 

次の日の学校… 近所に住んでるケニーがみんなの前で言います。「スケッチのお父さんはゆうべ警察の車に連れて行かれたよ!」
スケッチはものすごく恥ずかしくて、教室にこっそり入って、みんなから気づかれないように…このまま見えなくなればいいと感じます。先生の質問も上の空、後ろの席のアバから定規でつつかれて… 「jailbird」って言われたことにカッとしたスケッチは、アバの教科書をぐしゃぐしゃにして机から落とてしまいます。
そうして、スクールカウンセラーのサンチェスさんの部屋に行くことになります。それまで問題を起こしたことのなかったスケッチ。サンチェスさんはお母さんに連絡してお父さんのことを聞きます。

 

ぐちゃぐちゃの絵を描くスケッチに、怒ったり、悲しかったり、怖かったり、どれもOKと言います。はずかしい気持ちも不安な気持ちも。
気持ちがこんがらがったときには、次は、ケンカになる前にその場をはなれたらいいよ。だれかちょっぴり信頼できる人に話をしたり、絵を描くのもいいよと伝えます。

 

面会

 

しばらくして、バスに乗って、お父さんの面会に行きます。
その前に..最初にお母さんだけで行って子どもたちへどんな様子か教えます。
拘置所のお父さんは、ガラスの向こうに座っていて、子どもたちは順番に電話で話をします。
「ごめんよ たくさん迷惑かけたね 許してほしい」
スケッチは、お父さんの顔をみれなかったし、なんて返事したか覚えてないけど、うんとうなづきました。

 

数ヶ月後、お父さんは遠くの刑務所へ行くことになりました。その刑務所はとても怖いとこだったけど、そこでは、壁越しじゃなくて、面会ができます。久しぶりのお父さんのハグがとっても嬉しかったスケッチ。
お父さんに会いにいくのは月に1度で、その間は…絵を描いたり、手紙を描いたり、ときには電話で話をしたりします。

 

<面会についてのアドバイス。—多くの子どもたちは、刑務所にいるお父さんやお母さんになんて言ったらいいか、戸惑います。学校のことや毎日のこと、そんな何気ない話題から始められるといいですね。刑務所にいる親と面会する前後に、子どもが興奮したり、落ち着かなくなることは自然なことです。刑務所にいる親と、連絡を取り続けることは、親と離れての生活へ慣れるために大切なことです。親にとっても、社会に戻るときに向けて、家族との絆を保ちつづけることに役立ちます>

 

サポートグループ

 

サンチェスさんが、親が刑務所にいる子どもたちのグループを見つけてくれて、スケッチは毎週行くようになります。
「そこはクールな場所で、ボクが経験してることをみんなわかってくれる」

 

日常生活

 

お父さんが刑務所に入って、お母さんは前よりも仕事にたくさん行くようになり、おばあちゃんが子どもたちの面倒をみてくれるようになります。
ケースワーカーのガービンさんはメンター( )を紹介しれくれます。彼はお父さんじゃないけど、気にかけてくれる人がいるっていうのは悪くないなとスケッチは思います。

 

お父さんの刑期は6年。次にお父さんと釣りができる日まで長いなあ…。
「今でも少し怒ってるけど…お父さんのことが大好きだから、許せるようになれるといいな… I’m working on forgiving my dad,because I love him.」
そんなスケッチの言葉で、物語はおしまいです。

 

巻末には資料がついています。
・用語集
・もっとくわしい本の情報
・インターネットサイト

 

著者 Melissa Higginsは、100冊以上の子ども向けのフィクション・ノンフィクションの本を書いており、作家になる以前には、スクールカウンセラーとして働いた経験を持ちます(Amazonの著者紹介より)。アドバイザーとして、Michele Goyette-Ewing,PhD(Director of Psychology Traing Yale Child Study Center)ほかが本作に関わっています。

日本では、このテーマを取り上げた本などを目にしたことがありませんが… サポートを必要としている子どもや家族がいます。警察官が、ドキドキしている子どもたちに気づいて、ぬいぐるみを渡すシーンが印象的でした。なにか少しでも気づきとヒントになれば幸いです。

(日本語訳は英文の正確な意味やニュアンスを捉えきれていない箇所があるかもしれません。あくまで参考まで)

セサミストリートではこのテーマの動画をyoutubeで見ることができます。子どもたちの声も。(英語)

Sesame Street: Little Children, Big Challenges: Incarceration – What is Incarceration?

》https://www.youtube.com/watch?v=yk3SxyPW6lA
》https://www.youtube.com/watch?v=kDUdniEig38