「子ども情報ステーション by ぷるすあるは」精神障がいやこころの不調、発達凸凹をかかえた親とその’子ども’の情報&応援サイト

Eさん[20代・女性]のストーリー 親が精神障がいの子どもの立場から

Eさん[20代・女性]のストーリー 親が精神障がいの子どもの立場から
2018年1月22日 pulusu

精神障がいをかかえた親をもつ子どもの立場の方(今は大人になった方)や、障がいを抱えたご本人ご家族の体験をまとめたインタビューコラムです

目次


01 わたしのストーリー

02 自分にとって力になったこと

03 社会へ。必要だと思うこと


 

01 私のストーリー

 

幼少期から高校生まで

 

しんどかった記憶がだんたん薄れていますが…。
統合失調症の母は、具合が悪いため家事をしてくれなかったり、遊んでくれないときが多く、私が小学校にあがる前から、さびしさからけんかになることがたくさんありました。
母は自殺未遂をすることがあり、体調が悪くなると、警察や親戚、近所の人などに助けを求めました。学校から帰宅すると、本人がいなかったり、家の前に警官がいたり救急車が止まっていたりと、いろんなパターンがありました。また、母への対応をめぐって親戚同士の意見が合わないこともあり、間に入って気をつかうことも多かったです。親戚関係が一番つらかったように思います。

 

母の病気については、父から聞きました。
小学校入学前のある日、「お母さんが遊んでくれない」と父に泣きつくと、「実はお母さんは精神病なんだ」と説明してくれました。「もしかしたらそのことで友達にいじめられるかもしれないし、結婚も難しいかもしれない。パパは病気のことを隠していないけど、あなたが隠すかどうかは任せるよ」と。子どもながらに覚悟を決めました。父が母の病気をオープンにしていたこともあり、私も友達に隠しませんでした。
友達は家にもよく遊びに来て、むしろ母のことを心配してくれました。
父が母代わりでした。
授業参観など、母がくると恥ずかしいという気持ちがありました。母方の祖母のサポートもありました。
幼稚園の頃から家事をやっていて、母のケアや家事などで忙しい毎日が続きましたが、中学3年のとき、高校受験のタイミングで母が入院しました。
以後、長期入院しています。距離が離れたこともあり、高校時代はアルバイトや部活など、自分自身の生活を満喫しました。ほかの家庭と違うことを意識したのは高校生の頃でした。

 

大学生から。子どものグループの立ち上げ

 

大学生になって、母が入院している病院に面会に行くようになると、「なぜ自分と同じ“子ども”の立場の人と出会わないのだろう? 100人に1人は統合失調症なのに、こんなにいないはずはない。私と違って、親が病気だと言えないまま過ごしている人が多いのではないか」と感じることがありました。
ちょうどそのころ、高校時代の友人から「お母さんが統合失調症になった」と相談を受けました。そして数か月後、「私の大学の友人もお母さんが統合失調症」と聞き、やはり同じ境遇の人たちがいることを実感しました。
ほかにも仲間がいるのではないかと思い、病院の家族会にも参加してみましたが、親の立場の人ばかりでした。漠然ながらも、子どもの家族会をと考えるようになりました。

 

会の立ち上げを決意したのは、就職活動の時です。
あるマスコミ関係の会社の就職試験を受け、順調に進み、何回目かの面接のときのこと。母の話をすると、ある面接官の表情が急に変わり、「あなたにも病気が遺伝している可能性はないのか?」などさまざまなことを聞かれました。…結果は不合格でした。
マスコミ関係者にも偏見があふれていること、就職も左右されることを実感しました。大学の先生にも、場合によっては隠すことも必要と言われ、「社会ってそういうものなのか?」とすごく悲しい気持ちになりました。
統合失調症への理解が浸透していれば、就職の時に理解を得られないということもなかったのでは…
同じ立場の人に、自分と同じような悔しい思いをしてほしくないと、大学4年の秋に、会をスタートしました。

 

就職した人材派遣会社でのこと。登録者の中に、精神障がいが疑われる方もいましたが、職場の人の対応から、障害の知識や理解が進んでいないことも感じました。過労のために体調を崩した同期などをみて… その後、福祉のしごとへと進み今にいたります。

 

02 自分にとって力になったこと

 

熱中するものに出会えたこと。
幼い頃から、周りの目を気にする内気な性格でした。しかし小学校2年生の頃、父が『このままでは面白くない子に育ってしまう』と、モー娘のPVを見せてくれたのがひとつのきっかけです。
中学時代には、w-inds.の歌って踊る姿を見て、ダンスに目覚めました。
全国のライブへ行き、友人ができたり、視野が広がったこと。おしゃれにも関心をもち、大学生の頃には長年続けたダンスを認めてもらいたいとオーディションにも参加─など、熱中するものができたことで、母との関わりにおいて「私生活の大切さ」を知ることが出来ました。

 

03 社会へ。必要だと思うこと

 

「世代のニーズにあわせた居場所」

 

子どもの立場でも、成人や小・中・高校生など、さまざまな世代がいますが、自分に合う場所と出会うことが大切だと思います。それには各世代のニーズに合わせた場など、いろんな種類の居場所ができるといいと思います。
本当に居場所を求めているのは、親が病気だと気づいていない小・中・高校生だと思います。学校にスクールカウンセラーなどが導入されていますが、精神疾患への知識や、実情への気づきまでには至っていない場合もあるように思います。教師など大人の理解は必要です。

 

「統合失調症の親のことを普通に語れる社会」

 

会を立ち上げてから、同じ立場の人と飲みに行き、居酒屋で親のことを普通に話せることがこんなに楽しくて楽なんだな、これが理想だなと思いました。
精神疾患は、だれにとっても人ごとではない、身近なことです。
わざわざ会を立ち上げなくても、自然に誘いあって、ファミレスや居酒屋で家族のことを普通に話せるようになることが、社会が変わるということだと思います。

 

<一歩踏み出すことを迷っている方へ…>

 

本当に勇気のいることだと思いますが、助けを求めたり、頼ったりできるようになったら、もっと楽になると思います。
私自身も支援者の側になってから、いろんなサービスが利用できることを知りました。そうしたサービスを使えば、自分の生活も大事にできるし、結婚や恋愛にも目を向けられるようになってくると思います。
今でなくてもいい。自分がそう思えるタイミングでいいから、ぜひまわりを頼る勇気をもってほしいです。

「ひとりやないで!」
代表・ファシリテーター:加藤枝里さん(Eさん)

》ひとりやないで!ページへ

》取材記事へのリンク(準備中)

※本コラムは、Eさんへのインタビューをもとに、ぷるすあるはがコラムを作成し、Eさんの同意を得て掲載しています。

ライン B