プルスアルハ最初の絵本
「ボクのせいかも…ーお母さんがうつ病になったの」
作者チアキの頭の中から、最初の構想がおりてきて、ノートに描き残したところからスタートしたオリジナルの企画です。
2012年12月、ゆまに書房より発刊されてから丸6年が過ぎました。
発刊から今までに届いた声と、制作にこめた作者の想いを紹介しながら、改めて、絵本の活用方法を考えるコラムです。
手に取ったみなさんが、絵本を活用するとき、あるいはしないとき、なにかヒントになれば幸いです。
(1)絵本に届いた声
・精神疾患のある親のもとで育ち「変だと思うけど他の人に言えない」と思ってきたことが、絵とストーリーで説明されていて、こんなに共感できるものがあるのかと衝撃を受けました。
・子どものときに出会いたかった
・絵がいい!
・絵本なので、ただそこにあるというのがいい。誰かに直接言われるよりも、自分のタイミングで必要なときに手にできるのがいい。(親の立場)
・絵本なので「いっしょに読める」「自分ちだけじゃない」というのがいい
・高校の養護教諭です。新聞に紹介されていた絵本の記事を、大変興味深く読ませていただきました。図書館司書にお願いし、学校に3冊の絵本をそろえてもらいました。最近、よく保健室を訪ねてくる生徒の様子がどうも気になり、言葉少なに語る家の話から、お母さまが精神疾患をかかえていらっしゃるのではないかと思ったのです。いろいろ考えた末、スカイくんの絵本を彼女と一緒に読んでみることにしました。
わかりやすい言葉と、優しい色づかいの絵に、大変助けられました。
物心ついた頃から、お母さまは調子を崩されていたようで、お父さまからは「おまえが余計なことを言うとお母さんは悪くなる。どんなに辛くてもいつも笑っていろ」と繰り返し言われて育ってきたらしいのです。
あなたは何も悪くない、というメッセージをこれからも彼女に届くよう、伝えていけたらと思います。
家庭への介入は、どうしても尻込みしてしまいがちですが、あの絵本のおかげて生徒との関わりが無理なくスタートできました。
・母がうつの、小学5年男子に、読みました。一年生の頃から、母が入院のたびに、一時保護されてました。1~2週間、長くても2ヶ月すると退院し、母に引き取られます。母子家庭です。ここのところ頻繁になり、さすがにお兄さんになってきた彼は表情も悪くなり、状況からみても施設を考えるしかないかと思いました。ちょっと幼すぎかと思いましたが、それだけに理解できる部分もあるかと考え、絵本を読みました。その後、20分位一人になってもらい、どう?と尋ねました。ひとりで泣いていたのかもしれません。彼は、嫌になるとすぐ入院して自分を放り出す母ちゃんが嫌いだし許せないと思っていたけど、嫌いにならなくてもすみそうと照れながら言っていました。先は長いのですが、少なくとも、今の彼には良かったかと思います。
・児童相談所や保育所で、保育士として長く働いています。
精神疾患を抱える親御さんを持つ子どもたちとのかかわりの中で、どのように話したらよいのか、支えたらよいのか、自分自身の課題でもありました。そのような時に、プルスアルハさんの活動を知り、絵本を読み、これだ!と嬉しくなりました。
先日、病気は違いますが、やはり親御さんが精神疾患のお子さん(小学1年生)と一緒に絵本を読みました。
読み終わって、(治療のため離れて暮らしている)お母さんに会いたい、大丈夫だよって言いたいそんな言葉がありました。
子どもの周りに、一人でもその子のことを気にかける家族(たとえばスカイ君のパパ)がいれば置きかえ、納得し、受け入れることも可能でしょうが、児童相談所にいる子どもの場合、誰一人としてそのような存在の人がいない子も多く絵本の使い方の難しさを感じました。
他の方が実際にお子さんに読んだときの様子や、支障のない範囲でその子の背景など、もっと声が聞けたらと思います。
・自分がうつ病で出産し、その後悪化、寛解を繰り返し。
夫にも読んでもらってわかりやすかったそうです。子はまだ2才で、内容まではわかりませんが、犬の絵が好きらしく、みてくれました。ゆくゆくこの本を通して理解してもらえて、一緒に生活したいです。
・この本を手に取ったのは、大学の図書館。妹からのメールで、この本を知りました。カレーの味、お風呂で悩んだこと・・・重なる場面は胸がすごく痛みました。
