親がうつ病になったときの、子どもの気持ちの理解とかかわりをテーマにした、日本で初めての絵本です。解説つき。
01.絵本のあらすじ・解説
主人公のスカイは、お母さんの元気がない様子に、「どうしたらいいんだろう?」「ひょっとしてボクのせいかも…?」と感じています。週末は祖母の家で過ごすなど、生活の様子が変わるのに、説明はないまま。聞いてはいけないことのように感じて、ひとりぼっちな気持ちでいます。悲しくなっているスカイに声をかけたのは、お父さんでした。「スカイのせいじゃないよ、病気のせいなんだよ」のことばに、スカイはちょっぴり安心します。
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後半の解説コーナー(p-p)は、ベージ毎に、スカイの気持ち、かかわりのヒントを詳しく説明しています。病気を伝えるときのポイント集、相談先リストもついています。
03.絵本を特におすすめしたい方
親や家族/養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー/保健所、保健センター、精神保健福祉センター/児童相談所/医療機関/子育て支援機関/図書館(小中高校/大学/公共)
子どもや病気に関わる全ての方が絵本の対象です
※対象年齢 子ども〜大人まで(小学校低学年までは大人と一緒に)
主人公のスカイは、小学校年生の設定ですが、すべての年代で活用できます
04.推薦文 呪文は必ず解ける
松本俊彦先生
(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター副センター長 /薬物依存研究部診断治療開発研究室長)
心の病気は家族にある呪文をかけます。「語っていけない」、「質問してはいけない」。
そのせいで、家族は秘密を抱え込み、地域から――ときには親族からも孤立します。
最も深刻な被害を受けるのは子どもです。
子どもは、「どうして?」という言葉を飲み込み、周囲に心を閉ざし、たとえば「ママが変になったのは、ボクが悪い子だからかな」とひそかに自分を責めつづけるのです。それは、暴力と同じくらい、子どもの自尊心を打ちのめします。呪文とは、理由を知らされない謎のルールです。呪文を解くには、子どもに心の病気のことをわかりやすく伝える必要があります。でも、どうやって?
大丈夫、プルスアルハの絵本があれば、呪文は必ず解けます。
05.読者の声
高校の養護教諭です。新聞に紹介されていた絵本の記事を、大変興味深く読ませていただきました。図書館司書にお願いし、学校に3冊の絵本をそろえてもらいました。最近、よく保健室を訪ねてくる生徒の様子がどうも気になり、言葉少なに語る家の話から、お母さまが精神疾患をかかえていらっしゃるのではないかと思ったのです。いろいろ考えた末、スカイくんの絵本を彼女と一緒に読んでみることにしました。
わかりやすい言葉と、優しい色づかいの絵に、大変助けられました。
物心ついた頃から、お母さまは調子を崩されていたようで、お父さまからは「おまえが余計なことを言うとお母さんは悪くなる。どんなに辛くてもいつも笑っていろ」と繰り返し言われて育ってきたらしいのです。
あなたは何も悪くない、というメッセージをこれからも彼女に届くよう、伝えていけたらと思います。
家庭への介入は、どうしても尻込みしてしまいがちですが、あの絵本のおかげて生徒との関わりが無理なくスタートできました。
匿名 さん(うつ病編)
まつもとあけみ さん(うつまま日記原作)
母がうつの、小学5年男子に、読みました。
一年生の頃から、母が入院のたびに、一時保護されてました。1~2週間、長くても2ヶ月すると退院し、母に引き取られます。母子家庭です。ここのところ頻繁になり、さすがにお兄さんになってきた彼は表情も悪くなり、状況からみても施設を考えるしかないかと思いました。
ちょっと幼すぎかと思いましたが、それだけに理解できる部分もあるかと考え、絵本を読みました。その後、20分位一人になってもらい、どう?と尋ねました。ひとりで泣いていたのかもしれません。
彼は、嫌になるとすぐ入院して自分を放り出す母ちゃんが嫌いだし許せないと思っていたけど、嫌いにならなくてもすみそうと照れながら言っていました。
先は長いのですが、少なくとも、今の彼には良かったかと思います。
◯◯県 グリ さん(うつ病編)
私は3歳の子どもを持つ母親です。
約3年前、子どもが1歳になる直前、夫がうつになりました。転勤で私の地元を離れたところだったので、環境に慣れること、子育てにも精一杯のところに頼りにしていた夫の病気・・・でした。まさか夫が・・・どうしたらいいか、わからないまま、とにかく一日一日を何とか過ごしていました。
病院では夫は診てくれるものの、家族のケアはありませんでした。
私はとにかく、夫や私の精神状態で子どもに影響を出してはいけない、それだけはいつも心がけていました.その頃にこの絵本に私自身が出会いたかったな、と思います。そうすればもう少し楽に夫に関われたんじゃないかと・・・.
