「子ども情報ステーション by ぷるすあるは」精神障がいやこころの不調、発達凸凹をかかえた親とその’子ども’の情報&応援サイト

Sさん[40代・女性]のストーリー うつの本人で母の立場から【後編】

Sさん[40代・女性]のストーリー うつの本人で母の立場から【後編】
2016年5月31日 pulusu

精神障がいをかかえた親をもつ子どもの立場の方(今は大人になった方)や、障がいを抱えたご本人の体験をまとめたインタビューコラムです

目次


【ショートストーリー】

【前編】うつについて、子どもにこんなふうに伝えました

・私の場合─小学校3,4年の頃、絵本をいっしょに
・病気をオープンにするのは難しいことも多い
・伝えるときのポイント

》ショートストーリー・前編へ

【後編】同じような悩みを抱えたママたちと集い、自分OK!と感じられるようになりました

・病気の経過と支えになったことば
・話さなくてもいるだけでほっとできる場〜ルミエールについて
・まわりの人のこんなサポートがよかった(体験)& あるといい(願望)
・おわりに──うつで具合が悪い、ああそうなんやって、自然に話題にできて、おたがい様の世の中になるように


 

【後編】同じような悩みを抱えたママたちと集い、自分OK!と感じられるようになりました

・病気の経過と支えになったことば

産後うつから、寝たきり状態で子育てできなくなりました。トイレにも行けないくらい寝込んで、ネグレクト(育児放棄)のような状態で。子どもが2歳半の頃、児童相談所にSOSを出して、保育所に緊急で入所になりました。みんながしている当たり前のことができない、と母親失格の烙印を押された気がしました。虐待のニュースが頭をぐるぐるしていました。

自己肯定感が地に落ちていましたが、保育所の先生が「お母さんはお母さんでいてくれたら、なにか特別なことをしなくても、十分いい」ということを言ってくれて救われました。「だめだめやけど、よろしく(お願いします)」と言えるようになりました。それまではがんばっていたけど、親子ともに泣いたり、オープンにできるようになりました。

 

保育所に預かってもらって、ゆっくり寝られるようになって、あんな(虐待の)ニュースがあるくらいだから、きっと自分ひとりじゃない。ひとりじゃないよ〜という会があるといいなと考えるようになりました。

 

問い合わせたらなかったので、自分で作ろうと思いました。新聞で読んだ大阪の会を見に行って、同じ気持ちの人と話すことがこんなに気持ちが救われるんだと実感! 最初は、1人で公民館で看板を持って、参加される方がくるのを待っていて(笑)。いろいろいろいろ工夫しながら少しずつ進めていきました。

 

リアルのママ友はいなかったけれど、同じようなしんどい人がいることがわかり、ネットも始めて、人とコミュニケーションをとるようになりました。自分のことが自分で受け入れられるようになりました。

支えになっているのは・・・会でぐちを言って、仲間たちが間違ってないよと言ってくれること。5歳くらいからは、子どもとも共有できるようになり、そして、これは随分あとになってからですが、両親が「甘えてもいい」と言ってくれました。

 

・話さなくてもいるだけでほっとできる場〜ルミエールについて

 

会に来られない人の方が圧倒的に多いです。近所でも、具合が悪いと来れません。チラシをもらってから、3年くらいたってやっと来ましたという方もいます。一度来ると、もっと早く来たらよかったとおっしゃいますが、最初はとても勇気がいります。

 

「肩の荷をおろせる」
「同じような悩みを抱えたママたちがいてほっとできる」
「話せなくてもいるだけでほっとできる」

 

そんな雰囲気の場です。「決まったお答えはないんですよ」がひとつのポリシー。みなさん自分なりに持ち帰っています。

参加者が境遇が似ていて一体感があります。対象があまり絞られると、まわりのママさんと比べ始めてしまうのですが、この会は年代の幅があります。前回は、子どもがゼロ歳から中学生のママまでいました。あの頃はしんどかったなあと振り返ったり、先のことが聞けて参考になったり、子どもの年代が幅広い良さがあります。常連さんから初めての方まで、メンバーは固定されていません。決めつけない、「ゆるゆる(ゆるく・ゆるす)」でやってます。

