特集コラム。
メンタルクリニック、精神科の病院や診療所での、患者さんの子育て支援について考えます。
第1回は、病気を抱えた本人(患者)の立場から。
子育てを始めてから精神科にかかり始めました。診察が思うようでなく悪化していったので、3回転院しました。今の主治医は穏やかで親身、おかげで病状もすっかり安定しました。長年精神科に通い、いろいろな支援者の方にお世話になった立場から、思うところを書いてみます。
これが嬉しかったです ─子育ての悩みへの共感やねぎらいのひとこと
ちょっとした愚痴や相談に、「その時期のお子さんは発達段階的にね…」「こういう接し方をするといいかもよ」など、子どもの言動についてのミニコメント・ミニアドバイスをくれたのは、とても助かりました。健康な親以上に迷える子羊なので…。子育ての悩みに対して、共感してもらえること、頑張りを一言でもねぎらってくれること、「それはお母さんのせいじゃないよ」のような安心発言には本当に励まされました。生きる力にさえなりました。
また、主治医からの「ご家族に(病状や必要な支援など)ご説明しますよ」は、夫の子育て協力にも効果がありました。自分が言っても聞いてもらえないことも、専門家(権威)、信頼出来る、言葉に裏付けがある、客観的、だからです。
それから、傾聴だけでなく小さな「気づき」やヒントをくれるカウンセラーさん。ほんのりユーモラス。つらさを吐き出せた上に、生き方をぐんぐん変えられました。
これは悲しかったです ─頭ごなしに叱られたとき…
子育てに不安で神経質になった時「親御さんがそんなのではダメでしょ!」と叱られること。テレビやネットなどで仕入れた情報(子どもの発達など)に右往左往している時に、客観的な意見をくれたのは冷静になれました。でも、頭ごなしに叱られるととても悲しい。こちらも救われたくて一生懸命なのですから…
療養アドバイスについて ─家事育児の具体的な「手抜き方法」を教えてください
「よく休む」「手を抜く」が子育て中だと難しいし、具体的に教えてほしいです。看護師さんからでもいいな。講座があってもいいくらいだと思います。
こんなサービスがあるといいなと思います ─子連れ診察への配慮。ちょっと抱っこでもありがたい!
子連れで診察は、帰宅後寝込むくらいに、とても大変です。診察時・カウンセリング時に、子どもの一時預かりしてくれるところとの提携や、紹介してくれると嬉しいです。(院内に託児があると一番いい。ちょっと抱っこしていてくれる気遣いとかでも)。
また、子どもを連れての待ち時間が苦痛なので、順番状況をケータイ等から見られると有り難いです。
とても思うこと… ─具体的な生活サポートは本当に命綱です
一番感じることは、医療と福祉・行政との連携、医療から生活サポート(家事育児)へのパイプのなさです。
クリニックはいつまでも薬を出すだけで終わっていることも多いです。一生懸命相談しても、「じゃあお薬出しておきますね」しか言われない。そのうち諦めてしまいます。
しかし、自分で次の支援を探すのはきつい。そもそも相談していいのか支援があるのかさえも分からないです。支援を求めてもいいということを教えてほしい、そういう相談のできる窓口を名前だけでも具体的に紹介してほしいです。
ケースワーカーさんは大きい病院にはいますがアナウンスが少ないですし、クリニックでもケースワーカーさんが早急に必要だと思います。
地域担当保健師さんでさえ行政サポートの情報や連携が不十分(人によって差が激しい)なことがあるので、そこから、その他にどうすればいいのかどこに頼ればいいのか、本当にとても困っています。
精神医療において、患者、特に子どもを抱えた患者の環境へのアプローチは大切、いえ死活問題です。生活が支援されないと、療養もできないですから…。この点が少しでも改善されることを願っています。
メンタルがしんどい親は増え続けていると思います。子どものため家族のため、少しでも早く回復したいという思いは切実です。子どもたちが安心して暮らせるためにも「ハートとネットワーク」で親子サポートしてくださると嬉しいです!
***
『産後うつ・子育てがブルーなママの会〜ルミエール』代表 中野智恵さん
ルミエールはフランス語で「ともしび」の意味。産後うつから何年も、本当に孤独で不安でつらくて、真っ暗闇のトンネルの中に一人ぽっちな気分でした。なので、そんな闇の中にふと見つけた「ともしび」のようなホッとする存在でありたいです。安心、安らぎ、温もり、癒し、共にいる仲間、希望、の象徴として。兵庫県・西宮市を拠点に活動。
「みんなのストーリー」のコーナーでもインタビュー記事を紹介しています。
》うつの本人で母の立場から
【前編】うつについて、子どもにこんなふうに伝えました
【後編】同じような悩みを抱えたママたちと集い、自分OK!と感じられるようになりました