ギャンブル依存症の回復・自助グループのいろは

なにかと話題に上がるギャンブルの問題。
通訳の方の告白であったり、オンラインカジノであったり、闇[やみ]バイトの金銭苦にギャンブルの問題があったりと、それが依存症によるものかどうかは分かりませんが、実際[じっさい]に苦しんでいる方は多くいます。

その根底はどこからくるものでしょうか?自分自身や家族がその問題に気づき、いち早く関係機関につながることが大切だと思います。回復の一つとして提示できるものがあります。それが当事者の集まりでもある自助グループだと思います。どのようなものか、お伝えできればと思います。

自助グループ・GA


回復の手助けになる一つとして自助グループがあります。その中でも代表的なもの、GAがあります。
GAとはギャンブラース・アノニマスの略で、当事者の方が集まり賭[か]けない一日を振り返り、テーマにそって分かち合いをおこなう場であります。
こんなことで回復するのか?と疑問に思われる方もいるので、GAについて観[み]て、感じたことをお伝えしたいと思います。(くわしくはGA日本インフォメーションセンターのホームページを確認していただけたらと思います。)

2024年7月に、24年の古い歴史のある埼玉県の自助グループ(大宮GAグループ)が会場を閉めました。GAは35周年をむかえています。埼玉の会場としては一番古い会場でもあり、閉めてしまうことは残念ですが、最後のミーティングの日には大勢の方が集まり分かち合いを行う、すばらしい時間をすごしました。
参加している方は男性が7割、女性が3割ほど。GAにつながって1年未満の方や、1年・2年と止め続けている方、15年・20年止めている方、また治療機関の参加者とさまざまな人がこの日は集っていました。
24年前、当初は、埼玉県には大宮会場・原宿グループという名で開いていました。関東にはまだまだ会場は少なく、回復の場を求め遠方からも通ってくる方が大勢いました。

GAにはそれぞれ役割があり、会場の運営を決めていくミーティングも行っており、安定して生活をすごされている方や、休まず参加できている方がその役割を担っていきます。
ただギャンブルをやめたい、回復したいその気持ちで集まっており、本名もどこに住んでいるかも分からない、何を信用していいのか分からない方たちが運営を行っているのは面白い組織だと思います。
そして回復の期間が経った方や役割の経験を積んだ方が他の会場を立ち上げていき、今では関東だけで70近くグループが存在しています。毎日どこかの地域でミーティングが行われており、止めはじめたばかりの時は、毎日のミーティングを参加するよう勧[すす]められたりもします。歴史があるということはそれだけやめ続けられている方も大勢いるとのこと、これを回復というのでしょう。


回復を続けていけるための2つの大きな要素


回復を続けていけるための、2つの大きな要素がGAにはあります。
①12のステップ と ②スポンサーシップ です。

①12のステップ

これは回復を続けるための提案で、今後の生活に大きな役割を持つプログラムです。今までの生き方から新しい生き方を提案するもので、ギャンブルや生きづらさにふりまわされず自分らしい生き方を続けるためのものです。新し生き方とは新しい考えを持つことであると思います。
12のステップを行う時期というものがあります。ミーティングにつながり早々に行うのではなく、しばらくミーティングに通うようになり、生活や普段の行動が落ち着いたものになってから、自ら仲間に相談し、行っていきます。

12のステップとは、以下の内容のことを行います。

  1. 私たちはギャンブルに対して無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
  2. 自分を越えた大きな力が、私たちの考え方や生活を健康的なものに戻してくれると信じるようになった。
  3. 私たちの意志と生き方を自分なりに理解したこの力の配慮にゆだねる決心をした。
  4. 恐れずに、徹底して、モラルと財務の棚卸[たなおろ]しを行ない、それを表に作った。
  5. 自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
  6. こうした性格上の欠点全部を、取り除いてもらう準備がすべて整った。
  7. 私たちの短所を取り除いて下さいと、謙虚に(自分の理解している)神に求めた。
  8. 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
  9. その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
  10. 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。
  11. 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
  12. 私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力を続け、このメッセージをほかの強迫的ギャンブラーに伝えるように努めた。

》回復のためのプログラム-GA日本ホームページより

このステップを1から順に行っていきます。

このプログラムを行うことがなぜ回復に必要なのですか?

GAに参加される依存症の方たちは、今までと同じ生活を送ることは、以前と同じような過ちをまたくり返してしまうリスクがあり、それは自分自身の問題でもあると考えています。生き方にも影響をおよぼしており、二度と過去のような生活を送りたくないという気持ちも強くあります。我慢[がまん]をしてギャンブルを行わない人もいますがそれもむずかしいことから、この12のステップを行うことで、いままでとちがう考え方をし、日々の生活の中でそれを実践[じっせん]し、新しい生き方をすることで、行動の変容を図っていくものです。
そのために依存症という病を知ることが必要で、プログラムを一つずつ行うことで病気を知り、自分自身を理解する必要があると思います。回復をするということは、回復をし続けることで、行動を続ける事。ミーティングに通い続けることで、新たな気づきを得て、人として自信を取り戻し、新たな生き方を手に入れることにつながると思います。
ちなみに、12のステップを一人で行うことはむずかしく、12のステップを行った仲間をスポンサーとし、行っていきます。

