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Q30. 自閉症スペクトラム・境界知能の不登校児、高校進学について ーゆるゆる子育て実践編

Q30. 自閉症スペクトラム・境界知能の不登校児、高校進学について ーゆるゆる子育て実践編
2021年10月4日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル: 自閉症スペクトラム・境界知能の不登校児、高校進学について
年れい: 中学生

 

質問内容

中1の1月から不登校の男児の母親です。不登校の原因としては、勉強についていけなくなった事、色々なことに精いっぱい頑張って疲れた事に自覚が持てず、等々で突然学校にいけなくなったようです。今は中3で、高校進学先を特別支援学校高等部か通信制高校か迷っています。どちらも1校ずつ見学に行きました。(もう1校通信制高校に見学に行く予定)。本人はどちらも良さそうな印象を持ったようです。
私としては、高校卒業後は就職か就労支援施設へいった後に就職する事になるだろうと思っています。そうすると、発達障害の特性を理解し(たとえスクールカウンセラーがいたりメンタルサポートをうたってる通信制高校よりも)手厚く支援してもらえる、就職する事になった場合も支援してもらえる特別支援学校の方が良いのかなと思います。
そう思う反面、通うのは本人なので私の考えを押しつけるのはよくないとも思い本人の行きたい学校を選択できればとも思います。今後、話し合って進学先を決める時に何をポイントに考え、決めればいいのか、本人は先々を考えて選んだり、自分の特性を理解した上での選択は出来ないので、どのように話をしていけばわからなくなってしまいました。その点について先生からアドバイスをいただければ大変助かります。

 

おがてぃの回答

 

メールをいただき、ありがとうございます。高校進学について、通信制にするか、特別支援学校にするかというお悩みは時々保護者の方から伺うことがあり、本当に悩ましいことだと思っております。
これが正解ということはないのですが、進路選択を考える際のポイントについてお話しできればと思います。

 

①まずは定期的に通えそうかどうかが大切

 

現在お子さんは不登校であるということなので、まずは継続的に通えそうかどうかということが、進路選択をしていく上で大切になるのではないかと思いました。
つい、保護者側としては先の進学や就労のことを考えてしまいがちですが、そもそも学校に楽しく通うということができないとその先について考えてもうまくいかないことが多いので(もちろん実際には学校は通わずに就労について考えるという選択肢もあります)、はじめにどのような学校であれば無理なく通えそうかというところがポイントになるかと思います。
通うことに関しては、授業内容や校内の環境面での配慮だけでなく、通学にかかる時間や通学経路なども大切なところです。実際に通うことが決まったけれど、朝の満員電車に乗れずに通えなくなったということも時々聞く話なので、実際に登校が始まった際、どのような生活になるのか一度シミュレーションをしてみるとよいかと思います。

 

②学校生活の1週間を視覚化して伝える

 

特性のあるお子様の中にはなかなか学校生活についてイメージすることが難しい場合もあります。特別支援学校と通信制高校の大きな違いとしては「週何回通うことになるか」ということが挙げられます。特別支援学校は基本的に週5日ですが、通信制高校は週1回、サポート校という形であれば週3回くらいの登校頻度でよいことも多いです。
また、一日の過ごし方も朝何時から始まり、何時に終わるのかということも学校によってだいぶ違うので、そういった学校生活のイメージがつくかどうかを確認していくことが大切になります。
一週間のスケジュールを時間割のように書き出し、お子さんが無理なく登校できる範囲かどうかを一緒に考えてみることから始めていけるとよいかと思いました。

 

③学校で何をしてみたいのかを聞いてみる

 

高校という学校に対するイメージは人によってさまざまだと思います。また高校生活をどのように過ごしたいのか、どんな期待があるのかも人によってさまざまです。自分がやってみたいと思っていたことが高校生活でできない、あるいは期待していたものと違ってしまうと学校に通うモチベーションはもちろん下がります。
今まで相談を受けてきた中では、部活を頑張りたいと思っていたけど実際入部してみるとイメージと違って学校自体が嫌になってしまったり、友達と仲良く登下校するイメージだったのが、なかなか話しかけられずに一人で過ごすことが多くなってしまったので行かなくなってしまったりなど、思いの外、このイメージと現実とのギャップはその後の学校生活に影響を与えます。
逆に「定期券があるので学校の帰りに寄り道してゲームショップに行きたい」という希望があるお子さんが、学校ではそれほど楽しみがあるわけではないけれども、下校時の楽しみがあることで嬉しそうに学校に通っていたということもあります。
そのため、高校生活にどのようなことを期待しているのかを聞いて、それがかなえられるようにするためにお子さんがどのようにしたらよいのか、あるいは周囲はどのような配慮をすればよいのかを考え、それが達成できそうな高校を選択するということも大切になります。

 

時々「何も期待してない」「イメージできない」というお子さんもいます。その場合はそもそも日々の生活に何を期待しているのか、何が好きでなんだったら楽しめるのか、逆にこれだけは避けたいというものはないのかということを一緒に考えてみて、それらが進学先で少しでも達成できるのかを考えられるとよいでしょう。

 

 

いかがでしょうか?せっかく進学するのですから、できるだけお子さんが楽しく過ごせるようにしていけるのが何よりだと思います。そして、その楽しかったという体験が、今後の就労、ひいては人生を歩んでいく際に重要となります。
学校に限らず、お子さんにとって良い体験が積める居場所を選択していくという視点を大切にできればと思いました。

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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