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『絵本』の紹介〜精神疾患をかかえた親とその子どもを応援する絵本

『絵本』の紹介〜精神疾患をかかえた親とその子どもを応援する絵本
2020年7月20日 pulusu

シンポジウム企画にあわせた絵本紹介コラムです。
2020年9月にオンライン開催される家族療法学会。自主シンポジウム「精神疾患のある親とその子ども―親子への支援と『絵本』の活用」にお声かけいただき、参加します。

 

今回ご一緒する絵本は…
フィンランド発の2冊の絵本-精神疾患をもちながら子育てをする親に向けた『子どもにどうしてあげればいい?』と子どもに向けた絵本『お母さん、お父さんどうしたのかな?』(上野さん)
今年6月にでたばかりの新刊!ドイツの児童専門書『悲しいけど、青空の日』(田野中さん)
そして『家族のこころの病気を子どもに伝える絵本シリーズ』(プルスアルハ)。
企画者は東京都立大学の長沼さん。

 

プルスアルハが最初の絵本『ボクのせいかも…ーお母さんがうつ病になったの』を刊行したのが2012年で、このとき日本ではまだ10年早いのでは?と言われたりしました。
時代が追いついてきたのか…(もう8年が経っていますね…)
今回の企画はちょっと感慨深いです。
親が精神疾患をかかえたとき、子どもも、親の病状について、対応や工夫、相談先などについて年齢や生活状況にあわせて知れること。家庭の中で病気のことがタブーとならずに話せること…『絵本』がその一助となることがあるかもしれません…そうなったらと思います。
シンポジウムにあわせて絵本紹介コラムを書きました。
(フィンランド発の2冊の絵本は、この夏の期間、ぷるすあるはのオンラインストアでも取り扱うことになりました!)

 

 

2016年のドイツの精神科病院にて。子ども向けの本を見せてください、とお願いすると棚から10冊以上の本がでてきて「子どもに選んでもらって、一緒に読むのよ」と言われたそうです。日本でもこの光景が当たり前になりますように…。(エビソードとお写真は、たのなか先生からお借りしました)

 

『子どもにどうしてあげればいい?』
『お母さん、お父さんどうしたのかな?』

トゥッティ ソランタウス (著), アントニア リングボム (イラスト), 上野 里絵 (翻訳), 東京大学出版会, 2016

 

「子育て支援Let’s Talk!子どものことを話そう」は、フィンランドの児童精神科医Solantaus(ソランタウス)さんが開発したこころの病気を抱えている親・子ども・家族への支援方法の一つです。フィンランドでは、安全性やエビデンスが報告され、臨床現場で実践されています。スウェーデン、デンマーク、ギリシャ、オーストラリアでも実践され、オーストラリアでは、有用性が示されているとともに、支援者に向けたe-learningが2014年6月から無料配信されています。
この支援方法を、日本で研究、実践に取り組んでおられるのが、東京医科大学の上野さんのグループ。講演会をされたり、そして、今回紹介する絵本、ソランタウスさんの著書、2冊の絵本を翻訳出版されています。

 

 

2冊とも、装丁がステキです。正方形のハードカバーの素材感、マットな紙質、白黒+単色の色遣い、線描のイラストがオシャレで甘すぎないところがいいです。

 

子どものハンドブック

対象は13歳以上が想定されています(12歳以下は親といっしょに読むことをおすすめ)。文字が多く余白が少ないですが、年齢を考えれば子どものペースで読めます。目次もしっかりついていて、子どものよくある疑問にこたえる形式で、読みたい項目から読んでも、最初から読んでも良いようになっています。
絵本といってもストーリーのある絵本ではなく、イラスト入りの本が近いです。

絵本全体を通して、子ども扱いをせず、丁寧な語りで、メッセージを伝えています。
例えば、相談できないきもち、親御さんを思うきもち。読んだ子どもたちも「そうなんだよなぁ」と。親に対してうっとうしい気持ちもあるよねと、そんなこと感じちゃいけないかも…と思いがちな気持ちも、繰り返し認めてくれます。
いろんな気持ちあっていいんだってわかったら、自分を責めなくていい。
同じようような気持ちを持っている子どもがほかにもいるの?とひとりじゃないと感じられる。
前半は、こころの病気ってどんなもの?なぜなるの?どうやって治すの?のテーマもとりあげています。疾患が限定されていませんので、幅広く使えます。
文章の中の大切なキーワードや、具体的な方法のイラストや表なんかがあればともっと読みやすいかもという感想も持ちました。

 

疑問や心配なことを話してみていいよと、繰り返し提案します。
迷っている子どもたちに、大丈夫だよと、倒れないように背中を支えてくれるイメージです。その子どもがしっくりくるお守りのページを見つけたり…なるといいな。
自分の人生を歩んでいいよで締めくられてます。

 

子どもと関わる方にも読んでほしいです。子どもの気持ちを知ったり、具体的の応援が描いてあり、関わるヒントになると思います

 

親のハンドブック

こころの病気をかかえる親によくある心配ごとにこたえて、子どもをサポートする方法を見つけられるように手助けする本です。
親のこころの病気は子どもにどんな影響がある?家事が手つかずのときにはどうしたらいい?子どもにどう接したらいい? etc
(いろんなことが大変なのは)病気の影響と、親御さんを責めない語りが好印象です。
文章が中心なので、調子が悪いときには、休憩したり、読みたい目次から読んで、何日かに分けて読んだりできると良いなと思いました。
こんな時には専門家へと、具体的な方法が書いてあるので、これなら相談できると自信が湧いてきそうです。

