Q66.受け答えがキレている、常に態度が悪くてこちらが優しく接していても顔を歪めて悪態をついてきますーゆるゆる子育て実せん編

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:受け答えがキレている、常に態度が悪くてこちらが優しく接していても顔を歪[ゆが]めて悪態[あくたい]をついてきます
年れい: 〜就学前

質問内容

もともと気性が荒くいなぁと思っていたのですが、最近その頻度が増したのと、口でも歯向[はむ]かってくるのでこちらが怒鳴[どな]らないと止めてくれません。

ママが手伝ってくれない、来てくれない、工作うまくできない、本がうまく読めない、ママとお風呂入りたいのに入れない、、、、
などなど、自分が思っているとおりに進まないと蹴[け]る、つねる、叩[たた]く、つばを吐[は]く、を繰り返します。

例えば、こちらが優しく「じゃあ◯◯終わってからでいいからご飯を食べようね」
と伝えても切り替えができずずっとテレビを見ていたり。
そのあと待っていても一向にこないので、「ごはん食べてからテレビ見よう」と伝えると、ここからスイッチが入り「わかってるよ!もう!ママはうるさいな!」という感じで目を吊[つ]り上げて言ってきます。

質問してくるときも最初からキレているし、どうしていつもそんな態度なのかまったく理解できないし、寄り添ったところで先程のような態度になるので本当に疲れます。

子どもが怒りそうなとき、怒って我を忘れているとき、私は距離をとろうと離れたり淡々と接しているのですが、それすらも「ママの態度が悪いよ」「どうしてそうなるの!」など、逆に距離をとられるのが嫌のようです。(一度怒っている時に別室に行ったら追いかけてきました)

保育園では本当にいい子ちゃんで、帰宅すると途端[とたん]に変わります。
さっきまでとてもにこにこしていたのに、二重人格ですか?ってくらいにコロコロ態度[たいど]も変わります。

毎日毎日こんな状態なので、この子は育てにくい子なんだなと思っていますが、夫も私もお手上げ状態です。どうか先生のアドバイスをいただければと思います。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。
これはなかなか大変な状況ですね。相談者さんが保護者としてどうにかしようと四苦八苦[しくはっく]されて、それでも上手くいかなくてとても悩まれている…ということが伝わってきました。また、なんというか、お互いにかみあっていないというか、やりとりの悪循環[あくじゅんかん]が生じてしまって、上手くいかないことが多いのだろうということも感じました。
いろいろな可能性がありそうなので、いくつか思いついたことをお伝えしようと思います。その中で当てはまりそうだなと思ったことがあったら、それを参考にしていただけるとありがたいです。

まず、相談内容を読んでいて「~~ない」という上手くできなかったり、思い通りにいかなかったりという発言が多いのだなと思いました。
だとすると、実際にこのお子さまは今の段階で、自分で何がどこまで、そもそもできるのだろうということが少し気になりました。 時々子育てや発達の相談を受けていると年齢相応[そうおう]にできないことがあったり、あるいは大人側がちょっと期待し過ぎてしまい、それによってお子さんがフラストレーションを感じていることもあったりします。
そのため、まずは「本人ができる範囲のことをしてもらい、できないことは手伝ったり、代わりにやったりする」というスタンスがとれるよう一緒に考えたりします。
ただ、そういった時に「先生、でもこの子は園ではできるんです」とか「ちゃんとやる時もあるんです」とお話しされる親御さんもいます。その際には「物事をする際には「できる」と「できない」の間に「できるけど疲れる」ということがあって、コンディションによってはできなかったり、あるいは相当頑張らないとできないときなどがあるんです」とお伝えし、改めて大変さがないかを検討してみたりしています。

