精神障がいをかかえた親をもつ子どもの立場の方(今は大人になった方)や、障がいを抱えたご本人の体験をまとめたインタビューコラムです
目次
【ショートストーリー】
【前編】うつについて、子どもにこんなふうに伝えました
・私の場合─小学校3,4年の頃、絵本をいっしょに
・病気をオープンにするのは難しいことも多い
・伝えるときのポイント
【後編】同じような悩みを抱えたママたちと集い、自分OK!と感じられるようになりました
・病気の経過と支えになったことば
・話さなくてもいるだけでほっとできる場〜ルミエールについて
・まわりの人のこんなサポートがよかった(体験)& あるといい(願望)
・おわりに──うつで具合が悪い、ああそうなんやって、自然に話題にできて、おたがい様の世の中になるように
【ショートストーリー】
産後うつから、子どもが2歳半くらいの頃、寝たきり状態になり児童相談所にSOSを出して保育所に預けました。自分の具合が悪いことは、子どもが小さい頃から自然に話をしていました。うつという病名は、絵本を活用して、小3-4年の頃に伝えました。大変な状況は変わらないけど、子どもと共有したことで、子どもも腑に落ちたようです。自分も楽になれました。子どもと共有すると「今は具合が悪いから、調子良いときに一緒にやろな」が言えるようになります。病名がぼんとくるのではなく、その人の状態がどうなのか、というのが大切。そして、自身の状況を受け入れられているかが大きいです。
ひとりじゃないよと悩みをわかちあえる場があるといいなと思い、「産後うつ・子育てがブルーなママの会 ルミエール」を立ち上げて活動しています。息子は中学生になりました。現在の診断名は双極性障害(Ⅱ型)、軽度の広汎性発達障害あり、通院服薬中です。
【前編】うつについて、子どもにこんなふうに伝えました
・私の場合 ─小学校3,4年の頃、絵本をいっしょに
具合が悪いことは、3,4歳頃から伝えていました。
疲れやすいとか、今ちょっとしんどいとか。薬を飲んでいることも自然に知っていたと思います。保育所の年長さんの頃、ママのお仕事はなに?と聞かれました。「母さんは具合が悪くて一緒に遊んであげられなくて保育所に通っているんだよ〜」と。その頃には、お母さんは病気らしい、ということは感じとっていたようです。
うつ、ということばを使ったのは、小学校3,4年の頃です。
調子が悪くて、TV を1人で見せているようなことも多く、子どもが気に病んでいるかもしれないと思っていました。自分の存在のせいでお母さんの具合が悪くなってるのかも・・・と思っているかもしれないと。アートセラピーをやったり、ちょうど子どものことが気にかかっていたタイミングで、絵本(》『ボクのせいかも…─お母さんがうつ病になったの/プルスアルハ著』)のことを知りました。
自分が入院する前に、いっしょに絵本を読みました。
これはお母さんの病気のせいなんだと、わかりやすかったみたいです。安心したんだと思います。そういう名前の病気ということがわかると、調子がいいときと具合が悪いときがあって、機嫌が悪くてもボクのせいじゃないということがわかる。お母さんうつだから「今は具合が悪いから、調子良いときに一緒にやろな」が言える。共有するとすごく楽になり、親のストレスも少なくなりました。
絵本というツールがあると、自分だけじゃない、親子関係で悩んでいる人が多いとわかります。「一緒に読もな」というのがあるのがすごくいいです。
具合が悪くて寝ていると「大変なんや」とお見舞いの折り紙や絵で応援してくれました。子どもが純粋に言ってくれるのは力になります。具合悪いお母さんは重荷で、いない方がいいんじゃないか、と思ってしまうので。「また寝てる…」ではなくて「がんばれ」って言ってくれる。例えば、登校時の旗ふり当番。3日くらい前から、行くぞ行くぞって思って、やっと行くわけです。そしたら子どもが「おーすごい」とか分かってくれる。しんどいお母さんの会へ出かけたり、そこでリーダーをやってることを、素直にすごいなあと感じてくれたり。母さんはしんどい中でできる範囲のことをやってるからボクもがんばろう、と思っていると思います。
