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認知症[にんちしょう]

子どもも大人もイラストで学ぶ病気や障がい

認知症

脳やからだの病気のために、記憶[きおく]や判断力[はんだんりょく]などの能力が低下していく障がいです。原因によって症状や経過、治療にちがいがあります。
たくさんのサポーター、制度やサービスなどを活用して、みんなが生活しやすくなるように考えていきます。

ページにおこしいただきありがとうございます。
大人も子どももいっしょに見れて、基本的な知識を学べるページです。およそ小学校中学年~大人の人向けです。もっとくわしい情報を知りたいときは、参考サイトがページの下の方にあります。(子どものみなさんは、わかりにくいことや、ぎもんに思ったことは、大人の人に聞きながら読んでください。)

参考サイトを追加しました
更新日:2021年11月

 

認知症

ページのエッセンスをA4×2枚のシートにまとめました。
印刷用PDFです。

[PDF]認知症(938KB)

01 どんなことが起きるの?(症状[しょうじょう]の例)

 

認知症では、日常生活に支障[ししょう]をきたすような物忘れがみられます。
昔のことは覚えているのに最近のことは覚えていられなくなり、何度も同じことをたずねてきたり、話したりするようになります。
時間や場所がわからなくなる、家事や仕事など慣れていたことができなくなる、話したり書くことがうまくできなくなる、判断ができなくなる、ひきこもりがちになる、気分や性格が変化するなどの症状が認められます。
これら脳そのものの変化によっておこる症状を、中核症状[ちゅうかくしょうじょう]とよびます。

一方、中核症状と関連しておこる「周辺症状」と呼ばれる症状がでることもあります。
落ち着かない、幻覚[げんかく]や妄想[もうそう]、迷子になる、暴力、などです。

 

認知症にはいろいろなタイプがあります

幻視[げんし:いないはずのものが見える]やパーキンソン症状(手のふるえや小きざみな歩行、体の動きが固くなる)が認められるタイプや、物忘れよりも性格の変化が目立つタイプもあります。
タイプ別の説明は、Q&Aでとりあげます。

 

こんなことが起きやすい…

 

02 どんなサポートができるの(かかわり)?

 

気づいたら早めに相談

認知症を専門に診療[しんりょう]している病院やクリニックは増えています。「もの忘れ外来」「認知症外来」があるところを受診し(精神科や神経内科、脳神経外科、老年科などにあります)、必要な検査を受け、認知症かどうか診断してもらいます。
介護保険など、利用できるサービスを紹介してもらえることもあります。
ご家族だけで相談できるところには、地域包括支援センターなどがあります。

 

 

「症状」であることを理解し、かかわり方を工夫

理解しづらい言動の背景には認知症の症状が関係しているということを理解します。
特に認知症の初期は、ご本人も自分自身の変化にとまどい混乱しているため、不安やイライラなどが高まりやすい状態です。その心情に配慮[はいりょ]しながら見守ります。

できないことが増えていく中で、不安やあせりを感じやすくなっています。また、昔のことはよく覚えていることが多く、若い時とかんちがいして行動していることもあります。
本人の話を否定するよりは、話をあわせてみます。若い時の仕事や趣味の話でいきいきとした表情をみせてくれるかもしれません。

*対応について

もの忘れのために何度も同じ行動をしたり、同じまちがいを繰り返すことがあります。きびしく注意しても、本人としては自分の行動をおぼえておらず、また注意されたことも忘れてしまうため、あまり効果はありません。
それどころか、できていないと言われたことにショックを受けたり、不当におこられたと感じて、はげしく怒る場合があります。さりげなくフォローしたり、大事なことは目立つところにメモしておくなど、生活面での工夫を考えていきます。

何度も同じ話をされて、まわりが困ってしまうということも多く聞かれます。ものやお金がみつからないと「ぬすまれた!」「いやがらせされた!」と被害[ひがい]感情が強くなり、家族に攻撃的になることもよくみられます。
「何度も言わないで!」「ちがうよ!」ときびしく注意するよりは、話をききながらタイミングをみて話題を変えたり、本人が興味を持てそうな活動を提案して関心をそらします。
家族だけではうまくいかない時は、知り合いやサポーターなどに関わってもらいます。

機能が低下している部分を取り戻そうと、「○○トレーニング」などまわりが本人にすすめることもあると思います。有効な場合もあるでしょうが、本人が関心のないものや苦痛に感じるものは、かえってストレスになります。本人が楽しめること、取り組みやすいものをみつけていきます。

 

家族だけでかかえずサポーターにつながる
制度やサービスを上手に使う

ご家族は本人が元気だった頃をよく知っているだけに、かえって「症状」と考えることができず、ご本人に対して感情的になりやすいです。また、「家族だから」と問題を抱え込みすぎてつかれてしまうことも多いです。
市町村や医療機関などに相談しながら、家族以外の人にもかかわってもらう機会をつくります。

