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絵本『こころにケガをしたらートラウマってなんだろう?』使い方ガイド

絵本『こころにケガをしたらートラウマってなんだろう?』使い方ガイド
2024年4月8日 office

絵本『こころにケガをしたらートラウマってなんだろう?』(ゆまに書房)
作者のみぃ先生より、使い方のガイド、いくつかの注意点をまとめました。
主に絵本を活用する支援者の方向けです。

 

目次

1 子どもと一緒に絵本の物語部分を読むときに
2 「リラックス法」が難しい子どもたちがいます
3 「いま、ここは安全」という気持ちを強める方法(絵本にはのっていない方法もあります)
4 きもち+からだの感覚に気づく力を高めるための方法
5 三角形モデルにいっしょに気づいていきます
6 「別の考えを浮かべてみる方法」は日常に感じるちょっとした不安や怒りを生じさせる出来事から

 

 

 

1 子どもと一緒に絵本の物語部分を読むときに


 

子どもの気持ちの動きを感じとりながら読み進めます。
不安な気持ちが高まるようであれば、「きもちがざわざわしてきたかな。この絵本を読んでそういうきもちになる人は他にもいるよ。きもちを落ちつかせるために、深呼吸か、ぎゅーふー体操(あるいは他の気持ちが落ち着く方法)をやってみる?」と声をかけます。
事前にP60-62(リラックス法・「いま、ここは安全」というきもちを強める)を読んで練習しておくとよいです。これは絵本の解説部分を読んでいる時にも必要な留意点です。

 

不安が強くなると、ふざけてしまったり、自分には関係ないと聞こうとしないこともよくおこります。「あなたには、当てはまらないかもしれませんが、こういう状態になる子は結構多いんだよ」と、知識として伝えるという姿勢で進めることも一つの方法です。
不安が非常に強い場合には、リラックス法をするとともに、落ち着くような話題や遊びに切りかえることも必要となります。

 

物語部分を読み終えて自発的に感想が話されれば、耳を傾けます。
言葉にならないさまざまなきもちや考えが浮上していることも多く、この段階では無理に聞き出すことはしません。

 

2 「リラックス法」が難しい子どもたちがいます


絵本P60,61

 

リラックス法(特に深呼吸)をやれない、あるいはやりたがらない子どもも少なくありません。
いつも過度に緊張しているので、リラックスしている状態が分からなかったり、「やっても無駄」と思ったり、リラックスしている状態が無防備で怖いと感じてしまうこともあります。
「今まできもちもからだもかたくなっていたから、リラックスって言ったってどうしていいかわからないよね」ときもちを受けとめながら、比較的抵抗の少ない方法から少しずつ導入していきます。
その際、実施する前と後に、きもちの物差しできもちの程度を測ってみたり、心拍数を測ってみると、効果が目に見えていいかもしれません。

 

こころやからだを落ち着かせる方法で、なにか本人が以前から使っているものがあるかどうか尋ねます。
いつでもどこでもできる方法を、面接室で一緒に練習します。

 

3 「いま、ここは安全」という気持ちを強める方法(絵本にはのっていない方法もあります)


絵本P61

 

呼吸、グラウンディング、バタフライハグなど、資料によっていろいろなやり方が紹介されています。やりやすい方法を取り入れます。

 

 

4 きもち+からだの感覚に気づく力を高めるための方法


絵本P64,65

 

絵本の解説では、「ジュンのきもちいろいろ」を紹介しています。
どんな時にそういうきもちになるか話し合ったりします。「一番体験することの多いきもちはなに?」「そう感じたらどうしますか?」「今のきもちは?」「どのくらい?

 

きもちに気づく力を高めるための方法は、ほかにもいろいろあります。
例えば、きもちカード*(別に準備)をふせておき、子どもと支援者が交互にひき、一方がカードに書かれたきもちをジェスチャーで表し、もう一方が当てます。その際、きもちを表す顔の表情やしぐさや声のトーンに気づけるようにします。

 

(ハルのきもちいろいろカード)

 

きもちに気づくことが難しい子どもたちは、身体の感覚にも気づけないことがあります。
一緒に走ってみて、心臓のドキドキを感じたり、温かい、冷たい感覚などを一緒に体験してみることも役に立つことがあります。

 

5 三角形モデルにいっしょに気づいていきます


絵本P56,57「こわかったできごとを急に思い出す」

 

客観的に見れば些細で無害な刺激が「きっかけ」となって、「できごと」が思い出されてしまい、「こころのケガの症状」がでます。このつながり(三角形モデル)に一緒に気づいていきます。
思い出したくないことであったり、忘れてしまっていること(解離)もあるので、子どもの不安な気持ちに十分配慮して、無理はしないようにしながら、でも少しづつそこに近づけるようなアプローチが望ましいです。

 

支援者が、侵入症状やフラッシュバックの具体的なエピソードを知っていることが望ましいです。
その「エピソード」を一緒に探検するようなきもちでながめます。そのきっかけとなることを探し、その時のきもちや体の感覚(サイン)を探っていきます。次に、その不安な気持ちをおちつかせる方法として何が使えるのかを話し合います。

 

6 「別の考えを浮かべてみる方法」は日常に感じるちょっとした不安や怒りを生じさせる出来事から


絵本P66,67

 

まずは日常に感じるちょっとした不安や怒りを生じさせる出来事を取り上げて練習してみます。徐々に、やや強い不安や怒りがひきおこされる出来事をとりあげていきます。
考え方を変えるのではなく、いろいろな考え方があるんだ、考え方が変わるときもちや行動も変わるんだということを体験し、考え方をやわらかくすることを目指します。

 

※現在、絵本とあわせて使えるワークブック、書き込んで使えるものを作成中です。