Sさんのストーリー2

話が苦手という人にこそ、来て欲しいです
会をやってみてふしぎなことに気づきました。自分で話さなくても、話の中に共通点を見つけて、自分が話したように癒されるんです。10人いると3人くらいが声をあげていて、うなずいている方も、よくぞ言ってくれたと感じたり、「自分もOK、OK」「いいんだいいんだ」と感じたり。すごく癒されます。ネットでのやり取りもやっていますが、そこではうんうん!という一体感が反映されなくて、これはリアルならでは、です。
私も最初はそうでしたが、語りたい人が行く場だと思い込んでいる人が多いです。「ちがうよ〜」と。傾聴しないといけないという意味ではなくて、自然に聞き合う会と呼んだ方がしっくりきます。

 

秘訣や工夫を聞かれますが・・・自分のカラーというか、その場にいて、ただうんうんって言っています。あんまり場作りされても自分だったら嫌やし、お茶飲んでのんびりしようというかんじ。「〜ねばならない」を手放す。むしろ、何もしない場としてありたいと思っています。そういう場が貴重かなと。

 

(丁寧にやっている部分としては)最初に連絡があったときは、待てないかんじもわかりますので、まずお顔だけ見に行く意味で個別に会うことはあります。
会まで来られない人にも向けて、ブログを書いたりしています。
今はお休みしていますが、手仕事の会もいいですね。目を合わせなくてよいし、解決を目指さなくていい。子どもと離れて、ぽっかりとした時間を過ごせます。

 

・まわりの人のこんなサポートがよかった(体験)& あるといい(願望)

Sさんストーリー3

 

・おわりに──うつで具合が悪い、ああそうなんやって、自然に話題にできて、おたがい様の世の中になるように

 

世の中が、「(うつで)具合が悪い」を自然に話せるようになるといいですね。
背が低いとか眼鏡をかけてると同じ。「ああそうなんやな〜」って。具合が悪いというのはその人の一部なのに、いけないことにされてしまうのが残念です。治るものがあったり、治らないものがあったりしますが、具合が悪いなりに、みんな一生懸命やっています。盲腸だと「なんでなったのよ!?」とは言われないのに、こういう病気は責められる。悪気があってなっているわけではないのに、うつでママだと、こんなママでごめん、となってしまう。どっちが先というわけではないですが、まわりもそうだし、本人もいけないことだと思ってしまう。自分がいけない存在だと言われたり、思わざるを得ないことは、苦しいです。
背が低い人へ、高いとこのものをとってあげるような感覚でおたがい様ができるように。自然に話題にできる空気があるといいなと思います。


『ルミエール~産後うつ・子育てがブルーなママの会』

ルミエールはフランス語で「ともしび」の意味。産後うつから何年も、本当に孤独で不安でつらくて、真っ暗闇のトンネルの中に一人ぽっちな気分でした。なので、そんな闇の中にふと見つけた「ともしび」のようなホッとする存在でありたいです。安心、安らぎ、温もり、癒し、共にいる仲間、希望、の象徴として。兵庫県・西宮市を拠点に活動。

》ページへ

主宰 さくちるさん(Sさん)

おっとりだけど思いつき重視。行動してから考える派。人生おもろくてナンボ。落ち着いていて癒し系に見えるそうだが、中身はぼっさりした不思議ちゃん。
安定している時期も、ものすごく疲れやすい(刺激に弱い)。季節性の傾向があり、冬に落ちる。気温が少しでも下がると(これは冬に限らず)、冬眠モードに。現在も通院服薬している。病気とのつきあい方のコツ。。。。疲れていると、ネガティブになるので、とにかく寝る。いつでも休めるようなゆるい生活をする。イヤなこと、苦手なことはしない。好きだとか心地よいと「感じる」ものを意識して選ぶ(「考え」て選ばずに「感じて選ぶ」)。つまりラクに生きる。これでいいのだ、と開き直る。無理に治そうと思わない。体質であり、自分の個性だととらえる。自分OK!!


※本コラムは、Sさんへのインタビューをもとに、ぷるすあるはがコラムを作成し、Sさんの同意を得て掲載しています。