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精神障がいを抱える親同士で支えあう場が子育ての希望に―多摩在宅支援センター円のPCG事業から【後編】

精神障がいを抱える親同士で支えあう場が子育ての希望に―多摩在宅支援センター円のPCG事業から【後編】
2016年8月3日 pulusu

病気と子育て子どもの生活─声をきいてください

取材記①─by Suzuki Yo & pulusualuha


目次


【前編】グループミーティングでの支えあいが生み出す変化 》前編へ

1.PCGはどのような場? ―安心して不安を話せる場・アドバイスをもらえ希望がもてる場
2.PCGがもたらす変化 ─語ることで新たな自分が生まれる
3.子どもとの関係が変わる ー自分自身に余裕がもてるようになって

【後編】世帯として支えるために必要な支援

4.世帯として継続的に支える仕組み ─さまざまな人が、さまざまな場で
5.これから地域に求められる支援とは ─親子を孤立させない

*円について
*精神科訪問看護について


 

【後編】世帯として支えるために必要な支援

 

4.世帯として継続的に支える仕組み ─さまざまな人が、さまざまな場で

 

PCGは、世帯として親子を一緒に支援していくところに特徴があります。

子どもグループに参加する子どもの多くは、不登校や発達の課題、行動の問題や低自尊心などの課題があります。こうした子どもたちにあたりまえの子どもらしい活動を保障するため、保育経験者や大学生ボランティアが一緒に遊んだり軽食の準備をするなど、親以外のさまざまな親との交流をはかっています。スタッフとの1対1のやりとりから、しだいに他の子どもと遊ぶことができるようになったり、スタッフに自由に自分の気持ちを言えるようになったりと、どんどん変化していきます。グループに参加してスタッフから遊びを覚える父親もいます。

スタッフはこうした場での子どもの様子やアセスメントを、母親や子どもの施設などの関係機関にフィードバックしています。

 

また、訪問看護とPCGとの連動が、継続した支援に結びついています。PCGでは気づきや、精神障がいからの回復への意欲が生まれますが、子どもが戻ってきたり、余裕がなくなったりすると、対応できなくなります。そこを訪問看護で日常的にフォローすることで、効果的な支援が可能になっています。

もちろん、支援する側にとっても、PCGは重要な位置づけとなっています。

「看護師が訪問看護で1対1で対応すると、行き詰まってしまう部分があります。また、訪問に行くと、子どもの支援もしなければいけない状況があり、『1人で何とかしなければ』と抱え込んでしまいがちです。でも、そのようなときにPCGで聞いてみたらどうかと投げかけることができるんですよね」(小野さん)

PCG1 のコピー PCG1 のコピー 2

 

5.これから地域に求められる支援とは ─親子を孤立させない

 

支援者や地域、社会に対してどんなことを知ってほしいかを聞くと、Aさんは「出産したころは子ども家庭支援センターがなかったので、どこに相談してよいかわからなかった。もっと早くつながりたかった」、Bさんは「偏見の目で見ないでほしい」と答えてくれました。

また、Cさんは子どもが小学校低学年で施設から家に戻ってきたばかりで、対応に四苦八苦している現状を話してくれました。

「朝起きて準備をし、学校に無事登校するために見送りや迎えなど大変です。自分が全部やらなければいけません。子どもには1つ1つ教えていかないと、子どもも成長していかないので、自分に言い聞かせながら生活しています。子どももストレスがたまっていて、どう解消したらよいかわからないようなので、これからがもっと大変になると思います」とCさん。

「でも、周りの支援者が味方になってくれていて、自分が倒れそうになる前に、訪問看護師や作業所、市役所のケースワーカーなどにSOSを伝えるということを約束しています」

日々の生活を支えるためには、さまざまな支援者の理解やサポートが重要です。Bさんの子どもが保育園に通っていたときは、訪問看護師、保健師や子ども家庭支援センターの職員、ヘルパーなど、かかわっている支援者が課題を共有しながら、支援していました。保育園では園長がBさんの話をよく聞き、状況や経過を記録して報告したり、担任が子どもの持ち物をそろえるために配慮してくれました。家庭では、訪問看護師やヘルパー、保健師が洗濯や片付けなどで支援し、無事、学校へ上がることができました。