 

支援者の方にも。(親御さんの)子どもさんたちを想う気持ちや、体調がすぐれない自分を責めてしまう気持ち…を感じられます。

 

 

子どもさん親御さんの両方気持ちに耳を傾けると、今どんなサポートが必要かな?と視点が広がる2冊の本だと思います。
フィンランドでは、2002年に出版されてから、すでに3万部以上発行され、成人の精神科医療の分野で(!)広く使われているとあり、驚きました。

 

『悲しいけど、青空の日 – 親がこころの病気になった子どもたちへ』

シュリン・ホーマイヤー(文・絵), 田野中恭子(訳), サウザンブックス社(発行), 宮崎綾子(編集), 2020

 

2019年、クラウドファンディングで400名以上の支援者の方からの大きな後押しをいただき、翻訳出版が実現した絵本です。
佛教大学の田野中さんが発起人で翻訳人。ぷるすあるはの動画『親が精神障害 子どもはどうしてんの?』にも「たのなか先生」として出演しただいています。

 

原書はハードカバーでしたが、日本語版はソフトカバーになり、やさしい雰囲気になりました。こちらの絵本も装丁が素敵でオシャレです。
制作過程からご一緒してきて…ほんとに丁寧に真摯につくられた本ということがにじみでています。

 

さて、本を開くと… 3部構成。

 

第1部は、うつ病のお母さんと2人暮らしの9歳の女の子モナの物語。
相棒のぬいぐるみマックスも登場します。
お話部分が71ページまで、しっかりとお話です。学校場面やほかの子どもとのシーンも何度かでてきます。ほかの子に心ない言葉をかけられるシーンがあったり… お母さんに対しても、いろんな感情がお話のなかででてきます。展開が安易なハッピーエンドではないところも読みやすく、誠実なストーリーだと思いました。第2部へのつながりが素敵な構成です。

第2部では、モナが自分の経験を話しながら精神疾患や相談先について、読者の子ども達にわかりやすく説明していきます。子どもたちは、まるでモナと対話をしているように、自分のことを書き込めるページがいくつもあるのが魅力です。ここは本書の特徴的なコーナーだと思います。

 

第3部では、子どもたちの周りにいる大人や専門家への提案が書かれています。
2,3章の相談先などは日本の状況にあわせて紹介されています。

 

こちらの絵本も、洋書の良さがあります。
独特な雰囲気と味わいのある甘すぎないイラスト。コラージュづかいで、紙面のダイナミックな構図や色使いがおしゃれです。
主人公モナによりそう相棒マックスの表情をみるのも、画面のなかの小物探しも楽しい。
タイトルの『悲しいけど、青空の日(Sonnige Traurigtage)』がまた、じわりと、よいかんじです。

4分ほどのミニ動画あります↓↓

 

『家族のこころの病気を子どもに伝える絵本』シリーズ(ゆまに書房)

 

最後に、プルスアルハの絵本です。
2012年から2014年にかけて、シリーズ4巻を刊行。
親御さんが精神疾患になったとき、主人公の子どもの視点で描いた絵本です。前半が絵本パート、後半が大人向け解説、という構成になっており、うつ病、統合失調症(前後編)、アルコール依存症をとりあげています。

 

①『ボクのせいかも…─お母さんがうつ病になったの─』
②『お母さんどうしちゃったの…─統合失調症になったの・前編─』
③『お母さんは静養中ー統合失調症になったの・後編─』
④『ボクのこと わすれちゃったの?─お父さんはアルコール依存症─』

 

最初の一冊のあらすじは…
主人公の小学生のスカイは、お母さんの元気がない様子に、「どうしたらいいんだろう?」「ひょっとしてボクのせいかも…?」と感じています。週末は祖母の家で過ごすなど、生活の様子が変わるのに、説明はないまま。聞いてはいけないことのように感じて、ひとりぼっちな気持ちでいます。悲しくなっているスカイに声をかけたのは、お父さんでした。「スカイのせいじゃないよ、病気のせいなんだよ」のことばに、スカイはちょっぴり安心します。

 

後半の解説では、シーン毎のくわしい説明に加えて、病気を伝えるときのポイント集や相談先リストもついています。

 

お話と絵を担当するのがチアキ。
自分が子どもの頃から見てきた世界、感じてきたことと、精神科の看護師として出会ってきたたくさんの子どもたちから生まれた本です。
アクリル絵の具で描く印象的な絵も特徴のひとつ。特に、色彩と、目の表情にこだわっています。

 

 

紹介した絵本、それぞれにちがう世界観があります。
ストーリーやキャラクターのある良さもあるし、読み物には読み物としての良さもあります。いろいろそろえておいて、子どもや大人が、自分にあうものを選んで使えるようになるといいなと思います。

ぷるすあるはのオンラインストア

》ソランタウスさんの絵本2冊セット ←NEW
》親子の応援絵本5冊セット ←現在、セット販売はしていません。単品での販売となります。

の2つが新たにオンラインストアに加わります。
『悲しいけど、青空の日』、プルスアルハの絵本は単品での取り扱いがあります。

》家族療法学会公式サイトへ

(出番は9/5です)