ゆるゆる子育てを担当している臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。
質問タイトル:わかってるのにできない母(私)
年れい:〜就学前
質問内容
5歳なりたての娘と私の関係性についてご相談です。上に小2の娘もいます。
娘は、こうしたい!と思うとなかなか気持ちと行動の切り替えが難しいことがあります。泣き始めると激しく、耳にキンキンするほどです。朝の準備や寝る前の段取りで一つ一つに時間がかかります。私はイライラしたり、焦ったり、準備の合間に絵本を見るような他愛もない行動にカッとして、怒鳴り付けてしまいます。どうしたらいいのかなと考えて、イラストでスケジュールカードを作ってみたり、起こす時間を早めにしたりしてみましたが、なかなかうまくいきません。でも問題の核は娘の行動や発達ではなくて、私の時間的余裕のなさ(フルタイム勤務)から、娘のペースに合わない行動を求めてしまってるんだろうなと思います。ことばの理解・表現はとても上手で、落ち着いているときには「お母さんが~言ったから、次女ちゃんは悲しい気持ちになった。お母さんには~してほしい」など伝えてくれます。そのたび、私も落ち着いていたら自己嫌悪[じこけんお]と罪悪感[ざいあくかん]でいっぱいになり謝り、落ち着いていなければ「次女ちゃんが~したからでしょうが!!」と追い詰めてしまいます。一人になってまた、後悔します。
長女は準備や片付けの段取りがよく、経験から「先に面倒を片付けて、楽しいことをする時間を作ろう」と学んで動いています。そんな長女も5歳頃はサクサク動けてはいなかった、はずなのですが、目の前でこうも行動が違う二人を見ていると次女への感情がこじれてきます。時々、次女がかわいいと思えなかったり、無視[むし]している自分に気づきます。 数分のスペシャルタイムや、ほめる声かけすら、やりたくないと思ってしまいます。どうやったら、娘との関係性を取り戻せるでしょうか。
おがてぃの回答
メールをくださってありがとうございます。
とても悩み、迷われていることが伝わってくる文面でした。まずお伝えしたいなぁと思ったこととしては、次女さんへの関わりについてそうやって悩まれていること自体が、とても素晴らしいことだと思います。世の中にはいろいろな人がたくさんいて、こうやって子どもの行動にカッとしたり、どなってしまったとしても「子どもが悪いのだから仕方ない」と自らの行動を省みない人もいると思います。でも、そうではなく、後でそのことを思い出し、後悔[こうかい]し、どうにかしようと思えたということ自体がとても尊いことだと僕は思うからです。なので、まずはそう思えたご自身を労うといったところから始めていけると良いのではないかなと思いました。
そのうえで、どのように関わっていくかということですが、基本的には「無理をしない」というところから始めていけると良いのではないかと思います。この場合は「子どもに無理に任せず、自分の気持ちの余裕がある範囲で任せる」ということです。自分もそうだったのですが、子育てをしていると時々「もう〇歳だから、だいたい○○まではやらせよう」という考えになることがあります。
うちの家庭での例をあげると、おはしでご飯を食べるということがなかなかできないことがありました。テーブルにおはしを並べても、食べにくいからと使わず、スプーンやフォークばかり使って一向に練習しようとしなかったのです。エジソンばしとかいろいろ試してみても、そこから継続的に使うところもまで至りませんでした。「もうすぐ5歳なのに!」と焦って、つい、いらだって言ってしまうと、今度は泣いたりおこったりしてごはん自体食べなくなったりして、余計にイラつくということがありました。そんな時、妻から「ごはんの時間自体が楽しくなくなってしまったら、本末転倒[ほんまつてんとう]だよね」という適切な助言をいただき、改めて「本人のペースもあるから、無理にごはん中に使わせることに固執[こしつ]しない」としました。最終的に、おはしの練習はおやつの時間に「おはしチャレンジ!」として制限時間内につまめた分だけおやつが増量される方法にして、取り組んでみています。
何が言いたいかというと、ある程度やらないといけない分はこっちでやってしまって、本人にはできる範囲のことをやってもらう方が、生活が上手く回るし、関係も良好に保てるのではないかということです。
では、身についていない自分の身支度や生活習慣などはどうやって身につけさせたら良いかというと、別の時間に遊び感覚で楽しく取り組んでもらい、ちょっとずつ身につけていってもらうというアプローチが良いのではないかと思っています。
お母さんとして生活していくと、どうしたって、スケジュール通りに日々の家事や子どもの送り迎えをこなしていくということが大事になってきます。フルタイムで仕事をしていればなおさらで、日々時間に追われるような生活になるのではないかと思います。そんな時にあれもこれもとやっていくと、どうしても気持ちに余裕がなくなり、時間がかかる一番の理由が「子どものペースに合わせる」なので、関係も悪くなりがちになるのかと思います。
だとしたら、やっぱりこちらがある程度待てる許容範囲というのを設定して、それを超えるようだったら、こちらがリードしてこなすことも大事かと思います。例えば、朝、服を着替えるのが遅いといった場合、多少本人に任せて、ある程度の時間になったらこちらが着せてしまう、服を着る練習はもう少し時間に余裕のある夜パジャマを着るときとか、休日にするとしてしまってもよいかもしれません。
そんな感じで、お互い無理のない時間的・精神的余裕を持ちながら関わっていくことが大事かなと思います。
たぶんメールをくださった方は、次女さんのことをどんな風に子育てしたら良いかよく考えている方なんだと思います。ただそのために「子どものペースに合わせる」ことと「日々の生活をこなす」ことの矛盾[むじゅん]に悩んでいるのだと思います。だとしたら「子どものペースに合わせる」ことも「日々の生活をこなす」ことに関しても、ほどほどにできてればそれでいいんじゃないかなぁと思います。もし「両方ともうまくできてなくて、ほどほどなんてとても…」というお気持ちになられているとしたら、たぶんそれはしっかり両立しようとして頑張っているのだと思います。「ほどほど」というのは、もっと適当な感じのことを言い表していて、「うまくやることよりも、子どもも大人も無理しない」という意味だからです。