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精神科の薬は、くせになりそう(依存しそう)でこわいです、薬漬けになりそうな心配もあります… 精神科受診Q&A 

精神科の薬は、くせになりそう(依存しそう)でこわいです、薬漬けになりそうな心配もあります… 精神科受診Q&A 
2019年11月5日 pulusu

精神科で長年働いてきた看護師のチアキが、精神科の受診や治療などの質問に回答するコーナーです。

 

質問タイトル:精神科の薬は、くせになりそう(依存しそう)でこわいです、薬漬けになるのではという心配もあります

チアキの回答

 

ご質問をありがとうございます。
くすりについての不安は多くの方から聞きます。
自分の飲んでいる薬のことをよく考えていらっしゃって…よく考える方ほど不安になるのも、そうですよね…と思います。

 

くせになりそう…
主治医の先生が処方した量、飲み方(容量用法)の通りに飲んでいる分には、大きな心配はしなくてよいと思います。
精神科の薬といっても、全ての薬に依存性があるわけではなく、一部の薬に依存性があり、それは薬の種類によります。必ずしも「強い薬=くせになる薬」というわけではありません。
一般的な精神科の薬で、依存性があるのは、多くの「睡眠薬」「抗不安薬」ですが、最近用いられている大部分のこれらの薬には、強い依存性はありません(だんだん危険性の少ない薬へと移り変わっています)。精神科だけでなく、内科やほかの科で処方されることもあります。 繰り返しになりますが、用法容量のとおりに内服するというのが大事です。
(薬の依存についてはこのコラムの最後で少し補足します。)

 

薬漬けになりそう…
以前は、精神科では、多剤大量療法といって、複数の種類でたくさんの薬で治療することが一般的でした。今は、なるべく少ない種類の薬で、必要な量で治療することがよいとされています。
病気の種類によって、急性期か慢性期か…そのほか、実際のところは、ひとりひとり病状も経過もちがいますし、先生によって薬の処方の仕方の個人差も、やはりあると思います。そして、どうしても、しっかりとした薬物療法が必要になる病状もあります。

 

処方されている薬に関心をもつ、知識をもつのはよいと思います。
お薬の説明書きは必ずもらうと思います。
「薬の錠数[じょうすう]」だけで判断ができないことは知っておいてください。
例えば…
処方された薬の半分は、胃薬や便秘薬などの、精神に作用する薬ではない、といったこともよくあります。薬にはそれぞれの役割があります。
1mgの錠剤3錠よりも、5mgの錠剤1錠の方が量が多い!とうのもあります。
外野[がいや]の人の「そんなにたくさんの数の薬を飲んでいるの!?」といった発言はスルーしてください。
なにか気になることを見聞きしたときも、急にやめると離脱症状がでることがあるので、急にやめるのはなしです。必ず主治医の先生と相談します。

 

精神科の薬は、生活しやすくするための「杖」のような役割。
薬だけで全てを解決するというのではなく、生活のいろいろな工夫といっしょにやっていきます。

例)統合失調症のいろいろなサポートの例、薬はそのなかのひとつ

 

最後に大事なこととして…
診察のときに、先生と、薬についての話ができるといいなと思います。
くせになるのが心配とか、増やしたくない、できるだけ飲みたくない…etc
大丈夫かな?大丈夫かな?と不安な気持ちではなくて、安心して飲める、納得して飲める量を見つけられるとよいと思います。

追加の知識

 

睡眠薬と依存性について

 

一般的な精神科の薬では、多くの「睡眠薬」「抗不安薬」には依存性があるという話をしました。
薬の効き方によって依存性に差があり、早く効く(作用時間が短い)ものほど、クセになりやすい(依存しやすい)特徴があります。
薬の種類でいうと、「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬・抗不安薬が多く用いられていますが、非ベンゾジアゾピン系(1989〜)、メラトニン受容体作動薬(2010〜)など新しいタイプの薬もでています。
今はほとんど使われなくなった以前の薬には、依存性や副作用がもっと強いものもありました。
睡眠薬・抗不安薬といっても、ひとくくりにして説明はできないこと、傾向としては、だんだん危険性の少ないタイプの薬へと移り変わっていることが言えます。

 

不眠のもとに精神疾患がある場合は、精神疾患の治療が大切です。「睡眠をしっかりとる」ことが回復のために必要なこともあります。生活習慣でできる工夫もしながら、薬、薬の依存性、といったことだけにとらわれずに、上手に薬を使えるとよいと思います。

 

常用量依存について

 

常用量依存は、決められたとおりの量、飲み方をしていても、長期間つづけることで身体が慣れてしまい、量は増えないけれども、やめられなくなってしまうことです。薬を減らすと、離脱症状から一時的に不眠や不安が強まることがあります。
睡眠薬を飲むことで不眠が改善している場合は、主治医の先生と相談して、漠然とつづけずに、減量、休薬にむけて少しずつ薬の量を減らしたり、飲まない日をつくるなど、取り組んでみるのもよいと思います。

 

*長期投与や多剤併用に対して、ガイドライン制定や診療報酬を減らすなどの対応がなされるようになってきました。長期間にわたって漠然と処方されていることも多いですが…必要なときに短期間だけ使う、というのが現在の考え方です。

 

処方薬乱用・依存症について

 

最近問題になっています。
「乱用」は、用法を守らない飲み方のことです。例えば、1回1錠のところを5錠飲んでしまう、寝る前の薬を気分を変えるために昼に飲んでしまう、まとめ飲み〜いわゆる「過量服薬(オーバードーズ)」など。アルコールとの併用もとても危険です。

 

一度の乱用でも、事故や急性中毒の危険がありますが、そういった飲み方を続けていると、薬のせいでさまざまな問題が起きてきますが、やめられない、薬の飲み方をコントロールできない「依存症」の状態になってしまいます。仕事にいけない、学業にとりくめない、家事や育児への支障といった社会的な問題などです。

 

睡眠薬、抗不安薬以外に、依存してしまうことのある処方薬には鎮痛剤(痛み止め)があります。市販薬では、鎮痛剤、かぜ薬。
処方薬・市販薬でも、乱用すると依存症の危険がある薬があることは大切な知識です。

チアキ
関西→関東、精神科ひとすじの看護師。
ぷるすあるはの制作担当、絵本ではお話と絵を担当しています。

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