
ゆるゆる子育てを担当している公認心理師・臨床心理士おがてぃが、子育ての相談に回答するコーナーです。
質問タイトル:人間の多さや音に疲弊[ひへい]しやすい長女
年れい: 中学生
質問内容
こちらで4度目の相談になります
①身を守るため私生活ではずっと苦手な状況は出来る限り避[さ]けて育ってきましたが、高校・大学進学に向けて できれば少しでも改善できたらと思います。『人間の多さや騒[さわ]がしさに疲弊[ひへい]しやすい』事を緩和[かんわ]できる方法はなにかありますか?
② 聴覚過敏とは別に、この様な環境で育つ事で娘は『人間の存在が嫌』になったように思います。心理的にどう見守れば良いでしょうか?
***
ご質問をありがとうございます。
ていねいに細かく記してくださった質問内容を、しっかり読ませていただいたうえで回答しています。
こちらはサイトで公開するQ&Aコーナーのため、ご家庭や個人が特定できてしまうかもしれない情報、エピソードは掲載[けいさい]せず、サイトをご覧[らん]になる方が状況をイメージできるよう、かいつまんで紹介します(編集部で再編)。
長女(今回のご相談について)
友人の冗談がわからない。 生き物の世話のこだわりや、 正しくないことを注意してまわる、事はなくなりました。
勉強はよくでき、学校生活も大きな問題はありませんが、人が多い場所や騒がしい環境がとても苦手です。教室にいるだけで強く疲れてしまい、環境が変わると慣れるまでかなり時間がかかります。 友人と簡単な会話はできますが、自分から話しかけることは少なく、昼休みは一人で過ごすことが多いそうです。一方で家ではよく話し、学校であった楽しいことや嫌だったことをたくさん話してくれます。人混みやお店などでも、人が近くにいると動けなくなってしまうことがあり、人がいなくなるのを待つことも多いとのことです。「人がいるだけで疲れる」と話すこともあります。また、音や大きな声も苦手で、これまで学校では耳栓を使っていたこともあるそうです。
家庭では、母親にも発達特性があり、妹にも発達の特性があります。家庭内でさまざまな出来事がありましたが、現在は家族で支え合いながら生活されています。

おがてぃの回答
ご相談(そうだん)いただきありがとうございます。長女さん、次女さん、また相談者さんも含めそれぞれいろいろな難しさがあり、学校でも家庭でも日常生活でも困られることが多いことが良く伝わってくる内容でした。本当に日々お疲れさまです。ご質問にあった①と②についてそれぞれ回答していければと思います。
まず①についてですが、発達支援(はったつしえん)の観点から考えると感覚特性の部分が大きく影響(えいきょう)している可能性があるので、その点をどう工夫していくかがポイントになると思いました。
ご相談(そうだん)の内容からは聴覚(ちょうかく)の過敏(かびん)さがありそうだったので、対応としては実際に聞こえてくる音を減らすために耳栓(みみせん)やイヤーマフなどのツールを活用することがよくあります。またノイズキャンセリングのイヤホンやヘッドホンを使って周囲の音を減らす人もおり、最近ではノイズキャンセリングの耳栓(みみせん)もあります。ただ、意外と耳栓やイヤホンなどの感触(かんしょく)が嫌だという人も多いので、どのような感触であれば大丈夫そうであるか、シリコンやポリウレタンなどいろいろな素材がありますので、試してみていただけるとよいかと思いました。
また、視覚の過敏(かびん)さなどによって人の多さがしんどいという人もいらっしゃいます。その場合は色付きのサングラスをしたり、フード付きのパーカーを着たりして入ってくる情報を減らすということをしたりします。このあたりも身につけるものですので、触覚[しょっかく]の過敏さがあると、やはり素材や着心地など気になるところもあると思います。実際にいろいろ試しながら、長女さんにあうものを検討していただければと思いました。
僕は感覚過敏(かんかくかびん)に関しては「感覚過敏研究所」というサイトの記事などを参考にすることも多いのでそちらもみていただくと対応のしかたもイメージしやすいかもしれません。 (https://kabin.life/)
