「子ども情報ステーション by ぷるすあるは」精神障がいやこころの不調、発達凸凹をかかえた親とその’子ども’の情報&応援サイト

依存症と子どもー地域生活Q&A(精神科看護師チアキのスキマ相談)

依存症と子どもー地域生活Q&A(精神科看護師チアキのスキマ相談)
2019年3月10日 pulusu

精神科で長年働いてきた看護師のチアキが、精神科の受診や治療、地域生活などの質問に回答するコーナーです。

 

*このコラムは「依存症と子ども」がテーマです。
某研修の場で、これまでの約20年の依存症の支援の経験を本として活用いただきました(チアキのヒューマンライブラリー)。このQ&Aは、そのときのやりとりを下書きにして、新たに編集を加えたものです。事例については、個人が特定されないように事実関係など変えています。

シリーズ依存症と地域生活

依存症と子ども
依存症と子育て
依存症とかかわり1
依存症とかかわり2
依存症と家族

質問

 

依存症の親をもつ子どもが、将来こまること、悩むことは?
そういうときに、どういうところに相談に行けるのでしょうか?

 

チアキの回答

 

絵本の主人公・ハルくん(子どもたち)へ注目してくださり、ありがとうございます。
「世代間連鎖」という言葉がありますが、わたしは使いません。
というのも、親は親、子どもは子どもだからです。

 

思春期前のハルくん、お父さんが遊んでくれなかったり、寂しい時間を過ごしていたり。もし、このまま、説明されないままに、だれにも気づかれないままに大人になると… この先どんどん不信感がでてくるかもしれません。「酒ぐせ悪い」とかでネット検索したり、家族だからこそ、余計に腹が立ったり…。
相談する、頼ることに気づかない大人になるかもしれません。

 

(子どもの相談できる場所?)
もし子どもが飛び込んできたときに・・・「困った」の言葉はでてこないかもしれないけど、「こんにちは、ありがとう」と。にっこり笑ってその言葉が伝えられたらと思います。

質問

 

リトルチアキは、すったもんだで大変だったけど家のことは決して支援者には話さない、と言っていたと思います。親がアディクションの子どもさんに、ひとこと声をかけるなら、どんな言葉をかけますか?

 

チアキの回答

 

ご質問ありがとうございます。名前を覚えてくれていると、子どもも嬉しいです。名前を覚えて、あいさつする、声をかける、ことからかなと思います。顔見知りになることから。いざというときには、名前や顔を覚えてくれている人のところに行くと思います。

 

依存症の支援で、家庭に、新しい風がふくと(第三者が入ると)、一気に状況がかわる、ということはよくあると思います。
だけど…子どもだと、相談したら何がどうなって、自分にどんないいことがあるわけ? というのが経験値もないし、全くわからない。
今振り返ると・・・行動範囲狭い、検索力ない、お金ない。でも意地をはってました。
「これ以上状況が悪くなるのをさけたい」という気持ちが強かった気がします。
なので、いつも、この人はどうか?と警戒して、観察してました。

 

わたしの場合は…静かな大人が落ち着きました。その場にいて緊張しない大人。
(金八先生とか…大嫌いで…あんなにぐいぐいこられたらいやや・・・)
声をかけなくちゃの気合は、子どもに伝わります。子どももなにか言わなきゃ…て。

 

(ココ大切!)年度変わりの時期はチャンスです。
進学、入学、進級… 制服の準備どう?とか、教科書の準備や、持ち物のこととか。いきなり親のことや気持ちのことは身構えるけど…そんな日々の困りごとにフォーカスするのは、会話のチャンスです。そういうところから、ああこの人は緊張感が走らない人やなあと感じたら(家の大人は緊張感があるので…)、そういう穏やかな空気が、次につながるのかなと思います。

質問

 

普及啓発で学校へ話に行く機会などもあるかと思います。そういったときの子どもの反応はどうですか? 自分の家のことを話しに来るような子もいるのでしょうか?

 

チアキの回答

 

ふむふむという着眼点で、ご質問ありがとうございます。
ハルの年代(小学校低学年)で子どもからの発信…これは難しいです。何に困っていて、だれに、何を言っていいのか・・・難しいと思います。

 

例えば海外だと、親子で参加できる合宿のような機会があって、親御さんがミーティングしているのと並行して、子どもたちは思いっきり遊んだり依存症について学ぶ機会があったり、といったことも一般的なのですが、日本ではまだまだ。20年くらい遅れている印象です。
日本はどうしても、うちで、うちで、家の中だけでという風潮がまだまだ強くて・・・・子どもたちが、親が依存症のほかの子どもと出会う機会もほとんどありません。

 

そんな中で、先駆的な取り組みとして、子どものグループをやっている病院もありますので、そちらは、リンクの取材記をご覧ください。

 

子どもは、思いがけないタイミングで、(質問などが)くることが結構あります。驚いても驚かないで(驚いた素ぶりを見せないで)。
病名ではなくて、今、自分が困っていることを子どもは知りたいと思います。困りごとに対して、その都度、話していくこと、いっしょに考えること。前にも伝えたから…ではなく、いつでも情報をアップデートしていくことも大切だと思います。

 

家族の依存症だけでなく子ども自身の、クスリの話…なんてこともあるかもしれません。
例えば、小学生の大麻のことが以前メディアで大きく取り上げられたこともありました。子どもが、小学生が、クスリを必要としている…というその背景に目をむけて、たくさんの大人が知恵をしぼることが大切かなと思います。

チアキ
関西→関東、精神科ひとすじの看護師。
ぷるすあるはの制作担当、絵本ではお話と絵を担当しています。

》チアキのスキマ相談(一覧のページ)へ