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Q54.就学先 子育ての悩みーゆるゆる子育て実践編

Q54.就学先 子育ての悩みーゆるゆる子育て実践編
2023年7月10日 office

ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:就学先 子育ての悩み
年れい: 〜就学前

質問内容

 

字も読めない、書けない
ずっと座ってられない
コミュニケーションも自分の気持ちが強いから相手の気持ちに寄り添えない
どう関わっていけばいいかわからない…どうしても怒ってしまう毎日に自分も自己嫌悪。

おがてぃの回答

 

ご相談ありがとうございます。
短い文章の中に、発達の遅れや相互的なやりとりが難しいという困りや、そのことに対してつい感情的になってしまうという、相談者さんご自身に対する反省などが詰まっており、本当に大変なんだろうと思いました。
発達支援は個別性が高いので、絶対にこれをした方が良いということはなかなか言いにくいのですが、僕が相談を受けている中でよくお伝えしていることをここでは書いてみて、相談者さんの少しでもお役に立てるか試してみたいと思います。

 

まず、こういった大変な状況を少しでも楽な方向に持っていくために取り組むこととしては「そもそも何もしないで安心・安全に過ごせる時間はあるか?」ということを振り返ることから始めています。
これは何でかというと、親子間でトラブルが生じる場合、わりと親御さんからお子さんに対して何らかの働きかけをして、それができずにかんしゃくが起こったり、けんかになったりすることがあるからです。何らかの働きかけというのは、例えば宿題だったり、家の手伝いだったり、お出かけの支度だったりと、お子さまに何かやってもらおうとすることです。そして、それが上手くできずにお互いにイヤな気持ちになってしまうということになります。もし、これが多いという場合には、大人側から働きかけなければ、少なくとも安心・安全にお互いに過ごせるということなので、働きかけ方に焦点を当てて相談を進めていければよいということになります。

 

発達的な特性でこだわりなどがあると、切り替えが難しくて親御さんの思うようなスケジュールで物事が進まなかったり、ことばの遅れがあってコミュニケーションが円滑に取れなかったりすると、そのことに対してイライラすることがあると思います。
ただ、結局のところお子さんの発達は1人1人異なるので、どのお子さんも「自分のできることしかできない」というのが事実です。なので、なかなかそれを受け入れるのはしんどいのですが、今のお子さんのできる範囲に合わせて、生活を組み立てていくというところから始め、少しずつできることを増やしていくというのが関わりのスタンスになります。

 

一方で、お子さん側から親御さん側にアレコレしてくるということもあります。
特によく相談を受けていたのが、下のお子さんの面倒をみているときに上のお子さんがかまってほしいと言ってきて、待っていてほしいのに待ってくれず、お互いに余裕がなくなってケンカになるということです。相談者さんの相談の中にも「自分の気持ちが強いから相手の気持ちに寄り添えない」ということが書かれていましたが、どこまでも自分都合で動いたり、話したりしてしまうので、相手が嫌がっていたり、疲れていたりしたとしても、自分がそうしてほしいと思ったらそれをどうやってもらうかしか考えられないということがあります。
この場合は「お子さんのしてほしいことを別の形でどう叶えるか」ということがはじめのステップになります。上記の上のお子さんがかまってほしい時を例にとると、例えばもう一人のパートナーや他の親族の方に対応してもらうとか、その間は動画やゲームなどして待ってもらい手が空いた時に相手をするとか、下のお子さんと一緒に構える活動をするなど、ただ「かまってほしくても我慢する」というのではなく、お子さんの気持ちをある程度解消しつつ、こちら側もちょっとでも楽なやり方でどうにかやり過ごすというアプローチになります。
そもそも人はそう簡単に我慢ができるようにはならず、年齢が小さければ小さいほど難しいとされています。なので、ある程度成長するまでは難しいという前提のもとになるべく手がかからない方法でお子さんの要求を満たせる方法を検討した方が上手くいきます。

 

相手の気持ちに寄り添うということも、基本的にはとても難しいことです。
僕は仕事柄「相手に共感をする」ということを支援の中で大切にするよう教わりましたが、それは実はとても難しいことで、大人でもできていない人はたくさんいます。ただ、それでもそれなりにやれているのは人との関わりに関するルールが身についているからであり、決してみんながみんな同じように感じているからそうしているわけではないのだと思っています。
なので、お子さんに関わる際にも無理に相手の気持ちをわかろうと思ってもらわずに、まずは自分の気持ちがちゃんと解消されるためにはどうしたらよいかというところから始めていけるとよいかと思いました。

 

上記のような関わりから始めていくのですが、相談の中ではなかなかそういったスタンスで関わることが難しい親御さんもいます。
「仕事や子育てが忙しくて、そんな余裕はない」「今身につけさせないと将来困るようになる」「頭ではわかっているが、感情的に許せない」などいろいろお話ししてくださるのですが、僕はそういったお話を伺うと「まぁそう考えるのももっともだよなぁ」と良く思います。これは自分が親になったことも影響しているのですが、結局のところ、日々の生活というのは子どものことだけを考えて過ごすことはできず、他の家族や仕事、日々の家事や園や学校、ご近所や社会情勢等々、様々なことを考えながら今何をするかを考えなくてはならないので、いくら子どもにとって良くても、それができないということはままあると思います。そして、その中にはそもそも親御さん自身の人生があるので、ご自身がお子さんと向き合う中でどう生きていくかということを考え始めると、なおさら難しいのではないかと思いました。

 

そういったことを考えると、とてもではないですがすぐにお子さんを中心に生活を考えてほしいなどとは僕は言えません。だから上記のスタンスを伝えつつ「基本的な方向性は今お伝えした通りで、後はお子さんと親御さんがお互いに無理なくできる範囲でそれを進めて、少しでも今より楽に過ごせるようにしていきましょう」とお話ししています。
たぶん一番良いのは今この瞬間少しでも楽になって、ちょっとでも笑顔でいられるようになることです。そしてできることなら、それが少しでも長続きすることだと思うので、そのためにできることを考えていけたらなぁと思いました。

 

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。

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