生活をささえる相談機関やサービス

 

情報や工夫が得られるところ

・地域包括支援センター

社会福祉士、保健師、ケアマネージャーといった専門職が、地域の施設や介護サービス、保健福祉サービスなどについて相談に乗り、アドバイスしてくれます。

※全国の地域包括支援センターの一覧
》厚生労働症|地域包括ケアシステムのページへ
ページの中ほどに一覧(都道府県のホームページへリンク)があります

 

・認知症疾患医療センター

都道府県や政令指定都市が指定する病院に設置されていて、認知症の専門医や相談員が配置されています。
認知症に関する相談対応、専門医療の提供、かかりつけ医や地域包括支援センターとの連携などができます。

・家族会

家族が集まって悩みを共有したり、情報交換ができる場です。
全国に支部がある家族会や、病院や施設などで作られた家族会などがあります。

 

介護保険制度

介護サービスを受けられるのは原則として65歳以上の高齢者ですが、40歳~64歳でも特定疾病で要介護と認定された場合は利用ができます。住んでいる市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターで申請し、訪問調査とかかりつけ医の意見書などをもとに介護度がきめられ、ケアプランが作られます。

介護保険制度には、介護をサポートしてくれるだけでなく、経済面でも自己負担額が大きくならないサポートもあります。

・自宅で受けられるサービス:訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護など
・日帰りで受けられるサービス:デイサービス、認知症対応型通所介護
・施設サービス:特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、ショートステイ
・訪問・通い・宿泊を組み合わせたサービス:小規模多機能型居宅介護、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
・福祉用具の利用:福祉用具貸与、特定福祉用具販売

03 病気の人はどれくらいいるの?原因は?

 

65歳以上70歳未満で認知症の人は1.5%ですが、85歳では27%になり、年をとるほど認知症の割合は増加します*。

認知症を引き起こす原因はさまざまですが、主なものは、アルツハイマー病や脳血管障害など、脳の異変[いへん]によって起きます。Q&Aのタイプ別の説明のなかでも、原因についてふれています。

*みんなのメンタルヘルス/厚生労働省のページ

04 (家族が認知症のとき…)子どもの安心のためにできることは?

 

祖父や祖母が認知症になったときなど…
「優しかったおじいちゃんが、最近怒りんぼうになった」「料理上手なおばあちゃんだったのに、なんだか味付けがおかしくなった」など、身近なひとたちの感情や行動の変化に戸惑うことがあるでしょう。
また、親が祖父母の介護で手一杯になり、家庭の中のピリピリした雰囲気をストレスに感じたり、自分を見てくれていないとさびしく思ったりしている可能性があります。
子どもの気持ちを聴く時間をもち、病気による変化であることを説明する必要があります。年少の子どもは「自分が悪いことをしたから家の中が変になってしまったのでは?」と考えがちなので、「あなたのせいではないよ」と伝えることも大切です。

 

若い年代でも認知症になることがあります。
65歳未満の認知症を若年性認知症とよびます。
50代が多いと言われていますが、20代や30代でもおこる可能性があり、子どもが小さいこともあります。若年性認知症のページで、子どもへのサポートについても書いています。

》若年性認知症のページへ

05 よくある質問 Q&A

 

Q 認知症を治す治療[ちりょう]はないのですか?

A 認知症を完全に治す治療薬はまだありません。認知症の約6割をしめるアルツハイマー型認知症については、進行をゆるやかにする治療薬がありますが、それ以外は原因に対しての治療を行ったり、周辺症状に対し対症療法[たいしょうりょうほう]として薬の治療などを使ったりします。
一方、薬に治療で、認知症の症状がかえって悪化する場合も少なくなく、薬に頼らない治療や、周囲のかかわり方の工夫などを試みる必要があります。

 

Q 加齢によるもの忘れと認知症のもの忘れはどうちがうのですが?

歳をとってくると、ものや人の名前が思い出せなかったり、ものをどこにしまったか忘れてしまうといったことが多くなってきます。しかし、たいていはヒントやきっかけがあれば思い出せて、日常生活にもそれほど影響はありません。
一方、認知症のもの忘れは、最近の出来事をすっかり忘れてしまう、といったもので、ヒントがあっても思い出せなかったり、いくら事実を伝えても認められなかったりします。仕事や家事の段取りも思い出せなくなることがあり、日常生活への影響は大きくなります。

 

 

Q 治る可能性のある認知症がありますか?

A 認知症のほとんどは進行性のものですが、原因に対して早い段階で適切な対処(手術や薬物療法など)ができれば治る可能性のあるものもあります。

代表的なものの例

・正常圧水頭症 [せいじょうあつ すいとうしょう]
・慢性硬膜下血種 [まんせい こうまくか けっしゅ]
・脳腫瘍 [のうしゅよう]
・甲状腺機能低下症 [こうじょうせん きのう ていかしょう] など

 

Q 認知症にはどんな原因、種類がありますか?