そして、がんばらなきゃ、だけではなく、「できないときやできないこともある、無理に克服ではなくてそれもあり」というメッセージにもなっていると思います。
子どもは正直というか残酷なところもあって、日常の中では、寝ていて起きられないときに、お腹すいたー!とか遊んでよ!とかなり乱暴な態度をされたことも何度もありますけど(苦笑)。
・子どもを気にかけているけど病気をオープンにするのは難しいことも多い
ルミエールに参加されているみなさん、子どもへの影響を気にされています。子どもに我慢させてるなあと。だけど、子どもに言って受け入れられるかもわからないし、(話すという)アクションがなかなか起こせないです。子どもは、年齢が低ければ素直でわかってくれようとすることが多いですが、パートナーは看病で疲れていたり、とげとげした関係だったり、パートナーやほかの家族、義理の家族など、メンタルな病気への偏見もまだまだ多くあります。会にうつという名前が入っているので、パートナーには内緒で来ているという人も結構います。
子どもを預けて入院したりすることに、みんな負い目をもっています。ほんとはだれも悪くない。(共有できると)むしろ絆になる・・・きれいごとかもしれないけど・・・例えばパートナーに理解があれば、(絵本の主人公の)スカイのパパみたいに、いっしょに支えようねということもできる。パートナーの理解にかかわらず、子どもの理解は自分の力になります。
本人に決心がついていないのに、(子どもに)伝えた方がいいとは言えないです。自分も、TVに出ていても、近所の人には言えなかったりします。子どもに言えていない人はすごくひっかかっています。家の中ではその話題ができない・・・。共有されていない子どもも、もやもやしているのではないかと思います。
子どもに心配かけないように、我慢して笑顔で、良いママでっていう真面目な人が多いです。私は、泣いたり怒ったりしていいよという喜怒哀楽もそうですし、しんどい部分も自然に共有できたらいいと思っています。
・子どもに病気について伝えるときのポイント
一大決心の告白ではなくて、普段から、自然な形で話をできるとよいと思います。しんどい部分も自然に共有して、重くなく日常にあるといいなと。例えば、『ハルのきもちいろいろカード』のような『親の具合カード』があってもいいですね。今日はしんどいけど怒っているわけではないよ〜とカードを立てておくとか。子どもと具合を共有できますよね。
「理解してほしい」という思い入れが強すぎると、子どもにとって押し付けになってしまいます。(プルスアルハの)絵本の使い方の注意点としては、他の絵本と同じようなテンションで読んであげるのがいいと思います。「あ、ママもいつも寝てるよね〜」「あれ、ママもこんな風に怖いときある?」など会話をはさめるといいかもしれません。
病名がぼんとくるのではなく、その人の状態がどうかというのが大切だと思います。「何の病気なん?」と子どもが聞いてきたり、例えばTVでそんなテーマがあって「これお母さんと似てるかも」と子どもが感じたときに、話ができます。
ママ自身が(うつの現状を)悪いことだという感覚でいると、子どももそう感じてしまうので、自分の状況を受け入れられているかは大きいことだと思います。自分で恥ずかしいとか、いかん存在やと思っていたら、子どもに言えないですよね。
私は・・・時間はかかりましたが、開き直ることができました。
(後編へつづく)
『ルミエール~産後うつ・子育てがブルーなママの会』
主宰 さくちるさん(Sさん)
※後編に詳しいプロフィールあり
※本コラムは、Sさんへのインタビューをもとに、ぷるすあるはがコラムを作成し、Nさんの同意を得て掲載しています。
※息子さんにも、コラムへの掲載のokをいただきました。そのときのことば…「しんどい人の役に立つのなら!」とのメッセージです。ありがとうございます!
『ぼくも「母さんに笑顔がないのはボクのせい?」って少し思ってた。笑顔作ってあげたいと思って、いろいろしてた。だから、主人公スカイに共感した。母さんしんどそうだったから応援してたんだ。母さん気にしてたんだね。安心してね!』
》【後編】同じような悩みを抱えたママたちと集い、自分OK!と感じられるようになりました