いろいろと工夫してがんばっているあなたへ という文を読んだときこらえていた涙があふれました。母の病気とともに過ごした中高時代。この本がわたしの苦しみ、がんばりを認めてくれたように思います。何度言っても思っても足りないけれど、本当にありがとう。
・色調、筆のタッチ等から、色んなイマジネーションが湧く。相談者に紹介する事もあるが、一番は、支援側の疲弊、困惑、等様々なマイナス感情を、絵本を見ることで解放できる事。特に、自分の親の特性が幼少期からの自分に少なからず影響していたんだな、と実感できる事。頭ではなく、マインドのところで。
・子供のころの自分が悲しかったことを大人になった今、きづくことができ、自分を大切にしようと思えた。よく生きのびたと思う。自分のような経験をしている子供が少しでも早く、いま、自分の状況を責める苦しさから転換できる絵本がきっかけとなるよう絵本の存在を周りにも伝えている。
・周りの大人が助けてくれなかった人間にとっては辛かったが、これから子ども達や親や支援者への精神保健のツールになればと思います。
・サポートする人の大切さが良くわかりました。逆に、もしいない場合は、どうしたら良いのだろうと社会の受け皿、仕組みの在り方を考えてしまいました。
・子どもが置かれている状況が良くわかり職場でも関心が高いが、当事者である子どもに見せるかどうかという段階になると、(小さな)子どもが置かれた状況や家族関係が深刻すぎて、情報提供だけでは済まされない。情報提供してあなただけが苦しんでいるのじゃないということを伝えて、じゃあその次はどうしたら良いのかという思いがぬぐい去れず躊躇してしまう。
・自分の感じ方や経験としては「そうだよな、こんな感じだった」「登場人物達は本当に苦しんでるけど自分のは甘えてるだけだ」という気持ちどちらも湧いてきた。悲しみや悔しさ、恐怖、怒りも思い出した。病院の外来に置いてあったので読んだのが2冊と主治医から借りたのが1冊でした。もし親の立場で子どもの病気について本読んだら お前のせいで自分たち親は云々って怒られるんじゃないかと怖くなった。自分の親が病院に来たり、絵本を読むことはないだろうけどその怖さがあって、他の家族が心配になった。それだけ気持ちが揺さぶられる絵本だったということだと思う。
・(絵本にでてくるような)こんないいお父さんはなかなかいないのでは。子どものときに読んだら、うらやましい…と感じたと思う。
・病気になった親だけでなく、それを支える親もサポートしなければ子どもをサポートしきれない。
・「子どもに親の病気を伝えた方がよい」ということを強調しすぎるのは、必ずしも良いことではないと思います。コンテンツを最初にみたとき、私自身は何とかして子どもに伝える術を考えなければならないと、半ば脅迫的になりました。それは返って心の負担を増し、家族の健康を害します。あくまで一つの選択肢として、子どもが親の病気に巻き込まれて苦しい思いをしているとき、伝えるという方法もあるというくらいに留めるべきではないかと思います。数は少ないですが、当事者を支える配偶者数名で話をした内容です。私たちは、「子どもが知りたい」と思ったときに知らせれば良いと考えています。
・子どもにこんなにつらい思いをさせて申し訳ありませんでした・・・
・親が具合が悪いことを、自分のせいなどと考えたことはなかった。親にはネガティブな感情しかない。
・自分はアルコール問題のある父親に何度も手紙を書いたが、全然効果がなかった。手紙をすすめているように思えて危惧している。
*読者カード、ウェブアンケート、応援メッセージ、などでいただいた声を一部抜粋しました。主旨がかわらない範囲で文章を少しまとめたものもあります。家族のこころの病気を子どもに伝える絵本・統合失調症編、アルコール依存症編、巻を限定していない声も含まれています。
この絵本は、コミュニケーションのひとつのツール、コミュニケーションのきっかけの本です。
ここに紹介しきれない声を含めて、たくさんの声をありがとうございます。
活用する際の参考にしていただけたら幸いです。
「ちがうと思う、合わない、使えない、読んでつらくなった…」といった体験は、多くの場合、作者まで届かないと思いますので、届けてくださった声に感謝すると共に、その声の向こうにいるたくさんの方を想像しながら、発信していきます。
2018年版・絵本の使い方の提案
》(2)制作にあたっての想い
出版前の2012年、絵本の構想をサンプル版にしたタイミングで、制作にこめた想いをまとめたものです。