A 認知症を引き起こす原因はさまざまですが、主なものは、アルツハイマー病や脳血管障害など、脳の異変[いへん]によって病気になります。

アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・前頭側頭型認知症・レビー小体型認知症の4つが多くみられ、特にアルツハイマー型認知症は全体の6割をしめています。65歳未満の認知症は若年性認知症といいます。以下それぞれについて説明します。

 

アルツハイマー型認知症

脳の神経細胞が徐々に少なくなり脳萎縮[いしゅく:ちぢむこと]が進んでいくことが原因と考えられています。記憶障害からはじまり、進行するにしたがって時間や場所がわからなくなったり、慣れていたことができなくなるなど、他の認知機能の障害がみられます。

 

脳血管性認知症 [のう けっかん せい]

脳梗塞[こうそく]や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中によって起こります。
脳卒中の要因としては、高血圧や心房細動[しんぼうさいどう:不整脈のひとつ]、糖尿病[とうにょうびょう]、高脂血症[こうしけっしょう]などがあげられます。
脳卒中をくりかえす度に階段状に進行する場合もあります。小さな脳梗塞がくりかえされる場合は、徐々[じょじょ]に進行していきます。

 

前頭側頭型認知症 [ぜんとう そくとう がた]

脳の前頭葉や側頭葉が委縮[いしゅく]することで起こります。
はじめは記憶障害は目立たず、状況に合わない自己中心的な行動や、興奮しやすさ、衝動性[しょうどうせい]など行動や性格の変化が現れます。
進行していくと、同じ行動や言葉をくりかえすようになります。

 

レビー小体型認知症 [レビーしょうたい がた]

「レビー小体」という物質が大脳の広い範囲にあらわれることが関係しています。
幻視[げんし:いないものがみえる]やパーキンソン症状(手のふるえ、身体が固くなるなど)がみられます。また記憶障害などの認知機能が一日のうちで変動しやすいという特徴もあります。

若年性認知症 [じゃくねん せい]

認知症は高齢者にだけ起こるものではありません。65歳未満の認知症を「若年期認知症」とよびます。

》若年性認知症のページへ

そのほかの原因のうち、治る可能性のある認知症については、上のQ&Aで説明しました

Q「うつ」が認知症とまちがわれることもあると聞きました…

A 老年期のうつ病は、認知症と間違われることがあります(仮性認知症とも言われます)。
うつ病では頭がまわらない感じ、やる気がおきない、人をさけるなどの症状がみられますが、認知症でも似た症状があり、見分けるのが難しいことがあります。
一般的には、うつ病ははじまりの時期が比較的はっきりしていて、認知症よりも症状の進行は早く、記憶障害もあまりみられません。また、うつ病の場合は、悲観的[ひかんてき]な考えや自分を責める気持ちがみられますが、認知症の場合は、無関心であることが多いようです。うつ病であれば、うつ病の治療によって症状は改善します。

06 関連コラム/ページ

精神障がいの方への家族の対応:「こんな対応をしてみました」の例を紹介しているページ


子どものケアについてくわしく知りたいときのページ

小学生のみなさんへ(子どもへのメッセージと工夫)
中学生のみなさんへ(子どもへのメッセージと工夫)

07 もっとくわしい情報を知りたいときの参考サイト&図書

参考サイト

相談先の情報

》全国の地域包括支援センターの一覧/厚生労働省 *ページの真ん中のあたりに、都道府県のホームページへリンクがあります

情報サイト

》認知症世界の歩き方(認知症未来共創ハブほか)
認知症のある方、約100名へのインタビューをもとに、経験する出来事を旅のスケッチと旅行記の形式でまとめたストーリー。困りごとの背景として考えられることを「44の心身機能障害」にまとめ、認知症とともに生きる知恵を旅のツールとして紹介しています。(書籍もあります)

》認知症|みんなのメンタルヘルス総合サイト(厚生労働省)

》認知症相談ナビ(ノバルティスファーマ)

 

書籍

  • 家族と病院と地域で支える 家族のための認知症Q&A,新井平伊著,つちや書店2017
  • 認知症ぜんぶ図解,三宅貴夫著,メディカ出版,2011 *著者は老年科の医師。奥様が認知症で、自ら家族会を立ち上げたり、サイト(認知症なんでもサイト)を運営したりしています。

 

  • ある日、突然始まる 後悔しないための介護ハンドブック,阿久津 美栄子著,ディスカヴァー・トゥエンティワン 2017

このページの担当

ざっきー+ ぷるすあるは

最後まで読んでいただきありがとうございます。
地域の中で、いろんな人がいろんな形でかかわっていけるといいですね。

この教材は平成28・29年度子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)の助成金の交付を受けてNPO法人ぷるすあるはが作成したものです