***

しかし、ほとんどの地域では、精神障がいを抱えながら子育てをしていくための支援やネットワークが少ないのが現状です。また、「SOSを出したら、また子どもと離されてしまうのではないか」という気持ちから、SOSを出さない母親もいます。寺田さんはこう指摘します。

「地域の支援者が、精神障がいや精神障害がいをかかえた人のことを理解して信頼関係をつくることが大切です。また、訪問看護でもいろんな支援をしているし、お母さんはがんばっているけれども、子どもの支援が少ないのが現状です。だから結局、母親が全部見るしかない。病気をかかえながら子育てをしていく仕組みができていないと思います。たとえば母子が一緒に現在の環境から離れることができるレスパイトなど、地域で一緒に暮らせる仕組みが必要です」

また、子ども側の支援者も、早くから母親のSOSを受けとめて対応することが求められます。小野さんはこう指摘します。

「私たち支援者は、お母さんが発信していることを受けとめ、予防的に食い止めようとして、先に行政や子ども家庭支援センターに伝えますが、子ども側の支援者は虐待など“こと”が起こってから動くことが多い。そうすると、母親としての自信を失ってしまうし、子どもを保護した後のフォローがない。この狭間のところの支援が必要だと思います」

 ***

訪問看護で精神障がいをかかえた親とその子どもたちと出会う中で、精神保健医療と母子保健、子育て施策の狭間で孤立している親子を支えようと始めたPCG事業。この8年間の取り組みは、親子が変わっていく力の大きさと希望、そして解決すべき課題を示しています。

取材では、多摩在宅支援センター円の寺田さん、小野さん、そしてPCG参加メンバーのAさん、Bさん、Cさんに貴重なお話を聞かせていただきました。どうもありがとうございました。

取材・文 Suzuki Yo [writer/KIDsPOWER Supporter]

PCG3


多摩在宅支援センター円(東京都立川市)

2005年6月に開設。「私たちは、その人らしい豊かで多様な生活を応援します!」を理念に、多職種で在宅支援を中心に事業を展開。訪問看護ステーション円、卵、珊(株式会社円グループ)、訪問看護ステーション元、グループホーム、地域活動支援センター、相談支援事業所など多角的な事業を行っています。

》ホームページへ

円グループ

PCG事業とは?

「育児困難を抱える精神疾患とその子どもをグループワークで支え、親子とも精神的負担の緩和、次世代連鎖防止を図ること」を目的に、「世帯全体への支援、虐待防止、関係機関(精神科医療、障害者福祉、生活福祉、児童福祉、母子保健)のネットワーク構築、普及啓発」を実施する事業です。

 


 

精神科訪問看護について

精神科訪問看護は、地域生活をする精神疾患をもつ人をサポートする制度の1つで、精神科病院の外来部門、訪問看護ステーションなどが実施しています。

看護師や精神保健福祉士が自宅に訪問し、日常生活の支援、対人関係の構築、服薬指導や健康指導、病状管理、また生活上の困りごとについて相談にのり一緒に対処法を考えるなど、生活の中での医療・看護的なニーズに応じた援助を行います。

地域医療への移行が進み、精神科訪問看護を実施している精神科病院は8割強、訪問看護ステーションは約6割と、年々増加しています(平成23年時点)。利用者数は約2万2,000人(平成23年)で、平成13年の3倍に伸びています。

利用者の疾患別では統合失調症(統合失調症、統合失調型障害及び妄想性障害)が75.4%、気分(感情)障害が9.9%、精神作用物質による精神および行動の障害が3.8%となっています。引きこもりがちな人や、薬の管理の難しい方、自宅での生活が困難な方にとって、心強い制度です。

精神科訪問看護を受けるには医師の指示書が必要になります。

 

〈参考文献、資料〉

日本精神科看護協会監修『詳説 精神科看護ガイドライン』(精神看護出版、2011年、157ページ)

厚生労働省「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」資料(平成25年7月26日)

このサイトの教材作成にあたって、NPO法人ぷるすあるはは、平成28年度子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)の助成金の交付を受けています

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