②スポンサーシップ

②スポンサーシップというものがあります。
これは回復を長く続けられている方、ステップを行った方がスポンサーといい、新しくつながった方、これからステップを行っていこうと思う方がスポンシーとなります。
これはスポンシーがスポンサーを選び、選ばれた方はことわることができず、その申し出に答え、ステップを行う時の対応や、生活全般の相談ごとにも対応するなど回復の手助けをしていきます。ミーティングにつながったばかりの時や、数か月経過するとミーティングへの出席回数がへり、再度ギャンブルをしてしまう傾向にあります。そんな不安定な時なでこそ先ぱいの姿や強い指示があることで回復の歩みが続けられるのではと考えられます。

このように、GAには回復を目的とした集まりであり、回復するために必要なこと、かかわり、生き方など今後の生活を送るためのアイデアがあります。

埼玉県のGAを見てきて感じたこととして、グループを支えてきているメンバーが自分の役割や使命をもって活躍しているように感じられます。何十年もやめ続けられ、ミーティングに参加することが生活の一部となり、スポンサーシップをとり、各グループのミーティングにも参加し、イベントや勉強会を開催しています。

ミーティングでの内容も生きた教科書のようで、そこから得られる経験と知識は、今後の回復に向けてのキーワードとなって、聴いた人におとしこまれていきます。

みなが話すことに共通することとして、居場所が見つかった、一人ではなかったと話します。いかに孤独[こどく]な状況であったかを理解します。一人でやめようと思ってもどうにもならず、さらに孤立[こりつ]が深まるばかりでもあり、どんどん自信を喪失[そうしつ]していく結果となり、さらにストレスから逃げるためにギャンブルを続けていきます。
孤独と孤立した状況は人の自尊心[じそんしん]をうばっていく結果となっていきます。ある精神科医が人間関係で傷ついた人は、人間関係で回復していくことが大切と言っています。自助グループはまさにそのような場所であります。ミーティングに参加するとかつて自信を喪失した人が、再び輝きを取り戻し、生きていく姿を見ることができます。それは結果として犯罪の抑制にもつながっていくことだと考えられます。

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GAに通い続けることでの変化

GAに通い続けることで、次のような変化があります。

1か月の経過として
家族や支援者から行くように強く支持を受けているため、とにかく参加する。動機がしっかりしている方ほど真面目に取り組んでいる。ただ、自分の話をゆっくりすることで、気持ちが落ち着くこともある。とにかく信頼されていないことから仕方がなく参加する方が多くいる。

3か月ごろになると
ミーティングへの参加が生活習慣となってくる。また顔見知りの仲間もできてきて、参加することが楽しく感じられつつある。

半年すると
他のグループへの参加機会も持てるようになる。賭けない日々が半年も続いていることにおどろきもあり、生活が楽になってくる。

バースデイ・ミーティングの種類・つぶやき

バースデイ

GAには1日・30日・90日・1年・2年と辞めた日をバースデイとし、そこからこのように数えていきます。ちょうどこの時期は、ミーティングからはなれたり、再度ギャンブルを行ってしまったりする時期でもあり、このバースデイを祝うことでさらにやめ続ける動機としていくこととなります。

ミーティングの種類

ミーティングには種類があり、大きくオープンミーティングとクローズドミーティングに分かれています。
オープンはだれでも参加可能で、クローズドは当事者のみです。
下記のように内容が分かれています。

  1. テーマミーティング・テーマにそった分かち合いを行う。テーマは自由
  2. ステップミーティング・ステップの内容にそった分かち合いを行う
  3. 伝統ミーティング・GAの伝統について分かち合う
  4. バースデイミーティング・バースデイを祝い分かち合いを行う

ミーティングは「言いっぱなし・聞きっぱなし」という一つのルールがあります。意見を重ねる場ではないです。ここで話したことは外で話すことは禁じられており、この場で下ろし、持ち帰らないことが基本原則となっています。安全な場であることが約束されています。

つぶやき

ベテラン当事者が日常でのミーティンでの気づきなどをつづった「つぶやき」がまとめられています。まさに金言ともいえる内容なので、少しずつ紹介できればと思います。現在65つぶやきがあります。

つぶやきの一例

●論理的なことで、分かった気になるな。

「ミーティングに出続けていると、自分は病気でありもうやってはいけないと理解し始める。先行く仲間の話を聞いて自分に言い聞かせはじめる。その後、分かったような気がして来るが、ではどうすればよいかが分からない。先が見えない状態がやってくる。でも論理的なことは分かったから自分はもう大丈夫と思い込み、ミーティングからはなれてしまう仲間が多い。でも、よく思い出してほしい。ギャンブルにのめりこんでいた時、道徳的に家族に迷惑をかけてはいけないことを分かっていながらやり続けてしまったことを。依存症は、感情のコントロールができない病気であることを。もしそれができるのなら依存症になっていない。感情は、自分なりの理論を組み立て、ギャンブルをやることの理屈を作り上げてしまう。」

20の質問ー自分がギャンブルに問題があるかどうか?

