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パートナー・配偶者の方からの質問Q&A 6.うつ病の家族をケアする際のステージごとの関わり方と意識するポイント【後編】

パートナー・配偶者の方からの質問Q&A 6.うつ病の家族をケアする際のステージごとの関わり方と意識するポイント【後編】
2019年6月25日 pulusu

うつ病患者の家族向けコミュニティサイト「エンカレッジ」×「ぷるすあるは」のコラボ、精神障がいをかかえた方のパートナー・配偶者の方から、よくたずねられる質問のコーナーです。
今回は、うつ病の家族をケアする際のステージごとの関わり方と意識するポイントです。前後編でお伝えします。

 

大切な家族がうつ病と診断されたとき、周囲はどのようにかかわっていけばいいのでしょうか。
うつ病と診断された家族への関わり方について前編と後編にわけて詳しく解説をしていく本コラム。前編では、ステージごとの関わり方について触れましたが(》うつ病の家族をケアする際のステージごとの関わり方と意識するポイント【前編】)、後半ではうつ病と診断された方をサポートする周囲のご家族が意識することについてご紹介します。

 

家族の関わり方の基本「4つのポイント」

 

うつ病の治癒には早くても数か月、時には年単位の時間がかかります。そのため、うつ病の方のご家族は、短距離走ではなく、長距離マラソンを一緒に伴走するようなスタンスでいることが必要となります。この項では、基本的な家族の関わり方の「4つのポイント」をお伝えします。

 

1.ご家族が自分自身のサポーターをもつ

 

思うように回復しないと、ご家族にも「いつになったら良くなるのだろう?」「全然よくなっているように感じない」などの焦りが生まれます。そしてご家族の不安や焦りが大きいと本人にもその気持ちが伝わります。

 

うつ病の治療には時間が必要ですが、その間に、家族が一人で悩み、追い詰められてしまうことが往々にしてあります。その場合は悩みや心配を自分だけで抱えずに、思い切って、他の家族や信頼できる友人に話をしてみましょう。
もし「頼れる人がいない」「相談もできない」という状況ならば、相談窓口の利用も効果的です。精神保健福祉センターや保健所では保健師やケースワーカーが対応していますので、利用を検討してみてください。
また、家族会に参加をすると、他の家族と気持ちを共有して「自分だけが悩んでいるのではなかった」という安心を得られたり、具体的な情報を交換したり、サポートを受けたりすることもできます。最近はオンラインで参加できる家族会もあるので「家族会へ行く時間がとれない」「自宅の近くにない」という場合にはおすすめです。

 

~うつ病のご家族を支えてくれる相談窓口(例)~

・気の置けない仲間や友人
・全国の家族会
・オンライン家族会(例:エンカレッジ)
・こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)
・各自治体の精神保健福祉センターや保健所
・専門家(医師、心理士)

 

2.自分のことを大切にする

 

ご家族のスタンスでまず大切なのは「ご家族が元気であること」です。
ですから、ときには体を休め、気分転換を図りましょう。なかには患者本人のケアに一生懸命になる余り、自分をないがしろにしてしまうご家族もいらっしゃいます。ショッピングや友人との食事など、リラックスできる時間を設けて「自分を大切にする」ということも必要です。

 

ご家族は心配のあまり「食事はちゃんととったか」「お風呂には入ったのか」と、本人の行動に対して「過保護、過干渉」になってしまうことがあります。ご家族からのケアは重要なのですが、必ずしも「家族が頑張った分だけ、本人が早く回復する」というわけではありません。「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉があります。ご家族と本人の距離が近くなりすぎて、お互いに依存し合う関係に陥らないよう注意しましょう。

 

*ご家族自身のセフルケアについては、別のコラムで詳しくまとめています 》自分の体調・セルフケアについて

 

3.伝えたいことは「アイ(私)メッセージ」で伝える。

 

うつ病を患った本人は、時にイライラが高まったり、怒りっぽくなったりして、ご家族に感情をぶつけてしまうことがあります。それは一番心を許している相手だからこそではありますが、「自分の気持ちなんて分からないくせに!」などと言われてしまえば、”こんなに一生懸命にやっているのに”と悔しく、腹立たしい気持ちになるでしょう。

 

こういった場合、ご家族は「私は」を主語にして、自分の気持ちを伝えるようにしましょう。例えば「あなたの気持ちをすべて分かってないかもしれないけど、”私なりには”理解するようにしている」と伝えてみる。こうして自分の気持ちや感情を述べるだけで、伝わり方が穏やかになります。
この伝え方なら、何かをお願いしたい時も、相手を嫌な気持ちにさせることなく頼むことができます。「買い物くらい行ってよ」と「あなたの体調が大丈夫なら、買い物に行ってくれると助かる」なら、後者には相手に選択権があるため、押しつけがましい表現とならず、感情を刺激しません。日頃のコミュニケーションにも、ぜひアイメッセージを活かすように工夫をしてみてください。

 

4.家族の病気を受け入れる

 

大切な家族がうつ病と診断されると、どうしたらいいのか分からず、パニックに陥ってしまう方も少なくありません。「まさか、うつ病であるはずがない」などと、家族が病気であることを認めることが難しいこともあります。うつ病は心の病であり、家族の支援は重要です。うつ病であることを周囲のご家族が受け入れなければ、本人に対するかかわり方もうまくいかない方向に進んでしまいかねません。
そしてご家族が病気についての適切な知識を持つことも大切です。方法としては、書籍やインターネットはもちろん、病院や家族会が主催する家族講座などがあります。家族講座では、うつ治療の知識や患者への接し方を学ぶことができます。こうした情報源を通じて病気への理解を深めることは、家族の病気を受け入れるステップとなるでしょう。

 

病気を受け入れるー言葉で書くと簡単ですが実際には容易なことではないと思います。ポイントの最初にふれたように、ご家族がサポーターを得て、ご家族のペースで取り組めたらよいと思います。

 

おわりに

 

うつ病の治療には、ご家族の協力が不可欠です。「大切な人が苦しんでいる」「力になりたいけれど、どうしたらいいか分からない」と自分のことのように苦悩しながら、一生懸命に支援されている姿を見ると、本当に頭が下がります。
今回は、患者さんの治療という視点から、ご家族がケアする際のポイントについて紹介しましたが、この記事が少しでも皆さんのお役に立つことができれば幸いです。

 

参考図書:「家族力」がうつから救う~ともに戦う「患者と家族」60のケース;山口律子:宝島社

 

担当:エンカレッジ

執筆者

佐々木規夫(東京中央産業医事務所、産業医、精神科医)

大手企業の専属産業医及び健康推進グループの統括マネジャーとして健康管理に従事。現在、精神科医として勤務する傍ら上場企業や主要官庁の産業医を兼務している。

 

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