うつは本人だけでなく、家族全員で乗り越えなければいけない病気です。病気になった親だけでなく、それを支える親もサポートしなければ子どもをサポートしきれないと思います。
プルスアルハさんの活動、応援します。私にもできることを探しながら・・・。
匿名 さん(うつ病編)
児童相談所や保育所で、保育士として長く働いています。
精神疾患を抱える親御さんを持つ子どもたちとのかかわりの中で、どのように話したらよいのか、支えたらよいのか、自分自身の課題でもありました。そのような時に、プルスアルハさんの活動を知り、絵本を読み、これだ!と嬉しくなりました。
先日、病気は違いますが、やはり親御さんが精神疾患のお子さん(小学1年生)と一緒に絵本を読みました。
読み終わって、(治療のため離れて暮らしている)お母さんに会いたい、大丈夫だよって言いたいそんな言葉がありました。
子どもの周りに、一人でもその子のことを気にかける家族(たとえばスカイ君のパパ)がいれば置きかえ、納得し、受け入れることも可能でしょうが、児童相談所にいる子どもの場合、誰一人としてそのような存在の人がいない子も多く絵本の使い方の難しさを感じました。
他の方が実際にお子さんに読んだときの様子や、支障のない範囲でその子の背景など、もっと声が聞けたらと思います。
匿名 さん(うつ病編)
属している読書会の子供への読み聞かせをしている人に読んでもらいました。メンバーの意見は「絵がとても良い」.
本屋なら1冊を児童書、もう1冊を心理学や精神病などの部門に置くが、
図書館は1冊だから、分類が難しい。子供一人では、理解ができないかもしれない、ということでした。
康子 さん(うつ病編)
私が入院する前後に、一緒に読みました。
最近、何かの拍子にアッ!と言って、ココに書いてあったなぁ〜と本を取り出してきました。心に響いていたんですね。
中野さん <お子さん 小学校高学年>(うつ病編)
すばらしい! 特に後半です。
外国語の絵本の翻訳で、母親の気分障害などを説明して「牧師さんや病院のカウンセラーさんに相談しましょう」てのをみたときにも、日本にこういうのあったらなあとか、日本じゃあ牧師さんや僧侶に相談する人もごくわずかだよなあとか思っていたのですが、ここがきちんと、問題の整理、周囲の大人だって混乱していることをきちんと一緒に歩いていくことを補佐するシートがあったり、子育て支援者がこれを使う場合はなるべく事前に保護者と同意をとるっていう助言が入っている配慮がすばらしいと思いました。
目の前に、こういったお子さんがいて日々付き合う保育士さんはじめ、子育て支援者は、自分だって何かの一端になりたいと思うものですもの。
また、子育て支援者の方々にお会いする機会がありますので、ご紹介できたらいいなと思いました。第二段も期待しています。
藤田みどりさん(うつ病編)
ボクのせいかも…読ませて頂きました。かなり泣けました。
私は昔、小児循環器科病棟の看護師をしていました。
重症の心臓病のベビーちゃんが入院されていたのですが、親御さんと一緒に面会に来られたお兄ちゃんお姉ちゃんは病棟の中に入れません。透明な分厚いドアの外でじっと待っているのです。
私は20年たった今でも、ベビーちゃん自身の顔を忘れることはありませんが、健気に待ち続けるお兄ちゃんお姉ちゃんの顔も忘れられません。私の当時の思いが蘇りました。
この本は素晴らしいと思います!! 当時の私は、このような活動をしたかったのだと思いました。うまく書けませんが、本当にありがとうございます。
まりナースさん(うつ病編)
以前に比べ、最近、精神科医療機関に子ども連れの患者さんが多くなったと、現場のワーカー数名から言われました。絵本をお見せすると、是非読みたいし、他のスタッフにも見せたいと、病院で購入すると言ってくれました。広げていかなくてはとあらためて思いました。
小田敏雄さん(精神保健福祉士/田園調布学園大学人間福祉学部)(うつ病編)
6際の息子と2歳の娘がいる父親です。専門的でとっつきにくい内容でも、絵本だからスッと入ってきました。とても分かりやすいです!これから育児に携わる友人にも勧めたいと思います。
かんたこはるパパさん(うつ病編)
*大学・専門学校の講義の中でも紹介、使用されています
06.関連絵本
プルスアルハ著/ゆまに書房
・家族のこころの病気を子どもに伝える絵本
②お母さんどうしちゃったの… ─統合失調症になったの・前編─
③お母さんは静養中 ─統合失調症になったの・後編─
④ボクのことわすれちゃったの? ─お父さんはアルコール依存症─
・子どもの気持ちを知る絵本
①わたしのココロはわたしのもの ─不登校って言わないで
②ボクの冒険のはじまり ─家のケンカはかなしいけれど…
③発達凸凹のボクの世界 ─感覚過敏を探検する─