もし、自分がギャンブルに問題があるかどうか?判断になやむときは、以下の質問に答えてみてください。回答により自分自身がどの立ち位置にあるのか分かる指標となります。

20 の質問

  1. ギャンブルのために仕事や学業がおろそかになることがありましたか?
  2. ギャンブルのために家庭が不幸になることがありましたか?
  3. ギャンブルのために評判が悪くなることがありましたか?
  4. ギャンブルをした後で自責の念を感じることがありましたか?
  5. 借金を払うためのお金を工面するためや、お金に困っている時に何とかしようと してギャンブルをすることがありましたか?
  6. ギャンブルのために意欲や能率が落ちることがありましたか?
  7. 負けた後で、すぐにまたやって、負けを取り戻さなければと思うことが ありましたか?
  8. 勝った後で、すぐにまたやって、もっと勝ちたいという強い欲求を感じることが ありましたか?
  9. 一文無しになるまでギャンブルをすることがよくありましたか?
  10. ギャンブルの資金を作るために借金をすることがありましたか?
  11. ギャンブルの資金を作るために、自分や家族のものを売ることがありましたか?
  12. 正常な支払いのために「ギャンブルの元手」を使うのを渋ることがありましたか?
  13. ギャンブルのために家族の幸せをかえりみないようになることがありましたか?
  14. 予定していたよりも長くギャンブルをしてしまうことがありましたか?
  15. 悩みやトラブルから逃げようとしてギャンブルをすることがありましたか?
  16. ギャンブルの資金を工面するために法律に触れることをしたとか、しようと考える ことがありましたか?
  17. ギャンブルのために不眠になることがありましたか?
  18. 口論や失望や欲求不満のためにギャンブルをしたいという衝動にかられたことが ありましたか?
  19. 良いことがあると2・3時間ギャンブルをして祝おうという欲求がおきることが ありましたか?
  20. ギャンブルが原因で自殺しようと考えることがありましたか?

7つ以上 当てはまる人は強迫的ギャンブラーの可能性が極めて高いです。
ギャンブラーズ・アノニマスはこの20の質問を、自分が強迫的ギャンブラーか否[いな]か知りたいという人にささげます。》http://www.gajapan.jp/20question.pdf

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よくある質問

Q 自助グループを宗教っぽく感じますが、宗教なのでしょうか?

A 宗教ではありません。ただ、ハンドブックに宗教を連想するような内容がありますが違います。聖書の祈りなど引用されていることがありますが、ハンドブックにも書かれているように「GAは、いかなる宗教、宗派、政党、組織、団体にも縛られていない。また、どのような論争や運動にも参加せず、支持も反対もしない。」~GAハンドブックより。となっています。

Q インターネットを介してギャンブルが行える環境ができていますが、どのような種類と傾向がありますか?

A このようにいろいろと種類があります。オンラインの方が還元率は高いです。公営ギャンブルは設備や人件費など経費がかかる反面、オンラインにはその経費がかからないためです。

種類合法/違法リアル/オンライン
競馬合法ネットでも購入可能
競輪合法ネットでも購入可能
競艇合法ネットでも購入可能
オートレース合法ネットでも購入可能
宝くじ合法ネットでも購入可能
パチンコ・パチスロ合法店で行う
TOTO・スポーツくじ合法ネットでも購入可能
麻雀賭けて行うと違法オンラインでプレイできる
スロット違法オンラインでプレイできる
ルーレット違法オンラインでプレイできる
ポーカー違法オンラインでプレイできる
ブラックジャック違法オンラインでプレイできる
バカラ違法オンラインでプレイできる
クラップス違法オンラインでプレイできる
シックボー(大小)違法オンラインでプレイできる
スリンゴ違法オンラインでプレイできる
スポーツベット違法オンラインでプレイできる

実際オンラインカジノやネットでのギャンブルでの相談も増えてきていますが、本人より家族の相談が多くあるように思えます。手軽に行える分、長時間におよぶギャンブルを行わない傾向にあるのかもしれません。

Q やめさせるにはどのような方法がいいですか?

A こんな例もありました。ギャンブルがやめられず、借金もできなくなり店のお金に手を出し、一度は家族が建てかえて大事にはならなかったが、再びお店のお金を盗んでしまった方がいました。他の店でも同様のことを行い一度だけではない方でした。こういった場合では、きちんと警察に被害届を出すのも、本人に自分のしたことの結果をしめすことではないかと思います。本人にやめさせる結果を作り、治療が介入しやすい状況を作るのも一つです。本人のキャリアに傷をつくことをおそれ、家族が本人の取らなくてはならない責任までうばってしまうことは良くないことです。一旦罪を認め、治療と家族との距離[きょり]をとることも大切です。

最後までお読みいただきありがとうございます。スケ

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