また、心理臨床(しんりりんしょう)の観点から考えると予期不安などが苦手さを助長している可能性があるかもしれないと思いました。これは過去に不快な体験をしたことが影響(えいきょう)して「またそうなったらどうしよう…」という不安が高まり、その結果として余計に感覚過敏(かんかくかびん)などの症状(しょうじょう)が強くなるということです。
この場合は不安を軽減させることが大事なので、取り組めるとよいこととしては見通しを持てるようにしたり、小さな成功体験を積み重ね足りするのが良いかと思います。特にこの場合の見通しは、あらかじめどのような場面で不快な感じが強まりそうかを検討して、不安が強くなった時の手立てを作戦として考えておくことで、安心感を作るという対応になります。
また、小さな成功体験としてはいわゆるスモールステップで取り組むということになります。このステップをつくる際には、ステップの前にまず「そもそもどのくらい人がいたらしんどいのか?」「出かける場所によって変動はあるのか?」「体調などによっても変わるのか?」を検討し、自分自身の傾向を知るところから始めます。その上で「ここだったら少し大変だけどどうにかなりそう」という場所をはじめのスモールステップとして設定し、人の多い場所に行く練習をしていくということになります。
さらにもうひとつ年齢的な観点から考えると、もしかしたら思春期という年代がより症状を強めている可能性もあるかと思いました。
二次性徴(にじせいちょう)が始わるとより他者の視点を意識するようになったり、ホルモンバランスが崩れやすかったりするので、人混みなどの刺激(しげき)もより辛く感じてしまう場合があります。もしその影響(えいきょう)があるとしたら、上記のように取り組むにはある程度こころや身体の状態が落ち着いた高校生や大学生になってからの方が取り組みやすいかもしれません。
ここまでが①に対する回答で、ここからは②についての回答になります。
「本人なりのペースで良き出会いを待つ」というスタンスが大事なのではないかと思いました。僕は仕事でトラウマを抱えた人の相談などを受けることがあるのですが、その際に「対人関係で傷ついたこころは対人関係の中でしか、なかなか癒(い)やされないのではないか」と感じることがあります。もちろん時間の経過だったり、1人で過ごすことによって落ち着いていくということもあるのですが、他者と関わるということについては、よりよい対人関係を経験していくことで、体験を上書きしていくということが大事な部分もあると感じたりします。
ただ、そのよりよい対人関係というのはなかなかコントロールができません。良い同級生や良い職場の上司など「対人関係に恵まれた」というような場合は、狙ってできるものではなく、偶発的(ぐうはつてき)に生じることが多いからです。では、ただ偶然を待っていればよいのかそうでもなく、取り組みとしては「好き・楽しいを中心に日々活動をしてみる」ということが今のところ良いかと思っています。
これも日々の相談の中で学んできたことなのですが、外出や対人的に苦手さがある人でも、自分が好きだと思うこと、例えばゲームや推し活などであれば動けることがあるので、まずはご家族やあるいは一人で自分の好きなことをしっかりと体験してもらい、ある程度活動性を上げていく取り組みをします。その活動の中で時々同じ趣味や共通する話題のある人と出会い、その人たちとの関係の中で回復していくという方々がいます。もちろんすんなりいくことばかりではなく、良くない出会いがあったり、出会った人たちと関係が深まる中で仲たがいをしたりなどいろいろあるのですが、そういった経験を踏まえて、自分なりの人との向き合い方を獲得(かくとく)するということはよくあります。
なので、ご長女さんが人間という存在を今は嫌と感じているとしても、今後の様々な出会いによって変わる部分もあるかと思っています。そして、そのためには、ご長女さんがまずは日々の生活の中で好きなことや楽しいことに取り組み、その延長上で出会う人たちと関わっていけるよう、保護者としてサポートできるとよいのではないかと思いました。
なかなか今も大変な状況(じょうきょう)かと思いますが、今までの中で良くなっていったこともいろいろとあると思いますので、ひとつひとつ取り組んでいただければと思います。

おがてぃ
普段は民間企業で心理職として仕事をしています、3児の父です。
公認心理師。臨床心理士。



