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Q55.場面緘黙の子どもの将来についてーゆるゆる子育て実践編

Q55.場面緘黙の子どもの将来についてーゆるゆる子育て実践編
2023年7月28日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:場面緘黙の子どもの将来について
年れい: 中学生

質問内容

 

こんにちは。ご質問失礼します。

 

中学2年生の息子は幼い頃から場面緘黙で、家族以外の人と話せません。家ではよくしゃべります。一歩家の外に出ると挙動不審になり、学校では、必要最低限聞かれたことを小さな声で返事をするのみです。

 

問題は、しゃべって友達を作りたい、世間の事を知りたいという意欲が本人になく、家の外に出たがらないことです。
小児神経科医にも診てもらい、自閉スペクトラム症と言われましたが、本人が病院や習い事などを頑なに嫌がり、療育等とも繋がることはなく、本人に困り感がないので様子見で良いということでずっと現状維持できました。
家族以外と話すことがないので一般常識も知らないことがたくさんあります。また、母親に甘えがまだまだ強く、責められる口調に弱く、精神的には小学校中学年くらいの感じです。
今後進学・就職を考えた時にどうして行くのか、想像がつきません。障害者ではないのでそういった雇用の形もないでしょう。
誰か1人でいいので家族以外と繋がってほしい、そんな思いですが本人にはその気はありません。

 

このまま家でずっと過ごすのか。どうやって生計を立てて行くのか。気がかりですがそれは本人の気持ちの変化を待つ以外に方法はないのでしょうか。
親として何をしたら良いのでしょうか。

 

とても優しい子です。言動も幼いことから、私がいつまでも幼い子のように接しているのが良くないのでしょうか。

 

おがてぃの回答

 

ご相談いただきありがとうございます。相談者さんがお子さんのことを大切にされており、将来のことを心配されていることが良く伝わってくる文面でした。今後のどのように関わっていったらよいのか、また何をしたらよいのかということでお悩みだと思いましたので、僕が思ったことをお伝えできればと思います。

 

まず、はじめに思ったのは「ご家族に話せているのは良いことだな」ということです。おうちでもお話しすることができないのであれば、人とコミュニケーションをとるのが難しいということになりますが、ご自宅では話せているということなので、ある程度相手の言っていることを理解し、その上で自分からことばで発信することができるスキルを身につけているということになります。
だとすれば、外でお話しすることができないのは、人に対する緊張や不安だったり、外という環境自体が苦手だったりといったようなことが影響しているのかと思いました。特に「学校では、必要最低限聞かれたことを小さな声で返事をする」と記載がありましたので、本当に必要な時はお話しできるということはとても貴重なことだと思います。そういった意味では学校ではとても頑張られているのではないかとも思いました。

 

逆にいうとそういった不安や緊張、心配などが軽減されれば、もう少し安心してお話ができるということになります。ただ、この場合はお子さん自身が「話したい」という意欲を持つことが大事になるので、無理強いせず、そのタイミングを待つということが必要かと思います。
そのようにお伝えすると「じゃあやっぱり待つしかないのか」と考えられるかもしれませんが、そうでもなく、実際できるとよいこととしては「外で楽しい経験を積む」ということだと思われます。
現在のところ、お友達を作ったり、世間のことを知ったりといったことには興味がないかもしれませんが、お子さん自身が興味を持つことは何かしらあるかと思います。その興味のあることでおうちの外でも楽しめること、あるいは外でないと楽しめないということがあれば、積極的に楽しみに行けるとよいかと思います。
そうやって外が楽しいと感じ、もっといろいろなことをしてみたいと感じられるようになることが、ひいては不安や緊張を和らげ、外でも話ができるようになっていくきっかけになるのではないかと思いました。

 

また、少し矛盾することのお伝えになりますが、なるべく話をしないで外出できるようにしていくこともひとつの方法かと思います。外出そのものに不安があれば、話をするということはそれに輪をかけて不安を高めることになります。なのではじめは話をすることを目的にするのではなく、そもそも外出がひとりで不安なくできるようになるところからはじめ、コンビニで買い物をしたり、ファミレスでタッチパネルで注文をしてみたりと言葉を使わずに社会的な交流をしていき、いろいろとできることを増やしていくのも大切なことかとも思いました。

 

進学や就職に関しては、まだそこまで慌てなくて大丈夫です。お子さんのできる範囲で自立を促し、できる範囲で仕事を見つけていくという感じで、お子さんにとって無理のない進路をお子さんと一緒に考えていければと思います。
もし、相談者さんだけで考えることが難しいという場合には学校のスクールカウンセラーさんや自治体の思春期相談をしているところなどに相談して一緒に考えてもらいましょう。
相談者さんのおっしゃる通り、お子さんと誰かとつながることは大切なことです。ただ、それより大事なことは家族がお子さんのよき理解者であるということです。なので、相談者さんがいろいろな方と相談を通じてつながって「この人だったら大丈夫かも…」と感じられる方とつなげていけるよう取り組んでいただけるとよいかと思いました。

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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