心理士おがてぃです。書籍紹介のコラムも3回目になりました。2月から連載を始めてはや半年…なんとかなるもんだなぁと実感しております(遠い目)
さて、今回ご紹介するのは大人の発達障害者向けの書籍…
『「大人のADHD」のための段取り力』
司馬理英子先生 , 講談社[健康ライブラリーシリーズ] , 2016/1/13
です。この健康ライブラリーシリーズは発達障害に関連する書籍が多数あり、専門用語があまり使われていないことやイラストや文字の配列なども見やすくなっていて、相談に来られた方と一緒に読み合わせするのに重宝していました。
今回その健康ライブラリーシリーズの中でもこの本を選んだのは「大人のADHD」の方向けに「段取り力」というテーマで書かれていたのが画期的だったからです。
近年大人になってから発達障害の診断を受けられる方も増えてきているようで、特に仕事や就労でのつまずきから受診に繋がる方も多いようです。
そんな方々と一緒に就労に向けてどう取り組んでいったらよいかを検討していくのですが、ADHD関連の書籍に書かれている一般的な工夫「メモを取る」「前日に準備しておく」などは、そのまま取り入れようとしてもだいたい上手くいきません。「どこにメモしたか忘れた」「メモした手帳をなくした」「前日何を準備したらよいかわからない」などのことが起こるからです。
なぜ上手くいかないのかずっと悩んでいたのですが、この本と出会って「そうか、足りなかったのは段取りという視点か」と少し腑に落ちた気がしました。書籍の中にも書かれているのですが、著者の司馬先生はこの…
「段取り力」を「物事の順序ややり方を決めること」ではなく「全体を見て行動する力」「ぶれずに進めていく力」
とし、先々のことを見据えて取り組んでいくことと説明しています。
ADHDの方はその障害特性から、目の前のことにとらわれて先のことをあまり考えるのが苦手だったりします。そのため一貫性を持って物事に取り組むことが難しい場合も多く、メモや事前準備といった工夫も「散発的」「気が向いた時」「目新しい時」だけ行うことが往々にしてあります。
これはもう特性だからしかたがないと諦めてしまうこともあったのですが、この本を読んで、あらかじめ1週間、1ヶ月と見通しを持って予定を立てておき、それに向けて取り組んでいく、自身の集中やモチベーションが続かないことも見込んで予定をたて、そのためにメモや事前準備といった工夫をするのだということがわかった気がします。
つまり、なんのために工夫をするのかという「ブレない工夫」「一貫性を持った工夫」ということが必要だったのだとわかりました。
また「段取り力」をつけるための課題として…
「時間の管理」「ものの管理」「プランニング」「記憶の補強」「持続力」
の5つを取り上げ、それぞれへの取り組み方が書かれているのも理解のしやすさにつながっています。片付けの仕方やメモの取り方も具体的に書かれていてわかりやすいです。
僕は時々ビジネス関係の書籍を読むことがあるのですが、仕事のマネジメントや時間の使い方といった内容の本を読んでいると、この書籍に書かれていることとそれほど変わらないなと思いました。そう考えると、発達障害者への支援というは一般の方にも有効なユニバーサルデザインなのではないかと思います。
発達障害という概念がだいぶ広まってきたおかげか、自分の周りには「自称ADHD」と言っている人がけっこういます。そういう人にも読んでもらえたらと思う一冊です。