ゆるゆる子育てと発達障害のページを担当している心理士おがてぃです。
発達障害に関する書籍紹介の2回目になります。今回も何を紹介しようかとかなり悩んだのですが、前回は大人の発達障害に関する書籍だったので、今回は子どもの方に関連する書籍を紹介しようと思います。
さて、今回ご紹介させていただくのは…
『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』,大場美鈴著,ポプラ社,2016/1/13
です。…改めて書いてわかりましたが、スゴく長いタイトルですね。略称とかあるんでしょうか。作者の大場さんは『楽々かあさん』の愛称で知られており、ネガティブな子どもへの声かけをポジティブに直す「声かけ変換表」が一時期ネット上で話題になりました。
僕もその「声かけ変換表」が話題になって『楽々かあさん』のブログを知ったんですが、その表を見たときには「世の中こんなに上手く変換できる人がいるんだ!」と本当に感心しました。当時発達障害のお子さんをもつ親御さんに話をする機会をいただき、いったい何を紹介しようかと悩んでいろんな文献を読んでいたのですが、小難しい本よりもこの変換表の方がよっぽど役立つと思い、周囲の支援者にも参考にするよう勧めていました。
そんな出会いから1年近く経ち、待望の『楽々かあさん』が今までおこなってきた子育て法をまとめたモノがこの書籍になります。
おすすめポイント
・実践にもとづく日常場面で使える具体的な工夫が満載
・「迷ったときには子どもの自信になる選択をする」
・頑張りすぎている保護者の方向けの気持ちに余裕を持つための工夫などなど(ありすぎて全部書けない)
内容はまさに「実践知」と呼ぶにふさわしい内容で、今まで著者がたくさんの書籍を読み、支援者に話を聞き、日々の子どもたちとの関わりの中で見出してきたモノが凝縮されています。
たくさんいいことが書いてあるので、このコラムで全てを紹介することはできませんが、特に僕が気に入っているのは「接し方の基本編」のところで、「どうしたらよいかわからない→子どもの自信になる選択をする」と書かれているところです。
発達障害の方が併発しやすい「二次障害」は当事者の「自信のなさ」から生じることがあり、関連する本にはだいたい「自信をつけさせるように」とよく書かれています。でも、「実際に自信をつけさせるということはどういうことなのか」が書かれていることは案外少ないし、自信のつけ方も書かれていないことが多いのです。
でも、この本では自信というものは単に「人より秀でている」ということではなく「自分を信じる力」であると理解して、子どもも親も「なんとかなる」と思えるようになることだと書かれています。その上で自信を失っていたお子さんの自信回復から始めたということや、迷った時には自信がつく方を選択したと書かれており、なんというか一本筋の通った考え方に僕は感動しました。
また日常の工夫がカラーの写真で掲載されていて参考にしやすいことや、学校や生活での工夫だけでなく困るけど案外よそでは語られていない「おでかけ」や「学習サポート」に関する工夫まで盛り込まれていること、さらには最後に頑張りすぎている保護者の方向けの気持ちに余裕を持つための工夫など、内容がもりだくさんで、素晴らしすぎる感じです。そもそも大事なところにはあらかじめ赤色マーカーが引いてあるという、ビックリするくらい配慮がなされている本なんて、他にはそうそうありません(笑)
また非常にシビアですが、無理なモノは無理とはっきりと語っていることも理解のしやすさにつながっています。この辺りは日々の生活で実践されているリアルな感じがとてもありますが、無理なモノは無理を諦めたその上で、どう工夫していくかという姿勢は、非常に前向きで励まされているような感じがしました。
大場さんが書かれているように、この本に書かれていることはあくまで大場さんのお子さんたちに対して有効だった方法です。なので、それぞれのご家庭ではこの内容を参考にまた自分たちに合った工夫を考えていくことになります。でも、その工夫に取り組むための基本的な「考え方」と「エネルギー」をこの本は与えてくれている気がします。この本を本当の意味で使いこなすことができれば、自宅での子育ても笑顔でできる日が増えるのではないでしょうか。(おがてぃ 臨床心理士)
※続編が決まったそうです!(2016.7.26追記)
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