また、切り替えるということに苦手さがあるお子さまなのかもしれない、ということも思いました。
そもそも、小さいお子さんは切り替えが苦手な場合が多く、成長していっても苦手な人もいます。これは注意力や先の見通しを持つこと、聴覚[ちょうかく]や視覚[しかく]情報の処理の仕方、興味関心の持ち方など様々なことが影響している可能性があります。今回の書いていただいた内容だけでは、お子さんが何がどこまで影響してそうなっているのかまではよくわかりませんでした。
ただ、切り替えの練習をしていけるとよいのかなと思っているので、いくつかそのコツをお伝えして置ければと思います。 例えば相談者さんがしてくださっているように「予告をする」というがひとつの方法で、予告の仕方も一日のスケジュールとして伝えたり、作業前、15分前、10分前、5分前と細かく伝えていったり、口頭だけでなく視覚情報で目安を伝えたり(キッチンタイマーやアプリの「ねずみタイマー」など)など、予告もいろいろ工夫して試してみた利できるとよいかと思いました。また、切り替えが難しい場合は「ひと区切りついてから切り替える」というところから始めることが多いので、そのひと区切りがどこだと切り替えやすいのかということを一緒に探せると少しスムーズになったりします。

別の観点から考えると、今回のご相談では「保育園ではいい子ちゃん」という記載がありました。
これも時々あるのですが、保育園でいい子ちゃんを頑張り過ぎてしまっていて、その分のストレスがご家庭で出てしまっているというパターンもあります。園では集団行動でそれに合わせるのが大変だったり、何か嫌なことがあって先生に伝えようとしても他の子に勢いに負けてしまったり、そもそも周りが騒がしくてそれがストレスになっていたりなど、ストレスになる要因はいろいろあると思います。
そういった場合、ご家族以外の人にヘルプサインを出すことができずにいるとどうしても安心してストレスをぶつけられるご家族にその分たくさん言ってしまうということがあるのです。なので、園の中で何かしんどさが何かないかを改めて検討し、園で感じたストレスは園で解消できるように保育園の先生と一緒に対応方法を検討していくということが必要となります。なかなか園の先生と検討することが難しい場合は、自治体のこども家庭センターや保健センターの方にも相談しながら一緒に検討できるとよいかと思います。

最後に読んでいて気になったところとしては、怒りそうなときに距離[きょり]を取ろうとすると嫌がるというご記載があったかと思います。
これに関してはそもそも怒りの感情を相手に向けるというのは「自分のきもちをわかってほしい」という思いの表れでもあるので、距離を取られたり、淡々[たんたん]と関わられたりすると「自分のきもちが伝わってない」とお子さんは感じるので、余計に怒りの感情が湧いてしまうのだと思いました。
なかなかお子さまの気持ちを把握[はあく]することが難しいという場合は、僕は時々お子さんの気持ちを追体験[ついたいけん]するためにお子さまの言動を真似してもらったりすることがあります。お子さんが実際にした言動をロールプレイで演じてみることで、どのような気持ちが生じたかを感じたり、考えたりすることで、お子さんの言動を表面的な意味だけでなく、より深いところの意味を理解しようという試みになります。
子ども目線になるために実際に「子どもになってみる」という体験をする人はあまりいないのですが、実際やってみるといろいろな発見があって、お子さんとも関わるヒントになることもよくあるので試してみてもらってもよいかと思いました。

だいたい思いついたこととしては以上の通りとなります。
改めてお子さんからネガティブな態度や言動があると、親としても関わるのがしんどくなって大変だろうなと思いました。なので、あまり根を詰めて対処しようとせずに、相談者さんもセルフケアをしながらちょっとずついろいろな対応を試してみていただけるとよいかと思います。
ただ、子どもに限らずだいたいの人は自分にとって無理のない範囲で生活していれば、そこまでかんしゃくを起こすということはないのだと思っています。なので、そういった言動があるということは、こちらからは把握ができていないところで、何か無理がかかっている可能性があります。なので、何が負荷[ふか]になっているのか、その点を検討してみるところから取り組んでいただけるとよいかと思いました。 今回お伝えしたことが相談者さんにとって少しでもお役に立てば幸いです。

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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