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ポスター発表レポート「精神障がいのある親と暮らす学齢期の子ども達を学校でどう支えるか」第120回日本小児精神神経学会

ポスター発表レポート「精神障がいのある親と暮らす学齢期の子ども達を学校でどう支えるか」第120回日本小児精神神経学会
2018年12月20日 pulusu

第120回日本小児精神神経学会(2018/12/15-16@東京)
「精神障がいのある親と暮らす学齢期の子ども達を学校でどう支えるか」

 

リーダー長沼さん、ポスター発表しました。
TKLF:TEAM KIDs LIFE FUTURE(チームクリフ)
…精神障害のある親と暮らす子どもたちの「生きる」と「未来」を応援する研究者やNPO法人から成る団体。もとになっている研究は、科学研究費補助金(基盤研究(C)研究課題番号16K04149 研究代表者長沼葉月さん(首都大学東京))。
学齢期の子どもへの支援を考えるための、養護教諭等、学校関係者を対象としたワークショップを開催、調査研究にもとづく情報発信などを行うもので、ぷるすあるはもメンバーに参加し、サイトで情報発信も行なっています。
今回の発表は、養護教諭の調査の内容をまとめたもの。

 

 

目的

精神障がいのある親と暮らす子どもに対する支援は、就学前には母子保健ネットワークで支えられます。就学後は学校が中心となる体制に以降しますが、サポートが一旦きれることも多く、本研究では、学校ではどのような支援がなされているのかを明らかにすることを目的としました。

 

方法

A県の全公立小中学校1,229校に、無記名事故記入式質問紙調査票を送付し養護教諭に回答を依頼。精神障害のある親と暮らす子どもに対してどのような支援を行なってきたかを自由記述で尋ねました。468校から郵送法にて回収(回収率38.1%)、自由記述内容をKJ法を援用して整理しました。

そもそも、なぜ、養護教諭? というのは、毎日学校にいてくれて、担任とちがって全校をみている、子どもと直接かかわることが多い、といったことから、養護教諭に注目しました。

 

結果

学校における対応は、子への対応、親への対応、校内連携での対応、学外の関係機関との連携、にわけられました。
具体的な項目について、ポスターに整理していますが、主要な結果として、子どもの関係づくりに、ほとんどの学校が力を入れていました。
情報を得るためということもあると思います。そして、子どもの生活状況が具体的にみえてくると、それにあわせた具体的な支援を行なってくださっていました。特徴的なこととしては、基本的な生活習慣の支援、体調不良時のケア、子どもの医療機関受診援助、不登校になったときの登校支援、さらに、夏休み前に洗濯、炊事の仕方を教えるなどの支援を行なっている先生もいました。親御さんが子どものサポートが難しいときに、先生方が担ってくださっている現状がありました。
親への支援では、まず親との関係づくり。場合によっては何時間も話しに付き合うといったことも…。
担任や養護教諭だけでは、とてもできないことで、校内の支援体制づくりが大切になります。
そして、学外の関係機関との連携。連携先は、ほとんどが相談業務を行なっている機関で、基本的な生活支援をしている機関との連携はほとんどみられました。社会資源自体、そもそも全く足りないのですが、あっても知らない、使えてないという現状でした。このあたりは課題かもしれません。
今後の方向としては…この調査にもとづくワークショップを8月に実施しました。現在、効果を分析中です。

 

フロアとのやりとり

Q 介入は早ければ早いほどよいのでは(就学前からのかかわりの方がよいのでは)?

母子保健の領域では、産後うつ対策、虐待予防など、力を入れているところだと思います。
保育園に入ったり、周りのサポート、関係ができたりして、落ち着いてきて、一旦終結になることも多く、安定していると、就学後に支援をつなげることが難しかったりします。
しかし、学童期以降、小学校低学年、中学年、高学年…それぞれにテーマがかわって、支援が必要になることがあります。なので、学校での支援もとても大切だと考えます。

 

Q 具体的な事例でうまくいった関わりがありましたか?
Q 実際に、どれくらいできているのでしょうか…?

うまくいった、の定義が難しいですが… ケース会議を定期的に行なっている、連携がスムーズにできている事例の記載などありました。
実際には、子どもとの関わり(ポスターの図でいうと「基盤となる信頼関係形成」の部分)にとどまっているという回答が圧倒的多数でした
(より踏み込んだ支援を)やりたいと思っているけど、やれない、マンパワーが足りない・・・という声。
『どうしたらよいか分からない、何ができるか分からないというコメントもありましたので、このように「すでに様々な取り組みが行われていること」を可視化して伝えることで、現実的にできそうなことを考えていただくヒントになればと思っています。また学校だけで取り組むのではなく、地域の様々な機関やサービスをどう巻き込んでいくことができるのか、具体的なノウハウ、モデル、やり方を示していくことが大切なのかなと考えています。
ワークショップ、事例検討会など、フォローアップしていきたいです。

 

 

医療色の強い学会で、どんなかんじになるかな…? と臨みましたが、たくさんの方が聞いてくださり、質問もあり、関心をもっていただけてよかったです。ありがとうございました。
今回、120回記念大会のテーマは小児期のトラウマ。小児期の逆境的な体験のひとつとされる、親の精神疾患やアルコール・薬物依存。
学校で、地域で、思いはあってもマンパワーも資源も足りないけど…その中で子ども、家族をささえる「その場しのぎ」をつづけていけるように… うまくいった例を発信したり、必要な情報発信、実践研修の機会など、プロジェクトを試行していきたいと思います。

 

*調査方法、結果の詳細、ポスターPDFは、チームクリフの公式ページに掲載しています。今後も情報発信を継続します。

》公式ページへ(子ども情報ステーション内)https://kidsinfost.net/tklf/

本学会、ぷるすあるはとして、ブース出展もしました。
お寄りいただいたみなさま、ありがとうございました。